2026年10月14日、国内電通グループ4社(電通・電通デジタル・電通総研・イグニション・ポイント)が「国内電通グループ、3,000人規模のFDE・FDMスキル開発を開始」と発表しました。このニュースでFDMという言葉を初めて見ると、自社が付き合っている広告代理店やコンサルティング会社と何が違うのか、という疑問が浮かびます。
FDM(Forward Deployed Marketer)は、顧客企業のマーケティングの現場に入り、施策を決めるところから、実装と効果の測定までを受け持つマーケターを指す言葉です。多くの会社は、実装にAIを使うと説明しています。エンジニアの職種として先に広まったFDE(Forward Deployed Engineer)の考え方を、マーケティングに当てはめた呼び方で、3Dプリンタの方式(熱溶解積層)を指すFDMとは別のものです。
代理店やコンサルとの違いは、施策を決める人が、作る・設定する・測るところまで自分で手を動かすかどうかにあります。コンサルティング会社は方針と計画をまとめ、作る作業は、頼む側が自社で、または別に頼む制作会社などで受け持つことが多く、広告代理店や運用代行は主に任された施策の運用を受け持ちます。FDMは、マーケティングの一連の仕事を自分で手がけてきた人が頼む側の中に入り、施策を決めるところから、実装と効果の測定までを同じ人が通して受け持つ形です。ただ、FDMには資格がなく、名乗るだけなら誰でもできます。この記事では、頼む前に確かめる3つの点(提案した人が自分で手を動かして作るか、どこまでの判断を任せるか、終わったあと何が自社の名義で残るか)と、自社に合うかどうか、相談する前に社内で決めておくことを、2026年10月時点で公開されている各社の発表や解説、個人の発信、求人、公的な資料から、デジタル化の窓口編集部が確認した範囲でまとめました。FDMはまだ定義が固まっていない言葉なので、新しい発表があれば見直します。
FDM(Forward Deployed Marketer)とは
各社の説明をまとめると、FDMは、顧客企業のマーケティングの現場に入り、施策を決めるところから、自分で実装して効果を確かめるところまでを受け持つマーケターです。ただし、決まった定義はまだありません。編集部が確認した範囲では公的な資格や認定もなく、会社によって指している仕事の範囲が少しずつ違います。
FDEのマーケティング版として生まれた言葉
FDMのもとになったFDEは、顧客の現場に入り込み、課題の把握から実装まで受け持つエンジニアの職種です。米国のデータ分析ソフトの会社Palantir(パランティア)で始まった職種とされ、同社の求人(職名は Forward Deployed Software Engineer)では、今も「Delta」という部署の職種として、顧客と直接働き、顧客が抱える最も大きな問題をすばやく理解して解決策を設計・実装する仕事と説明されています。
2026年には、3月18日にAccentureがMicrosoftと組んでFDEの専門組織を立ち上げると発表し、生成AIの開発会社Anthropicも、主要な顧客の中に直接入り込むFDEを募集しています。
FDMは、このFDEの「Engineer」を「Marketer」に置き換えた呼び方です。広告代理店のFinTは、自社のnoteで「EngineerをMarketerに置き換えてできたのが、FDM(Forward Deployed Marketer)。これが名付けの経緯です」と説明しています。博報堂も、2026年8月のコラムでFDMを「まさにそのマーケティング版」と位置づけています。
定義は、まだ会社ごとに違う
日本でFDMを説明している会社の言葉を並べると、顧客の現場に入るという点は共通していて、多くは実装まで受け持つと説明しています。一方で、AIをどこまで使うか、何を目標にするかは会社によって違います。
会社(公開時期) | FDMの説明(原文) |
|---|---|
電通ほか国内電通グループ(2026年10月) | 「生成AI活用を軸に、クライアントの現場で事業変革を支援する実践型人財」(FDEとFDMに共通の注) |
博報堂(2026年8月) | 「クライアント企業の内部に深く入り込み、現場のリアルな摩擦や課題を肌で感じ取りながら、ビジネス/業務/IT戦略をAIも駆使しながら『動くシステム』や『実運用可能なワークフロー』へと変換するハイブリッドな専門家」 |
ポップコーン(2026年10月) | 「当社のマーケターがクライアント企業のマーケティング組織に参画し、AIを活用して施策の実装から自動化までを担う」 |
ととっぷ(2026年10月) | 「顧客の事業の中に入り、数字から打ち手を決めて自分で実装し、効果を測るところまで受け持つマーケティングの担当」 |
受け持つ範囲の言い方を見ると、電通は事業変革の支援、博報堂は戦略を動くシステムや運用できるワークフローに変えること、ポップコーンは施策の実装と自動化、ととっぷは打ち手の実装と効果の測定と、会社ごとに違います。
海外でも、同じ名前が中身の違う仕事に使われています。マーケティングのSaaSを提供するGrowth Methodの整理では、FDMという肩書きを、ツールの会社が自社製品の導入先に入って顧客事例を作る仕事、代理店が顧客の社内でAIの仕組みを作る仕事、社内のマーケターにAIを根付かせる社内の仕事、の3種類が共有しています。3つ目の例に挙げられたStripeの求人の職名は「Forward Deployed AI Accelerator, Marketing」で、FDMという名前ではありません。
資格がないことは、FDMを名乗って仕事をしている人も認めています。集客支援の仕事をしてきた岸本成氏は、自身のサイトで「資格や認定があるわけではないので、名乗ってしまえば誰でもなれる、いわば『自称FDM』の肩書きでもあります」と書き、続けて自身の実績を説明しています。
FDMは「Forward Deployed Marketing」(働き方の呼び名)と書かれることもあり、ポップコーンは「フォワードデプロイド・マーケター」とカタカナで表記しています。
いつから使われている言葉か
編集部が確認できた範囲では、FDMという言葉は2025年秋に英語圏で、2026年2月に日本で使われ始めています。
時期 | 出来事 |
|---|---|
2025年9月 | 海外のマーケティング会社Myosinがブログで「Forward Deployed Marketing」を紹介 |
2026年2月 | 107 Designの西川陽一氏がnoteで「『FDE』ならぬ『FDM』」という呼び方を提案 |
2026年4月 | 日経クロストレンドが西口一希氏の記事「広告代理店が直面する構造的危機 西口氏が提唱『FDM』に生存の道はあり」を掲載 |
2026年5月 | AIでソフトウェア開発を行う「Devin」を提供する米国のCognitionが、3月に「Customer Marketer」の名前で出していた求人の職名を「Forward Deployed Marketer」に変える |
2026年8月 | FinTがFDMの伴走するサービス「ジリツAI」を発表、博報堂がFDMを扱うコラムを公開 |
2026年10月 | ポップコーンがFDM事業を開始、国内電通グループがFDE・FDMの育成を発表 |
FinTは「FinTが新しく定義した役割」、Myosinは自分たちがこの言葉を使い始めた、とそれぞれ書いています。確認できた資料からは、どこか1社が始めた言葉ではなく、FDEが広まるなかで、複数の会社や個人がそれぞれマーケティングに置き換えて使い始めた言葉だと考えられます。
電通グループの「3,000人」は何の数字か
約3,000人は、FDEとFDMのスキルを身につける育成プログラムの対象人数です。発表では「国内電通グループ内の約3,000人を対象に、『Gemini Enterprise』の実践的な活用方法から、業務フローへの効果的な組み込みまでを習得するプログラムを開始します」と説明されていて、FDEとFDMそれぞれの人数や、プログラムの期間は書かれていません。
取引先に向けては、「FDEが、クライアントのビジネス現場に入り込み、伴走型でAI変革プロジェクトを推進します」と、支援の体制を強めることも発表しています。ただし、引用した文の主語はFDEで、発表には、FDMとして相談する窓口や料金は書かれていません(2026年10月時点)。
なぜマーケティングでFDMなのか
FDMを説明する各社は、背景として、AIのツールを入れても業務に組み込めないという問題と、戦略・システム・日々の運用を別々の会社や部署が受け持っているという問題を挙げています。生成AIで、1人が方針から実装まで受け持てる範囲が広がったという説明もあります。
ツールはあっても、使いこなせる人がいない
日経クロストレンドの記事で、西口一希氏は、AIの導入で多くの企業が直面しているのは「『ツールはあっても、使いこなせる人がいない』『既存の業務プロセスとかみ合わない』という実装の壁です」と書いています。そのうえで、「『マーケティング』や『広告』の領域でも、全く同じ構造の問題が起きているのではないでしょうか」と問いかけています。
1つ目の「ツールはあっても、使いこなせる人がいない」を社内のマーケティング部門の仕事に当てはめると、たとえば、ChatGPTやGeminiを契約しても、使っているのは一部の担当者だけで、広告運用やコンテンツ制作の手順は以前のまま、という状態です。ツールを契約する人はいても、業務の手順をツールに合わせて作り直す人がいない、ということになります。
戦略・システム・運用の担当が分かれている
博報堂は先のコラムで、戦略と実行の間にある「実行格差(Execution Gap)」の原因を、「戦略や業務を描くコンサルタント、システムを構築するITベンダー、そして実際に日々の施策を運用する現場のマーケターや営業が、それぞれ分断された状態で動いているため」と説明しています。
このように、戦略、システム、日々の運用を別々の担当が受け持つ分業そのものは、それぞれに理由のある形です。ただ、方針を立てた人と運用する人が別々だと、運用の現場で見つかった問題が方針に戻りにくくなります。博報堂は、FDMを、戦略を「動くシステム」や「実運用可能なワークフロー」に変えるところまで受け持つ専門家として説明しています。TaTapも、提案する人と実行する人が別々になる従来の支援に対して、FDM型の支援を「同じ人が最後まで見る」形として説明しています。FDMを名乗る相手について、方針を提案した人がそのまま実装と運用まで受け持つのかを確かめるのは、このためです。
AIで、1人が受け持てる範囲が広がった
1人で方針から実装まで受け持てるようになった理由を、Growth Methodは、AIのコーディングツールなどが作る作業を十分に担えるようになり、マーケターが専門家に頼まなくても、サイトの変更や小さなツールづくり、動画の制作をできるようになったためだと説明しています。FDMを掲げる国内の会社にも、AIを仕事の中心に置いている会社があります。たとえばポップコーンは、リサーチやコンテンツ制作、広告やSEOの計測・分析、レポート作成をAIのパイプラインで自動化し、顧客企業のアカウントと環境に作ると説明しています。
Growth Methodは、実際によく見られるのは、新しく雇う職種というより、これまで専門家に頼んでいたエンジニアリングやデザイン、制作の仕事を、既存のマーケターが引き受けるようになった姿だとも書いています。外部の人として迎えるなら、誰に頼み、何を引き渡してもらうかを考えることになります。社内のマーケターの仕事の広がりとして捉えるなら、誰を育て、どの作業をAIに任せるかを考えることになります。
FDMは何をするのか(業務の例と進め方)
FDMを掲げる会社の説明では、最初に今の業務とデータを洗い出し、どこから手をつけるかを決めてから仕組みを作る、という流れが共通しています。期間や、終わったあとの扱いは会社によって違います。
図① FDMを掲げる会社の説明をもとに編集部がまとめた流れ。洗い出す、決める、作る・設定する、測る、残す(引き渡す場合)の5段階。期間や、終わったあとの扱いは会社によって違う

業務の例
ポップコーンは、FDM事業の対象業務の例として、次の6つを挙げています。
SEO/AIO・オウンドメディアの運用(キーワード選定から制作、入稿、改善まで)
広告運用における計測設計と改善サイクルの構築
リード獲得の仕組み化(フォーム営業・メール営業の設計と運用)
提案書・営業資料・月次報告のAIによる生成体制の構築
採用広報のコンテンツ制作と応募データの自動集計
競合・市場リサーチの定期レポート作成
ほかの会社では、宿泊施設向けのリトラがInstagramの投稿や口コミの運用、Meta広告、SEOなどを、Darkroomが広告やクリエイティブ、SEOなど毎週繰り返す業務を挙げています。
どれも、これまで代理店や制作会社、社内の担当者がそれぞれ回してきた業務です。ポップコーンやFinT、海外のMyosinやStacked GTMの説明では、これらの業務を外部の人が代わりにこなし続けることよりも、AIを組み込んだ手順に作り直して、頼む側の社内で回るようにすることに重きが置かれています。一方で、リトラやととっぷは、頼む側の中に入って実際の作業を受け持つ外部の担当としてFDMを説明しています。
進め方と期間
会社 | 進め方と期間(各社の説明) |
|---|---|
ポップコーン | 初回診断(60分のヒアリング、3営業日以内に報告)→棚卸し(常駐開始後2週間)→常駐(3か月〜)→引き渡し(継続運用も選べる) |
ととっぷ | 最初の2〜4週間で、見立て、1つの打ち手の実装、前後の比較を一度回す。その後は任せる範囲と実装の量で月額を見積もる |
Myosin(海外) | 90日を、診断と優先順位づけ(1〜30日目)、構築と検証(31〜60日目)、定着と引き渡し(61〜90日目)に分ける |
Stacked GTM(海外) | 1回の支援で1つの課題に取り組み、期間は90日で固定。終了時に仕組み一式を引き渡す |
Darkroom(海外) | 最初の1か月で、Darkroomの導入チームが、同社が運用するチャネルについて、頼む側のチームが毎週繰り返している業務を洗い出す。統合には2〜4週間かかる |
期間は、90日で区切る会社(Myosin、Stacked GTM)もあれば、3か月以上の常駐(ポップコーン)や、月額や継続の契約で続ける会社(ととっぷ、Darkroom)もあります。
常駐は必要か
FDMを掲げる各社は「現場に入る」と説明していますが、毎日顧客の会社に通う形とは限りません。ポップコーンは、進め方の段階を「常駐」と呼びながら、訪問とオンラインを組み合わせて提供するとしています。クリニック向けのととっぷは閲覧権限を受け取ってオンラインで進めると書き、宿泊施設向けのリトラも、現場に入るとは「常駐するという意味ではありません」と説明しています。
一方で、現場に入る支援は、支援する側の負担が大きい仕事でもあります。SNSマーケティング支援のTaTapは、自社の解説で「支援側の負荷が高いです。現場に入る時間を確保する必要があるため、同時に見られる企業の数は限られます」と書いています。自身もFDMとして仕事をしている西川陽一氏も、Xの投稿で、負荷が非常に大きい仕事だと述べています。頼む前に、担当者が同時に何社を受け持っているかを確かめておくと、どの程度関わってもらえるかの見当がつきます。
FDMは、代理店やコンサルの言い換えではないのか
違いは、施策を決める人が、作る・設定する・測るところまで自分で手を動かすかどうかです。ただし資格はなく、名乗るだけなら誰でもできるので、頼む前に、提案した人が自分で手を動かして作るか、どこまでの判断を任せるか(相手もその場で決められるか)、終わったあと何が自社の名義で残るか、の3つを確かめます。
図② 施策を決める人と、作る・設定する・測る人が同じかどうかで、社内での採用・育成、広告代理店・運用代行、BPO、コンサルティング会社、FDMを並べた図

FDEにも「言い換えでは」という声があった
同じ疑問は、先に広まったFDEにも向けられています。インフラエンジニアのmuzzledSkr氏は、noteの記事で「FDE の説明を初めて読んだとき、正直なところ『これ、常駐の仕事で毎回やってるやつでは?』と思いました」と書いています。同じ記事では、読み進めて見えた違いとして「常駐のエンジニアは、多くの場合『何を作るか』が決まった状態で呼ばれます。FDE は、何を作るべきかを現場で見つけるところから仕事が始まります」とも説明しています。
合同会社エンジニアリングマネージメントの久松剛氏は、日経COMEMOの記事で、同じFDEという肩書きに業務コンサルや「AI版SES」などの「四類型が混在しています」と指摘し、「残念ながら、肩書を信じることはできません」と、FDEの求人を見る転職者に向けて書いています。肩書きだけでは中身が分からない点は、FDMを頼む側にも当てはまります。
FDEの見分け方は、多くのFDMに当てはまらない
FDEの場合、コンサルティングとの違いを決めるものとして、よく挙げられる基準があります。顧客の現場で得た知見を、提供する側の自社製品の改良に戻しているかどうかです。データサイエンスのメディアKDnuggetsは、FDEは顧客のところで学んだことが次に作る製品を変えるかどうかで決まり、そのつながりがなければその役割はコンサルティングだ、と書いています。西口氏も、FDEの役割の1つとして「現場での実装で得た知見を即座にプロダクトチームへ戻し、製品全体の改善につなげる役割」を挙げています。
ところが、FDMを名乗る会社の多くは、自社の製品を持たないマーケティングの支援会社です。FDEの見分け方をそのまま当てはめると、製品を持たない支援会社のFDMは、コンサルティングの側に入ってしまいます。この見分け方だけでは、FDMと、新しい肩書きを付けたコンサルや代理店との区別はつきにくくなります。自社の製品を持つ会社もあり、宿泊施設向けのリトラは、開発に携わる自社のプロダクトを、宿の運用に合わない箇所があれば作り替えると説明しています。こうした会社には、FDEの見分け方も当てはめられます。
その代わりに、FDMを名乗る会社が自分たちの違いとして説明しているのは、誰が手を動かすかと、終わったあと顧客の側に何が残るかの2つです。
FDMは、施策を決めた人が自分で作るところまでやる
リトラは、代理店やコンサルとの「大きな違いは『誰が現場で手を動かすか』です」と説明しています。同社の比較では、経営コンサルティングは分析と設計を外部が受け持ち、手を動かすのは頼む側です。広告代理店・運用代行は、任された範囲の中で外部が手を動かします。FDMは、外部の人が頼む側の管理画面に入って動かす形です。ポップコーンも、マーケティングの現場では代理店やコンサルティング会社が「社外から提案や納品を行う形が一般的です」としたうえで、自社のマーケターが頼む側のSlackやGoogle Workspaceに入り、メンバーとして日々の施策を実行すると説明しています。
施策を決めるところから作るところまでを同じ人が受け持つには、その人がマーケティングの一連の仕事を自分でこなせる必要があります。FinTはFDMを「マーケティングの実務経験とAIエージェントの運用経験、その両方を持つ人間」と説明し、海外のDarkroomやSpace、Stacked GTMも、経験を積んだマーケターが顧客の中に入る形と書いています(Stacked GTMは、その人が作業も自分で行うと説明しています)。Growth Methodは、実際によく見られるFDMは、これまで専門家に頼んでいたエンジニアリングやデザイン、制作の仕事を自分で引き受けるようになったマーケターだとしています。ととっぷは、クリニック向けの比較でFDMを「外部のマーケ担当」と呼び、院内のマーケ担当(インハウス)と並べています。
編集部は、FDMを、社内でマーケティングを一通り受け持ってきたマーケター、またはそれに相当する経験のある人が、外から入って同じ仕事をする形と捉えると分かりやすいと考えます。社内のマーケターは、方針を決め、記事や広告を作り、計測の設定をして、数字を見て次の手を決める、という流れを1人で回すことがあります。コンサルティング会社が方針を決め、作る作業は頼む側が自社で、または別に頼む制作会社などで行う形や、提案した人と運用する人が分かれる形とは、ここが違います。生成AIで1人が受け持てる作業の幅が広がったことも、この形を取りやすくしています(前の章の「AIで、1人が受け持てる範囲が広がった」)。
ただし、同じ人が受け持つといっても、1人ですべてをこなすとは限りません。ポップコーンは、現場に入るマーケターを、同社のエンジニアや編集者、AI開発チームが支えるとしています。確かめるのは、施策を決めた人が、作る作業を別の人に回して終わりにせず、自分で手を動かして結果まで見るかどうかです。
終わったあとに、何が頼む側に残るか
もう1つ、FDMを名乗る会社が違いとして挙げるのが、終わったあと顧客の側に何が残るかです。FinTはサービス開始の発表で「GitHubやClaudeなどの契約はすべて導入企業の名義で行われ、業務データやナレッジも導入企業自身に蓄積される仕組みです」と説明しています。ポップコーンも、契約が終わったあとも作った仕組みは顧客企業に残るとし、Myosinも、支援の中で作った業務の手順や文書、ツール、アカウントを顧客が使える状態にしておくべきだと書いています。何が残るかは、FDEについても、頼む側が始める前に決めておくこととして語られています(ガートナーは知的財産の扱いや知識の引き継ぎを、Growth Methodは担当者が離れたあとに何が残るかを挙げています)。ポップコーンやMyosin、Stacked GTM、Spaceは、これを自分たちと従来の代理店やコンサルとの違いとして前面に出しています。
見分けるための3つの観点
編集部は、FDMかどうかを肩書きで決めるのではなく、頼む側が次の3つを確かめることをおすすめします。
1つ目は、提案した人が自分で手を動かして作るかです。FDMと従来の頼み方の違いは、ここに出ます。TaTapは「商談で信頼できると感じた人が、実際の運用には関わらないケースは珍しくありません」と注意を促しています。提案した人が、記事や広告、計測の設定などを自分で作るのか、作る作業は別の部署や外注先に回すのかを聞きます。ここで確かめるのは、相手の会社がどういう体制で受けるかです。頼む側が特定の人を担当に指名すると、契約の形によっては問題になります(下の「契約で確かめること」)。
2つ目は、どこまでの判断を任せるかです。これは頼む側が決めることですが、FDMとして頼む意味があるかどうかを左右します。TaTapは、FDM型の支援が成り立つ前提として、頼む側が現場に入ることを許していること、支援する側に判断して手を動かせる人がいること、「双方が、その場で決められる裁量を持っていること」の3つを挙げ、「形だけ現場に入っても、決められないなら従来型と変わりません」と書いています。頼む側が任せる範囲を決めていないと、相手が現場で見つけた課題も社内の決裁を待つことになり、頼む前と同じ進み方になると編集部は考えます。相手の担当者がその場で決められるのか、持ち帰って判断を待つのかも、あわせて確かめます。
3つ目は、終わったあと何が自社の名義で残るかです。作った仕組みやアカウント、手順書が相手の会社の名義のままだと、契約が終わったときに社内で運用を続けにくくなります。
TaTapは、発注時に確認する5項目として、重要な順に次を挙げています。
提案した人が、実務も担当するか
月に何回、どの深さで現場に入るか
助言だけか、制作や運用まで手を動かすか
その場で判断できるか、持ち帰りになるか
窓口以外の現場スタッフとも話せるか
5つ目は、頼む側の窓口の担当者だけでなく、現場のスタッフとも話してもらえるか、という意味です。これに次の3つを加えると、3つの観点を一通り確かめられます。
担当者は同時に何社を受け持っているか、担当が替わるときはどう引き継ぐか
作った仕組み、アカウント、手順書は、どちらの名義で持つか
(ツールの会社から来る場合)その人は製品部門と営業部門のどちらに報告するか
ツールの会社が出すFDEについて、Growth Methodは、優秀なエンジニアでも、その利益は自社のツールのほうを向いていて、それを分かったうえで頼めばよいと書いています。そのうえで、製品部門と営業部門のどちらに報告する人かを聞くよう勧めています。営業部門に報告する人は契約を取るためにいる、という理由です。
代理店・コンサルなどとの違い
それぞれの頼み方は、主に受け持つ範囲が違います。ただし、広告会社が戦略から実装まで受けたり、コンサルティング会社がFDEとして実装まで受けたりすることもあり、名前だけで範囲は決まりません。下の表は典型的な範囲の目安です。
頼み方 | 主に受け持つこと | 手を動かす人 | 主な成果物 |
|---|---|---|---|
広告代理店・運用代行 | 決まった施策を量と質で回す | 外部(任された範囲の中で) | 運用の実績・レポート・制作物 |
コンサルティング会社 | 方針と優先順位を決める | 主に頼む側か、別に頼む制作会社など | 戦略・調査レポート・実行計画 |
ツールベンダーの導入支援 | ツールの導入と使い方の説明 | 主に頼む側(導入は外部) | ツール・設定・マニュアル |
BPO(業務の外部委託) | 決めた業務を決めた手順で処理する | 外部 | 処理した業務の結果 |
社内で採用・育成 | 社内の人が方針から運用まで受け持つ | 社内 | 人と知見(社内に残る) |
FDM(各社の説明では) | 現場に入り、施策を決めて実装し、効果を測る | 施策を決めた外部の人が自分で(頼む側のツールや管理画面の中で) | 社内で回る仕組み・アカウント・手順(引き渡す場合) |
(表は、リトラと、ととっぷの比較をもとに編集部がまとめたもの。BPOと社内の行、コンサルティング会社の行の「別に頼む制作会社など」は編集部の整理で、FDMの行は各社の説明をまとめたもの)
FDMを頼んでうまくいかない形
FDMという名前で頼んでも、うまくいかない形があります。手がかりになるのは、先に広まったFDEについての予測です。調査会社のガートナーは2026年9月29日、2028年までに企業の70%が、ベンダーのFDEが作ったエージェント型AIを、費用がかさみ自社で改良もできないまま放棄すると予測しました。同じ発表では、コンサルティングのサービスがFDEとして売られる「FDE washing」の危険が高まっていることも指摘しています。範囲をうまく決めた支援には、知的財産の扱いや知識の引き継ぎについての明確な取り決めがあり、終わり方の計画を最初の日から持っている、とも書いています。日本語では、Publickeyの記事を転載したITmedia NEWSが「FDE洗浄」として報じています。
これはFDEについての予測ですが、FDMを頼むときにも参考になると編集部は考えます。ガートナーの指摘をFDMに当てはめると、次のような失敗が考えられます。
業務を十分に理解しないまま自動化する(Darkroomは、業務を深く知らないまま自動化すると、間違ったことを速く自動化してしまうと書いています)
作った仕組みが、FDMの担当者がいないと動かない
終わり方を決めずに始めて、社内の準備が整わないまま契約が延び続ける
FDMとして頼んだのに、提案した人は実装に関わらず、方針と作業が別々の人に分かれたままになっている
2つ目から4つ目は、頼む前に3つの観点を確かめ、社内で任せる範囲や引き継ぐ担当者を決めておけば、ある程度は防げると編集部は考えます。1つ目については、ガートナーがFDEについて、支援の間は社内の業務に詳しい人やエンジニア、実際に使う人と一緒に作業させ、実際の仕事の進め方を仕組みに反映させるよう勧めています。
FDMが合う会社・合わない会社
社内にマーケティングの実行を担う人が足りず、外部の人に任せる判断の範囲を社内で決められる会社に合います。決まった作業の量を増やしたいだけなら、運用代行や制作会社に作業として頼むほうが合理的です。
合う会社
FDMを掲げる各社が向いている会社として挙げる条件のうち、よく出てくるのは2つです。1つは、社内でマーケティングの実行や判断を担う人が足りないことです(ポップコーンは「マーケティング担当者が1〜2名で、施策の実行まで対応する余力がない」会社を、リトラは現場に手が足りない施設を、ととっぷは次の施策を決める人がいないクリニックを挙げています)。もう1つは、生成AIなどのツールを入れたものの、日々の業務に組み込めていないことです(ポップコーン、リトラ)。
Myosinは、マーケティングを続けて実行する力が足りないという問題は中堅企業で特に当てはまるとし、場当たりの施策では回らないほど複雑な一方で、社内にAIやデータの専門チームを置くほどの余裕はない、と説明しています。同社は、販売とマーケティングの基本の流れがすでに回っていて、繰り返しの作業に手間がかかっており、経営層が関わり、作った仕組みを自社で持ちたい会社に向いているとも書いています。
あわせて、次の3つがそろっていると、FDMに入ってもらいやすくなります。
決裁の段数が少なく、施策の判断をその場で下せる人がいる
FDMと組んで仕組みを引き継ぐ、社内の受け入れ担当を置ける
広告やアクセス解析の管理画面、アカウントを、外部の人に共有できる
リトラは、意思決定が多層で現場に入れない場合、つまり管理画面の共有や現場との直接のやり取りに制約がある場合は「FDMの前提が成り立ちにくくなります」と書いています。
合わない会社と、代わりの選択肢
FDMが合わないのは、次のような会社です。
作業の量を増やすことが目的の会社
社内に実行力のある専任の担当者がいる会社
外部に判断や管理画面の権限を出したくない会社
作業の量を増やしたい場合について、TaTapは「目的が明確で、必要なのが制作の手だけなら、その形で発注するほうが合理的です」と書いています。たとえば記事制作やSEOの作業を外部に頼むなら、SEO対策会社の比較から、頼みたい作業を受けている会社を探せます。Webマーケティング全般を外部の会社に頼む場合は、「Webマーケティング会社の比較」で依頼先を比べられます。
社内に専任の担当者がいる場合について、リトラは「必要な領域だけを運用代行に切り出すほうが効率的です」と説明しています。外部に権限を出したくない場合は、研修などで、社内の担当者がAIを使いこなせるように育てる方法もあります。
外部に頼むか、社内で育てるか
FDMを掲げる会社の多くは、最終的に社内の担当者が自分で回せる状態を目標にしています。FinTは「ゴールはFDMが居続けることではありません。お客様の中に『FDM的な動き方をする人』が誕生し、私たちが要らなくなること」と書き、Myosinも、支援を終えたときに、作ったものを顧客が自分で運用できる状態であるべきだとしています。一方で、Darkroomのように、FDMを継続の契約の中の担当者として置く会社もあります。
社内で人を採用・育成するほうが合うかどうかについて、ととっぷはクリニック向けの比較で、仕事量と予算があり長く人を育てられる場合を向いている条件に、広告やSEO、サイト、採用を1人で見られる人が見つからない場合を向かない条件に挙げています。FDMを職種名に掲げた求人も出始めていますが、2026年10月時点で編集部が確認できたのは、ごく少数でした。外部のFDMに頼む場合も、引き渡しの先になる社内の担当者を決めておくことが前提になります。社内に何を移し、外部とどう組むかは、「マーケティング内製化の進め方」で業務ごとに説明しています。
FDMの相談先と、費用・契約で確かめること
FDMの相談先には、大手広告会社のグループ、FDMを掲げる支援会社、FDEを掲げるAI導入の支援会社などがあります。国内でFDMとして料金を公開している会社は、編集部が確認した範囲では見つかりませんでした。契約では、終わり方と、作った仕組みの名義、日々の指示を誰が出すかを確かめておきます。
相談先の種類
相談先の種類 | 候補になりやすい場合 | 確かめること |
|---|---|---|
大手広告会社のグループ | すでに取引があり、担当者に相談できる | FDMとして頼める範囲と窓口があるか |
FDMを掲げる支援会社 | 自社の業種や、頼みたい業務を扱う会社がある | 自社の業種や業務を扱った例があるか |
FDEを掲げるAI導入の支援会社 | マーケティング以外の業務も含めてAIを組み込みたい | マーケティングの業務を受け持てる人がいるか |
ツールベンダーの導入支援 | 使うツールがすでに決まっている | 担当者が製品部門と営業部門のどちらに報告するか。データや手順を、ほかのツールに移せる形で作るか |
大手広告会社のグループでは、博報堂が、コンサルティング案件の中でFDMの役割を置いているとコラムで説明しています。国内電通グループは育成の開始を発表した段階で、2026年10月時点では、FDMとして相談する窓口や料金を示していません。FDMを掲げる支援会社には、宿泊施設(リトラ)やクリニック(ととっぷ)など業種に特化した会社、マーケティング業務全般を対象にする会社(ポップコーン)、広告代理店がAIの仕組みと合わせて提供する形(FinT)があり、SNS支援のTaTapもFDM型の支援を解説しています。FDMを名乗って集客支援をする個人もいて、頼む場合は、1人で同時に何社を受け持っているかを確かめます。
どの種類の相談先にも、「見分けるための3つの観点」で挙げた質問を同じ順で聞くと、答えを比べやすくなります。
費用がどう決まるか
料金を確かめたのは、日本語でFDMを説明している十数ページです(2026年10月時点)。多いのは、初回の診断を無料で行い(ポップコーンは先着5社)、その後に見積もる形です。
料金の決まり方として、各社は次のような説明をしています。
任せる業務の範囲と実装の量で決める(ととっぷは「任せる領域と実装の量で月額をお見積もりします」と説明)
期間を区切って決める(Stacked GTMは期間を90日に固定し、料金も1回の支援ごとの定額と説明)
期間を区切らず、継続して運用を頼む(Darkroomは、FDMを代理店の継続契約の担当者と位置づけている)
見積もりを比べるときは、次の点が同じ条件になっているかを確かめます。
任せる業務の範囲と、担当者が関わる頻度(月に何回、どの深さで入るか)
期間と、終わったあとの扱い(引き渡して終えるか、継続して運用を頼むか)
ツールの利用料が見積もりに含まれるか、自社が別に契約して払うか
初回の診断や業務の棚卸しが、見積もりに含まれるか
アカウントを自社の名義にする場合は、ツールの契約の当事者も自社になるので、3つ目は特に確かめておきます。
契約で確かめること
終わり方は、始める前に決めておきます。ガートナーは、FDEの支援について、始める時点で決めた終わり方の計画を、社内の準備が整わないことを理由に延ばさずに実行するよう勧めています。何ができたら支援を終えるのか、終えたあと誰が運用するのかを、契約の前に決めておくと、支援が延び続けることを防げます。
作った仕組みの名義と権利も確かめます。作った手順やプログラム、アカウント、データを、契約が終わったあとも自社で使えるかどうかは、契約の中で決めておく事柄です。
日々の作業の指示を誰が出すかも、契約の前に決めておきます。FDMの担当者が頼む側のSlackやGoogle Workspaceに入って日々の施策を進める形では、社内の担当者から相手の担当者へ直接指示を出せてしまうためです。厚生労働省は、派遣と請負のどちらに当たるかは契約の形式ではなく実態で判断するとしています。システム開発を例にした疑義応答集(第3集)では、準委任の契約でも、実態として発注者と受注者側の労働者との間に指揮命令関係がある場合は労働者派遣に当たると説明しています(Q1)。
同じ資料では、チャットや会議に双方の担当者が一緒に入っていても、対等な関係で協働し、受注者側の担当者が自分で判断して進めていれば、偽装請負とは判断されないとしています(Q2・Q6)。一方で、発注者側の担当者が受注者側の担当者に、直接、業務の進め方や労働時間などを指示すると、偽装請負と判断されるとしています(Q2)。指示が必要なときは、受注者が管理責任者を選任するなどして、受注者自らが行う必要があるとされています(Q3)。
担当者の決め方にも注意があります。疑義応答集では、発注者が特定の者を指名して業務に従事させたり、特定の者の就業を拒否したりすると、適正な請負等(準委任を含む)とは認められないとしています(第3集 Q7)。職務経歴書を求めたり事前面談を行ったりすること自体も、一般的には配置の決定に影響するため、労働者派遣事業などと判断されることがあるとしています(第2集 問13)。「見分けるための3つの観点」で挙げた質問は、相手の会社が決めた体制を確かめるためのもので、頼む側が担当者を選ぶためのものではありません。
疑義応答集は、こうした事態を避けるため、双方の役割や権限、業務の進め方をあらかじめ明確にし、合意しておくことが重要だとしています(第3集 Q2)。受注者側で指示を出す管理責任者が誰かも、契約の前に確かめておきます。第3集はシステム開発を例にした資料で、マーケティング業務についての個別の判断は書かれていません。資料の事例と違う場合は、各都道府県労働局が実態に即して個別に判断するとされています。相手が会社の社員か個人かで、誰に何を伝えればよいかがどう変わるかは、「業務委託の指示はどこまで?準委任の指揮命令と偽装請負の線引き」で場面ごとに説明しています。
相談する前に、社内で決めておくこと
FDMがうまくいくかどうかは、FDMの担当者の力量だけでなく、受け入れる側が何を任せ、何を残してもらうかを決めているかにも左右されます。相談の前に、次の7つを社内で決めておきます。
任せる判断の範囲(どの施策を任せ、どれは社内で承認するか)
止める権限を持つ人(情報システム・セキュリティ・法務など)
社内の受け入れ担当(FDMと組み、仕組みを引き継ぐ人)
渡すデータと管理画面の権限(最初は閲覧から始めるか)
今の代理店や制作会社との役割分担
成果の測り方と、見直しの時期
終わるときに残すもの(自社名義のアカウント、手順書、引き継ぐ担当者)
2の「止める権限を持つ人」は、情報の扱いやセキュリティ、契約や法令の面で、ここだけは止められるという人を先に決めておくことです。止める人と範囲がはっきりしていれば、それ以外の判断を外部の人に任せやすくなると編集部は考えます。
4のデータと権限について、ととっぷは「権限は、アクセス解析とサーチコンソールの閲覧から始めるのが一般的です」と書いています。顧客の名前や連絡先などの個人データは、まず渡さずに進められないかを考えます(ととっぷは、クリニックの集客の見立てには患者の氏名や連絡先は要らず、件数の集計だけを共有すればよいとしています)。渡す段階に進む場合は、委託の契約と、安全管理の取り決めを先に結んでおきます。個人情報保護法は、個人データの取扱いを外部に委託する会社に、委託先に対する「必要かつ適切な監督」を求めています(第25条)。
5の役割分担について、ととっぷとリトラは、今の代理店や制作会社を替える必要はないとしています。今任せている範囲と重ならない業務から始める方法もあります。
6の成果の測り方は、最初の数週間で分かることと分からないことを分けておくと決めやすくなります。ととっぷは、クリニックの例として、最初の2〜4週間で分かることに「数字が正しく取れているかどうか」などを挙げる一方、季節の影響を除いた比較や、相談から成約まで時間がかかる施術の効果は分からないとしています。
この7つを社内で決めてから、相談先の種類から2〜3社を選び、「見分けるための3つの観点」で挙げた質問を同じ順で聞くと、答えの違いを比べられます。
よくある質問
Q. FDM(Forward Deployed Marketer)とFDEは何が違いますか?
FDEはエンジニアの職種で、顧客の現場でソフトウェアやAIの仕組みを実装します。FDMはその考え方をマーケティングに当てはめたもので、顧客のマーケティングの現場に入り、施策を決めて実装し、効果を確かめます。FDEは現場で得た知見を提供する側の製品に戻すことが重視されますが、FDMを名乗る会社には、自社の製品を持たない支援会社も含まれます。そのため、FDEで使われる「現場で得た知見を自社の製品に戻しているか」という見分け方は、そうしたFDMにはそのまま使えません。
Q. 電通グループのFDMに頼めますか?
2026年10月時点では、FDMとして相談する窓口や料金は示されていません。10月14日の発表は、国内電通グループ内の約3,000人を対象にしたFDE・FDMの育成プログラムの開始で、取引先への伴走支援を強めるという段落の主語はFDEです。取引がある場合は、担当者に確かめると確実です。
Q. マーケティングのFDMに資格はありますか?
編集部が確認した範囲では、公的な資格や認定はありません。会社や個人がそれぞれの定義で名乗っているため、肩書きではなく、何をどこまで受け持つかを確かめて選びます。
Q. 今の代理店や制作会社は替える必要がありますか?
必ずしも替える必要はありません。ととっぷは「替える必要はありません」とし、リトラも、今任せている範囲と重ならない部分から関わることができると説明しています。始める前に、FDMと今の取引先の役割分担を決めておきます。
FDMの進め方を相談したい方へ
デジタル化の窓口を運営する株式会社クリエイティブバンクは、BTL(Below The Line)領域のマーケティング支援とプロモーションを本業とするマーケティングエージェンシーです。マーケティング業務へのAIの組み込みについての相談も受け付けています。
担当するのは、SEOと記事の制作、メールマガジン、バナーやページの改善、アクセス解析と計測の設定、営業の仕組みづくりまでを、自分で手がけてきたマーケターです。これらの業務の多くは、AIを組み込んだ手順に作り直して運用しています。
相談では、まず貴社がどこまでの判断を外部に任せられるかを一緒に切り分けます。関わる頻度は、貴社の状況を伺って決めます。関わる深さは、方針の打ち合わせだけで終わらせず、管理画面での設定や制作、効果の測定まで、担当者が自分で手を動かすところまで入ります。作った仕組みやアカウントは、貴社の名義で残します。費用は、任せる範囲を伺ったうえでご相談します。
ご相談は、クリエイティブバンクのお問い合わせフォームから、お問い合わせ種別「マーケティング/プロモーションのご相談」を選んでお送りください。お問い合わせ内容の欄に、この記事をご覧になった旨を書き添えていただくと、話を早く進められます。
参考・出典
国内電通グループ「国内電通グループ、3,000人規模のFDE・FDMスキル開発を開始」(2026年10月14日。PR TIMES、イグニション・ポイント発行)
博報堂DYホールディングス「マーケティングシステムの今〜マーケティング&ITの実務家集団が語る事業グロースへのヒント【vol.27】「戦略と実行のギャップ」を乗り越える。FDMが牽引する博報堂のマーケティングプロセスオーケストレーション」(2026年8月26日)
日経クロストレンド「広告代理店が直面する構造的危機 西口氏が提唱『FDM』に生存の道はあり」(2026年4月15日、有料記事。引用は無料で読める部分から)
Accenture「Accenture Launches Microsoft Forward Deployed Engineering Practice to Help Organizations Scale AI Across the Enterprise」(2026年3月18日)
Gartner「Gartner Predicts 70% of Enterprises Will Abandon Agentic AI Built by Vendor Forward-Deployed Engineering by 2028」(2026年9月29日)
ITmedia NEWS「「FDEが開発したAIエージェントの7割は使われず、単なるコンサルティングが販売される」 ガートナー予測」(2026年10月7日。Publickeyの記事を転載)
厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)関係疑義応答集」(第2集・第3集)
株式会社FinT「AI導入から生まれた、「FDM」という仕事」(2026年8月7日)、「株式会社FinT、広告代理店として自社運用する「AIエージェントOS」を企業に導入する新サービス「ジリツAI」を提供開始」(2026年8月5日)
ポップコーン株式会社「現場に入り込んで即日マーケティングを実装する「フォワードデプロイド・マーケター」事業を開始」(2026年10月2日)
株式会社ととっぷ「医療・クリニックのFDM(Forward Deployed Marketer)とは|FDEとの違い」(2026年10月13日)
株式会社TaTap「FDEとは?FDM(Forward Deployed Marketer)との関係と、マーケへの応用」(2026年9月17日更新)
株式会社リトラ「宿泊施設専門のFDM(Forward Deployed Marketer)という働き方|戦略と実行のギャップを現場で埋める」(2026年9月9日)
Myosin「Forward Deployed Marketing: Closing the Execution Gap」(2025年9月17日)、「What Is Forward Deployed Marketing?」(2026年7月28日)、「The 90-Day Build: What Forward Deployed Marketing Actually Looks Like」(2026年8月10日)
Growth Method「From Forward Deployed Engineer to Forward Deployed Marketer」(2026年9月16日)
Darkroom「What Is a Forward Deployed Marketer and How the Role Makes Marketing Teams AI Native」(2026年10月19日)
Space「What Is a Forward-Deployed Marketer? The Role Invented for Engineers, Applied to Brand」(2026年7月8日)
Stacked GTM「Today, we're launching Forward Deployed Marketing」(2026年8月25日)
KDnuggets「Forward Deployed Engineer: AI's Hottest New Career, or Consulting With a Better Title?」(2026年10月2日)
muzzledSkr「「FDE」って何ですか? 電通・富士通・日立が急に言い始めた"現場に入り込むエンジニア"を調べてみました」(2026年10月18日)
久松剛「FDEに期待値を詰め込みすぎる企業たち――業務コンサル、AI SES、超人募集の狭間」(日経COMEMO、2026年5月31日)
西川陽一「年収6000万円の新職業"FDE" 〜マーケティングなら"FDM"はどうでしょう〜」(note、2026年2月25日)
岸本成「FDMフリーランスのサイト。」
求人:Palantir「Forward Deployed Software Engineer」、Anthropic「Forward Deployed Engineer」、Stripe「Forward Deployed AI Accelerator, Marketing」、Cognition「Forward Deployed Marketer」、株式会社くるみバディ「FDM(Forward Deployed Marketer)」(いずれも2026年10月22日に確認)

