ナレッジマネジメントシステムとは
はじめに、「ナレッジ」(knowledge)とは、業務を遂行する過程で、特定の部署または従業員個人に蓄積された知識、経験、ノウハウなどをいいます。
本来会社の財産であるナレッジですが、近年、転職が盛んで人の出入りが激しくなっていることもあり、企業内または同じ部署内でのナレッジの共有、ベテランから新人へのナレッジの継承がうまくなされず、企業にとって、大きな課題となってきました。
ナレッジマネジメントシステムの意味
将来の企業存続にもかかわる、この新たな課題の解決のために、考案されたのが、「ナレッジマネジメント」の手法です。
「ナレッジマネジメント」とは、これまで特定の部署もしくは従業員個人に蓄積されていたナレッジを、企業全体で共有し活用することで、従業員のスキルを伸ばし、企業全体の生産性を向上させ、それにより企業価値をさらに高めることを目指した経営管理手法です。
そして、「ナレッジマネジメントシステム」とは、ナレッジマネジメントの手法を企業で効果的に運用していくために開発されたシステム(ツール)をいいます。
ナレッジマネジメントにおける「暗黙知」と「形式知」とは
ナレッジマネジメントにおける重要なキーワードとして、「暗黙知」と「形式知」が挙げられます。
暗黙知とは、具体的には、ベテラン従業員が長年業務を行なう中で身につけた知識、経験、ノウハウといったナレッジのことをいい、言語化(文書化)されていないため、そのままでは企業内で共有、継承することができません。
これに対して、形式知とは、上記の暗黙知を企業内で共有、継承するために言語化(文書化)したものです。
ナレッジマネジメントとは、特定の部署もしくは従業員個人に蓄積された暗黙知を、企業全体で活用するために、形式知に変換するための手法ともいえます。
多くの企業がナレッジマネジメントシステムの導入を進めている背景
ナレッジマネジメントシステムが注目を集めているのには、働き方の変化といった社会的な背景があります。
働き方改革推進によるリモートワークの定着
働き方改革が加速する中、時間や場所に縛られない新しい働き方として、リモートワークを採用する企業が増えてきました。
・家族との時間が増え、プライベートの時間が充実する
・身支度をせず、すぐに仕事に取り掛かれて効率がよい
といった大きなメリットが、リモートワークにはあります。
しかし一方で、担当者不在により、これまで人に依存していた(属人化された)業務について、企業内でナレッジの共有ができていないため、業務が止まってしまうといった課題が発生しています。
終身雇用制から人材流動化へ
これまで我が国では、終身雇用を前提として、長期的な視点から従業員を育成してきました。
しかし、日本経済が低迷を続ける中、従業員が自身の将来の安定を重視し、キャリアアップで自分の市場価値を高めるために、別の業種・職業に転職を検討することも多くなってきました。
ここで、暗黙知を形式知に変換しないまま、従業員が転職した場合には、企業は従業員個人が保有していたナレッジを失ってしまうことになります。
社会的な変化に対応するために
このように、リモートワークの定着、人材流動化といった社会的な変化の中で、蓄積されたナレッジを引き続き企業内で共有、継承していくために、ナレッジマネジメントの手法が重視されるようになってきました。
その結果、マネジメントシステムの手法を支援するナレッジマネジメントシステムの導入を多くの企業が検討しています。
ナレッジマネジメントシステム導入によるメリット
ナレッジマネジメントシステムを導入することで、企業には次の3つのメリットがあります。
従業員のスキルアップにつながる
ナレッジマネジメントシステムで共有されたナレッジを確認することで、新人でもベテランの知識、経験、ノウハウとったナレッジを身に付けることができ、従業員全体のスキルアップにつながります。
また同時に、従業員間のスキルの平準化もはかれるため、企業のサービスの品質を一定水準以上に保つことにも役立ちます。
業務の属人化を防ぐ
これまで従業員個人に蓄積されていたナレッジを、ナレッジマネジメントシステムを通じて共有することで、業務の属人化を防ぐことが可能です。
メインの担当者が不在でも、ナレッジマネジメントシステムを利用することにより、別の従業員がスムーズに業務を行なうことができます。
業務の効率化を達成する
検索性能に優れたナレッジマネジメントシステムは、膨大なデータの中から瞬時に、必要な情報にアクセスすることが可能です。
これにより、調べものに時間がかかってしまうといったことがなくなり、業務の効率化を達成することができます。
また、従業員がわからないことを自分で調べて自分で解決することができれば、これまで自部署、他部署問わず、問い合わせに対応してきた従業員の業務を削減することにもつながり、企業全体としても、業務の効率化を達成することができます。
ナレッジマネジメントシステムの種類は4つ
ナレッジマネジメントシステムは大きく分けて、4種類の型に区分されます。
専門知識型
ヘルプデスク型とも呼ばれ、FAQに代表される社内文書をデータベースにまとめ、共有します。
データベースを検索することで、従業員が自ら疑問点を解消でき、社内の問い合わせ業務の削減につながります。
顧客知識共有型
コールセンターの顧客対応に適しており、業務に関する知識、業務の進め方などのナレッジを共有します。
顧客のニーズに応えるスムーズな対応を可能にし、顧客満足度の向上に寄与します。
ベストプラクティス共有型
優秀な従業員が、業務遂行の過程で身につけた知識・ノウハウなどの暗黙知を形式知に変換し共有します。
ほかの従業員が、優秀な従業員のナレッジを学ぶことで、全社的な業務の質のアップが期待できます。
経営戦略策定型
企業内に蓄積された膨大な量のナレッジを分析し、経営戦略の策定に役立てます。
そのために、企業内に分散している情報を集約する必要があります。
ナレッジマネジメントシステムの主な機能5つ
ナレッジマネジメントシステムの持つ主な機能は、5つあります。
検索・マイニング
データベース上にある膨大なデータの中から瞬時に、必要な情報にアクセスすることが可能です。
ファイル名だけでなく、ファイル内の本文に含まれる特定の文字も検索対象とできるため、探したい情報が見つけやすくなり、業務効率のアップにつながります。
ヘルプデスク
従業員同士が質問、回答をできます。
事前にFAQを用意すれば、問い合わせ対応業務を削減することも可能です。
ファイル共有
各種ドキュメントを共有します。
常に最新データを共有できるため、各種社内規定や申請フォーム等の共有に便利です。
グループウェア
掲示板やメッセージ・チャットで情報を共有します。
うまく活用できれば、ナレッジマネジメントシステムの運用を推進するのに役立ち、また社内交流を活性化することにもつながります。
情報発信
社内用のSNSです。
SNSとして、またはブログとして、気軽に投稿できることで、活発な情報共有が期待できます。
ナレッジマネジメントシステムの選び方、比較ポイント
ナレッジマネジメントシステムは、現在非常に多くの製品が販売されていますので、選択時に考慮すべきポイントをご紹介します。
全従業員が問題なく操作できる
扱うのが難しいなど、操作性に問題がある場合には、せっかくのシステムが運用されないリスクがあります。
したがって、ナレッジマネジメントシステムを効果的に運用していくためには、全従業員が問題なく使いこなせるよう、操作性を重視する必要があります。
スマホ・タブレットといったモバイル端末に対応している
ナレッジマネジメントシステムを利用したい場面は、企業のオフィス内に限りません。
自宅でリモートワーク中の従業員や、営業先の従業員も急ぎで確認したいことがあるかもしれません。
したがって、スマートフォンやタブレットといったモバイル端末にも対応していると活用の幅が広がります。
無料トライアル、スモールスタートができる
ナレッジマネジメントシステムの導入時点では、自社で効果的に活用できるのか、運用上どのような課題が発生するのか等、正確に把握することはできません。
したがって、特定の部署、特定の事業所で、まず試験的に導入し、自社で運用していく際の課題をひとつひとつ解決していく中で、段階的に導入することが望まれます。
そのためにも、無料トライアル、スモールスタートに対応していることも、ナレッジマネジメントシステム選択時のポイントになります。
セキュリティ対策が万全である
ナレッジマネジメントシステムは、企業が長年かけて蓄積してきたナレッジとして、企業の機密情報や顧客情報も含むため、外部への情報漏洩は絶対に避けなければなりません。
セキュリティ対策が万全であるかどうかは、ナレッジマネジメントシステムを選択する際の重要なポイントになります。
必要最低限の機能が備わっている
ナレッジマネジメントシステムの導入目的を実現するための必要最低限の機能が備わっているか確認します。
ただし、使う予定のない余分な機能は、従業員にとってスムーズな操作の妨げとなるため、見極めが必要です。
おすすめのナレッジマネジメントシステム13選
製品のおすすめポイント
- 最大10人まで同時に編集可能なメモ機能。気軽・簡単に投稿可能
- テレワークに対応した各種機能で意思疎通をスムーズに
- 国際標準規格のセキュリティを搭載し、情報共有を安心安全に実施
製品のおすすめポイント
- ドキュメントの作成・共有機能を強化して作業を効率化
- リアルタイムチャットでコミュニケーションの効率化
- 社内情報を効率的に活用させるための文書管理機能と柔軟な検索機能
製品のおすすめポイント
- 属人化されている社内情報を全社で共有、情報として蓄積
- 新人教育のコストを削減、情報格差をなくしパフォーマンスの均一化を支援
- システムを一箇所にあつめることで複数のツールに分散していた情報を集中化
製品のおすすめポイント
- すべての文書と情報を1か所に整理することで従業員同士の情報共有が可能
- 高いセキュリティでデータを安全に保護するAtlassian Cloud
- さまざまなお気に入りのツールと連携することで生産性を強化
製品のおすすめポイント
- テキストマイニング技術により、高精度な回答を導く
- オペレーター向けのFAQシステムで業務効率をアップ
- 分かりやすいユーザー向けFAQを構築し、問い合わせ対応の手間を軽減
製品のおすすめポイント
- 情報共有化に留まらない、ユーザーの気付きを生み出すシステム
- 充実の分析機能で、情報収集を強力にサポート
- ナレッジの人気が可視化されるランキングなど、「使える」機能が豊富
製品のおすすめポイント
- ノートの作成が簡単なので、ITリテラシー問わず社員の参加を促進
- ノートの能動的な共有で、組織の情報共有を漏れなく行う
- 継続的なサーバー監視など、セキュリティ面も安心
製品のおすすめポイント
- 社内にある大量の資料データから横断的に一括検索
- 次世代の検索エンジン「インテリジェントサーチ」
- 複雑な設定や管理は必要なしで、簡単に導入が可能
製品のおすすめポイント
- 企業のデジタルデータを、保管場所やファイル形式を気にせず横断検索
- 部門利用から全社基盤まで規模問わずに対応し、サポートも充実
- 豊富なAPIで、きめ細かな要求にも応えられる
製品のおすすめポイント
- MarkdownやHTMLなどITリテラシーにあわせ記述方法が選べる
- 検索がしやすく、目当ての記事が見つかりやすい
- 効率的に使える機能が豊富で、運用や議論活発化に有効
製品のおすすめポイント
- 最初から完璧を求めず、ドキュメントを書き途中で共有できる
- 気軽に更新できる環境が整えられており、履歴情報も残るので安心
- 皆で育てた情報の整理も、きちんと簡単に行える
ナレッジマネジメントシステム導入にあたっての注意点
ナレッジマネジメントシステムを新たに導入するにあたっての注意点は、次のとおりです。
導入目的を周知して、従業員の協力を得る
企業にとって重要な取り組みでも、その目的が周知されないまま、いきなりシステムが導入されたのでは、従業員にとって、単に新しい業務が増えたと認識され、なかなか協力は得られません。
ナレッジマネジメントシステムを効果的に継続して運用していくためにも、従業員自身が導入により見込める効果を十分に理解した上で、積極的に協力してもらうことが必要です。
専任の管理者を配置する
全社的な取り組みとなるため、システム上の不具合、操作上の不明点など、迅速に対応可能な人材の配置が必要です。
またシステムの導入費用だけでなく、月々の保守費用等も掛かってくるため、導入による費用対効果を適切に測定しなければなりません。
システムの導入から軌道に乗るまでの間は特に、かなりの業務負荷が予想されるため、通常業務からは独立した、プロジェクト専任の管理者を置くことが望まれます。
ナレッジマネジメントシステムの選び方(まとめ)
この記事では、企業のナレッジを効率的に活用するのに有効なナレッジマネジメントシステムをご紹介しました。
企業を取り巻く社会環境が、急激に変化する中で、安定した企業運営を継続していくために、今後ますますナレッジマネジメントの重要性が高まっていくと考えられます。
ナレッジマネジメントシステムには、非常に多くのツールが存在しているため、まずは導入目的を明確にし、また従業員の使い勝手を考慮した上で、自社に合った製品を選ぶことが必要になります。