契約書管理台帳とは？必須項目とExcel運用術を徹底解説【2025年最新版】

契約書の更新期限を忘れてしまい、不要なコストやトラブルが発生した──。そんな経験がある企業は少なくありません。契約業務は「見える化」して初めてリスクを制御できます。そこで注目されているのが「契約書管理台帳」の整備です。契約名、相手先、契約日、更新期限などを一覧で管理することで、契約の抜け漏れを防ぎ、業務効率とコンプライアンスを両立できます。

1. 契約書管理台帳とは？なぜ必要か

契約書管理台帳とは、企業が締結している契約の基本情報を一元的に記録・管理する一覧表です。契約名、契約相手、開始日や終了日、更新期限などの情報を整理することで、期限切れや更新漏れを防ぎ、法的リスクを最小化できます。近年は電子契約やクラウド保管の普及により、紙と電子の両方の契約情報を統合して管理するニーズが高まっています。

契約書管理台帳は、単なる「一覧表」ではなく、リスクマネジメントと業務効率化のための基盤です。例えば、更新期限が近づいた契約を事前に把握して交渉準備を行うことで、不要な自動更新やコスト増加を防止できます。また、監査やコンプライアンス対応時に必要な契約書をすぐに取り出せる状態にしておくことも重要です。

次の表は、契約書管理台帳が持つ主な目的を整理したものです。

これらの目的を達成することで、契約業務全体の透明性とスピードが向上し、経営判断にも役立ちます。

1.1 契約書管理の基本役割

契約書管理台帳の最も基本的な役割は、契約情報を「見える化」することです。契約名や締結日、更新期限といった情報を整理しておくことで、誰でも状況をすぐ把握できます。特に複数部門が契約を持つ企業では、情報の分散が大きな問題となりがちです。台帳を用意することで、営業・法務・経理などの部門が同じ情報を参照でき、契約のステータスや金額が正確に共有されます。

さらに、台帳は契約ライフサイクル管理（CLM: Contract Lifecycle Management）の起点にもなります。CLMツールを導入する前段階として、まずExcelなどで契約情報を整理しておくことは有効です。

1.2 企業が直面するリスク

契約管理が不十分な場合、次のようなリスクが発生します。

• 契約期限を失念し、不要な自動更新や高額な更新料が発生する
• 解約通知期限を過ぎてしまい、意図しない契約延長が行われる
• 契約書の所在が不明で、監査や訴訟時に証拠を提示できない
• 契約条件の把握不足により、取引先とのトラブルや違約金が発生する

特に、複数年契約や自動更新条項のある契約では、更新期限の管理が非常に重要です。「クラウドサイン」の調査によれば、契約更新漏れによる損失は企業規模を問わず発生しており、台帳の整備は早急な課題とされています。

このようなリスクを回避するためにも、契約書管理台帳の導入と定期的なメンテナンスは欠かせません。

契約書を紛失した際の適切な対処法｜具体的な手順や対策方法を徹底解説【__current_year__年版】

2. 契約書管理台帳の基本項目

契約書管理台帳を構築する際には、契約の種類や業種にかかわらず共通して必要となる基本項目があります。これらの情報を網羅的に整理しておくことで、期限の管理や契約条件の確認、関係者との情報共有をスムーズに行うことが可能になります。

まずは、あらゆる契約管理において標準的に利用されている基本列（カラム）をご紹介し、その後に業務内容や契約種別に応じて追加すべき列についても解説します。

2.1 標準列例

以下は、契約書管理台帳を構成する代表的な項目の一覧です。実務で使われる頻度が高く、多くの企業でテンプレート化されている構成となっています。

これらの項目を押さえることで、期限管理だけでなく契約の中身の確認や監査対応の基礎にもなります。Excelなどで作成する場合も、これらの列をベースにすれば網羅性と使いやすさの両立が図れます。

特に「更新通知期限」は、失念による不要な自動更新を防ぐためにも必須です。また、「保管場所」欄は紙と電子の混在環境で原本を取り違えないためのポイントになります。

2.2 ユースケース別追加列

契約書管理の現場では、契約の種類ごとに固有の情報を付加管理する必要があるケースも少なくありません。以下に、典型的なユースケースごとの追加列例を挙げます。

1. 雇用契約における追加項目

• 退職日：契約終了後の保管期間計算や離職手続きの基準日
• 保管年限：労働基準法に基づく保存義務期間（通常3年、将来的に5年）

2. SaaS契約における追加項目

• 課金体系：月額制、年額制、従量課金制などの区分
• ID数（ライセンス数）：契約内で利用可能なユーザー数やアカウント数

3. 業務委託契約における追加項目

• 成果物の有無：納品物があるかどうかのフラグ
• 納期：成果物提出や検収の期限日

これらの追加項目を導入することで、契約管理台帳はより実務に即したツールとなり、担当者の判断やアクションをサポートする役割を強化できます。

次の表では、ユースケース別に追加すべき代表的な列をまとめています。

このように、標準項目＋ユースケース別列を組み合わせることで、契約書管理台帳の完成度を高め、実務における信頼性と柔軟性を確保できます。特に契約件数が多い企業では、検索性やソート性を意識した列設計が重要です。契約種別によって「テンプレートを分ける」のではなく、1シートで列を追加し管理する方式の方が、統合的な検索や管理がしやすくなります。

3. 契約書管理台帳をExcelで作る方法

契約書管理台帳は、必ずしも専用の契約管理システムを使わなければならないわけではありません。特に契約件数が少ない企業や、初期コストを抑えたい中小企業では、Microsoft Excel（またはGoogleスプレッドシート）を活用した管理が現実的な選択肢です。

Excelで契約情報を一覧化することで、可視性と共有性を確保しながら、自社に合わせた柔軟な設計が可能になります。本章では、Excelで実用的な契約書管理台帳を作成・運用するための手順とポイントをご紹介します。

3.1 作成手順

Excelでの契約書管理台帳作成は、次の4ステップで進めるのが基本です。

1. 管理列の設計

まずは「どの項目を記録するか」を明確にし、必要な列（カラム）を作成します。標準的な項目としては、前章で紹介した管理番号、契約名、契約相手、契約期間、金額、ステータスなどがあります。可能であれば将来的なフィルター・ソートに備え、日付形式やドロップダウン選択肢などもこの段階で整えておきましょう。

2. 契約書情報の入力

次に、過去の契約書を1件ずつ精査し、必要情報を台帳に入力していきます。紙媒体の契約書はスキャン保存し、PDFファイルへのリンクも併記しておくと検索性が高まります。入力作業は煩雑になりがちですが、台帳構築の根幹をなす工程です。

3. 条件付き書式で期限ハイライト設定

Excelの「条件付き書式」機能を使えば、契約更新期限が近いものを自動で色付けすることができます。

例えば以下のような式を使って、今日から30日以内に更新期限が来る契約行を黄色にハイライトする設定が可能です。

=AND($H2<>"", $H2-TODAY()<=30, $H2-TODAY()>0)

このようにして視認性を高めることで、更新漏れのリスクを防止できます。

4. パスワード保護・共有設定

契約情報は機密性が高いため、Excelファイル自体にパスワードを設定し、不正な閲覧や改ざんを防止する対策が必要です。また、複数人での編集を想定する場合は、Microsoft 365やGoogle Workspaceの共有設定を活用し、アクセス権限を制御しましょう。

次の表では、Excelを活用するメリットと留意点を整理しています。

このように、Excelは手軽で柔軟性が高い一方、情報セキュリティや組織的な運用には限界があります。

3.2 運用のコツ

Excelを効果的に契約書管理に活用するためには、次のような実務上の工夫が有効です。

1. 三者契約は別列で明示
   企業間＋第三者（例：共同研究契約など）の契約では、関係者が複数存在するため、列を追加して「相手先1」「相手先2」のように明示すると情報が埋もれません。
2. 原本に管理番号を記載
   紙の契約書やPDFファイルに、Excel台帳と対応する「管理番号」を明記しておくと、原本との突合が容易になります。スキャンPDFにもファイル名に番号を含めるのが望ましい運用です。
3. 表記揺れを防ぐため選択式リストを活用
   「契約種別」や「契約ステータス」などの列では、プルダウンリストを設定することで入力ミスを防ぎ、後のフィルタリングや集計を正確に行えるようになります。
4. 更新履歴を別シートで残す
   誰がいつどのように変更を加えたかの記録を残す運用ルールを設けておくと、トラブル時の対応がスムーズになります。マクロやバージョン管理までは不要でも、更新記録の手動記入はおすすめです。
5. 定期的な棚卸を実施
   四半期や半期ごとに、契約台帳の内容を最新状態に更新する「棚卸」を行うことで、情報の陳腐化を防げます。特に終了済み契約や再契約時の情報整理は、このタイミングで見直しましょう。

以上のような運用ノウハウを踏まえて、Excelベースでも効果的に契約書管理台帳を整備・活用することが可能です。中長期的にはクラウド型の契約管理システムへの移行を視野に入れつつ、まずはExcelでしっかりとした基盤を築くことが重要です。

4. Excelによる契約書台帳管理の限界と契約書管理システムの導入メリット

多くの企業で利用されているExcelによる契約書台帳管理は、初期導入のしやすさやコスト面で優れている一方、一定の運用規模や業務フローの複雑化に直面すると限界が顕在化します。

次の表では、Excel運用と契約書管理システムの主な違いを比較しています。

それでは、Excel運用の課題を踏まえ、契約書管理システムを導入することによって得られるメリットを具体的に見ていきましょう。

4.1 Excel運用の限界

Excelによる契約管理は、初期段階では有効ですが、以下のような問題点が指摘されています。

1. 契約期限の見落としリスク
   リマインド機能がなく、更新漏れや自動更新によるリスクが高まります。
2. 検索性の低さ
   契約内容をキーワードで検索できないため、必要情報の抽出に時間がかかります。
3. 覚書・変更契約との関連管理が煩雑
   バージョン管理や紐づけが手動になり、整合性に欠けやすくなります。
4. 閲覧制限・編集権限の設定が困難
   ファイル単位での制御にとどまり、組織的なガバナンスが難しい状況です。
5. 法令対応が不十分
   電子帳簿保存法などへの対応が手作業で煩雑になり、監査対応に課題が残ります。

契約リスクとは？具体的な種類と管理方法を分かりやすく徹底解説

4.2 契約書管理システムの主な機能と利点

これらの課題を解決するために、契約書管理システムへの移行が効果的です。代表的な機能には以下のようなものがあります。

1. 期限リマインド自動通知

契約更新や終了期限を事前に通知することで、更新漏れや自動更新によるトラブルを防止します。

• 契約満了の◯日前に担当者へ通知
• メールやシステム内でアラート表示
• タスク管理と連携して対応漏れを防止

2. OCR・全文検索

PDFやスキャン文書をOCR（文字認識）でデータ化し、キーワード検索を可能にします。

• 条項・契約先名での横断検索
• 条件付き検索で目的の文書を迅速抽出

3. 覚書や変更契約の紐づけ

関連文書を一元管理することで、契約の流れを明確に把握できます。

• 契約IDごとに関連書類を紐づけ
• 改訂履歴や差分も可視化

4. 権限・監査ログ管理

アクセス制御と操作履歴の記録により、内部統制やセキュリティ対策を強化します。

• 部署・役職ごとのアクセス制限
• 閲覧・編集履歴の自動記録

5. 電子帳簿保存法対応

改ざん防止や検索性など、法的要件を満たす形でのデータ管理が可能です。

• タイムスタンプや証跡保存に対応
• 税務調査や監査時の業務負担を軽減

この比較からも明らかなように、Excelから契約書管理システムへステップアップすることで、業務の属人化を防ぎ、情報の一元化と法令対応を同時に実現できます。組織規模が拡大し、契約件数が増えるにつれて、こうした専用システムの導入は、リスク回避と業務効率化の観点で非常に有効な投資といえるでしょう。

無料で利用可能な契約書管理システム3選｜有料版との違いも徹底解説【__current_year__年版】

5. おすすめ契約書管理システム｜契約書台帳管理をもっと便利に

実際に導入を検討できる製品やサービスを紹介します。各ツールには強みがあり、企業の契約業務に合わせた選定が重要です。

次の表では、これら6製品の主要機能と対象領域を比較しています。

各製品の機能と用途を比較することで、自社の業務に合った契約書管理システムが選びやすくなります。

5.1 マネーフォワードクラウド契約

マネーフォワード クラウド契約は、マネーフォワード社が提供するクラウド型契約管理システムです。

• 電子契約との連携がスムーズ（クラウドサイン・GMOサイン等）
• ステータス管理や進捗状況の可視化
• 社内承認フローと外部締結の両方に対応
• 会計システムや人事管理との連携が可能

契約締結から管理・保存まで一元管理でき、特に中堅〜大手企業での導入実績があります。

詳しくはマネーフォワード クラウド契約の公式サイト「会計ソフト・労務管理システムならマネーフォワード クラウド」をご確認ください。

5.2 ContractS CLM

ContractS CLMは、複雑な契約プロセスの可視化とワークフロー最適化に強みを持つ製品です。

• 契約の起案から審査・交渉・締結・更新までカバー
• カスタム可能な承認フローと期限管理
• 条項単位でのリスク管理や契約進行状況の分析が可能
• CLM（契約ライフサイクル管理）に対応

製造業やIT業など、契約プロセスが複雑な企業に最適です。

詳しくはContractS CLMの公式サイト「ContractS CLM｜クラウド型契約マネジメントシステム|ContractS株式会社」をご確認ください。

5.3 LegalForceキャビネ

LegalForceキャビネは、AI技術を活用した契約書の検索・リスク分析ツールです。

• AI OCRによるスキャンPDFからの全文検索
• 類似契約・過去契約との比較機能
• 条項単位での検索とレビュー
• ISMS対応・改正電子帳簿保存法に準拠

法務・経営企画部門など、リスクマネジメントを重視する企業に向いています。

詳しくはLegalForceキャビネの公式サイト「【公式】LegalForceキャビネ（リーガルフォースキャビネ） ｜ 契約書管理ができるAI契約管理システム」をご確認ください。

5.4 Hubble

Hubble はWordやGoogleドキュメント感覚で契約書を共同編集できる軽量なCLMです。

• 契約ステータスやレビュー履歴の可視化が容易
• ドラッグ＆ドロップでフォルダ管理可能
• チャットでのリアルタイムコミュニケーションにも対応

法務専任者がいない企業でも扱いやすく、初期導入コストを抑えたい企業に向いています。

詳しくはHubbleの公式サイト「Hubble(ハブル) | 契約書管理クラウドサービス」をご確認ください。

5.5 OPTiM Contract

OPTIM Contractは株式会社オプティムが提供するAI型契約書レビュー支援・契約管理サービスです。契約業務のデジタル化だけでなく、レビューの質やスピードを向上させたい企業に最適です。

• AIによるリスク分析・条文チェック支援機能
• ひな型管理・契約進捗の可視化に強み
• 他のOPTiM製品（文書管理・AI OCR等）との連携により一気通貫な運用が可能

特に契約のレビュー精度や内部統制の強化を重視する企業にとって、有力な選択肢となります。

詳しくはOPTIM Contractの公式サイト「OPTiM Contract | AIで契約書の管理コスト・リスクを削減 | OPTiM」をご確認ください。

5.6 ジンジャーサイン

ジンジャーサインは、電子契約と契約書管理を一体で行える操作性の高いサービスです。

• 契約書の作成・送信・締結・保管までオンラインで完結
• テンプレート機能やステータス管理で業務効率化を支援
• タイムスタンプ・電子帳簿保存法対応で法令順守を強化
• フォルダ階層・アクセス制御による台帳機能にも対応

契約書の種類やプロセスが比較的シンプルな中小～中堅企業に適しており、コストを抑えながら電子契約と台帳整備を進めたい企業に有効です。

詳しくはジンジャーサインの公式サイト「jinjer｜ジンジャーサイン」をご確認ください。

契約書管理システムの導入事例4選｜成果KPIで見る効率化【__current_year__年版】

7. まとめ｜契約管理台帳の整備を今すぐ開始しよう

契約書管理の基本は、まず「どの契約が、誰と、いつ結ばれ、いつ終わるのか」を把握することです。これを可視化するには、契約書の台帳化と期限管理の仕組み作りが欠かせません。

Excelによる台帳管理でも、契約書の整理と期限通知の基本運用は可能です。特に中小規模の企業や契約件数が少ないフェーズでは、Excelテンプレートから始めることで、手軽に現状の見直しと改善が行えます。

しかし、事業規模の拡大とともにExcel運用は限界を迎えます。管理対象が増えることで属人化・更新漏れ・検索性の低下といったリスクが高まるため、一定の件数・業務量を超えた段階で専用の契約書管理システム（またはCLMツール）への移行を検討すべきです。

クラウド型の契約書管理システムであれば、期限リマインド、全文検索、権限管理、電子帳簿保存法対応といった高度な機能が搭載されており、内部統制や監査対応の体制強化にもつながります。

次のステップに進むために、以下の行動から始めましょう：

• 契約情報を一元管理するExcel台帳テンプレートを導入する
• 契約の期限や更新日を一覧化し、通知の仕組みを整備する
• 拠点や部門が増えた場合は、契約書管理システムのトライアルを検討する
• 電子契約やペーパーレス運用との連携も視野に入れる

契約書の台帳整備と期限管理の仕組み作りを今すぐ始めることが、企業のリスク回避と業務効率化の第一歩です。