電子カルテとは
電子カルテとは、患者の診療記録を電子的に管理するシステムのことです。診療内容や投薬歴、検査結果などがデータベース化され、病院内の医師や看護師など関係者が必要な時に閲覧できます。従来の紙のカルテよりも情報の共有や整理が容易になり、医療ミスを防ぐことができます。また、カルテの紛失や紙の状態が悪くなるといった問題も解決され、カルテの質の向上につながります。
電子カルテの提供形態
電子カルテにはクラウド型とオンプレミス型の2種類があります。本章ではそれぞれの提供形態について解説します。
クラウド型
クラウド型電子カルテは、インターネット経由でデータベースにアクセスすることができるシステムです。クラウド型電子カルテの一番のメリットはランニングコストが低いという点です。また、医療機関や担当医師以外にも、患者自身も情報を閲覧することができます。情報共有がしやすく、医療機関をまたいだカルテの共有も容易です。
オンプレミス型と比べて「クラウドのセキュリティ面は安心なのか」という疑問を持つことも少なくありません。医療機関での利用を目的としているため、電子カルテの一番の課題は情報漏洩の対策です。クラウド型では、データのみならず通信自体を暗号化することで外部からの判読や盗聴を防ぎます。また、ファイアウォールや不正なアクセスを検知するシステム(IDS)によってハッキングの被害も防ぎます。災害時は、サーバーは施設から離れた場所にあるため、医療施設が被害を受けた場合でも情報は守られます。
オンプレミス型
オンプレミス型の電⼦カルテは、専門領域への対応や高度な医療機器との連携が可能で手厚いサポートが充実しているため、ランニングコストが⼤きくなってしまいます。また、災害などで施設内のサーバーが壊れてしまった場合、バックアップを取らない限り情報を復旧させることが難しくなります。しかし、セキュリティ対策はクラウド型よりも優れており、サーバーコンピュータを自院内に設置して機器同士の通信をローカルネットワーク内で接続するため院内で完結することが可能です。
病院の規模によって適している製品タイプが異なる
医療機関の施設規模によって、適している製品はそれぞれあります。また、産婦人科やホスピスなどの専門領域によって適する製品が異なる場合もあるので、導入・移行を検討する際はどの分野でどの機能を必要としているのか確認することが大切です。
- 無床病院・クリニック向け
- 中小規模病院向け
- 大規模病院向け
- 歯科医向け
無床病院・クリニック向け
無床病院やクリニックにはクラウド型の電子カルテをおすすめします。クラウド型は運営企業のサポートが手厚いため、サーバーのバックアップや更新作業などのメンテナンス作業のためだけに専門の人員を雇う必要はありません。また、スモールスタートができるので経済的にも負担軽減に繋がります。
中小規模病院向け
中小規模の病院ではオンプレミス型かクラウド型かは問いませんが、有床施設であれば外来から入院までの対応がシームレスにできる製品が向いています。地域医療であれば、近隣の介護施設や薬局などとシステムを連携させることで繋がる医療の実現が可能です。
大規模病院向け
大規模な病院にはオンプレミス型の電子カルテをおすすめします。初期費用・ランニングコストともに高くなりますが、大量の患者データを管理するのであれば院内でシステム環境を完結させて、しっかりとしたセキュリティ対策を講じましょう。また、診療科目が多い場合もそれぞれに対応したカルテにカスタマイズすることができます。
歯科医向け
歯科医院の場合、技工技術が必要になってくることもあります。歯科診療専門の電子カルテシステムなどは、CTやレントゲンの画像管理や自費率が高く面倒な会計業務も正確に簡単に行うことが可能です。
電子カルテを選ぶ際のポイント9つ
電子カルテの導入を失敗しないためには、選定ポイントについて確認することが大切です。本章では、電子カルテを選ぶ際のポイントについて解説します。
- 必要な機能や要件を明確にする
- 利用する医療機関の規模や種類に合わせたシステムを選ぶ
- 使いやすさや導入後のサポート体制も考慮する
- セキュリティ対策が適切かどうか確認する
- 全体的な費用対効果を考慮する
- 長期的な視野での導入を見据え、将来のアップデートやカスタマイズの可能性も検討する
- 対応しているデバイスを考慮する
- システムとの連携を確認する
- 専門分野に対応しているか確認する
1.必要な機能や要件を明確にする
電子カルテを導入する際は、自分たちが必要とする機能や要件を明確にすることが重要です。たとえば、医療機関の規模や診療科目によって必要な機能が異なる場合があります。また、患者情報の管理方法やレポート作成機能なども医療機関によっては異なる要件があるため、しっかりと検討して選びましょう。
2.利用する医療機関の規模や種類に合わせたシステムを選ぶ
小規模のクリニックであれば、簡易的な機能を備えたシステムで十分な場合もありますが、大規模な病院であれば複数の医療スタッフが同時に使用できるシステムが必要です。また、導入後のシステム拡張やカスタマイズも考慮して、将来的な規模拡大にも対応できるシステムを選ぶことも重要です。
3.使いやすさや導入後のサポート体制も考慮する
UI・UXデザインによってはシステムが使いにくくなり、スタッフの業務効率が低下すること誤入力や情報漏洩のリスクが高まってしまいます。また、導入後のトラブルや不具合に対するサポート体制がしっかりとしているかどうかも重要です。導入の際には、システムの使いやすさと万が一の場合に迅速かつ正確に対応できるサポート体制が整っているか確認しましょう。試用やデモを行い、使い勝手や問題点を確認することも大切です。
4.セキュリティ対策が適切かどうか確認する
電子カルテには患者の個人情報が含まれており、不正アクセスや情報漏えいなどのリスクがあるため、セキュリティ対策は万全である必要があります。選ぶ際には、セキュリティに関する技術的な情報や方針を確認し、運用面でも情報の管理やアクセス権限の設定などが適切に行えるかをチェックする必要があります。
5.全体的な費用対効果を考慮する
電子カルテシステムを導入するには初期費用とランニングコストが必要です。製品によっては、定期的なメンテナンスやアップデートを必要としてランニングコストが高くなってしまうこともあれば、自動的なアップデートやAIの活用でランニングコストや追加費用を抑えられるものもあります。
また、選ぶ際には全体的なコスト対効果を考慮する必要があります。ただし、コストが低いだけでなく、適切な機能やサポート体制が整っているものを選ぶことで、適切な医療を提供するための効果的なツールとなります。長期的な視野での導入を見据え、将来のアップデートやカスタマイズの可能性も検討することで、より効率的で有用なシステムを導入することができます。
6.長期的な視野での導入を見据え、将来のアップデートやカスタマイズの可能性も検討する
電子カルテの導入にあたっては、将来的な運用やメンテナンスについても考慮することが重要です。特に、長期的な利用を見据えて導入を行う場合には、システムのアップデートやカスタマイズが必要になる可能性があるため、導入前にシステム提供会社のサポート体制やアフターサポートの内容を確認することが重要です。
また、将来的に必要になる機能やデータの取り扱いについても考慮することで、システムの運用やメンテナンスの負担を軽減することができます。より長期的な視野でシステムを選定することで、より効果的な電子カルテの運用が可能になるでしょう。
7.対応しているデバイスを考慮する
PCのみでしか利用できない製品もありますが、訪問診療やチームの連携が必要になる場合はタブレット端末やスマートフォンでもシステムが利用できる製品をおすすめします。また、タブレット端末に対応した電子カルテであれば、タッチペンや指で簡単にシューマや手書きによる記録が可能です。
8.システムとの連携を確認する
厚生労働省により様々な科目や業務に標準として基準が設けられていて、自分たちの必要としている業務と標準化されたシステムの連携があれば適する製品かどうか見極めることが可能です。
9.専門分野に対応しているか確認する
レディースクリニックや歯科医院のような特別な診療内容を取り扱っている場合などは、それらに適している製品を選ぶことが重要です。電子カルテの中には、病名から合併症や関連症状などを自動的に引き出してくれる機能が備わっているものもあります。単科施設の場合は専門領域に特化した製品もチェックしましょう。
おすすめの電子カルテ比較22選
製品のおすすめポイント
- 予約管理と顧客情報を同時に記録管理。顧客管理の入力項目は自由自在に
- 予約管理とともに顧客管理を一つのシステムで
- 直感的で効率的な予約システム、顧客管理の未来を創るResKa
- 単独店舗だけではなく、複数店舗もラクラク管理
製品のおすすめポイント
- 完全自動の「リアルタイム予約」機能で、予約枠を最大化!売上UPに貢献
- 予約~決済まで、スムーズな顧客体験で満足度&リピート率向上
- 業務効率化によるコスト削減とスタッフモチベーション向上を両立
製品のおすすめポイント
- HPからでもLINEからでも受け付けが可能なWeb予約
- 部屋やスタッフの空き状況をカレンダーから簡単確認
- 問診票の記入が患者様のスマホで完結、情報の連動も自動でスムーズに
- カレンダーから直接カルテを作成、診療の記録も簡単確認
- ダッシュボードで来院者数や施術回数を可視化
製品のおすすめポイント
- ファイリングや画像ビュワーを使用可能です
- 各診断装置とのシームレスな連携とタブレット端末
- 長年にわたる歴史・実績と診療所の効率的な運用のサポート
製品のおすすめポイント
- パソコンに不慣れな方でも簡単にカルテの操作が可能
- システムの導入・運用のトータルコスト(TCO)の削減
- 定期的なバージョンアップで、常に最新バージョンの電子カルテ
製品のおすすめポイント
- 日々のカルテ記入をラクに、AI自動学習機能で入力時間を80%削減
- 院内システム連携をラクに、iPadやスマホでも使える予約や会計システムとの連携
- コスト削減で経営をラクに、15年間で約1,000万円 コストを削減
製品のおすすめポイント
- 訪問診療・グループ医院あらゆる診療スタイルに対応
- 使い方に悩まない「見やすいカルテ」を徹底追及
- 開業・経営サポートベストな連携機器をご提案
製品のおすすめポイント
- 病院シェアNo.1電子カルテの操作性と柔軟性を継承
- 地域包括ケアや未来医療に向けて介護システム連携
- トータルコスト削減を意識したシステム構成
製品のおすすめポイント
- スムーズな導入を実現するために、時代にあったサービスを提供
- 病院形態に合わせて、必要なサービスを必要なだけ
- 安全なクラウド基盤、高度なセキュリティ対策により止まらない運用を実現
- 新たな診療スタイル、患者サービス向上を後押しするICTサービス
製品のおすすめポイント
- カルテが見やすく、情報が探しやすい、記載しやすい
- 日々の診療で蓄積された情報を明日の診療、病院経営に活用
- システム運用管理をダイナミックに革新、停まらず、待たず、円滑に業務を開始
製品のおすすめポイント
- いつでも、どこでも、だれでも。blancの目指すカタチ
- 時代に求められる遠隔診療、在宅ワーク クラウドカルテで早期実現を
- 超高齢社会でニーズが高まる訪問医療クラウドカルテの出番です
製品のおすすめポイント
- お客様のニーズに合わせてシステム環境の提案
- 戸惑うことなく使いこなせるよう指導 教育 事前レクチャー
- インストラクターによる立会い補足フォロー
製品のおすすめポイント
- カルテや医事文書の作成・送信がラクラクです
- 外部連携機能により、院内、院外との情報共有がラクラクです
- 請求業務もまとめて一括、ラクラク自動処理
- 地図・ルート表示など便利機能も満載、コスパ良好
製品のおすすめポイント
- 手書き入力や画面タッチによる簡単・シンプルな操作
- カルテを俯瞰的に見るタイムライン機能!臨床経過が一目瞭然
- 外部システム連携など豊富な診療支援機能の軟な組み合わせが可能
製品のおすすめポイント
- 使い慣れているカルテ2号紙をイメージした画面構成
- 他社システムとの連携で情報を一元化できます
- 医療・介護間の情報共有でさらに利便性向上
製品のおすすめポイント
- 医療安全をサポートするための工夫が詰まっています
- 様々な機能により医療現場の皆様の業務をご支援
- 視覚的にとらえる機能を搭載するなど、診療データをより有用にご活用
製品のおすすめポイント
- 併設老健施設、在宅系サービスとの診療連携を実現可能
- 各部門での入力作業を軽減するため、部門システム間で共通利用可能
- 選択方式でのカルテ記載や、ペンタブレット、音声入力等の多彩な入力方法
製品のおすすめポイント
- 日医標準レセプトソフトと連携する電子カルテ
- 中小病院まで対応する優れた機能性とカスタマイズが可能
- 画像ファイリング機能が標準装備されています
製品のおすすめポイント
- 電子カルテの導入で真の診療業務を効率化できます
- 単純事務作業や消耗品の経費の削減できます
- GR制度により、契約期間・ハード・ソフトを自由に選択・変更
製品のおすすめポイント
- オールインワンパッケージ化、最小限のコストで最適なシステムを実現
- Webベースシステムオープンプラットフォーム
- 医療スタッフ全員で患者情報を共有できるから医療の質がもっと高く
製品のおすすめポイント
- 低コストで手軽に導入可能なWebベースシステム
- 見たい情報をいつでも容易に参照できる「アシストビュー機能」搭載
- お客さまの用途やお好みに合わせて、選べる医事会計システム
製品のおすすめポイント
- クラウド型サービスでコスト・リスクを軽減します
- 端末選びや院外利用の自由度が大幅にアップ
- 堅牢なデータセンタで情報を管理で、安全に保存
- 運用専任者による手厚いサポートと運用開始後のアフターサービス
製品のおすすめポイント
- クラウド型電子カルテの使いやすさを追求しました
- 高度な連携によりクリニック内の業務効率を向上
- “安心・安全”な電子カルテを支える取り組みと体制
製品のおすすめポイント
- ヒューマンエラーを防ぐ安心の入力アシスト機能を搭載
- レセコン一体型×レセプトチェックシステム標準搭載
- 電子カルテを中心にさまざまなサービス・機器と連携
電子カルテを導入するメリット5つ
電子カルテを導入することで以下のメリットが得られます。本章では、電子カルテのメリットについて具体的に解説します。
- 情報共有や連携が容易になる
- 紙のカルテに比べて情報管理が容易になる
- 診療情報の正確性が向上され、医療ミスの防止につながる
- 医療費の削減や診療効率の向上が期待できる
- 患者の利便性が向上する
1.情報共有や連携が容易になる
電子カルテは、医療機関内で複数の医療従事者が共同で患者の情報を参照できるようになります。これにより、治療の効率化や医療ミスの防止につながります。
2.紙のカルテに比べて情報管理が容易になる
紙のカルテは、情報の書き換えや管理に手間がかかり、ヒューマンエラーによるミスも発生しやすいものでした。しかし、電子カルテでは情報の取得や管理が容易になるため、情報漏洩やヒューマンエラーのリスクを大幅に軽減することができます。
3.診療情報の正確性が向上され、医療ミスの防止につながる
電子カルテは、紙のカルテに比べて正確で緻密な情報を提供することができ、医療従事者はより正確な情報をもとに診療を行うことが可能になります。
例えば、医師や看護師が手書きでカルテを記入する場合、文字の読み間違いや書き漏れ、書き間違いが発生する可能性がありますが、電子カルテを利用することで情報の正確性を高めることができます。また、薬剤の重複投与やアレルギー反応などを事前にチェックすることができ、医療ミスの防止につながります。
4.医療費の削減や診療効率の向上が期待できる
電子カルテは、診療情報をデジタル化することで、医療現場で発生するコストを削減することができます。情報の検索や共有が迅速に行えるため、診療に要する時間や手間が減少することで、医療費の削減や診療効率の向上が期待できます。
5.患者の利便性が向上する
電子カルテによって、患者の利便性が向上するというメリットがあります。例えば、患者は自身のカルテ情報を病院に持参する必要がなくなります。
また、複数の病院で受診する場合でも、過去の診療履歴や検査結果が共有されるため、検査の重複や手間を減らすことができます。さらに、診療情報に関する疑問や質問があれば、医師に直接尋ねることもできます。これらの利点により、患者のストレスや不安を軽減し、より質の高い医療サービスが提供されることが期待されています。
クラウド型電子カルテのメリット5つ
昨今ではクラウド型の電子カルテを導入する医院が増えています。本章では、クラウド型電子カルテのメリットについて解説します。
- オンラインで利用可能でハードウェアやソフトウェアのインストールが不要になる
- システム管理業務は提供会社が行うため、医療機関の負担が軽減される
- 複数の医療機関で情報共有が可能で患者自身も閲覧できる
- 医療機関は利用料のみで、ハードウェア購入やメンテナンス、セキュリティコストを軽減できる
- システムの共通利用でカルテを共通化し、医療の連携性が向上する
1.オンラインで利用可能でハードウェアやソフトウェアのインストールが不要になる
クラウド型電子カルテの最大の特徴は、データのセキュリティや可用性に優れていることです。専用のサーバーにデータを保存するため、PCやサーバーの故障や災害によるデータ消失のリスクが低くなります。また、多くのクラウド型電子カルテは、暗号化や二段階認証などのセキュリティ機能が充実しているため、外部からの不正アクセスを防ぎます。
2.システム管理業務は提供会社が行うため、医療機関の負担が軽減される
医療機関内の異なる部署や医療機関間でのデータの共有がスムーズに行えます。これにより、患者のデータを迅速かつ正確に共有できるため、医療の質の向上につながるでしょう。
3.複数の医療機関で情報共有が可能で患者自身も閲覧できる
データのバックアップやアップデートなどの管理業務をユーザーが行う必要がなく、サービス提供側で自動的に行われるため手間がかかりません。また、データの保存容量や利用者数の増加に対応するため柔軟なスケールアップが可能です。
4.医療機関は利用料のみで、ハードウェア購入やメンテナンス、セキュリティコストを軽減できる
クラウド型電子カルテは、医療機関がシステム利用料のみを支払うため、ハードウェアの購入やメンテナンス、セキュリティ対策などのコストが軽減されます。クラウド上でデータを保管するため、自社でサーバーを保有する必要がなくなり、医療機関は設備投資を最小限に抑えられます。また、システムのアップデートやバージョンアップなどもクラウド側で行われるため、医療機関側での手間が省けます。
5.システムの共通利用でカルテを共通化し、医療の連携性が向上する
複数の医療機関が同じクラウド型電子カルテシステムを利用することで、カルテの共通化が図れ、医療の連携性が向上します。医療情報の共有化により診療所や病院の移動、または地域の診療体制の連携がスムーズになり、医師や看護師、患者の負担が軽減されます。また、遠隔診療の増加に伴い、患者が異なる医療機関で診察を受けた場合でも、過去の医療データを共有できるため、医療の質が向上します。
電子カルテのデメリット4つ
電子カルテには医療業務を効率化するための様々なメリットがありますが、デメリットも存在します。本章では、電子カルテのデメリットについて解説しますので、導入前に確認しましょう。
- システム障害が発生すると情報にアクセスできなくなることがある
- セキュリティ上のリスクがある
- 使い慣れていないと入力作業に時間がかかる場合がある
- 医師の診療内容が端的に表現されない場合がある
1.システム障害が発生すると情報にアクセスできなくなることがある
電子カルテを管理するシステムがクラッシュした場合や、ハッキング被害に遭った場合などのシステム障害が発生すると情報にアクセスできなくなることがあります。システム障害が発生すると、患者の情報にアクセスできなくなり、適切な診療を行うことができなくなる可能性があります。このような場合、バックアップシステムを設けるなど、事前に対策を講じることが必要です。
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【2023最新】バックアップソフトのおすすめ10選|フリーソフトも紹介
2.セキュリティ上のリスクがある
電子カルテには、患者の個人情報や医療情報が含まれており、万が一、不正アクセスや情報漏洩が起こった場合、大きな問題につながります。電子カルテを適切に保護するためには、強固なセキュリティ対策を講じる必要があります。医療従事者は、パスワードの適切な管理や、セキュリティソフトの導入などにより、患者情報を守る責任を負っています。
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【2023】セキュリティソフト11選を徹底比較|性能・価格・軽さで選ぶ
3.使い慣れていないと入力作業に時間がかかる場合がある
電子カルテは、テンプレート化された入力フォームを使用することが一般的で、使い慣れていない場合は病歴や検査結果などの詳細な情報を入力するのに時間がかかることがあります。また、入力の誤りが発生することもあるため、操作性の良いシステムを導入することや入力ミスを防ぐための対策が必要となります。
4.医師の診療内容が端的に表現されない場合がある
カルテの入力画面には、あらかじめ決められた項目が表示され、医師はそれに基づいて診療内容を記録します。しかし、このようなテンプレートによって、医師が診療の詳細や臨床的な思考プロセスを十分に表現できない場合があることが指摘されています。正確な診療履歴や診断に必要な情報が抜け漏れする恐れがあるため、医師側で注意が必要です。
職種別に活用できる電子カルテの主な機能
電子カルテシステムを利用するのは医師だけではありません。看護師や薬剤師、医療事務を担う受付スタッフなども利用します。そのため、電子カルテ内でも職種別の業務に対応した機能が付随していることが多いです。
- 医師
- 看護師
- 薬剤師
- 医療事務
医師
- 検査結果レポート
- カルテへの手書き・シェーマ入力
検査結果をスキャンなどする必要もなく、カルテにデータとして保存することができます。また、電子カルテは紙と同様に、カルテに図を入れたり直接ペンで記入したりすることが可能なため、所見などを後から記録することができます。
看護師
- アセスメント作成
- 看護実績入力
アセスメントの作成では患者分析・優先度の決定をシステムが補助することや、テンプレートに入れ込むことで余った時間を他の業務に充てることができます。また、バイタル測定やケア業務などをシステムに入力することで自動的に医師に共有されるため、患者の急変対応にも素早く動くことが可能です。
薬剤師
- 薬剤情報の提供
- 服薬履歴の管理
医師からの処方指示と患者の服薬履歴を照らし合わせて、禁忌や適性を確認することができます。また、ジェネリック医薬品の提案なども電子カルテから確認できるだけでなく、同じシステムを利用することで医師との連携もスムーズになるでしょう。
医療事務
- 日医標準レセプトソフトとの連携
- 診療予約スケジュール管理
内閣府は医療情報の標準化を普及させるために、厚生労働標準規格を設けています。医療事務における標準化といえば、日本医師会標準レセプトソフト(通称:日レセ)です。電子カルテの製品内に日レセが標準装備されているものもあれば、連携というかたちで備わっているものもあります。また、診療予約を受け付ける際にダブルブッキングがないように、システムが管理してくれるので負担軽減が可能です。
電子カルテの導入や利用する際の注意点5つ
電子カルテを導入する前に注意点を確認しましょう。本章では、電子カルテの導入や利用する際の注意点について解説します。
- 導入前に十分検討する
- セキュリティ対策や情報管理方針を確認する
- 医療現場の業務フローに合わせたカスタマイズが必要
- 医療スタッフのトレーニングや教育に力を入れる
- 電子カルテの導入後も運用や改善に向けた取り組みが必要
1.導入前に十分検討する
電子カルテ導入前には、医療現場の業務内容や目的に合わせて、導入計画を十分に立てる必要があります。システムの機能や利用料金、運用管理方法、スタッフへのトレーニング、データの移行方法なども検討するとよいでしょう。
2.セキュリティ対策や情報管理方針を確認する
電子カルテは医療機関の患者情報を管理するため、情報漏洩や不正アクセスのリスクがあります。選定するシステムのセキュリティ対策や情報管理方針をしっかり確認し、導入前に適切な情報セキュリティ対策を整えることが必要です。
3.医療現場の業務フローに合わせたカスタマイズが必要
電子カルテを導入する際には、医療現場の業務フローに合わせたカスタマイズが必要です。カルテの情報入力項目や順序、表示方法などを医療現場の要望に沿ってカスタマイズすることで、スムーズな運用が可能となります。しかし、過度なカスタマイズはシステムの利便性を低下させることがあるため、慎重に検討する必要があります。
4.医療スタッフのトレーニングや教育に力を入れる
電子カルテの導入にあたって、医療スタッフに適切なトレーニングと教育を行うことが重要であることを意味します。操作方法やデータ入力の方法、システムの利用方法などを正しく理解し、適切に利用することが必要です。
5.電子カルテの導入後も運用や改善に向けた取り組みが必要
電子カルテの導入だけでなく、運用や改善に向けた取り組みが必要であることを示します。例えば、システムの障害対応やデータのバックアップ、医療スタッフからのフィードバックをもとにしたシステムの改善などが必要です。運用や改善に向けた取り組みを行うことで、より効率的で正確な医療が提供できるようになります。
紙のカルテを電子化する際の注意点5つ
紙のカルテを電子カルテに移行する際は注意すべきことがあります。本章では、紙のカルテを電子化する際の注意点について解説します。
- データの整理と移行を事前に計画する
- 紙カルテをデジタル化して移行作業をスムーズに
- 移行前にバックアップを取ってデータの損失を防止
- 医療スタッフにシステムの使い方を十分に教育する
- 紙カルテの参照時は保管場所と参照方法を明確に
1.データの整理と移行を事前に計画する
紙のカルテから電子カルテへ移行する場合、データの整理と移行を事前に計画することが重要です。過去のカルテ情報をどのように移行するか、どのようなフォーマットでデータを整理するか、事前に具体的な計画を立てる必要があります。移行作業中にデータの混乱や欠損が生じないよう、細心の注意を払って作業を進めることが重要です。
2.紙カルテをデジタル化して移行作業をスムーズに
システム導入前に紙のカルテの情報をデジタル化することで、移行作業をスムーズに進めることができます。具体的には、スキャナーを使ってデータをデジタル化するか、専用のデジタル化サービスを利用するなど効率的なデジタル化手段を選択することが重要です。
3.移行前にバックアップを取ってデータの損失を防止
紙のカルテから電子カルテへの移行作業では、データのバックアップも重要なポイントです。導入前にデータのバックアップを取ることで、移行時にデータが失われるリスクを軽減することができます。また、移行作業後も定期的にバックアップを取ることで、データの安全性を確保し、万が一の際にも迅速な対応が可能となります。
4.医療スタッフにシステムの使い方を十分に教育する
電子カルテへの移行に伴い、医療スタッフは新たなシステムの使い方を学ぶ必要があります。十分なトレーニングが行われることで、移行後もスムーズにシステムを活用することができます。そのため、移行計画にトレーニングプログラムを含めることが重要です。また、教育プログラムは医療スタッフの役割や職務に合わせてカスタマイズすることで、効率的なトレーニングを実現できます。
5.紙カルテの参照時は保管場所と参照方法を明確に
移行後も紙のカルテを参照する必要がある場合は、保管場所や参照方法を明確にすることが重要です。情報の取り違えや紛失を防止するため、紙のカルテと電子カルテの情報を紐づけることで、必要な情報を正確に取得することができます。また、紙のカルテは適切な場所に保管され、必要な時に素早くアクセスできるようにしておくことが重要です。さらに、紙のカルテの情報を電子化することで、情報管理の効率化や医療スタッフの負担軽減につながります。
電子カルテの普及率
電子カルテのシェアや普及率については、医療現場のデジタル化の進展に伴い、年々拡大している傾向にあります。厚生労働省によると、2020年度時点で、療機関における電子カルテの普及率は一般病院で57.2%、一般診療所においては49.9%となっています。病床規模別の普及率では、400床以上は91.2%、200~399床は74.8%、200床未満が48.8%となっています。
また、電子カルテのシェアについてもシステム提供会社ごとに異なりますが、複数の大手システム提供会社が存在し、競争が激化している状況です。今後も、デジタル化の進展に伴い、電子カルテのシェアや普及率は拡大していくことが予想されます。
電子カルテの使い方
電子カルテの使い方は、医療スタッフが専用の端末やパソコンを使ってアクセスすることが一般的です。まず、正確な患者情報を入力し、過去の診療記録や検査結果を確認します。その後、診断結果や処方箋、指示などを入力してカルテを更新します。また、画像や動画などのデータもカルテに保存することができます。
注意すべき点として、患者のプライバシーに配慮し、適切なアクセス制限を設けることが必要です。また、入力ミスやシステムの不具合に対する対策も必要です。適切な使い方をマスターするためには、研修やトレーニングが必要です。
電子カルテを使いこなす方法
電子カルテを使いこなすためには、まず基本的な操作方法をマスターすることが必要です。また、カスタマイズ機能や便利なショートカットキーなどの機能を利用することで、より効率的にデータを入力・閲覧することが可能となります。さらに、医療現場では常に情報がアップデートされているため、常に最新の知識を身につけることも重要です。
電子カルテに保存されたデータを適切に管理することで、医療の質を向上することができます。最後に、安全性を確保するために、パスワードの定期変更やセキュリティ対策の徹底などにも注意が必要です。
カルテの管理を効率化するには電子カルテの導入が必須
本記事では、医療現場における電子カルテの導入から移行における注意点などを紹介しました。電子カルテの導入には、システムの選定や医療スタッフのトレーニング、運用や改善に向けた取り組みが必要です。
また、保存期間や保存方法にも注意が必要であり、法令に基づく保存期間の確認や定期的なバックアップ、データの暗号化が大切です。これらの点に留意することで、医療現場での電子カルテの運用をスムーズかつ安全に行うことができます。