ワークフローとは
ワークフローとは「業務の流れ」という意味があり、ある業務や活動などにおける「一連の作業や手続き」のことを指します。具体的な例をご紹介すると、経費を精算するための「経費精算業務」がこれにあてはまります。
1. 担当者から10万円の商品を購入したため請求書を作成する
2. 担当者の所属長が内容を確認し、請求内容を承認する
3. 経理部の担当者が内容を確認し、請求内容を承認する
4. 経理部の署長が内容を最終確認し、請求を承認、支払いを実行する
このように業務の流れを「ワークフロー」としてあらかじめ決めておくことによって、作業の抜け漏れを排除し、適切な担当者が承認することで業務を円滑かつミスなく処理を行うことが可能になります。
今回は経費精算業務を例に挙げて解説しましたが、その他にも承認が必要となる多くの業務をワークフロー化することで業務効率を向上させることが可能になります。
ワークフローシステムとは
ワークフローシステムとは先程解説したワークフローをWebやシステム上で申請から承認まで行うシステムのことを指します。ワークフローシステムは「電子承認システム」と呼ばれる場合もあります。
大きな特徴として、これまで承認作業を紙や口頭などで実施していたものをデジタル化することにより、承認作業がより効率的なものとなり、また紛失や作業漏れなどのミスを削減することが可能になることが挙げられます。
また、紙で管理をしていた場合、申請が多くなればなるほど、申請書の保管場所が必要となり、管理が大変になる傾向にありますが、全てデジタル化することによって管理スペースも必要なくなり、かつ過去の申請内容などを検索することができるため、導入によって大きなメリットをもたらします。
ワークフローシステムの代表的機能4選
ワークフローシステムの代表的な機能は以下の4つです。それぞれの機能を確認し、どのように作業効率化を実現できるか確認しましょう。
1.申請書類のフォーマット作成
申請に必要な各種書類のフォーマットを作成することが可能になります。もちろん申請を1から作成することも可能ですが、内容に過不足があった場合、作成者にとっても承認者にとっても負担になります。
申請書類のフォーマットをあらかじめ決めておくことで、必要な情報のみを入力し、チェックすることができるため、業務の効率化を図れます。
2.承認ルートの作成・設定
申請内容によって誰まで承認すべきか、条件分岐によってルートを設定することが可能です。また、先程のフォーマットを作成しておくことで、申請書によって承認者もあらかじめ決めておくことが可能になります。
申請の際に誰に承認してもらうべきなのか迷う必要がなくなり、スムーズに業務をすすめることが期待できます。
3.進捗状況の確認
申請がデジタル化されたことにより、現在申請がどこまで承認されているのか確認することが可能になります。
紙で申請する場合、最初に渡した担当者からどこまで進んだかを確認するには、1人ずつ聞いていく必要があります。自分が所属している所属長などには比較的状況を聞きやすいですが、他部署の課長などにはなかなか質問しづらいものです。ワークフローシステムはシステム上で現在の状況を確認することが可能なので、現在の状況をリアルタイムに確認することが可能です。
4.申請内容の整理や検索
申請内容をデジタル化することにより、過去の申請書を保管する必要が無くなり、また以前申請した内容を参考に申請書を作成する場合でも、検索機能を使って簡単に参照することが可能になります。
ワークフローを電子化するメリット6選
ワークフローシステムを使って、紙媒体からデジタル化することでどのようなメリットが期待できるのでしょうか。
具体的な例を挙げつつ、解説していきます。
1.各種申請業務の効率化
ワークフローシステムを導入することで各種申請業務の効率を高めることができます。理由としては各種申請業務がシステム上で完結できるようになるため、申請から承認までを迅速に進めることができます。具体的な例として、冒頭でもご紹介した「経費精算業務」をご紹介します。
紙媒体で経費精算業務を進めていると、記入後の書類の受け渡しが煩雑になってしまい、また承認作業がどこまで進んでいるのか不透明なため、進捗状況などの把握ができません。また、申請書の中身に不備がある場合でも、チェックは全て目視で行う必要がありますが、ミスを見落とす場合もあり、大きな問題に発展する可能性もあります。
ワークフローシステムを導入することで、承認作業は書類の受け渡しがシステム上で作業可能なため、書類の受け渡しが不要になり、紛失のリスクも0にすることが可能です。申請内容の自動チェック機能が搭載されている場合もあり、申請内容をシステムが自動で確認してくれます。目視で見落としてしまうミスも、システムの支援を受けることで、限りなく完璧な申請書を作成することが可能になります。
その他にも、過去の申請内容を参考にして新しく申請する場合、紙媒体の場合だと保管した書類の中から1つずつ探し出す必要があります。しかし、ワークフローシステムを導入すれば、検索機能を活用することで、素早く過去の申請内容を呼び出すことが可能になります。
ワークフローシステムは申請の簡易化だけでなく、過去の申請内容の確認など、様々なシーンで活用することができます。
2.決算時間の短縮
ワークフローシステムを導入することにより、決算時間を短縮することができます。
また、これは昨今のテレワークにおいても非常に有効な手段となります。
紙媒体での管理の場合、申請書は手渡しであったり、拠点が離れている場合には郵送などで送る必要がありますが、場合によっては担当者の手元に届くのに相当な時間が発生する可能性があります。また、申請書が現在どの担当者にあるのかを確認しないといけない場合、書類が流れるであろう担当者全てに確認する必要がありますが、それは大変な労力を要する作業であり、他部署の担当者にはなかなか質問しづらいことでしょう。
ワークフローシステムを導入することにより、申請はすべてデジタル化されるため、紙媒体での受け渡しは不要になります。現在テレワークを活用する機会が多くなっていますが、デジタルデータでのやり取りになれば、出社の必要もないため、現在の働き方にあった業務を実現することが可能になるでしょう。また、承認作業の進捗確認については、システムで全て確認することが可能です。どの担当者まで進んでいるか、リアルタイムで確認できるため、担当者全員に質問することなく、ターゲットを絞って連絡することが可能になります。
ワークフローシステムの導入は、今までの紙媒体でのやり取りからデジタル化することにより、申請者にとっても承認者にとっても効率的な業務を進めることが可能になります。
3.働き方の改善
ワークフローシステムを導入することで、働き方を大きく改善することが可能になります。
もし紙媒体で管理を進めている場合、書類の受け渡しは担当者が勤務時間内で、かつ比較的時間に余裕がある時に行われます。もちろん、担当者が席を外している場合や出張中、忙しい際には渡すことはできないでしょう。従来の方法では申請者および承認者がお互いに時間的余裕がある時にしか書類の受け渡しができないため、比較的限られた時間のみしか作業できないという欠点があります。
ワークフローシステムを導入すると、どのような環境改善に繋がるでしょうか。
申請者も承認者も、すきま時間などを有効活用して作業を進められる
申請は紙媒体からデジタルになるため、書類の受け渡しが不要になります。つまり、申請者は承認者の状況にとらわれることなく、24時間いつでも申請することが可能になります。これは承認者も同じことで、受け取るタイミングはいつでも良くなるため、承認者は自分の都合のいい時間に作業することができます。
すきま時間を有効に活用することで、時間にとらわれることの無い、比較的自由な作業を可能にできます。
モバイル端末対応の場合、自宅や出張先からでも申請・承認作業が可能に
もしワークフローシステムがスマートフォンなどのデバイスからも作業可能な場合、申請や承認は会社以外でも行うことが可能になります。出張中など、従来は対応ができない状況であっても、インターネットが繋がっている環境であれば、場所を問わず作業が可能になります。もちろん緊急時の申請や承認も可能になります。
デジタル化を進めることで、このように場所にとらわれることなく、今までできなかった時間でも作業可能になるため、更なる業務の円滑性や効率化の向上を図ることができます。
4.内部統制、コンプライアンスの強化
ワークフローシステムの導入によって内部統制やコンプライアンスの強化も可能になります。これは具体的にどのような解決方法になるのか、解説します。
内部統制が上手く働いていない場合、コンプライアンス違反に繋がる恐れも
「内部統制」とは、組織内部に適用されるルールや業務プロセスを整備し、適正に運用することを指します。具体的な例を挙げると、備品を購入する場合に10万円までであれば課長決裁とするが、10万円を超える場合、部長決裁が必要となる、など挙げられます。この場合、10万円を超える備品を課長決裁で通してしまった場合、問題となってしまいます。
このように明確に会社のルールとして明確に定められていたとしても、これを全社員が正確に把握していることはあまりないでしょう。おそらく決裁を日常行わない社員などはあまり認識していない可能性が高いです。そのため、15万円の備品を誤って課長決裁で進めてしまう可能性は低くありません。
また、このように内部統制が上手くいっておらず、業務プロセスが正しく機能していない場合、コンプライアンス違反(法令違反)に繋がる可能性も考えられ、大きな問題へと発展する場合もあります。
申請や承認のルールを明確にすることで「内部統制」を強化できる
ではワークフローシステムを活用することでどのような問題を解決できるでしょうか。
先程ご紹介した備品の購入額による決裁先の変更ですが、これはワークフローシステムの活用で簡単に解決できます。簡単な例を挙げると、申請文書ごとにあらかじめ決裁ルートを定めておきます。(担当者→係長→課長など)また、決裁金額に応じて決裁ルートを自動的に変更するなどの対策を講じておけば、事前にミスを防止することができます。
人為的なミスについては、申請者や承認者によりチェックを厳しく要求するのではなく、システムを上手く活用することにより、業務がより簡易的かつ円滑に進むようになります。
また、ミスを無くしていくことは、コンプライアンス遵守にも繋がります。ワークフローシステムは業務効率を上げるためのツールだけでなく、ミスを減らしてコンプライアンスを強化することも可能であり、企業によってはコンプライアンス強化のためにワークフローシステムを導入する例もあります。
5.安心安全なペーパーレス
ワークフローシステムを導入することで、申請書はデジタル化することができ、ペーパーレスに繋がります。これは環境的にも、会社の紙資源削減による予算的な部分においても良い働きかけとなりますが、それ以外にもどのようなメリットがあるでしょうか。
ペーパーレス化により、更なる業務効率化を図れる
先程から例に挙げて紹介している「経費精算業務」ですが、ワークフローシステムはこれ以外の申請書や報告書の作成も可能です。
今まで課内で作成していた簡単な書類も全てペーパーレス化するとどうなるでしょうか。デジタル化することで作業が簡易的になるほか、場所にとらわれない作業、そして作成文書の検索など、あらゆる業務効率化に繋がる効果があります。
社内ではどちらかと言えば大きな決済処理よりも、日々の小さな申請や申告が多くあります。それらをデジタル化することの効果は非常に大きいと言えます。ワークフローシステムを社内で方法を共有して使用していくことで、紙の文書をボトムアップでどんどん電子化されていくでしょう。
また、デジタルデータは他の業務においてもデータのやり取りが簡単にできるようになるため、申請・承認業務以外の業務効率を上げることが可能になります。
在宅勤務やサテライト勤務でもセキュリティを確保できる
ペーパーレス化によって得られる大きな恩恵は「場所に縛られない」ことにあるでしょう。働き方改革を進めるにあたり、在宅勤務などのリモート勤務は大きな通過点となります。しかし、現状は書類を渡すため、ハンコをもらうためだけに出社する必要があるなど、まだまだ多くの問題点を抱えています。また、書類の持ち出し時に紛失や盗難のリスクもあるため、重要な書類であればあるほど慎重な取り扱いが必要になってきます。
では、ワークフローシステムを導入してペーパーレス化するとどうなるでしょうか。
ワークフローシステムはもちろん紙などは使用しません。承認の証でもあるハンコはワークフローシステムの承認作業によって代替することが可能です。よってわざわざハンコをもらうためだけに出社するなどというケースを無くすことができます。また、重要な書類も持ち出す必要がなくなるため、紛失や盗難の恐れもありません。
なお、ワークフローシステムは提供する会社が強固なセキュリティを用意していることが多いです。例を挙げると以下のような対策を実施していることが多いです。
- 権限の管理ができるようになっており、特定の人物しか文書の変更ができない
- 操作や閲覧した場合に記録が履歴として残り、問題発生時にも特定が可能
その他にも様々なセキュリティ対策を講じていることが多いですが、基本的には安心して利用できる環境が整っています。
6.データの管理と検索
ワークフローシステムの導入により、作成した申請書のデータ管理や検索が可能になります。
紙媒体で申請書を管理している場合、申請書の件数は把握できても、どのような傾向の申請が多いのかなど、データ分析や管理は非常に難しいです。また、申請書が少ないうちは紙でも探すことはあまり難しくないですが、1000枚ほどにもなれば、仮にインデックスなどを付けて管理していてもかなり探すのに時間を要してしまいます。
これをワークフローシステムを活用することでどのように改善することができるでしょうか。
まず、申請書の件数はシステムですぐに把握することができ、日時や内容、カテゴリなどについても分けることが可能になります。抽出、集計したデータから、今後の申請方法の改善や、不要になっている申請の整理など、様々なことが改善できるようになります。
また、申請書の検索についてもシステムは簡単に実施することができます。枚数によることなく、データが残っている申請内容は閲覧が可能です。新しく申請をするにあたって、よく過去の申請内容を参考に記入することが多いと思いますが、ワークフローシステムを活用すれば簡単に参照でき、記入時の参考にできます。
このようにワークフローシステムはデータ活用することで、更なる業務効率を高めることが可能になります。
ワークフローシステムの比較一覧
製品のおすすめポイント
- シンプルなUIとメール・Slack通知により決裁をスピーディーに
- スマートフォンやタブレットに最適化され、どこでも業務を進行可能
- Google Workspaceと連携し、楽に運用できる
製品のおすすめポイント
- 入力フォームや承認ルートの設定も自由自在
- 分かりやすく多機能な申請で、業務を効率化
- 外出先からの承認が可能なマルチデバイス対応
製品のおすすめポイント
- 申請業務の効率化に必要な要素がすべて詰まったシステム
- 管理者の苦労を「作りやすさ」で解決します
- 変更に強いワークフロープラットフォームです
製品のおすすめポイント
- データセンター運用のプロが提供、だから万全のセキュリティ
- 大量の申請処理をインターネットで大幅に効率化できます
- 自動計算や選択入力で入力が効率的になりミスも削減します
製品のおすすめポイント
- AIが請求書を5秒で高精度のデータ化できます
- 承認も差し戻しもチャットアプリからできます
- データはバクラク請求書へ連携、「稟議システム」と「会計システム」の分断を解消
製品のおすすめポイント
- 利用中のExcelの稟議文書をそのまま使えます
- 申請シートへのデータ引用、任意のデータを任意のセルに設定
- ドキュメント(申請書、稟議書)の オフライン編集
製品のおすすめポイント
- 導入がかんたん。最短10分で設定が完了します。
- 使いやすい。問い合わせゼロを実現します。
- 圧倒的な機能。申請にとどまらない業務全体を効率化します。
製品のおすすめポイント
- 導入も運用もかんたんにでき、属人化のリスクを解消
- 業務プロセスの効率化により業務効率が飛躍的に向上
- ペーパーレスでコストカット、あらゆるコストを削減
製品のおすすめポイント
- ペーパーレスでいつでもどこでも申請・承認
- マウス操作だけでできるかんたん文書フォーム作成
- 複数言語に翻訳可能で、多言語対応のワークフローシステム
製品のおすすめポイント
- PCだけでなくスマートフォンやタブレットでも利用可能、自動通知機能で承認漏れなし
- テレワークや在宅勤務に対応、ペーパーレス化だけでなくコンプライアンスの強化も
- 申請フォームはExcelで作成可能、使い慣れたツールでデジタル化を推進
製品のおすすめポイント
- 多種多様なサンプルフォームを提供、小口旅費精算、物品購入申請が可能
- 申請フォームを簡単にカスタマイズ、ドキュメントを自動で保存
- 複雑な承認ルートも直感操作で作成可能、柔軟に対応でき、合議機能も搭載
製品のおすすめポイント
- 使いやすいUIで初期設定や申請書作成が簡単にできる
- 申請書のテンプレートは50種類以上、カスタマイズも可能
- スマートフォンでの利用に対応、いつでもどこでも利用できる
製品のおすすめポイント
- モバイル利用ができ、クラウド型なのでいつでもどこでも利用可能
- 申請や稟議書など基本機能以外にも、申請書をカスタマイズして幅広い業務に利用可能
- システムをペーパーレス化し、検索・追跡も楽、作業の自動化機能も
製品のおすすめポイント
- 簡単に素早く申請と承認が可能、操作に迷わない
- Dugong独自の機能により承認経路の設定が簡単にできる
- 社内のシステムとデータ連携し、手入力ゼロ、ミスもゼロに
製品のおすすめポイント
- 直感的に入力できるフォームで、複雑な組織構造を簡単に処理
- 管理ルールを統一し、社内の業務フローを強化
- 検証環境によるリスク回避と、強力なシステム連携で変化に強い
製品のおすすめポイント
- スマートフォン・タブレット対応でどこからでもワンクリック承認が可能
- 設備投資不要のクラウドサービスで圧倒的な費用対効果
- クラウドでありながら抜群のセキュリティ
製品のおすすめポイント
- 業務プロセスを可視化し、ルートの自動判定により承認作業を円滑に
- 内部統制ができるだけでなく、ペーパーレス化のメリットも
- 業務効率を継続的に改善し、働き方改革に貢献
大企業向けワークフローシステムの特徴
ワークフローシステムといっても、1つのシステムが全ての企業に合致するわけではありません。会社の規模や現在運用しているシステムを活用したもの、バックオフィスとも連携を取りたい場合など、要望は様々です。
まず大企業向けの場合ですが、従業員数が多いことによって部署が多数あったり、上長が複数人いるなど、組織が複雑化しているため、ワークフローも同じように複雑化してしまいます。
そのため、導入するワークフローシステムは複雑な申請、承認が可能で、柔軟に対応できるツールを選定する必要があります。また、海外に展開する場合は外国語に対応するなどの機能も必要になります。他にも、社員のマスタ管理がしやすいサービスであることも検討すべきでしょう。従業員数が多い場合、人事発令後にマスタ管理すると、短期間で変更が必要になってしまうため、管理者の負担が大きくなってしまいます。ワークフローシステムの一部には、マスタを事前変更しておき、決められた日付に一括変更することができるようなサービスも用意されている場合があります。
大企業がワークフローシステムを導入する場合は、以下のポイントを押さえる必要があります。
- 複雑な処理が可能で、柔軟に対応できる
- マスタ管理などが比較的柔軟に対応できる
- 外国語の対応があれば尚可
- 費用についてはある程度かかることを念頭に置いておく
ワークフローシステムの費用については、大企業向けになると高機能なものが多いため、どうしても価格が高くなってしまう傾向にあります。しかし、ここで低価格を重視してしまうと、機能が十分では無かったりしてしまい、導入しても十分に利用されず、結果として費用対効果の悪いシステムになってしまいます。
バランスを取るのはとても難しいことですが、ある程度費用がかかってしまうことを想定しておきましょう。
中小企業向けワークフローシステムの特徴
一方で中小企業の場合、従業員数が少ないことから申請や承認、回覧などがそれほど複雑に絡み合っていることはあまりなく、どちらかと言えば単純なワークフローの場合が多いです。しかし、それ故に申請は全て紙媒体で管理している場合が多く、導入効果は高いといえます。なお、費用についても高額なものを導入してしまうと、費用対効果が下がってしまうため、価格について注意する必要があります。
よって、中小企業が導入する場合、以下のポイントを押さえる必要があります。
- 申請書のサンプルが多数用意されている
- 操作が簡単で初心者へのサポートが充実している
- 費用があまり高額ではない
中小企業は先程も述べた通り、紙媒体で日々申請などを進めている場合が多く、いきなりワークフローシステムを活用して進めるというのは難しい場合があります。
特に年配の社員は操作方法について苦労する場面も少なくないでしょう。
ワークフローシステムのマニュアルやサポートセンターが充実していれば、操作面についての不安が軽減されます。また導入時に操作研修などを用意してくれる会社があれば、より安心して使い続けることができます。
代表的なワークフローシステム2タイプ
ワークフローシステムは大きく2つのタイプに分類できます。企業が現在導入しているワークフローシステムをもとにどちらのタイプがより適正かを判断しましょう。
1.Excelフォーム型のワークフローシステム
すでに申請書をExcelなどで作成している場合、また1からテンプレートを作成するのはとても手間がかかる作業になります。10個ほどのテンプレートを作り直すのであれば、さほど負担にはならないかもしれませんが、これを100個作り直さないといけないとなればどうでしょうか。おそらくワークフローシステムの導入をためらってしまうのではないでしょうか。
ワークフローシステムの中にはExcelで作成した申請書をそのままWeb申請フォームに変換することができるものがあります。もちろん、他のワークフローシステムと同様に決裁ルートなども決めることができます。
Excelフォーム型のワークフローシステムは以下のような企業におすすめします。
- 既にWordやExcelなどで申請書を大量に作成している
- 使い慣れたExcelを活用したままワークフローシステムを運用したい
このタイプのワークフローシステムは比較的テンプレートを作成するのが簡単な場合が多いです。初めてワークフローシステムを導入する企業にとってもおすすめです。
2.バックオフィス一体型ワークフローシステム
経費精算業務のワークフローのみではなく、勤怠管理など、他の業務もまとめて管理したい場合には、「バックオフィス一体型」のワークフローシステムがおすすめです。
このタイプのワークフローシステムは、提供会社によって機能が様々なため、一概にどのような機能があるというのは解説しづらいのですが、代表的なものとして以下のような機能が搭載されていることが多いです。
- 勤怠管理
- 工数管理
- 社内SNS
このように機能が非常に豊富なため、規模の大きな企業にもおすすめです。また、社内SNSやチャット機能など、連絡ツールがあれば社員同士の連携を取りやすくなるため、ワークフロー以外にも業務効率が上がる可能性があります。
バックオフィス一体型ワークフローシステムは以下のような企業におすすめします。
- ある程度の機能をまとめたい
- より社内で情報を共有できる環境を整えたい
3.グループウェア一体型ワークフローシステム
バックオフィス業務だけでなく、メールや社内SNS、カレンダー、掲示板機能など、様々な機能を搭載したワークフローシステムを検討している場合は「グループウェア一体型」のワークフローシステムがおすすめです。
グループウェアとは、社内ネットワークに接続されたユーザー同士で情報の交換や共有、スケジュール管理など、様々な機能が搭載されているソフトのことを指します。
グループウェア一体型の特徴は、ワークフロー以外の機能が多数搭載されていることです。様々なツールを使い分けており、煩雑に感じているのであれば、グループウェア一体型は非常におすすめです。
例えば、勤怠管理ではAというサービスを利用し、連絡ツールはBというサービスを利用しているとします。複数のシステムをそれぞれ運用すると、操作方法に違いがあったり、トラブル時に連絡先が異なるなど、運用面からすると複雑化してしまいます。
ツールを1つにまとめることによって運用が一本化できるため、管理者としても負担が軽減し、万が一トラブルが発生した場合でも、そのツールの会社に連絡すれば全て対応できるため、こちらも負担軽減が期待できます。
グループウェア一体型ワークフローシステムは以下のような企業におすすめします。
- バックオフィス一体型よりも更に機能が付属しているものを導入したい
- 現在複数のシステムを運用していて、機能を一本化したい
グループウェア一体型ワークフローシステムの注意点ですが、このタイプの製品はワークフローシステムをメインに作られていないことが多く、ワークフローシステム専用ソフトに比べると、若干機能が劣る場合があります。そのため、申請フォーム作成の柔軟性が低く、決裁ルートをあまり複雑化することができない場合があります。ワークフローシステムをメインで考えていて、グループウェア一体型を検討する場合は、ワークフローシステムの機能がどれほど充実しているか必ずチェックするようにしましょう。
ワークフローシステム導入の流れ
実際にワークフローシステムを導入することが決定した場合、どのようにワークフローシステムを導入すると良いでしょうか。
簡単にワークフローシステムの導入の流れを解説します。
1.ワークフローシステムを導入推進チームを作る
まずは、どの部署でワークフローシステムを運用するか決定し、その中から導入推進チームを結成します。この時チームメンバーはあまり多くいる場合、意思決定が難しくなるため、少数精鋭のメンバーを選びましょう。
2.ワークフローシステムを使用する業務を選定し、プロセスを確認する
ワークフローシステムを運用するといっても、まずはどの業務に適用するか決めておきましょう。本格導入後は、様々な業務に適用することになりますが、まずは一部業務のプロセスなどを明確にし、決裁ルートなどがどのようになっているのか確認しましょう。この時点で情報が収集できていないと、ワークフローシステムが上手く機能しない場合があるため、しっかり情報を集めておきましょう。
3.ワークフローシステムを選定し、導入する
先程の情報収集でどのような機能が必要なのか、ある程度明確にできれば、その要件からワークフローシステムを選定します。現在の業務内容から見て合致しそうなシステムがあれば、それを導入します。
4.人事情報など、社内のシステムと連携させる
人事管理システムや経理システム、購買システムなど、自社で既に運用しているシステムがある場合、可能な限り連携しておくことをおすすめします。システムがそれぞれ別々になっている場合、連携が済んでいないと、人事異動の際などに、人事システムとワークフローシステムのどちらも従業員マスタを変更するという2重の作業が発生してしまう恐れがあります。
連携作業はなかなか大変だと思いますが、システム導入時に済ませておくと、変更時に苦労しなくて済むため、ぜひ実施しておきましょう。また、定期的に人事異動が発生することを想定して、社内システムとワークフローシステムは定期的に連携されるように設定しておきましょう。
5.申請フォームの作成する
あらかじめ選定しておいた業務の申請フォームを作成します。
申請フォームの作成は、Web画面で作成するか、Excelと連携可能なものであれば、既存の申請書をそのまま使用することができます。この段階でエラーチェック機能などがあるワークフローシステムであれば、設定をする必要があります。
その他にも様々な機能が搭載されていますが、どこまで作りこむかはある程度方針として決めておくと、効率的に申請フォームを作成できます。逆に、作りこむ方針を明確に定めていない場合、どこまでも機能を追加してしまうことになり、1つのフォームを作成するのに多くの時間を費やしてしまう恐れがあるため、計画的に作成しましょう。
6.決裁ルートを設定する
申請フォームが完成したら、次は決裁ルートを設定していきましょう。比較的簡単なルートであればすぐに作成は可能ですが、複雑な条件分岐(一定時間経過しても承認されない場合は、別の担当者にも承認権限が与えられるなど)の作成はそれなりに時間を要します。
ここでも先程の申請フォームの作成同様に、あらかじめどのような決裁ルートがいいのか、どういう条件を設定しておくべきか、設定前に決めておけば効率的に設定を進めることができます。
なお、決裁ルートは運用後でも変更は可能なので、完璧に作りこみ過ぎない方が時間を掛けずに設定できるでしょう。
7.権限を設定する
セキュリティを高めるためにも、権限設定は非常に重要なポイントになります。申請内容が格納されているフォルダーにそれぞれ権限を設定します。基本的には紙媒体で例えると、最終的に書類をファイリングする部署があると思います。フォルダーの管理権限はその部署に設定するのが一番シンプルで維持も簡単です。しかし、他部署とのやり取りが発生する申請内容の場合には、お互いの部署の管理職などに権限を付与するのがセキュリティの観点からおすすめです。
##運用体制の整備
ワークフローシステムのトラブル発生時や問い合わせ対応を誰が行うのか、運用の体制を整えておきましょう。システム関連については基本的に社内のIT部門が適切ですが、その他の運用方法(作成後の決裁フローの変更時など)は都度担当者を選定しましょう。
8.パイロットテスターを選ぶ
運用体制が整ったら、ワークフローシステムのテストを実施するため、パイロットテスターを選びましょう。導入推進チーム同様に少数精鋭のチームを作ることをおすすめします。
###パイロットテストとは?
パイロットテストとは、新しいサービスなどを展開する前に、そのシステムが計画通りに動作し、性能を発揮するか評価する方法のことを指します。
ゲームなどでよく「ベータテスト」などと呼ばれ、一部のユーザーを限定招待してバグなどの不具合がないか確認してもらうものがありますが、それと同じようなものです。少人数でテストした方が意見を集約しやすく、問題を改善しやすくなります。
基本的に問題なく動作するのがほとんどですが、申請書の作成や決裁ルートが思っていた方法でできなかった場合などが発生する可能性もあります。そのため、その対策方法などを考えるにあたって、試行を重ねる必要があり、パイロットテストは非常に重要な方法なのです。
なぜパイロットテストが必要なのか
導入が決まった後に、すぐ社内全体に導入することはあまりおすすめできません。新システムへの移行というのは、従業員にとって非常に負担になりがちです。もし、すぐにシステムを導入して、致命的な問題を抱えており、その修正に時間がかかる場合、従業員に大きな負担をかけるのは予想がつきます。
そのため、必ず少人数でテストを行う、「パイロットテスト」を実施しましょう。
9.部署内でパイロットテストを実施する
まずは簡単なワークフローをシステムに組み込んでみましょう。その際は経費精算の中でも簡単に処理できそうなものを試しに運用するなどすると良いでしょう。
この時点で何か問題や改善点などがあれば、修正して改善を進めていきましょう。
部署内でパイロットテストを実施した結果、問題なく運用できた場合は次のステップに移りましょう。
会社にワークフローシステムを導入して、部署内だけで完結するようなことはあまりないでしょう。大きい額面の経費精算であれば、自分の部署から経理部まで承認が進むはずなので、他部署への連携は必須となります。
そのため、次のステップでは部署間に利用範囲を広げ、より複雑な決裁ルートの作成を行っていきます。この時のテストも先程と同じようにパイロットテストを実施しましょう。
部署内のテストと違って、部署間でのテストの際にはパイロットテスト対象者から多くのフィードバックをもらうことが想定されます。部署によって必要な情報は異なってきます。そのため最初に作ったテンプレートでは情報が不足する場合があります。担当者には現在のテンプレートにどのような情報を増やしていくべきなのか、ヒアリングして状況を確認しましょう。ヒアリングした内容を元にテンプレートを改善し、再度テストしてフィードバックする、というサイクルを繰り返していきましょう。
こうした改善の取り組みによって、業務を少しずつシステム化することができ、手作業にありがちなミスを防ぐことが可能になります。ワークフローシステムには自動で入力内容のチェック機能などが搭載されている場合があるため、より正確な申請データを作成することができ、データ化することによって書類の紛失も発生しなくなります。
業務全体のスピードアップが期待できるようになるほか、ワークフローが確立し、承認状況もリアルタイムで確認することができるようになるため、急いで承認作業をして欲しい場合に、誰に連絡すればいいかなど、効率的な業務が進むようになり始めます。
社内全体に導入する前にツールの使用方法などをまとめておく
素晴らしいワークフローシステムを導入しても、従業員が使用しなければ意味がありません。先程も解説した通り、新システムの運用は従業員にとっては大きな負担になります。
そのため、従業員が導入したシステムの使用方法が分かるように、マニュアルの作成などを行っておきましょう。
マニュアルの内容として、可能であれば一般利用者向けと管理者向けの2つを用意しましょう。
- 一般利用者向け(申請、承認、決裁の方法について)
- 管理者向け(申請業務の権限設定、決裁ルートの整備、新たな申請フォームの作成方法について)
もしマニュアルの作成が間に合わない場合、提供会社が使用方法についての研修などを実施してくれることがあります。実施が可能かどうか、あらかじめ確認しておくと良いでしょう。
問題が無ければ社内全体に導入する
部署間のパイロットテストが進み、フィードバックが落ち着いてきて、改善することも少なくなってきたら、いよいよ社内全体に導入を検討しましょう。
社内全体に導入することによって、全社員が効率的なワークフローを実行できるようになるため、社内の業務効率が上がっていきます。
また、システムによるチェック機能などにより、業務ミスも減少することが期待でき、コンプライアンスの強化も見込めるようになるでしょう。
紙媒体で業務を進めているのであればワークフローシステムは会社全体の効率を各段に向上できる
ワークフローシステムを導入することで、書類の受け渡しを無くすことができ、処理時間も大幅に短縮することができるため、会社全体の業務効率を向上させることができます。もちろん、導入時にはテンプレートを作っていく必要があり、導入後すぐはパイロットテストや環境整備などで思っていたほど業務効率化が進まないことが予想されます。
ですが、本格導入後には直感的に理解できるテンプレートや、自動で入力内容をチェック、決裁ルートの自動決定など、様々なシステムの機能を活用することで業務が円滑に進み、以前まではなかなかチェック作業で見落としていたミスを防止することができます。
ワークフローシステムは様々な製品が用意されており、導入を検討する際は、自社の導入目的や使用範囲、既存のシステムとの連携や費用などを考慮することが大切です。今回ご紹介したワークフローシステムは、いずれもユーザーの評価が高いものばかりなため、ぜひ自社のワークフローシステム選定の参考にしてみてください。