業務委託の指示はどこまで?準委任の指揮命令と偽装請負の線引き

業務委託の指示はどこまで?準委任の指揮命令と偽装請負の線引き

目次

外部のマーケターや制作会社の担当者に、自社のSlackや週次の定例に入ってもらい、一緒に施策を進めることがあります。そのとき、チャットで直接「このバナーを今日中に直してください」と頼んでよいのか、迷う場面があります。開発の現場でも、外部のエンジニアにチャットで「午前中はこの機能を修正してください」と頼んでよいのか、という同じ迷いがあります。

業務委託の相手にも、欲しい成果物と仕様、期日、作り直しや変更の要求は、注文として伝えられます。ただし相手が受注した会社の社員なら、伝える先は本人ではなく、その会社の責任者です。厚生労働省の資料で問題とされているのは、仕事の割り振りや作業の順番、進め方、働く時間と場所、誰が担当するかを、発注側が決めて管理することです。

準委任の契約なら請負より広く指示できる、ということはありません。厚生労働省の疑義応答集は、準委任の契約でも、実態として発注者と受注者側の労働者との間に指揮命令関係があれば労働者派遣に当たると説明しています(第3集 Q1)。疑義応答集は第1集から第3集まであり、集によって番号の振り方が違うため、この記事では第1集・第3集を「Q」、第2集を「問」で示します。

相手が誰に雇われているかを確かめれば、チャット・会議・修正依頼などの場面で、誰に何を伝えればよいかを決められます。この記事は、2026年10月時点の37号告示、厚生労働省と労働局の疑義応答集・ガイドなどの資料、労働基準法研究会の報告(1985年)、法律の条文をもとに、デジタル化の窓口編集部が確認した範囲でまとめました。厚生労働省は、疑義応答集に載っている事例と異なる事例は「各都道府県労働局において実態に即して個別に判断することとなります」としています。個別の判断が要るときは、労働局や弁護士に相談してください。

まず、相手が誰に雇われているかを確かめる

同じ「業務委託」でも、相手が受注した会社の社員か、発注側と直接契約した個人か、会社を通して来た個人かで、見る基準が変わります。

図① 業務委託の相手が誰に雇われているかを、契約書の相手と来る人の雇われ方で確かめ、受注した会社の社員、直接契約した個人、会社を通して来た個人に分ける図

業務委託の相手が誰に雇われているかを、契約書の相手と来る人の雇われ方で確かめ、受注した会社の社員、直接契約した個人、会社を通して来た個人に分ける図

「偽装請負」という言葉は、2つの意味で使われます。厚生労働省のガイド(労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド)は、偽装請負と言われるものには、1つは実態として労働者派遣事業であると判断されるもの、もう1つは、会社から再委託された個人が、実態として労働基準法上の労働者であると判断されるなど、契約の形式と実態が合わないもの、の2種類があるとしています。1つ目は労働者派遣法の問題、2つ目は労働基準法の問題です。発注側と直接契約した個人が労働者に当たるかも、同じ労働基準法の基準で見ます。

相手の型

確かめ方

主に見る基準

① 受注した会社の社員(制作会社・代理店・SESの社員など)

契約書の相手は会社。来る人がその会社に雇われている社員かを、その会社に確かめる

労働者派遣に当たるか(偽装請負)

② 発注側と直接契約した個人(フリーランス。従業員のいない一人法人を含む)

契約書の相手がその人本人か、その人が1人で営む法人。紹介会社を通して知り合っても、契約が直接ならここ

その人が労働者と判断されるか(労働者性)

③ 会社を通して来たが、その会社に雇われていない個人(例:代理店から再委託を受けて入っているフリーランスのデザイナー)

契約書の相手は会社。来る人はその会社の社員ではなく、その会社から仕事を受けた個人

まず労働者と判断されるか。そのうえで、発注側の指揮命令を受けていれば偽装請負にもなる

一人法人を②に入れているのは、都道府県労働局・労働基準監督署のリーフレットが、法人化した人もフリーランスに含めて、労働者に当たるかの自己診断を案内しているためです。

もう1つ、代理店と契約していて、実際に来る人が、代理店から仕事を受けた別の会社(制作会社など)の社員という形があります。東京労働局は、業者Aが業者Bに発注し、Bが請けた仕事をそのまま業者Cに出し、Cの社員がAの現場でAやBの指示で働く形を「使用者不明型」として、偽装請負のパターンの1つに挙げています。この形で発注側がその社員に直接指揮命令すると、厚生労働省の行政解釈では、原則として①とは別の法律(職業安定法)の問題になり、発注側も罰則の対象になりえます(「偽装請負・労働者と判断されたら」の章)。来る人がどの会社の社員かを、契約の前に代理店に聞いておくのが1つの方法です(編集部の考え)。

受注した会社の社員の場合

①の型で問題になるのは、労働者派遣法の定義(第2条第1号)に当たるか、つまり、相手の会社に雇われている人に発注側が指揮命令しているかです。受注した会社が請負や準委任として成り立つ条件は、労働省(現在の厚生労働省)の告示(労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準、いわゆる37号告示)に書かれています。大きく分けると、受注した会社が自分で、業務の進め方の指示と評価、働く時間の指示と管理、服務の規律の指示と人の配置の決定を行うこと、そして、請け負った業務を発注側から独立して処理すること、の2つです。疑義応答集やガイドでは、受注した会社を「請負事業主」、その社員を「請負労働者」と呼んでいます。

③について、ガイドは、受注した会社から再委託された個人とその会社の間に雇用関係がなければ労働者派遣法の問題にはならないとしたうえで、その個人が労働者と判断され、「さらに、当該労働者が、注文主からの指揮命令を受けている場合には、労働者派遣事業に該当し、労働者派遣法に違反する偽装請負となります」と書いています。

発注側と直接契約した個人の場合

個人が労働者と同じ扱いになるかを判断するときは、労働基準法研究会が1985年(昭和60年)にまとめた報告(以下、昭和60年報告)の基準が、行政の判断で参考とされています。仕事の依頼を断る自由があるか、業務の進め方について具体的な指揮命令を受けているか、働く場所と時間を指定され管理されているか、本人の代わりに別の人が作業してよいか、報酬が働いた時間に応じて決まるか、などを総合して見ます。厚生労働省の研究会が2026年9月に公表した「これまでの議論の整理」は、この報告の判断基準の在り方などについて研究を続けるとしていて、新しい基準はまだ示されていません(2026年10月23日に確認)。

このうち業務の進め方について、昭和60年報告は「通常注文者が行う程度の指示等に止まる場合には、指揮監督を受けているとは言えない」としています。

成果に対して報酬を払う形の準委任(成果完成型)と請負の違いは、「準委任契約の成果完成型とは?意味や請負契約との違いを解説」で説明しています。

場面ごとの伝え方

注文として伝えられるのは、成果物、仕様、期日、変更や作り直しの要求です。相手が会社の社員なら会社の責任者に伝え、作業の割り振り・順番・進め方・時間・場所・担当者を発注側が決めて管理しないようにします。個人なら本人に伝え、毎日の仕事の配分や進め方を具体的に指示したり、働く時間と場所を決めて管理したりしないようにします。

図② 注文として伝えられること(成果物・期日・修正の例)と、発注側が決めて管理しないこと(作業の順番・割り振り・作業時間の例)を並べた図

注文として伝えられること(成果物・期日・修正の例)と、発注側が決めて管理しないこと(作業の順番・割り振り・作業時間の例)を並べた図

この章の場面ごとの伝え方は、厚生労働省の資料の考え方を、編集部がマーケティングの場面に当てはめたものです。疑義応答集の第3集はシステム開発を例にした資料で、マーケティング業務についての個別の判断は書かれていません。

冒頭の2つの頼み方に当てはめると、次のようになります(編集部の当てはめで、資料にこの例はありません)。「このバナーを今日中に直してください」は、直してほしい箇所と期日を伝える注文です。相手が制作会社の社員なら、担当者本人ではなく制作会社の責任者に送り、誰がいつ直すかは制作会社に決めてもらいます。第1集は、発注者が担当者に直接、作り直しや変更を指示することを偽装請負としています(Q2・Q11)。相手が直接契約したフリーランス本人なら、本人に修正の箇所と期日を伝えることは、注文者として通常の範囲の依頼と考えられます。

「午前中はこの機能を修正してください」は事情が違います。期日ではなく、午前中という作業時間を何に使うかを発注側が決めているからです。相手が受注した会社の社員なら、作業の順番や時間の使い方は受注した会社が決めることとされていて(37号告示)、責任者を通して伝えても中身は変わりません。相手が個人でも、毎日の仕事の配分や進め方の具体的な指示を受けて働いていることは、労働者と判断されやすくなる事情の1つに挙げられています(リーフレットの自己診断チェックリスト)。

注文と進め方の境目は、言葉だけでは分かりにくいところがあります。ガイドは、37号告示の判断基準を具体的に説明する中で、製造業務の例として、受注した会社は一定期間に処理すべき業務の内容や量の注文を発注者から受け、作業の割り付けや順序は自らの判断で決める、と書いています。マーケティングに当てはめると、「金曜までにバナーを3点」「メルマガは水曜まで、LPは金曜までに納めてほしい」は、何をいつまでにどれだけ欲しいかという注文です。「今日はバナーを先に片づけて、午後は記事に回ってください」「Aさんはメルマガ、Bさんはバナーを担当してください」は、作業の順番や時間の使い方、仕事の割り振りを発注側が決めています。どの成果物を優先してほしいかを伝えることと、作業の順番を指示することの境目は、資料の答えの中には示されていません。システム開発の例では、発注側の責任者が要求事項の一覧とその優先順位を決めるのが通常、という前提で書かれた問いがあります(第3集 Q4)。

次の表は、資料の考え方を編集部が場面に当てはめた目安です。条件と出典は、このあとの各項目に書いています。

場面

受注した会社の社員(①)

直接契約した個人(②)

修正・作り直し

会社の責任者に注文として伝える

本人に注文として伝える

チャット・定例

依頼は責任者に。中身は成果物・期日・変更まで

出席や在席の時間を決めて管理しない

担当者

特定の人を指名しない

選考を社員の採用と同じにしない

時間と場所

作業の日時は会社と打ち合わせる

業務の性質から必要な範囲を超えて指定・管理しない

会社を通して来た、その会社に雇われていない個人(③)については、場面ごとの記述が資料にありません。編集部の整理では、注文は契約の相手である会社に伝え(①の列)、本人の進め方・時間・場所を発注側が決めて管理しない(②の列)、という2つの注意を両方とも当てはめておくのが、資料の考え方に沿う形です。

施策の方針や依頼を伝える

疑義応答集の第2集には、通信回線導入の営業業務を請け負った会社の担当者が、回線工事のスケジュールを発注者に確認する例があります。担当者から請負業務に必要な範囲で問い合わせを受け、発注者が情報を提供することに限られるなら、それ自体は指揮命令に当たるとは言えず、直ちに労働者派遣事業と判断されることはない、とされています。一方で、「発注者が、工事スケジュールの情報提供に加えて、顧客への営業上の対応方針等を請負労働者に直接指示している場合は、労働者派遣事業と判断されることとなります」としています(第2集 問1)。

マーケティングに当てはめると、施策の目的やターゲット、使ってよい表現の決まり、期日、予算は、注文として伝える情報です。相手が受注した会社の社員なら、伝える先はその会社の責任者で、どの作業を誰がどの順で進めるかはその会社に決めてもらいます。「この層にはこのトーンで、火曜と木曜に配信したい」は表現の要件と配信日の注文ですが、「Aさんがまず原稿を書き、午後はBさんと入稿作業を」と担当者の割り振りや作業の順番まで発注側が決めると、責任者に宛てて書いても中身は変わりません。東京労働局は、現場に形式的に責任者を置いていても、その責任者が発注者の指示を個々の労働者に伝えるだけで、発注者が指示をしているのと実態は同じ形を、「形式だけ責任者型」として偽装請負のパターンの1つに挙げています。相手が個人なら、目的や仕様を伝えるのは注文者として通常の範囲ですが、日々の作業の進め方まで細かく決めて管理すると、労働者と判断されやすくなる事情になります。

チャット(Slack)と会議・定例

チャットや定例の場にいるかどうか、それだけで判断されるわけではありません。資料で問われているのは、その場で誰が誰に何を指示しているかです。

会議や打ち合わせについて、第2集 問9 は、受注した会社の管理責任者だけでなく、「管理責任者自身の判断で請負労働者が同席しても、それのみをもって直ちに労働者派遣事業と判断されることはありません」としています。依頼のメールも、管理責任者の了解のもとで担当者に同時に送ったことのみをもって、直ちに労働者派遣事業と判断されることはないとされています(問10)。

どちらにも、ただし書きがあります。打ち合わせやメールの中身に作業の順序や担当者への割り振りの詳細な指示が含まれていたり、作業方針の変更が日常的に指示されたり、発注者が担当者に直接返信を求めたりしている場合など、受注した会社が自分で業務の進め方を指示しているとは認められない場合は、労働者派遣事業と判断されることになる、とされています(問9・問10)。

業務に関係のない日常的な会話は、指揮命令に当たらないとされています(第1集 Q1)。

チャットツールやプロジェクト管理ツールについては、システム開発の例ですが、第3集が、双方の関係者全員が参加していても、両者が対等な関係のもとで協働し、受注側の担当者が自律的に開発を進めているなら偽装請負と判断されるものではないとしたうえで、そうした場で発注者側から受注者側の担当者に「直接、業務の遂行方法や労働時間等に関する指示などの指揮命令が行われていると認められるような場合には、偽装請負と判断されることになります」としています(第3集 Q6)。2026年5月に加わった第3集 Q8 で、この考え方はアジャイル型以外のシステム開発にも当てはまるとされました。

Slackで受注した会社の担当者と一緒に動くなら、依頼を書くチャンネルを決め、依頼は受注した会社の責任者に宛てて書き、担当者への個別のDMで作業を頼まない、といった決め方が考えられます。責任者をメンションして書いても、中身が担当者の作業の順番や割り振りの詳細な指示なら、問10 のただし書きが挙げている形に近づきます。書く中身は、成果物・仕様・期日・変更の要求にとどめます。相手が個人なら、定例への出席を毎回義務にしたり、決まった時間にチャットにいることを求めたりすると、働く時間を指定して管理していることに近づきます。

担当者からSlackで質問が来たときに、施策の背景や素材の置き場所を答えるのは、問1 の情報提供に近い場面です(編集部の当てはめ)。システム開発の例ですが、第3集 Q4 も、受注側の担当者が自律的に開発を進めている限り、要件をはっきりさせるための説明や情報提供をしたことだけで、直ちに偽装請負と判断されるわけではないとしています。

修正・作り直し・仕様の変更

記事やバナー、広告文の修正を頼むのは、日常的な場面です。受注した会社の担当者が作ったものの修正は、その会社の責任者に「この点を、こう直してほしい」と注文として伝えます。第1集 Q2 によると、受注した会社への作り直しの要求は偽装請負に当たらない一方、発注者が直接、担当者に作業工程の変更や再製作を指示した場合は偽装請負と判断されます。軽微な変更についても、第1集 Q11 は「直接発注者から請負労働者に対して変更指示をすることは偽装請負にあたります。一方、発注者から請負事業主に対して、変更に関する説明、指示等が行われていれば、特に問題はありません」としています。

相手が個人なら、修正の依頼そのものは注文者として自然なことです。ただし、2024年11月に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス法)では、従業員を使う発注者(法人なら役員が2人以上いる場合も含む)が、従業員のいないフリーランスに1か月以上の業務委託をした場合、相手に責任がないのに給付の内容を変えさせたり、受け取ったあとにやり直させたりして、相手の利益を不当に害することが禁じられています(第5条第2項第2号)。

手順書・マニュアル・研修

口頭やチャットで担当者に直接言わなくても、作業の内容や順番を手順書で細かく決めていれば、問題は同じです。第1集は、口頭での指示に限らず、「発注者が作業の内容、順序、方法等に関して文書等で詳細に示し、そのとおりに請負事業主が作業を行っている場合も、発注者による指示その他の管理を行わせていると判断され、偽装請負と判断されることになります」としています(Q7)。第2集も、調理業務の例で、指示書の内容が献立ごとの労働者の数を特定したり、作業の割り付けまで示したりしている場合は、発注者が実質的に指示や管理を行っていると認められるとしています(問6)。

ブランドの表記の決まりや、使ってよい画像の条件のように、成果物が満たすべき要件を示すことと、作業の手順と順番を細かく決めてそのとおりに作業させることは別のものです。相手が個人の場合も、仕様書や指示書を渡すことが「通常「注文者」が行う程度の指示にとどまる場合」は、指揮監督関係を肯定する要素にならない例として挙げられています(フリーランス・ガイドライン)。

受注した会社の担当者に向けて、発注側が説明会や研修を開く場面もあります。第1集 Q10 は、発注者が要件を逸脱して担当者に技術指導などを行うことはできないとしたうえで、製造業の例として、新製品の製造に入るときに、発注者が受注した会社に仕様などを補足的に説明する際、受注した会社の監督の下で担当者に説明を受けさせる場合などを、偽装請負と判断されるものではない例に挙げています。

時間・場所・席(1人で常駐してもらう場合を含む)

受注した会社の社員に入ってもらう場合、作業の日時は本人ではなくその会社と事前に打ち合わせて決め、業務中の指示はその会社の責任者を通します。ガイドは、作業の日時を事前に受注した会社と打ち合わせているか、業務中は発注者から直接指示を受けることのないよう書面が作成されているか、その会社の責任者を通じて指示が行われているか、その会社が業務時間の実績を把握しているか、を総合して見るとしています。第2集 問11 は、受注した会社は自社の就業規則や服務規律に基づいて社員に指揮命令する必要があるとしたうえで、施設の管理や安全衛生など合理的な理由があって、結果的に発注者と同じ就業時間や服務規律になったとしても、それのみをもって直ちに労働者派遣事業と判断されることはないとしています。

発注側の事務所で作業してもらう場合について、第1集 Q5 は、受注した会社が自分で業務の進め方を指示し、独立して業務を処理していれば、作業スペースがパーテーションなどで区分されていなかったり、発注側の社員と受注した会社の社員が混在していたりしても、それだけをもって偽装請負と判断されるものではないとしています。ただし、席が分かれていないことなどが原因で、発注者が担当者に業務の進め方を直接指示してしまう場合は、偽装請負と判断されることになるとしています。

受注した会社の社員が1人だけで発注側の事務所に入る場合について、第1集 Q4 は、作業者が1人しかおらず管理責任者を兼ねている場合、「実態的には発注者から管理責任者への注文が、発注者から請負労働者への指揮命令となることから、偽装請負と判断されることになります」としています。第2集 問8 は、その人以外の管理責任者や受注した会社が指示や管理を行う必要があり、発注者と管理責任者との確実な連絡体制をあらかじめ作っておくことなどを挙げています。

相手が個人の場合、働く場所と時間を指定し管理していることは、一般的には、労働者と判断されやすくなる基本的な事情とされています。ただし、業務の性質や安全の確保のために必然的に場所と時間が決まる場合もあり、昭和60年報告は、その指定が業務の性質によるものか、指揮命令の必要によるものかを見極める必要があるとしています。

担当者の決め方

人を選ぶことの扱いは、相手の型によって大きく違います。直接契約する個人の場合、経歴を見たり会ったりして選ぶことは、契約の相手を選ぶことそのものです。ただし昭和60年報告は、委託の際の選考の過程が正規従業員の採用の場合とほとんど同じであることなどを、労働者と判断する方向の補強事由とした裁判例がある、と紹介しています。

受注した会社の社員の場合は、事情が違います。第2集 問13 は、発注者が担当者の職務経歴書を求めたり事前面談を行ったりすると、一般的には配置の決定に影響を与えるので、労働者派遣事業などと判断されることがあるとしています。第3集 Q7 は、発注者が特定の人を指名して業務に就かせたり、特定の人の就業を拒否したりすると、配置の決定に関与していると判断され、適正な請負とは認められないとしています。一方で、システム開発の例ですが、個人を特定できず、それによって指名や就業の拒否ができないスキルシートなら、提出を求めたことだけで直ちに偽装請負と判断されるわけではないとしています(第3集 Q7)。

施設の保安などのために、入館する人の氏名を事前に出してもらうことも、人の決定を受注した会社が自ら行っている限り、それだけで配置に関与しているとは言えないとされています(第2集 問12)。

外部のマーケターに頼むとき、「提案した人に、実装も担当してほしい」と思う場面があります。相手が受注した会社の社員なら、特定の人を担当にするよう求めることは、第3集 Q7 が適正な請負とは認められないとしている「指名」に当たりえます。システム開発の例で資料が示している確かめ方は、個人を特定できない形のスキルシートで、会社の技術力を見るところまでです(第3集 Q7)。相手が個人なら、その人と直接契約すること自体が担当者を決めることになります。会社を通して来た個人(③)の面談や指名については、資料に直接の記述はありません。

報酬の決め方と稼働時間の報告

運用代行などを、担当する人数や作業時間に応じた料金で頼む場合は、受注した会社が自分で人を配置し、作業を管理しているかが問われます。受注した会社との間で、成果物や作業の完成ではなく、業務に投入する労働力(人数)について受発注を行い、その単価で料金を精算している場合、第1集 Q8 は「単なる労働力の提供を行われているにすぎず、その場合には偽装請負と判断されることになります」としています。一方、第2集 問7 は、販売やサービスなど「仕事を完成させ目的物を引き渡す」形ではない業務では、人数や時間に比例する形で料金を決めることに合理的な理由がある場合もあり、契約や精算の形だけで直ちに判断されるわけではないとしています。

相手が個人の場合、報酬が時間給や日給など時間を単位として計算されることは、労働者と判断されやすくなる事情の例として挙げられています(フリーランス・ガイドライン)。稼働時間の報告については、昭和60年報告が在宅勤務者の例で、勤務時間が定められ、本人の自主管理と報告によって管理されている場合を、指揮監督関係を肯定する重要な要素としています。報告を求めるなら、それが報酬の計算のためか、働く時間の管理のためかを、発注側で確かめておきます。

ツールのアカウント・権限とタスクの割り当て

広告やアクセス解析の管理画面の権限を外部の人に渡すことそのものを扱った公的な資料は、編集部が確認した範囲では見つかりませんでした。関係するのは次の2点です。

1つは、受注した会社が業務を独立して処理しているかです。37号告示は、業務に必要な機械や設備を自分で用意するか、自ら行う企画や専門的な技術・経験に基づいて処理するか、の「いずれか」に当たることを求めています。ガイドは、この技術や経験は「事業主が企業体として有する技術、技能等に関するものであり、業務を処理する個々の労働者が有する技術、技能等に関するものではない」としています。担当者個人が専門家であっても、それだけではこの条件を満たしたことになりません。

条件は「いずれか」なので、自前の設備を使うことは必ずしも求められていません。車両運行管理の例ですが、第2集 問15 は、運転だけでなく、車両の整備や修理、燃料や消耗品の購入、事務手続、事故の処理まで含めて車両運行管理の全体を請け負う場合は、多くの場合、受注した会社が自らの企画や専門的な技術・経験で業務を処理していると判断できるとしています。そのうえで、この場合は自分で調達した機械などで業務を処理する必要は必ずしもないので、発注者の車両を使い、その整備・修理の費用を発注者が負担しても特に問題はないとしています。一方で、発注者の車両を、発注者が指定する目的地まで運転するだけの業務は、単なる労働力の提供と認められ、労働者派遣事業と判断される可能性が高まるとしています。広告の管理画面の権限を渡す場面に当てはめると、問われるのは権限を渡すことそのものより、受注した会社が自分の企画や専門性で運用しているか、そのうえで担当者への指示や管理を自ら行っているかという点になります(編集部の当てはめ)。

もう1つは、誰がタスクを割り当てるかです。発注者が担当者一人ひとりへの仕事の割り付けを決めることは、偽装請負と判断される例に挙がっています(第1集 Q7)。プロジェクト管理ツールでは、タスクは受注した会社の責任者に割り当て、担当者への振り分けは受注した会社に任せる運用にしておくと、この点に沿います。

偽装請負・労働者と判断されたら

何が起きるかは、相手の型と契約の形で変わります。発注側に起きることには、行政の指導や勧告、労働契約の申込みのみなし、契約の形によっては罰則があります。

受注した会社の社員に、発注側が直接指揮命令していた場合

受注した会社が労働者派遣事業の許可を持っていない場合、許可のない労働者派遣事業として、その会社で違反行為をした人は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象になり(労働者派遣法 第59条第2号)、会社も罰金刑の対象になります(第62条)。発注側は、許可のない会社から派遣を受けたことになり(第24条の2の違反)、行政の指導・助言(第48条)や、勧告と、従わないときの公表(第49条の2)の対象になります。第24条の2の違反そのものを罰する規定はありません。

発注側には、その社員に対して、それまでと同じ労働条件で労働契約を申し込んだものとみなされる制度もあります(第40条の6)。社員が承諾すれば、発注側との労働契約が成り立ちます。第40条の6第1項は、みなしの対象として、第24条の2に違反して派遣を受けること(第2号)や、労働者派遣法などの適用を免れる目的で、請負などの名目で契約して派遣を受けること(第5号)などを挙げています。いずれも、違法な派遣に当たることを知らず、知らなかったことに過失がない場合は除かれます。

第5号の「免れる目的」について、厚生労働省の行政解釈は、「指揮命令等を行い偽装請負等の状態となったことのみをもって「偽装請負等の目的」を推定するものではない」としています。同じ行政解釈は、複数の号に当たる場合、どれを根拠にみなしを主張するかは働いた人が選べるともしています。厚生労働省の資料には、業務委託契約で受託した会社の社員が、発注した会社の指揮命令を受けて働いていた事案を、許可のない会社から派遣を受けた第24条の2の違反として指導し、その社員2名が発注した会社に直接雇用された例が載っています。みなしの規定は民事上の効力を持つ規定で、争いになった場合は裁判所が個別に判断します。

受注した会社が派遣の許可を持っている場合は、第24条の2と第59条第2号には当たりません。第40条の6第1項第5号は、許可の有無を問いません。許可を持っている会社が相手でも、実態が派遣であれば、発注側が行政の指導・助言(第48条)の対象になることは変わりません。厚生労働省の資料3も、偽装請負について請負業務の発注者に行う指導を、許可のない派遣とは別の区分で挙げています。

代理店を通した先の、制作会社の社員に直接指揮命令していた場合

代理店(元請)と契約し、実際には代理店から仕事を受けた制作会社(下請)の社員が来ていて、その社員に発注側が直接指揮命令していた場合、厚生労働省の行政解釈は、原則として、発注側が元請から労働者供給を受けているものと解されるとしています。職業安定法 第44条は、労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に働かせることを禁じていて、違反した者は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象になります(第64条第10号。会社にも罰金刑 第67条)。この形では、発注側からの労働契約の申込みのみなしは、原則として適用されないと解されています。第44条は労働者供給事業を行うことも禁じていますが、職業安定法での元請と下請それぞれの扱いは、この記事で確認した資料には書かれていません。

直接契約した個人が、労働者と判断された場合

その個人との関係で、労働基準法などの労働関係の法律が適用され、フリーランス法は適用されません。

(拘禁刑は、2025年6月1日施行の刑法改正で懲役と禁錮をまとめたものです。それより前の資料では「懲役」と書かれています。労働者派遣法・職業安定法は e-Gov の現行条文で2026年10月23日に確認)

外部の人と一緒に動くときに決めておくこと(今の運用の見直しにも)

すでに外部の人と動いている場合も、次の9つを見直しておくと、場面ごとに誰に何を伝えるかを決めやすくなると編集部は考えます。

  1. 契約の相手と、その人が誰に雇われているか(3つの型。代理店の先の制作会社の社員が来る形でないか)

  2. 受注した会社の管理責任者と、依頼を通す経路(1人で入ってもらうなら、本人とは別の管理責任者)

  3. チャットの使い方(依頼を書くチャンネル、DMやメンションの扱い、発注側で依頼を書く人)

  4. 誰が何を決めるか(発注側が伝える注文と、受注した会社が決める進め方)を、双方の役割と権限としてあらかじめ明確にして合意しておく(第3集 Q2 は、システム開発の例で、双方の関係者の役割や権限、業務の進め方などをあらかじめ明確にし、発注者と受注者の間で合意しておくことを挙げている)

  5. 注文の伝え方(何をいつまでにどれだけ欲しいかは、発注側から受注した会社へ。作業の割り振り・順番・急ぎ具合は受注した会社が決める)と、修正依頼の宛先

  6. 時間と場所(指定するなら、業務の性質や安全のための理由があるか)

  7. 担当者の決め方(受注した会社の社員は指名しない。スキルシートは個人を特定しない形で。個人は、選考の過程を社員の採用と同じにしない)

  8. 報酬の決め方(受注した会社と、成果物や作業の完成ではなく人数(投入する労働力)で受発注し、その単価で精算していると、偽装請負と判断される=第1集 Q8。仕事を完成させて引き渡す形ではない業務で人数や時間に比例して料金を決めるなら、そうする合理的な理由があるか、その会社が自分で人を配置し、作業を管理しているかを確かめる=第2集 問7。個人は、時間単位にする場合の注意)

  9. 社内で関わる人への周知(Slackに入る社員の誰もが、受注した会社の担当者に直接作業を頼まず、決めた経路で依頼するようにする。第3集 Q2 は、システム開発の例で、関わる人に事前研修などで認識を共有しておくことを挙げている)

迷ったときの相談先は、受注した会社の社員との関係なら、都道府県労働局の需給調整事業の担当部署です(労働局によって、需給調整事業部・需給調整事業課・需給調整事業室などの名前になっています)。個人の働き方について個別の判断が要るときは、弁護士などに相談してください。

外部のマーケターに、施策の判断から実装まで任せて社内で動いてもらう形(FDM)を考えている場合は、任せる判断の範囲と相手の体制の確かめ方を「FDM(Forward Deployed Marketer)とは?代理店・コンサルとの違い」で説明しています。社内に何を移し、外部とどう組むかは、「マーケティング内製化の進め方」で説明しています。

受注側の人へ

業務委託で働いている人が、自分の働き方を確かめるときの手がかりです。

  • 都道府県労働局・労働基準監督署のフリーランス向けのリーフレットには、働き方の自己診断チェックリストがあります。たとえば「毎日の仕事量や配分、進め方」を自分の裁量で決めているか、委託した会社から具体的に指示されているか、就業の場所や時間を自分で決められるか、委託した会社から決められているか、を選びます。チェックリストのB(委託した会社から具体的な指示を受けて働く、就業の場所や時間を具体的に決められている、などの側)に当てはまる場合は、労働者性を肯定する方向に働く事情になるとされています。

  • 契約で予定していない業務を頼まれることが続くなら、契約の範囲を確かめ、追加の業務は追加の注文として受けるよう、相手(または自分が契約している会社)と話しておくのが1つの方法です(編集部の考え)。昭和60年報告は、「使用者」の命令や依頼で、通常予定されている業務以外の業務に従事することがある場合を、指揮監督を受けているとの判断を補強する重要な要素となるだろう、としています。

  • 罰則について、編集部が確認した労働者派遣法と職業安定法の条文には、働いた本人を罰する規定は見当たりませんでした。罰則の対象は、許可なく労働者派遣事業を行った会社や、労働者供給を受けた側などです。ただし、受注した会社で違反に当たる行為をした人は、その人が罰せられ、会社も罰金刑の対象になります(労働者派遣法 第59条第2号・第62条)。

  • エージェントや代理店と契約していて、常駐先の会社から直接指示を受けている場合は、下の相談先に相談してください。

  • 相談先は、労働基準監督署の「労働者性に疑義がある方の労働基準法等違反相談窓口」(2024年11月1日から全国に設置。自分の働き方が労働者に当たるかもしれないと考えるフリーランス向け)と、都道府県労働局の需給調整事業の担当部署(局によって需給調整事業部・需給調整事業課・需給調整事業室など)です。

参考・出典

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