ナレッジマネジメント事例5選｜成功の3ステップ徹底ガイド

本記事では、ナレッジマネジメントの成功事例を5社ピックアップし、SECIモデルや「場」の整備といった基本から、実際の導入ポイントやおすすめツールまでを丁寧に解説します。これを読めば、自社に合ったナレッジマネジメントの第一歩がつかめるはずです。

1. ナレッジマネジメントとは？

ナレッジマネジメントは、企業内に散在する「知識・ノウハウ」を組織全体で共有・活用し、生産性やイノベーションにつなげる経営管理手法です。
具体的には、個人が持つ経験や勘といった「暗黙知」を言語化・マニュアル化などで「形式知」に転換し、全社に広げることで業務効率化や新規事業開発を後押しします。
しかし、ただツールを導入するだけでは定着せず、定期的な見直しや運用ルールの整備が不可欠です。

• 暗黙知：言葉や文章では表現しにくい経験則や技能。熟練職人の“手の感覚”や営業担当者の“顧客対応ノウハウ”などが該当します。
• 形式知：マニュアルや手順書、社内FAQなど、言語化・文書化された知識。誰もが検索・参照できる形に整えられます。

1.1 SECIモデルの概要

知識を組織で創造・循環させる「SECIモデル」の4つのプロセスを紹介します。

SECIモデルは、野中郁次郎氏らが提唱した理論で、暗黙知（Tacit Knowledge）と形式知（Explicit Knowledge）を相互転換しながら組織知を創出する枠組みです。

この4プロセスを螺旋状に回すことで、個人の知識が組織全体に定着し、さらに新しい暗黙知が生み出されます。

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2. ナレッジマネジメントの成功事例5選

以下では、実際にナレッジマネジメントを導入し、成果を上げた5つの企業事例を紹介します。まずは全体像を把握できるよう、主要な取り組みと成果をまとめた表をご覧ください。

2.1 富士フイルムビジネスイノベーション｜大手製造業（BtoB）

• 導入施策： 社内相談窓口「何でも相談センター」の設置
• ポイント： 暗黙知を形式知に変換し、一元的に蓄積・検索可能に

富士フイルムビジネスイノベーションでは、「何でも相談センター」を設置し、社員からの業務相談を一元的に受け付けています。相談内容は50のカテゴリに分類され、回答は必ず専任者が直接行うため、暗黙知が形式知として蓄積されます。

この仕組みにより、設計プロセスの初期段階から担当者間でノウハウが共有されるようになり、最終段階の設計変更による開発遅延が大幅に解消されました。

2.2 NTT東日本法人営業本部｜通信・インフラ企業

• 導入施策： オフライン／オンライン両面での「場」の整備
• ポイント： 気軽に相談できる環境構築でコミュニケーション促進

NTT東日本法人営業本部では、社内のオフィスをフリーアドレス化し、リフレッシュゾーンやラウンジスペースを配置することでオフライン上の「場」を整備しました。

一方、オンライン上では全社員に個人ホームページを提供し、日報やプロジェクト記録を自由に投稿・閲覧できるようにしています。これらの施策により、部署間の情報交換が活性化し、ナレッジ共有文化の醸成に成功しました。

2.3 ニチバン｜日用品メーカー（BtoC）

• 導入施策： 「BizAntenna」によるFAQデータベース化
• ポイント： 顧客対応ノウハウをFAQ化し、問い合わせ品質を均一化

ニチバンのお客様相談室では、長年蓄積されたカタログ情報やQ&Aを「BizAntenna」で一元管理。これにより、新入社員でもFAQから最適な回答をすばやく検索できるようになり、問い合わせ対応力の底上げと均質化を実現しています。

2.4 アイシン｜自動車部品メーカー

• 導入施策： 「Neuron ES」によるエンタープライズサーチ導入
• ポイント： 高速全文検索で情報収集時間を大幅削減

アイシンでは2019年2月にNeuron ESを導入し、社内ファイルサーバーや文書管理システムを横断検索できる環境を構築しました。

導入前後で月間検索時間を1,039時間削減し、資料作成にかかる工数を約28%改善するとともに、社員の情報探索が格段に効率化しました。

2.5 磨き屋シンジケート｜中小製造業（職人連携）

• 導入施策： 共同受注マニュアルの整備＋職人技術の標準化
• ポイント： 職人間の暗黙知をマニュアル化し、事業転換を推進

新潟県燕市の「磨き屋シンジケート」は、複数の金属加工職人が連携し、受注から納品までの共同プロセスマニュアルを作成しました。
さらに、各職人の暗黙知を形式知化することで新技術の開発にも成功し、従来の下請け加工から高付加価値製品の提供へと事業モデルを転換。業務時間コストの削減と品質向上を両立しました。

3. ナレッジマネジメントの失敗事例とその教訓

導入の落とし穴を避けるために、実際の失敗パターンとそこから得られる教訓を押さえましょう。

3.1 パターン1：唐突に全社導入し、浸透せず失敗

段階的な準備や試行なしに一気に全社規模で展開すると、現場が戸惑い、結局ツールが使われなくなるケースです。

• 原因：目的や効果が十分に説明されず、従業員の理解と協力が得られない
• 結果：初期の盛り上がりはあっても、すぐに利用率が低下し、投資対効果が回収できない

教訓：

• スモールスタート
  まずは特定部署やプロジェクト単位で試行し、成功体験をつくる
• 関係者の巻き込み
  キーパーソンへの説明会やワークショップを通じて、目的や価値をしっかり共有する
• 早期KPI設定
  利用率や投稿件数など小規模でも計測できる指標を定め、社内に成果を可視化する

3.2 パターン2：運用ルールが整備されず、ナレッジが乱立

ナレッジを集めただけで、分類・更新のルールが曖昧なまま運用すると、情報が整理されず検索性が大幅に低下します。

• 原因：入力フォーマットやカテゴリ分けの基準が定まっておらず、各人が自由にデータを登録
• 結果：重複情報や古い情報が放置され、かえって業務効率が悪化する

教訓：

• 統一フォーマットの策定
  記事タイトルやタグ付けのルールをあらかじめ明文化する
• 定期的なメンテナンス
  ナレッジ管理責任者を設定し、古い情報の削除・更新を定期的に実施
• ガイドラインの周知徹底
  入力マニュアルやショート動画で、従業員が迷わず運用ルールを守れるようサポート

失敗パターンと教訓のまとめ：

ナレッジ共有とは？成功に導く5ステップとツール11選

4. ナレッジマネジメントの導入事例に学ぶ3つの成功ポイント

この記事で紹介した成功事例に共通する、ナレッジマネジメントを本当に定着させるための3つのポイントを解説します。

4.1 SECIモデルで確実に転換を回す

暗黙知を形式知に変換し、新たな暗黙知を生み出すサイクルを設計します。
SECIモデルとは、組織内の暗黙知（言語化が難しい知識）を形式知（マニュアル化・データ化）に変換し、さらに新たな暗黙知へと戻す4つのプロセスを指します。

• 共同化（Socialization）：体験を共有し、暗黙知を他者と分かち合います。
• 表出化（Externalization）：共有された暗黙知を言語や図表で形式知にします。
• 連結化（Combination）：既存の形式知同士を組み合わせ、新たな知識体系を創ります。
• 内面化（Internalization）：新たに生まれた形式知を実践して暗黙知化し、次のサイクルを生み出します。

このサイクルを意図的に設計し回すことで、個人の経験が社内の資産として蓄積され、組織の持続的成長につながります。

4.2 社内の「場」を整備する

SECIモデルの各プロセスを加速させるために、物理的・仮想的な「場」を用意します。
「場」とは、知識創造や共有が自然に起こる環境のことです。

• 共同化の場：社内チャットや休憩スペースなど、気軽なコミュニケーションを促す場所。
• 表出化の場：ワークショップや定例ミーティングなど、対話を通じて言語化を支援する場所。
• 連結化の場：社内wikiやイントラネット、FAQシステムなど、知識を集約・管理するツール。
• 内面化の場：研修やOJT、企業内大学など、学んだ知識を実践し深める場。

たとえば、NTT東日本ではオンライン・オフライン両面でこうした「場」を整備し、社員同士のナレッジ共有を活性化させています。

4.3 スモールスタート＆長期視点

いきなり全社導入するのではなく、まずは一部署やプロジェクト単位で試行し、成功体験を積み重ねます。
このアプローチにより、現場の抵抗感を抑えつつ、効果を可視化しながら徐々に規模を拡大できます。

また、ナレッジマネジメントは短期間で成果が出にくいため、長期的な視点で運用を続けることも重要です。
成功事例としては、富士フイルムビジネスイノベーションの「何でも相談センター」がまさに小さな部門から始め、段階的に社内全体へ展開したケースが知られています。

成功の3ポイント比較表:

5. おすすめナレッジマネジメントツール比較

ナレッジマネジメントを実現するには、目的に応じたツール選定が不可欠です。ここでは代表的なツールである「etudes」「ナレカン」「TUNAG」の3つを比較します。

選び方としては、

• 学習管理が主目的なら → etudes
• 情報検索やナレッジ一元化が主目的なら → ナレカン
• 社内コミュニケーション強化なら → TUNAG

など、自社の課題や目的に合わせて、最適なツールを選び、ナレッジマネジメントを成功に導きましょう。

5.1 etudes

etudesは、初期費用0円・月額ID課金制で利用できるクラウド型LMS（学習管理システム）です。

• 価格・プラン：初期費用なし。月額ID課金制。詳細は見積もりが必要です。
• 主な機能：SCORM対応、動画学習、スマホ対応、成績・進捗管理、豊富な教材ライブラリ。
• メリット：初期投資を抑えつつ、大企業・省庁など多くの導入実績あり。アルー株式会社が20年以上培った教材ノウハウを活用できる。
• デメリット：利用者数に応じてコストが増加。高度なカスタマイズには別途費用がかかる場合も。

5.2 ナレカン

ナレカンは、社内のノウハウ・マニュアルを一元管理し、高精度な検索性が強みの情報共有ツールです。

• 価格・プラン：要見積もり。企業規模や必要機能に応じて変動。
• 主な機能：全文検索、AI自然言語検索、添付ファイル内検索、OCR対応、Slack／Teams連携など。
• メリット：直感的な操作と高精度検索で情報探索時間を大幅に削減。既存ツールとの連携性も高く、導入定着率が高い。
• デメリット：教育コンテンツの配信・管理機能はなく、LMSとの併用が必要な場合も。初期設定にやや時間がかかる可能性あり。

5.3 TUNAG

TUNAGは、コミュニケーションと情報共有に特化した社内ポータルです。

• 価格・プラン：利用人数・機能により変動。初期費用・月額費用ともに要見積もり。
• 主な機能：社内掲示板、ワークフロー、タスク依頼、マニュアル管理、アンケート、サンクスカードなど。
• メリット：社内コミュニケーションを活性化し、アルバイト定着率改善など定量的な効果も。専任サポートや運用勉強会なども充実。
• デメリット：LMS機能は限定的で、eラーニング教材管理には別途ツール連携が必要。価格が問い合わせベースで明確になっていない。

詳しくはTUNAGの公式サイト「TUNAG(ツナグ) | 組織を良くする組織改善クラウドサービス」をご確認ください。

おすすめのナレッジマネジメントツールやその比較についてもっと知りたい方は「ナレッジマネジメントツール比較21製品｜おすすめツール選定ポイントを徹底解説【2025年更新｜監修者コメント付き】」をご確認ください。