データ消去ソフトの必要性

ご存じではあると思いますが、通常の手順でファイルを消去したりフォーマット(初期化)を行ったりしてもデータは完全に消えるわけではありません。PC上でデータを消去しても、画面上でデータが消去されるだけで、物理的な記憶媒体にはデータが残っています。そのため、個人であっても復元ソフトを使えば容易にデータを復元できてしまいます。もちろん、誤って大切なデータを消去してしまった場合にはそれで助かることもあります。

便利な復元ソフトですが、企業の中古PCであろうものを狙って購入し復元を行い、機密情報を盗み出す手口が存在します。

そういったリスクがある以上、企業としては完全なデータ消去を行うことが社会的責任を果たす上で大変重要となります。

データ消去ソフトの選定ポイント7つ

PCのデータを完全に消去するなら、とりあえずデータ消去ソフトを用意すれば良いというわけではなく、製品ごとにそれぞれ性能の良し悪し長所短所、さらに対応範囲の違いなど選ぶポイントはいくつかあります。

ここでは法人向けに利用シーンを想定して必要な性能の基準と対応範囲、データ消去が行われるケースから選び方を紹介していきます。

 

  • 消去レベルの高さと処理時間を方式別で選ぶ
  • 対応しているOSで選ぶ
  • 複数台に対応できるかで選ぶ
  • 外部機器のデータ消去もできるかで選ぶ
  • CDブート機能で選ぶ
  • ログ機能やスケジューリング機能などプラスαで選ぶ
  • 消去できる範囲で選ぶ

1.消去レベルの高さと処理時間を方式別で選ぶ

この消去レベルがデータ消去ソフトを選ぶうえで最も重要となります。消去レベルはいくつかの方式によって規格化され、復元の難しさによってグレード分けされています。基本的にはデータを上書きする回数が多ければ多いほど復元が困難になり、その代わり消去にかかる時間が増えていきます。

また、HDDは磁気によってデータが記録されますが、一度上書きしただけではその磁気が微量に残ってしまい、そこを辿っていけばデータを復元できてしまうとされています。しかし、近年のHDDは記録密度が上がっており、一度の上書きでも残留磁気を読み取れなくなると言われています。

ここでは主な規格4つとそれらをどのような基準で選ぶべきか紹介します。

ゼロライト方式

データ領域をゼロ(0x00)で上書きします。ゼロライト後はソフトウェアを使用したデータ復元は不可能です。残留磁気を読み取る装置で復元される可能性があります。

出典:全16種類のデータ消去方式 | DiskDeleter | ライセンス数無制限のSSD・HDDデータ消去ソフト

 

通常の従業員が利用するようなPCである場合や、社外には出さずに他の従業員に貸与する場合であればこのゼロライト方式と下記のランダムライト方式でも十分でしょう。劣化などによって社内PCを一斉に入れ替えるようなケースであれば処理時間を短縮できることもメリットになります。

また、近年のHDDであれば1回の上書きでも十分と言われているため、企業にとって重大な機密である場合や大量の個人情報を含むなどといった場合を除けばこれらの方式を選んでも良いかもしれません。

ランダムライト方式

データ領域を乱数で上書きします。ランダムライト後はソフトウェアを使用したデータ復元は不可能です。残留磁気を読み取る装置で復元される可能性があります。

出典:全16種類のデータ消去方式 | DiskDeleter | ライセンス数無制限のSSD・HDDデータ消去ソフト

 

ゼロライト方式と同じく上書きによる消去となります。機密情報や重要データの削除には向きませんが、そのようなデータがないPCであればこの方式で十分と言えます。

DoD5220.22-M方式

ディスク全体の領域を最初にゼロ、次に0xff、乱数で上書きし、最後に書き込み検証を行います。国内企業・官公庁で、最も採用されている方式です。ソフトウェアの復元 および 残留磁気を読み取る装置で復元不可能です。

出典:全16種類のデータ消去方式 | DiskDeleter | ライセンス数無制限のSSD・HDDデータ消去ソフト

 

官公庁でも採用されているため、信頼性は申し分ありません。廃棄や社外に出すのであればこの方式を選ぶと安心です。もちろん上書きの回数は増えるため処理にも時間がかかります。

グートマン方式

ディスク全体の領域に対して最初に乱数を4回、その後固定値を27回、最後に乱数を4回、合計35回の上書きを行います。1996年にピーターグートマンによって紹介された方式です。ソフトウェアの復元 および 残留磁気を読み取る装置で復元不可能です。

出典:全16種類のデータ消去方式 | DiskDeleter | ライセンス数無制限のSSD・HDDデータ消去ソフト

 

復元最難関と呼べる方式ですが、実際に利用されるケースはほとんどありません。官公庁の基準をさらに越えて大量の上書き処理を行います。オーバースペックなうえに処理時間も相当にかかるため、どうしても心配で仕方がない場合か国家機密レベルの情報を消去する場合に利用すると良いでしょう。

2.対応しているOSで選ぶ

データ消去ソフトにも対応するOSに種類があります。Windowsに対応しているかMacに対応しているか、利用を想定されるPCのOSを確認しておきましょう。多くのソフトはWindowsに対応していますが、Macの場合は対応していないこともあり、OSのバージョンによっても古いものには対応していないことがあります。その逆も然り、まだソフトが最新のOSバージョンに対応していないこともあります。

3.複数台に対応できるかで選ぶ

データ消去ソフトの中にはソフト1つで1つのPCのみ消去できるものと、複数のPCを消去できるものがあります。

法人であれば対象とするPCの他にもデータ消去が必要なPCが出てくるかもしれないため、ストックとしてソフトを持っておきたい場合や、そもそも今回対象とするPCが複数台ある場合など、とにかく複数台に対応している方が都合が良いことの方が多いでしょう。

しかし、逆に法人の場合は台数制限がかかるといったソフトもあるため注意が必要です。

4.外部機器のデータ消去もできるかで選ぶ

機密情報はPC内臓のHDDだけでなく、外付けのHDDやSSD、USBメモリなどにも保存されます。それらにもデータ消去が対応しているソフトがあるため、外部機器も合わせて廃棄するのであれば重要なポイントです。もちろん、その外部機器をバックアップ用として残しておきたいのであればデータ消去は不要なので関係のない機能になります。

5.CDブート機能で選ぶ

PCを廃棄する理由として、PCの不具合は当然考えられます。ちょっとした不具合なら良いですが、OSの起動すらしないというケースもあるでしょう。そういった場合はHDDを取り出して別のPCに付け替えるといった作業が必要となりますが、CDブート機能があればCDドライブからOSを起動することができます。CDドライブがない場合はUSBブート機能もあるため確認しておきましょう。

また、これらの機能を利用すればOSごとデータ消去を行うことができます。

OSが起動しなくても情報を抜き出すことはできます。法人であれば、将来的なケースとしてOSが起動しないPCを廃棄する可能性も十分にあるため、備えあれば患いなしです。

6.ログ機能やスケジューリング機能などプラスαで選ぶ

データ消去ソフトの中には、データ消去のログを残せる機能や特定のフォルダ内をスケジューリングして定期的に消去できる機能、消去証明書を発行する機能などがあります。

法人の場合はセキュリティポリシーから上記のような機能が必要になることもあるでしょう。社内の規定やセキュリティ担当者を確認してみると良いです。

7.消去できる範囲で選ぶ

データの消去ができる範囲は製品によって異なってきます。PC内にある全てのデータを消去できる製品もあれば、ドライブデータや個人情報のファイルなどを指定して部分消去できる製品もあります。

データ消去ソフトはOSを含めた全データの消去に用いるのが一般的ですが、個人情報だけ消去してPCは再利用したい場合などは部分消去できる製品がおすすめです。個人情報などの重要情報を消去しておくことで情報漏えいを防げるでしょう。

データ消去ソフトおすすめ比較5選

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製品のおすすめポイント

  • 特許取得済みのSSD消去法を確立、証明の発行
  • 高いユーザビリティーで規格に合わせた消去が可能
  • 充実したレポーティングと、電子署名の発行ができる
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製品のおすすめポイント

  • 日本語表示でインストール不要の簡単操作、複数HDDデータ消去に対応
  • OSに囚われない、DVD-ROM一枚で完全消去
  • 「利用回数無制限」と「3ヵ月版」を使い分け可能
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製品のおすすめポイント

  • 確かな完全抹消能力、復元不可能な状態にする
  • 抹消後にクラウド上にレポートも自動生成、目で確認
  • 大量の抹消ログや抹消状況をクラウド管理
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製品のおすすめポイント

  • 簡単操作なので迷わず抹消でき、初心者でも安心
  • 業界最高水準のスピードで大容量でも安心して抹消
  • 6種類の抹消グレードで場合に応じた抹消が可能
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製品のおすすめポイント

  • 総務省のガイドライン、UEFI規格に対応
  • 利用回数無制限の画期的なラインセンス制度
  • 日本語表示のわかりやすい操作画面なので迷わない

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フリーソフトを利用しても問題ない?

データ消去ソフトにもフリーソフトは存在します。情報漏えいに関わるため、法人であればなるべく有料版を利用した方が良いですが、簡易的で構わないのであれば選択肢としてあり得るでしょう。

しかし、フリーソフトの場合は消去方式がゼロライトとランダムライトのみで消去レベルに不安があったり、消去に多くの時間がかかったりと性能が足りないこともあります。

また、ログ機能やスケジューリング機能といったプラスαの機能が備わっていないことはもちろん、操作が難しくPCに慣れていないと手間取ってしまうこともあるため玄人向きと言えます。

データ消去ソフトを使わずにデータを消去する方法はある?

ここまでで、データ消去ソフトを使うことで完全にデータを消去できることがわかったと思います。ただ、データ消去ソフトでしかデータの完全消去ができないのかというと、そういうわけではありません。本章では、データ消去ソフトを使う以外でデータを消去する方法について解説します。

 

  • 物理破壊
  • 磁気消去
  • 専門の業者に依頼する

物理破壊

物理破壊とは、ハードディスク(HDD)に穴をあけたり割ったりするなどで物理的に破壊し、データの読み込みや復元をできないようにする方法です。物理破壊ではデータを消去するというより、破壊によってデータを読み出せなくすることで情報漏えいを防ぎます。この方法は低コストで一番手っ取り早い方法とも言えます。

ただ、HDDは思いのほか頑丈で、破壊したつもりでも必要な部分が破壊できていなかったり、そもそも破壊が大変だったりという難しさがあります。さらに、HDDの破壊には危険が伴います。破壊によって破片が散乱することや有害物質が出る可能性もあるため、独自の方法で物理破壊を試みることはおすすめできません。

このことから、HDDを破壊するための専用機器であるクラッシャーを用いて、安全で確実な破壊を行えるとよいでしょう。物理破壊を代行する業者を活用することもおすすめですが、重要情報を人に預けることになるため、ちゃんと信頼できる業者を選ぶことが大切です。

磁気消去

磁気消去とは、消磁装置と呼ばれる専用の装置を用いて、強力な磁力を当てることで磁気データを破壊する方法です。磁気消去の仕組みは、S極とN極が複雑に並んで記録されている磁気データを強磁界にかけることでS極とN極を全て一定の向きに揃えてしまうため、データが消去され復元が不可能となります。

物理破壊よりも効率的に行えるため、大量のHDDを短時間で処理できます。しかし、SSDやUSBメモリ(フラッシュメモリ)などの磁気でデータを保存しない媒体はこの方法でデータを消去することができません。

また、この方法を素人が行うことは不可能と考えて良いですので、この方法を用いる場合は業者に依頼することになります。

専門の業者に依頼する

データの消去を承っている業者には、PC専門店やPCのサポート会社、家電量販店などが挙げられます。これらの業者はデータ消去の依頼が有料となります。しかし、PC本体を今後使う予定がなく、破棄してもいい場合は廃棄PCの回収業者に頼むことで、廃棄するPCのデータ消去を無料で行ってくれます。ただ、いくら業者とはいえ機密情報を扱ってもらうには信頼性の部分でリスクがあるため、法人として利用するのであれば慎重に選ぶようにしましょう。

消去したデータの情報漏えいを防ぐにはデータ消去ソフトの導入が必須

データ消去ソフトを導入することで、漏えいを防ぎたい重要情報を復元できないように消去することができます。 データを完全に消去し、安全にPCやメモリの破棄、譲渡、再利用などを行いたい場合はデータ消去ソフトの導入を検討してみてください。

データ消去ソフトの選定時は、消去したいデータにどれだけ重要な情報があるかをしっかりと確認し、消去レベルの高さを判断することが大切です。また、消去したい記憶媒体やOSに対応しているかなどの観点から選ぶといいでしょう。