製品を導入することになった背景

トヨタT&S建設株式会社では、もともと車の販売店舗の外観パース作成に3DソフトとしてArchicadを活用していたが、ソフトの進化に伴い設計ツールとしての可能性が広がったことで、意匠設計の一部業務で本格導入が始まった。その後、会社全体でBIM運用への本格的なシフトを進める中で、工場で製作するプレキャストコンクリート(PCa)部材の設計とArchicadの相性の良さが評価され、標準設計ツールとして導入が決定した。特に「見える化」によって、設計ミスを未然に防ぎ、若手や外部との協働にも対応できる柔軟性が導入の大きな後押しとなった。

導入前に企業が抱えていた課題

建設現場での施工品質にばらつきがあり、特に天候や熟練工の確保に左右される現場施工の安定性が課題となっていた。また、複雑な構造物の設計においても、従来の2D設計図では施工前に全体像やリスクを把握することが難しく、若手社員や設計初心者の理解度にも限界があった。さらに、業務が分業制で進められる体制の中で、情報の共有や部門間の連携が十分に取れていないことも大きな問題とされていた。

導入前の課題に対する解決策

こうした課題を解消するため、トヨタT&S建設では、Archicadを活用して設計段階から建物の完成形を3Dモデルで“見える化”する仕組みを導入した。PCa工法で使用する標準化された部材を工場で設計段階から正確にモデル化することで、精度の高い施工計画が可能になり、現場での手戻りやミスの削減にもつながった。また、BIM推進グループを立ち上げ、各部門や地方営業所にまでArchicadの操作を広めるための教育体制を整え、チーム全体のBIMリテラシー向上を図った。

製品の導入により改善した業務

Archicadの導入によって、設計の各フェーズにおける情報の集約と共有がスムーズになり、分業体制の中でも整合性の取れたデータ管理が可能になった。特に、複雑な設計部分を事前にデジタルモックアップとして可視化することで、施工手順の確認やリスクの洗い出しが設計段階で完結するようになり、現場の負担が軽減された。さらに、他社との遠隔協働においても、BIMモデルをクラウドで共有することで距離の壁を越えてプロジェクトを推進できるようになり、外注先の選択肢拡大と技術習得の促進にもつながった。