ファイルサーバーをクラウドへ移行｜後悔しないための注意点とおすすめサービス4選【2025年最新】

ファイルサーバーのクラウド化は、コスト削減や業務効率化など、経営に直結する5つの大きなメリットをもたらします。ここでは、各メリットの要点を分かりやすく解説します。

メリット①：サーバー機器の購入費・維持費を削減できる

サーバー本体の購入や維持にかかる費用が不要になり、コストを大幅に削減できます。 オンプレミスで必須だった高額な初期投資がなくなり、月額・年額の利用料だけで済むため、IT予算を最適化できます。

具体的には、以下のようなコストを削減できます。

• 高額なサーバー機器の購入費・更新費
• サーバー設置場所のスペース代や電気代
• 専門の保守・管理担当者の人件費

メリット②：面倒な運用・保守業務から解放される

専門知識が必要なサーバーの運用・保守から解放され、IT担当者は本来の業務に集中できます。 機器の監視や障害対応、セキュリティ対策などは全てサービス提供事業者が行うため、社内の業務負荷が劇的に軽くなります。

以下のような業務は事業者に代行してもらえます。

• ハードウェアの保守・交換
• ソフトウェアの更新プログラム適用
• 24時間365日の障害監視と対応

メリット③：テレワークや外出先でも安全・快適に利用可能

インターネットさえあれば、いつでもどこでもファイルにアクセスでき、テレワークが快適になります。 PC、スマートフォン、タブレットなど端末を問わず利用できるため、生産性が向上します。VPN接続の遅さや手間に悩まされることもありません。

メリット④：災害や障害に強い事業継続計画（BCP）対策になる

地震や火災などの災害時でもデータを安全に守り、事業を継続できます。 データは物理的に離れた堅牢なデータセンターで保管・バックアップされているため、自社オフィスが被災しても業務への影響を最小限に抑えられます。

クラウドが災害に強い理由は以下の通りです。

• データは地理的に分散された拠点で保管
• 高度な耐震・防火設備を持つ施設で運用
• 24時間体制でインフラを監視

メリット⑤：将来の事業拡大にも柔軟に対応できる拡張性

事業の成長や人員の増減に合わせて、容量や利用者数を即座に、柔軟に変更できます。 オンプレミスのように数ヶ月先の需要を予測して機器を購入する必要がなく、無駄な投資を避けられます。

• クラウド：数クリックで即日拡張・縮小が可能
• オンプレミス：機器の購入・設定に数週間～数ヶ月必要

3. 失敗しない「選び方」とスムーズな「移行」の3ステップ

ここでは、クラウド化の目的を明確にする「選び方」のポイントと、現場の混乱なくデータを移行するための具体的な「3ステップ」を解説します。

【選び方のポイント】手軽さ重視か、柔軟性重視か

ファイルサーバーのクラウド化には、大きく分けて2つのタイプがあります。すぐに使える手軽な「SaaS型」か自由に構築できる柔軟な「IaaS型」か、まずは自社の目的やITスキルに合わせて方針を決めましょう。

• SaaS型（クラウドストレージ）:　手軽さを最優先するならこちらです。「Box」や「Dropbox」に代表される、契約後すぐに使えるサービスです。サーバー管理は不要ですが、機能のカスタマイズはできません。
• IaaS型（仮想サーバー）:　既存のファイルサーバー環境をクラウドで再現したい場合や、独自の要件がある場合はこちらです。「Amazon Web Services (AWS)」や「Microsoft Azure」の仮想サーバー上に、自社でファイルサーバーを構築します。専門知識が必要ですが、非常に自由度が高いのが特徴です。

どちらのタイプが自社に合うか、以下の表で比較検討してみてください。

移行ステップ①：現状のデータとアクセス権限を「棚卸し」する

クラウド移行の成否は、最初の「現状把握」で9割決まります。いきなり全てのデータを移そうとすると、不要なデータまで移行してコストが増えたり、アクセス権限の設定ミスで混乱を招いたりします。

まず移行を始める前に、現在ファイルサーバーに「何が」「どれだけ」「誰がどのように」入っているかを正確に把握することが不可欠です。

移行プロジェクトの初期段階で必ず確認すべき項目を、以下のチェックリストにまとめました。

移行ステップ②：テスト移行で課題を洗い出す

本格的な移行作業に入る前に、必ず一部の部署やチームで「テスト移行」を行いましょう。例えば、特定の部署のデータだけを先に移行し、実際の業務で使ってもらいます。その中で「ファイルが開くのが遅い」「今まで使っていたマクロが動かない」といった問題点を洗い出し、解決策を見つけてから全社展開することで、手戻りや現場の混乱を防ぎます。

情報処理推進機構（IPA）が発行する資料でも、システム導入における段階的な展開の重要性が指摘されており、テスト移行はリスク管理の観点から必須のプロセスです。

テスト移行では、最低でも以下の項目を確認しましょう。

移行ステップ③：利用者に周知し、本番移行を実行する

テストで課題を解決したら、いよいよ本番移行です。データ移行作業そのものは、業務への影響を最小限にするため、休日や夜間に行うのが一般的です。移行が完了したら、旧サーバーを停止し、新しいクラウド環境へ完全に切り替えます。

この段階では、従業員への丁寧な「周知」が成功の鍵となります。移行スケジュールや新しいツールの使い方について説明会を開いたり、簡単なマニュアルを用意したりすることで、移行後の問い合わせを減らし、スムーズな利用開始を促せます。

4. 【目的別】中小企業におすすめの代表的なクラウドサービス4選

導入後に「こんなはずではなかった」と後悔しないために、事前に知っておくべき注意点と、その対策を解説します。

注意点①：インターネット環境がないと利用できない

クラウドサービスは、インターネット接続がなければファイルに一切アクセスできません。 これがオンプレミスとの最大の違いであり、最も注意すべき点です。

社内のインターネット回線に障害が発生した場合や、出張先・テレワーク先の通信環境が不安定な場合、業務が完全に停止してしまうリスクがあります。オンプレミスであれば、少なくとも社内ネットワークが機能していれば業務を継続できます。

このリスクを理解した上で、以下のような対策を検討しましょう。

安定した通信環境の確保は、クラウド化を成功させるための大前提です。

注意点②：月々のランニングコストが発生し続ける

初期費用が安い反面、クラウドは利用している限り月額・年額の費用（ランニングコスト）が発生し続けます。 買い切り型のオンプレミスとは異なり、コストがゼロになることはありません。

特に注意したいのが、データ量やユーザー数に応じて料金が変動するプランです。当初の想定よりもコストが膨らんでしまうケースは少なくなくありません。

長期的な視点でコストを管理するために、以下の対策が有効です。

5年以上の長期スパンで見ると、オンプレミスの方が総所有コスト（TCO）が安くなる可能性もゼロではありません。導入前に必ず長期的なコストシミュレーションを行いましょう

注意点③：オンプレミスほどの自由なカスタマイズは難しい

クラウドサービスは完成されたパッケージのため、オンプレミスのように自社の業務に合わせて自由にカスタマイズすることは困難です。

例えば、社内の基幹システムと特殊な連携をさせたい、あるいは部署ごとに非常に複雑なアクセス権限を設定したい、といった独自の要件がある場合、クラウドサービスの標準機能では対応できない可能性があります。サービス提供事業者が用意した機能の範囲内で運用方法を工夫する必要が出てきます。

導入後に「やりたいことができない」と気づく失敗を避けるため、事前の確認が重要です。

「クラウドの機能に業務を合わせる」という視点も、時には必要になります。

注意点④：情報漏洩を防ぐためのセキュリティ設定は必須

クラウドサービスは安全な一方、設定を間違えれば情報漏洩のリスクがあります。 サービスのセキュリティレベルが高いことと、自社のデータが安全であることはイコールではありません。

これは「責任共有モデル」と呼ばれ、インフラの安全性を担保するのはサービス提供事業者の責任ですが、その上でデータを適切に管理・運用するのは利用者である企業の責任です。アクセス権限の設定ミスで、本来見せてはいけない情報を全社員に公開してしまった、という事故は実際に多くの企業で発生しています。

自社の情報を守るため、最低限以下の設定は必ず行いましょう。

クラウドのセキュリティ機能を正しく理解し、使いこなすことが情報漏洩を防ぐ鍵となります。

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6. 【まとめ】まずは現状ファイルの棚卸しから始めよう

ファイルサーバーのクラウド化は、コスト削減やテレワーク推進など、多くの経営課題を解決する有効な手段です。しかし、その成功は事前の準備にかかっています。まずは自社がどんなデータをどれだけ持っているか、現状を正確に把握することから始めましょう。

本記事では、ファイルサーバーをクラウド化するメリット・デメリットから、サービスの選び方、具体的な移行ステップ、そして代表的なサービスまでを網羅的に解説しました。クラウド化は単なるITインフラの更新ではなく、組織全体の生産性やセキュリティを向上させる重要な経営判断です。

クラウド化への第一歩として、以下のステップから始めてみてください。

特に、多くのサービスが提供している無料トライアルを最大限に活用し、実際の使用感を確かめることが、失敗しないサービス選びの鍵となります。