電子帳票システム無料14選｜助成金活用で有料システムに移行するコツ

電子帳票システムは、請求書や見積書などの帳票を電子化し、作成・送付・保存を効率化するツールです。最近では無料で使えるクラウド型サービスも増え、個人事業主から中小企業まで導入しやすくなっています。

しかし、無料プランには容量や機能制限があり、業務規模や法令対応を考慮すると有料版の検討も必要です。本記事では、無料で利用できるおすすめ電子帳票システム15製品を比較し、選び方や助成金を活用した有料版移行の方法まで解説します。

1. 電子帳票システムとは？無料利用の基礎知識

電子帳票システムとは、見積書・請求書・納品書などの帳票を電子データとして作成・保存・共有できる仕組みです。従来の紙ベース業務と比べ、作業効率の向上、保管コスト削減、検索性の向上などのメリットがあります。特に2024年1月から「電子帳簿保存法」改正の義務化や「インボイス制度」の施行により、電子帳票の活用は企業にとって避けて通れない課題となっています。
参考＞電子帳簿保存法関係｜国税庁

1-1. 無料のツールを利用するメリット・デメリット

主なメリットは、初期投資を抑えつつ法令対応のテスト導入ができる点です。例えば、アップロード件数や保存容量に制限がある代わりに、電子署名やタイムスタンプ付与、「AI-OCR」（手書きや印字文字を認識してテキスト化する機能）などの主要機能を試せるサービスが増えています。
一方で、無料プランは機能・容量制限やサポート範囲の縮小、保存期間の短さなどの制約があり、将来の運用計画を考慮して選定する必要があります。特に、法令対応の有無や保存制限はツールによって異なるため、導入前に必ず確認しておくことが重要です。

1-2. 【企業規模別】無料プラン導入の目的

• 大企業：ツールの使いやすさやテスト導入のための利用
• 中小企業・個人事業主：運用負荷低減とコストの最適化を図るための利用

2. 無料で使える電子帳票システムの選び方

無料で利用できる電子帳票システムは、初期投資を抑えて導入可否を検証できるため、多くの企業が関心を持っています。しかし、サービスによって無料利用の条件や機能範囲は大きく異なります。ここでは、無料プランと無料トライアルの違いを整理し、導入時に確認すべき重要なポイントを解説します。

無料プランと無料トライアルの違い

• 無料プラン：利用期間の制限はなく、一定の機能を恒久的に無料で利用可能。ただし、帳票数や容量、ユーザー数などに上限が設定されるケースが多い（例：「SATSAVE」は500MBまで無料）。
• 無料トライアル：期間限定（7日～30日程度）で全機能を試せるプラン。操作感やフル機能の検証に適するが、期間終了後は有料契約が必要（例：「Bill One」は約1か月試用可）。

選定時に確認すべき5つのポイント

1. 機能制限：電子帳簿保存法対応、インボイス対応、タイムスタンプ、AI-OCRなど必要な機能が無料範囲に含まれているか。
2. 容量・期間制限：月間アップロード件数や保存容量、保存期間の上限を事前に確認。
3. 法令対応：改正電子帳簿保存法やインボイス制度への正式対応状況。国税庁の認定基準に準じているか。
4. サポート有無：無料利用時にチャット・メール・電話サポートが受けられるか。
5. データ移行の容易さ：将来の有料プラン移行や他サービスへの切替時にデータ引継ぎがスムーズか。

この比較から分かるように、無料プランは長期利用のコスト抑制に向き、無料トライアルは短期間で操作感と機能検証に適しています。

3. 無料プランが充実したおすすめ電子帳票システム11選

無料プランの内容が充実している電子帳票システムは、長期的にコストを抑えながら本格運用を試せる点が魅力です。ここでは、実務で使いやすく法令対応も整っている11サービスを紹介します。

1. とにかくコストをかけずに帳票管理を始めたい場合

• 「Zoho Invoice」：ユーザー数・発行数が無制限で、請求書・見積書作成から経費管理までカバー。
• 「SATSAVE」：容量500MBまでなら無期限利用可能。

2. 電子帳簿保存法・インボイス制度に確実対応したい場合

• 「バクラク電子帳簿保存」：AI-OCRやタイムスタンプ機能が利用可能。
• 「OPTiM電子帳簿保存」：AI解析と自動タグ付けで検索性が高く、法令対応も万全。

3. 請求書発行や送付も同時に行いたい場合

• 「freee」「マネーフォワード」：クラウド会計サービスとの連携が強み。
• 「Misoca」：郵送代行（有料）にも対応。
• 「board」：案件管理とセットで使えるためプロジェクト型業務に有効。

4. 受領した帳票をクラウドで一元管理したい場合

• 「Bill One」：受領請求書を自動データ化し、20件/月まで無料。
• 「SATSAVE」：容量500MBまで自由保存でき、全文検索にも対応。

5. 紙帳票のデジタル化やデータ入力の自動化を重視する場合

• 「バクラク」：AI-OCR精度が高く、アップロードした帳票を自動分類・タイムスタンプ付与可能。
• 「OPTiM」：AI解析と自動タグで検索・整理作業を効率化。

6. 社内の既存ツールと連携して運用したい場合

• 「freee」「マネーフォワード」：会計・給与・経費精算ツールとのデータ共有が容易。

4. オープンソースで利用できる電子帳票ツール3選

オープンソースの電子帳票ツールは、ライセンス費用が不要でカスタマイズ性が高く、特定の業務要件に合わせた独自システム構築が可能です。中小企業やスタートアップ、開発リソースを持つ企業にとっては、低コストかつ柔軟な選択肢となります。一方で、導入・運用には一定のITスキルや開発体制が求められます。

次の表では、これらのオープンソースツールを機能面で比較しています。

4-1. 「抹茶請求書」

「抹茶請求書」は、日本の商習慣に合わせたオープンソースの帳票管理ツールです。請求書、見積書、納品書に対応し、電子帳簿保存法にも準拠可能です。

• メリット：日本語UI、日本の商習慣対応、シンプルな操作性
• デメリット：クラウド提供はないためサーバー構築が必要

4-2. 「BillVektor」

「BillVektor」は、WordPressのプラグインとして動作する帳票発行ツールです。既存のWebサイトと統合でき、見積書・請求書・領収書の作成に対応します。

• メリット：WordPressサイトと統合可能、導入容易、「MFクラウド会計」や「freee」に一括インポートも可能
• デメリット：WordPress環境が前提

4-3. 「InvoicePlane」

「InvoicePlane」は、多言語・多通貨に対応したオープンソースの請求書管理システムです。支払い管理やレポート機能も搭載され、海外拠点や国際取引にも向いています。

• メリット：国際対応、豊富な管理機能
• デメリット：国内向け帳票フォーマット調整が必要

オープンソースツールは、ライセンス費用がかからず改変も自由なため、自社特有の業務フローや帳票レイアウトに合わせやすいのが特徴です。ただし、サーバー環境の構築・保守やセキュリティ対策は自社で担う必要があり、導入判断には技術面の準備が不可欠です。

5. 無料ツール利用時に注意すべき落とし穴と対策

無料の電子帳票システムは、コストを抑えて導入や試用ができる一方で、いくつかの注意点があります。これらを事前に把握しておくことで、後々のトラブルや追加コストを回避できます。

主な注意点5つ

1. 機能制限による業務の中断
   無料プランでは、アップロード件数や保存容量、利用可能な機能が制限される場合があります。月間上限を超えるとアップロードができず、業務が滞る恐れがあります。
2. 法令改正への対応遅れ
   電子帳簿保存法やインボイス制度の改正があった場合、無料プランでは更新やサポートが遅れる可能性があります。国税庁の要件変更への追随は重要な評価基準です。
3. データ移行の難しさ
   無料プランから有料プランや他サービスに移行する際、データ移行機能が十分でない場合があります。互換性やエクスポート形式を事前に確認しておく必要があります。
4. サポート体制の不足
   無料利用では、メールやチャットなどのサポートが制限されることが多く、トラブル発生時に自己解決が求められます。
5. セキュリティ面の不安
   無料プランはバックアップやアクセス制御などのセキュリティ機能が限定的なことがあります。

次の表では、無料利用時に想定されるリスクとその対策例をまとめています。

まとめると、無料利用は短期検証や小規模運用には有効ですが、中長期運用では機能制限やサポート不足が課題になります。導入前に制限やリスクを洗い出し、必要に応じて有料プランや他社製品への移行を視野に入れることが重要です。

6．助成金を活用した“無料→有料移行”の方法

電子帳票システムは、無料プランやトライアルを活用して効果を検証したうえで、有料版へ移行するのが理想的です。その際、国や自治体の助成金・補助金制度を使えば、導入コストを大幅に削減でき、場合によっては実質自己負担ゼロも可能です。本章では、代表的な助成金制度と、無料から有料へ移行する具体的なステップを解説します。

6-1. 有料の電子帳票システム導入には助成金がおすすめ

国や自治体が実施するデジタル化支援制度を利用することで、実質自己負担ゼロで高機能な電子帳票システムを導入する事例もあります。ここでは、主な助成金制度を2つ紹介します。
※採択後の支払いは一度自己資金で立て替えが必要です。

6-2. 助成金活用の可能性が高い電子帳票システム

6-3. 無料→有料移行の6ステップ

無料版での検証を経て、助成金を利用して有料版に移行する流れは次のとおりです。

1. 無料トライアルでの効果測定
   無料期間中に帳票発行件数、作業時間短縮率、エラー減少率などの数値を計測。導入効果を定量化することで、助成金申請時の説得力が高まります。
2. 対象制度の確認
   導入予定のシステムが補助金の対象か確認。
   （IT導入補助金では「登録済みITツール」が必須）
3. 申請準備
   事業計画書、見積書、効果予測資料を作成。
   「GビズID」など申請用アカウントも事前取得。
4. 申請・交付決定
   交付決定通知後に正式契約。決定前の契約は補助対象外。
5. 導入・運用開始
   有料版の運用を開始し、必要に応じて社内研修やマニュアル整備を実施。
6. 実績報告・補助金受領
   導入効果や運用状況を報告し、補助金が支給されます。

無料版で得られた改善数値を根拠に申請すると採択率が上がりますので、必ずトライアルは利用してください。また、申請スケジュールや契約タイミングを誤ると補助対象外になるため、しっかりと応募期間や資格、該当ツールを確認しましょう。

7.【まとめ】無料から始め助成金で有料導入へ踏み出そう

電子帳票システムは、無料版やオープンソースを活用すれば、初期費用ゼロで試験運用が可能です。まずは小規模導入で効果を数値化し、業務効率化や法令対応の実績を蓄積しましょう。その上で、IT導入補助金や自治体のDX推進補助などを活用すれば、高機能な有料版への移行費用を大幅に抑えられます。

重要なのは、「無料で効果を実証し、助成金で拡張」という流れを事前に設計することです。こうすることで、業務効率化と法令対応を両立しつつ、予算負担を最小限に抑えられます。