BtoBマーケティングとは?戦略の立て方・手法・KPI設計と事例を解説
最終更新日:2026/08/03
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『デジタル化の窓口』は、この国のデジタル課題「2025年の崖」に備えるため2022年にサービスをスタートしました。1,500以上のIT製品、4,000以上の導入事例を掲載し、特長・選び方を分かりやすく整理して解説することで、自社に最適な製品・サービスを見つけるお手伝いをする紹介サービスです。
目次
BtoBマーケティングは、企業を相手に商品やサービスを提供する事業で、見込み客を集めてから商談として営業に引き渡すまでの一連の活動を設計する仕事です。ところが、BtoC(=一般の消費者を相手にする取引)と同じ発想で施策を並べても、思うような成果にはつながりません。決裁に複数の人が関わり、検討期間が数か月から数年に及び、そもそも対象になり得る企業の数そのものが限られているからです。
この記事では、BtoBマーケティングの定義とBtoCとの違いから、全体プロセス、戦略の立て方、代表的な手法、KPI(=Key Performance Indicator、目標にどれだけ近づいたかを測る中間指標)の設計、そして各社が公開している取り組み事例までを順番に整理します。自社製品を持つIT・SaaS企業で、これからマーケティングの型をつくる担当者が読み進められる構成にしています。
1. BtoBマーケティングとは?BtoCとの違いから整理する
BtoBマーケティングという言葉は、広告運用やコンテンツ制作といった個別の施策を指して使われることもあれば、事業目標から逆算した集客設計全体を指して使われることもあります。話が噛み合わなくなる原因の多くは、この範囲のずれにあります。まず定義をそろえ、そのうえでBtoCとの構造的な違いを3つの観点で押さえます。
1-1. BtoBマーケティングが担う範囲
BtoBマーケティングは、「まだ自社を知らない企業に認知してもらう」ところから「営業が商談として扱える状態の見込み客を渡す」ところまでを担う活動です。受注そのものは営業が担いますが、どの企業を狙い、どんな情報を届け、どの条件を満たしたら営業に渡すのかを決めるのはマーケティング側の仕事になります。
ここで重要なのは、施策の一覧を作ることが目的ではないという点です。展示会に出る、ウェビナー(=オンラインで開催するセミナー)を開く、記事を書く。どれも手段であって、事業目標から逆算した設計がないまま並べると、施策ごとの評価軸がばらばらになり、続けるべきか止めるべきかの判断ができなくなります。
1-2. 違い①:意思決定者が1人ではない
BtoCでは、多くの場合その商品を使う本人が買う人でもあります。BtoBはそうではありません。実際に使う現場の担当者、予算を握る部門長、稟議を通す情報システム部門や法務、最終決裁をする役員というように、立場も評価軸も違う複数の人が1つの購買に関わります。
現場が「操作が簡単で助かる」と感じても、情報システム部門が「セキュリティ要件を満たさない」と判断すれば導入は止まります。つまりBtoBマーケティングでは、1人を説得するコンテンツではなく、立場ごとに異なる不安を、それぞれの言葉で解消する材料を用意する必要があります。導入効果を示す資料、機能仕様書、セキュリティチェックシートへの回答、料金の内訳。これらは別々の相手に向けた別々の武器です。
1-3. 違い②:検討期間が長く、単価が高い
BtoBの購買は、業務プロセスの変更や既存システムとの接続を伴うことが多く、検討が数か月から年単位に及びます。問い合わせが来た時点で、相手はすでに社内で情報収集を終えている場合も珍しくありません。
この長さは、施策の評価タイミングにも直結します。今月獲得した見込み客が受注に至るのは半年後かもしれません。「今月のリード数」だけで施策の良し悪しを判断すると、質の低いリードを大量に集める方向に運用が歪みます。BtoBでは、獲得から受注までの時間差を前提にした指標設計が欠かせません。
1-4. 違い③:対象になる企業の数が限られている
BtoCの消費者は数千万人単位で存在しますが、BtoBで自社製品が本当に刺さる企業は、業種・規模・利用シーンで絞り込むと数百社から数千社という規模に収まることが多くあります。母数が小さいということは、「とにかく数を集める」戦い方が成立しないということです。
だからこそ、狙う企業像を定義し、その企業が抱える課題に正面から答えるコンテンツを積み上げ、接点を持った企業を取りこぼさずに追い続ける設計が効きます。1件あたりの重みが大きい分、獲得後の扱い方が成果を分けます。
意思決定者が複数いるということは、社内の誰か一人に見つけてもらうだけでは足りないということです。製品を提供する側は、関与者の誰が調べても同じ情報にたどり着ける場所を増やしておく必要があります。
2. BtoBマーケティングが重視されるようになった背景
BtoBマーケティングという領域が注目される背景には、営業手法の流行ではなく、取引と情報収集そのものがデジタルに移った構造変化があります。公的機関と業界の公表データで、その動きを3つ確認します。
2-1. 企業間取引そのものがデジタルに移っている
経済産業省が公表した「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」によると、2024年の日本国内のBtoB-EC(=企業間の電子商取引)市場規模は514.4兆円で、前年の465.2兆円から10.6%増加しました。EC化率(=すべての商取引のうち電子商取引が占める割合)は43.1%で、前年から3.1ポイント上昇しています。参考までに、消費者向けのBtoC-ECは26.1兆円、EC化率は9.8%です。
企業間の取引は、消費者向けよりもはるかに高い水準でデジタルに移っています。買い手側が画面上で比較・選定・発注を完結させる前提が整っているということであり、売り手側もその画面上に存在していなければ検討の土俵に上がれません。
出典:令和6年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました(経済産業省)
2-2. 広告費でもインターネットが初めて過半数を超えた
株式会社電通が2026年3月5日に発表した「2025年 日本の広告費」では、日本の総広告費が8兆623億円(前年比105.1%)、そのうちインターネット広告費が4兆459億円(前年比110.8%)となりました。構成比は50.2%で、インターネット広告費が総広告費の過半数を占めたのは初めてです。
BtoBに限った内訳ではありませんが、企業が予算を置く場所がオンラインへ移りきったことを示す数字です。裏を返せば、オンライン上での競争密度が上がっているということでもあり、広告費を積むだけでは差がつきにくくなっています。
2-3. SaaS利用が前提になり、比較検討がオンラインで完結する
総務省の「令和7年版 情報通信白書」に掲載された通信利用動向調査では、2024年の企業のクラウドサービス利用率は80.6%(全社的に利用している企業と、一部の事業所・部門で利用している企業の合計)でした。
クラウドサービスの利用が当たり前になると、導入検討は「まず現物を試す」方向に進みます。担当者は検索し、比較記事や製品サイトを読み、資料を請求し、無料トライアルに申し込むところまでを営業と話す前に済ませます。売り手が接触できるのは、この情報収集がある程度進んだ後です。だからこそ、検討の初期段階で読まれる情報を自社で持っているかどうかが分岐点になります。
出典:令和7年版 情報通信白書 企業におけるクラウドサービスの利用動向(総務省)
3. BtoBマーケティングの全体像を5つのプロセスで捉える

個別の施策を並べる前に、全体をプロセスとして捉えると、どこが詰まっているのかが見えるようになります。ここでは認知から受注までを5つの段階に分けて整理します。段階ごとに目的と担当が異なるため、混ぜて評価しないことが要点です。
3-1. 認知獲得:まだ課題を自覚していない企業に届ける
自社の製品ジャンルを知らない、あるいは課題を課題として認識していない層に対して、存在を知ってもらう段階です。検索エンジンからの流入、業界メディアへの掲載、展示会での接点、広告などが該当します。
この段階を「すぐに問い合わせが来るか」で評価すると、ほぼ確実に失敗します。認知の役割は名前を覚えてもらうことであり、成果は後工程に現れます。評価はセッション数や表示回数など、届いた量の指標で行います。
3-2. リード獲得:連絡先を取得して追跡できる状態にする
資料請求、ウェビナー申込、展示会での名刺交換などを通じて、企業名と担当者の連絡先を取得する段階です。ここをリードジェネレーションと呼びます。匿名の訪問者が、追跡と接触が可能な見込み客に変わる境目です。
注意点は、獲得したリードの質を最初から絞りすぎないことと、獲得した後に何も起きない状態を作らないことの両立です。前者を厳しくしすぎると母数が枯れ、後者を放置すると獲得コストが丸ごと無駄になります。
3-3. リード育成:検討度合いを引き上げる
獲得したリードに対して、メールやコンテンツで継続的に情報を届け、検討度合いを引き上げる段階です。リードナーチャリングと呼ばれます。BtoBの検討期間が長いことを踏まえると、この段階を持たない組織は、獲得したリードの大半を時間の経過とともに失うことになります。どの条件でどのメールを送るかを設計する手順は、MAツールのシナリオ設計を解説した記事が参考になります。
3-4. リード選別:営業に渡す条件を機械的に判定する
育成したリードのうち、どれを営業に渡すかを判定する段階です。リードクオリフィケーション(=見込み客の絞り込み)と呼びます。ここで使われるのがスコアリング(=行動や属性に点数を付けて優先度を測る仕組み)で、料金ページの閲覧や資料の再ダウンロードといった行動に点数を割り当てて、一定点数を超えたリードを抽出します。
この段階を人の勘に任せると、営業とマーケティングの間で「渡されたリードの質が低い」「渡しても連絡してくれない」という対立が起きます。条件を文章で明文化し、両部門で合意しておくことが前提です。
3-5. 商談化と受注:営業に引き渡し、結果を戻す
選別したリードを営業、あるいはインサイドセールス(=電話やメールで商談化を担う内勤の営業組織)に引き渡す段階です。ここで終わりにせず、受注したか、失注したか、失注理由は何かをマーケティング側に戻す経路を作ることが、次の設計精度を決めます。
この一連の流れを支えるツールとして、MA(=Marketing Automation、見込み客の管理と育成を自動化する仕組み)、SFA(=Sales Force Automation、商談の進捗を管理する仕組み)、CRM(=Customer Relationship Management、顧客情報を一元管理する仕組み)が使い分けられます。役割の違いはMA・SFA・CRMの違いを整理した記事で確認できます。
5つのプロセスのうち、認知獲得とリード獲得は自社サイトだけで完結させる必要はありません。すでに検討層が集まっているメディアに製品情報を置く方法もあります。
4. BtoBマーケティング戦略の立て方を5ステップで解説

戦略という言葉は抽象的になりがちですが、実務では「限られた予算と人員を、どの企業に、どの順番で使うかを決めること」と考えると扱いやすくなります。次の5ステップの順序を入れ替えないことが重要です。
4-1. STEP1:事業目標から逆算して数字を分解する
最初にやるのは、売上目標を逆算することです。年間の目標受注金額を平均受注単価で割れば必要な受注件数が出ます。受注件数を受注率で割れば必要な商談数、商談数を商談化率で割れば必要なリード数が出ます。
この分解をしないまま施策を始めると、「リードを増やす」という目標が、いくつ増やせば足りるのか誰にも分からないまま走り出すことになります。自社の受注率や商談化率が分からない場合は、暫定値を置いて3か月後に実測値へ差し替える前提で始めます。
4-2. STEP2:狙う企業像と関わる人を定義する
次に、どの企業を狙うかを業種・従業員規模・利用シーンで定義します。あわせて、その企業の中で誰が関わるのかを、現場担当者・部門長・情報システム部門・決裁者といった役割ごとに書き出します。
ペルソナ(=典型的な顧客像を人物として具体化したもの)を作る際、BtoBでは1人ではなく複数人分を作る点がBtoCと異なります。それぞれが何を評価軸にし、何を不安に思うかまで書き切ると、後のコンテンツ設計が機械的に進みます。
4-3. STEP3:購買プロセスを可視化する
定義した企業が、課題を認識してから発注するまでにどんな行動を取るかを時系列で並べます。カスタマージャーニー(=顧客が購入に至るまでの道筋を段階ごとに可視化したもの)と呼ばれる作業です。
ここで出すべきものは、きれいな図ではなく「各段階で相手が知りたいこと」の一覧です。課題認識の段階なら「そもそもこの業務は改善できるのか」、比較段階なら「他社と何が違うのか」「いくらかかるのか」、稟議段階なら「効果をどう説明すればよいか」。この一覧がそのままコンテンツの制作リストになります。
4-4. STEP4:チャネルとコンテンツを割り当てる
段階ごとの知りたいことに対して、届ける手段と形式を割り当てます。たとえば次のような割り当てです。
- 検索から入る初期段階:解説記事
- 比較段階:比較資料や導入事例
- 稟議段階:費用対効果の試算資料やセキュリティ関連の回答書
ここで1つの段階に施策が偏っていないかを確認します。多くの組織で不足するのは比較段階と稟議段階の材料です。初期の集客だけを増やしても、後段の材料がなければリードは滞留します。
4-5. STEP5:営業への引き渡し条件を先に決める
最後に、どの条件を満たしたリードを、いつ、どの形式で営業に渡すかを決めます。施策を始める前に決めておくのが要点です。走り出してから決めようとすると、実績の解釈をめぐる議論になり合意しにくくなります。
引き渡し条件には、次の両方を含めます。
- 行動条件:料金ページを閲覧した、など
- 属性条件:対象業種・規模に合致している、など
あわせて、渡した後に営業がいつまでに接触するかも取り決めておきます。この約束がないと、せっかくの引き渡しが機能しません。
5. BtoBマーケティングの代表的な手法
手法は目的から選ぶものであり、流行で選ぶものではありません。ここでは代表的な5つについて、向いている段階と運用上の注意点を整理します。
5-1. コンテンツマーケティングとSEO
検索エンジン経由で、課題を調べている段階の担当者に届ける手法です。成果が出るまでに時間がかかる代わりに、記事が積み上がると広告費をかけずに継続的な流入が生まれます。
BtoBで効くのは、検索数は少なくても購買意図が明確なキーワードです。「業務名+効率化」「製品ジャンル名+比較」「製品ジャンル名+料金」といった語は、母数こそ小さいものの、読む人が導入検討の当事者である確率が高くなります。
5-2. ウェビナーと展示会
ウェビナーは、リード獲得と育成を同時に進められる手法です。申込時に連絡先が取得でき、視聴という行動そのものが検討度合いの手がかりになります。展示会は、対面での会話を通じて課題を直接聞ける点が強みです。
いずれも開催後のフォローを設計しないと成果につながりません。名刺を集めただけで終わる状態は、獲得コストを捨てているのと同じです。後述の事例でも、この後工程の設計が成果を分けています。
5-3. メールマーケティング
獲得済みのリードに継続接触する、育成段階の中心的な手法です。次のような型があります。
- 一斉配信のメールマガジン
- 条件に応じて出し分けるセグメント配信
- 登録日を起点に順番に送るステップメール
ツールの選択肢はメールマーケティングツールの比較で整理されています。
5-4. 広告
検索連動型広告、ディスプレイ広告、ビジネス向けSNS広告などがあります。短期間で母数を確保できる一方、止めれば流入も止まります。獲得単価だけでなく、獲得したリードが商談化した割合まで見て評価することが重要です。獲得単価が安くても商談にならないチャネルは、実質的には高コストです。
5-5. 業界メディアへの掲載とパートナー連携
自社サイトの外側に接点を作る手法です。製品比較メディアや業界メディアに製品情報を掲載すると、まだ自社を知らない検討層に対して、比較段階のタイミングで露出できます。自社サイトのSEOが立ち上がるまでの期間を補う手段としても機能します。
掲載先を選ぶときは、掲載後に問い合わせがどう自社に届くのか、その導線と条件を事前に確認しておくことが大切です。掲載するだけで終わる契約と、検討層からの相談が届く契約とでは、同じ「掲載」でも意味が変わります。
業界メディアへの掲載は、この章で挙げた手法のうち、比較段階に入った買い手へ直接届く数少ない選択肢です。
6. BtoBマーケティングのKPI設計

BtoBマーケティングで最も事故が起きやすいのが指標の置き方です。段階ごとに役割が違う以上、単一の指標で全体を評価することはできません。ここでは設計の考え方を整理します。
6-1. KGIとKPIの関係を先に決める
KGI(=Key Goal Indicator、最終的に達成したい目標の指標)は通常、受注金額や受注件数です。KPIはそこに至る中間指標であり、KGIから分解して導きます。順序が逆になり、測れる数字を並べてからKPIと名付けると、達成しても事業目標に近づかない指標ができあがります。
6-2. ファネル段階別のKPI一覧
各段階で用いられる代表的な指標を整理すると次のようになります。自社の状況に合わせて取捨選択し、1段階につき1つか2つに絞ることをおすすめします。
| 段階 | 代表的なKPI | 何を測っているか |
|---|---|---|
| 認知 | セッション数/表示回数 | どれだけの人に届いたか |
| リード獲得 | リード獲得数/獲得単価 | 連絡先をいくつ、いくらで取得できたか |
| リード育成 | メール開封率・クリック率/再訪問数 | 接点を保てているか、関心が続いているか |
| リード選別 | 営業引き渡し数/引き渡し率 | 条件を満たすリードがどれだけ生まれたか |
| 商談 | 商談化数/商談化率 | 渡したリードが商談になった割合 |
| 受注 | 受注数/受注率/平均受注単価 | 事業目標にどれだけ寄与したか |
6-3. リード数だけを追うと運用が歪む理由
リード獲得数は測りやすく、増やしやすい指標です。だからこそ危険でもあります。獲得数だけを目標に置くと、対象外の業種や規模の企業、あるいは検討意思のない情報収集目的の登録が積み上がり、数字は伸びているのに商談が増えないという状態が生まれます。
対策は単純で、リード獲得数と必ず対で商談化率を見ることです。獲得数が伸びて商談化率が落ちているなら、質が下がっています。両方が伸びているなら、施策は正しく機能しています。
6-4. 時間差を織り込んだ見方をする
検討期間が長い以上、今月獲得したリードの成果が今月の受注に現れることはまれです。獲得月ごとにリードを束ねて、その後の商談化・受注を時間の経過とともに追う見方をすると、施策の実力を正しく評価できます。単月の受注額だけを見ていると、半年前の施策の成果を今月の施策の手柄と誤認します。
6-5. KPIの見直し周期を決めておく
KPIは一度決めたら固定するものではありません。事業のフェーズや製品の変化に応じてずれていきます。四半期ごとなど見直す時期をあらかじめカレンダーに入れておくと、形骸化した指標を惰性で追い続ける事態を避けられます。
チャネル別にKPIを見るなら、掲載経由の問い合わせは、件数と商談化率を分けて測りやすい経路です。
7. BtoBマーケティングの取り組み事例
各社が公式に公表している事例から、実際にどのような課題をどう解いたのかを3件紹介します。いずれも公式サイトおよび公式ニュースリリースに記載された内容です。
7-1. 富士フイルムビジネスイノベーションジャパン:イベント運営の工数を約90%削減
複合機・プリンターなどのオフィス機器提供にとどまらず、企業のDX(=Digital Transformation、デジタル技術による業務や事業の変革)を支援するソリューションプロバイダーである同社は、全国規模で展開するイベント運営の自動化と工数削減、そして専門部隊ではない現場担当者でも使いこなせるツールを必要としていました。
導入した「SHANON MARKETING PLATFORM」(提供:株式会社シャノン)では、LPからの申し込みにより、受講票発行から来場認証までを一気通貫で自動化する運用体制を構築しました。その結果、申込管理の工数を約90%削減し、直感的なUIにより未経験者でも自力で対応できる状態になったと公表されています。行動ログと参加履歴を統合したことで、パーソナライズした施策も可能になったとされています。
出典:【シャノン活用事例】イベント運営の工数を90%削減。低負荷なMA運用で実現した、リアルとデジタルを繋ぐDX事例(株式会社シャノン ニュースリリース 2026年2月6日)
7-2. エイチ・シー・ネットワークス:マーケティング起点の受注が過去5年で最大化
1981年に創業した情報通信・ITインフラを専門とする同社は、ネットワーク・セキュリティ・クラウドサービスを組み合わせた統合ITインフラソリューションを提供しています。マーケティング施策の高度化と自動化、運用コストの適正化と社内利用者の拡大が課題でした。
同社はSHANON MARKETING PLATFORMを導入し、伴走型の支援によってツール活用を社内に定着させました。Zoom連携によって名寄せ(=重複した顧客データを1件に統合する作業)が不要になり、工数と負担を大幅に削減したと公表されています。成果として「マーケティング起点の受注が過去5年で最大化」したとされています。
出典:【シャノン活用事例】MAを「受注最大化のポータル」に。2度の乗り換えを経て確立した、過去5年最高の成果を生む戦略(株式会社シャノン ニュースリリース 2025年11月11日)
7-3. デジタル総合印刷:獲得した名刺のフォロー体制を整備
商業印刷・出版印刷を手がけ、AIやVRなどの技術を活用したICTソリューションにも注力する同社(従業員145名)は、年18回のイベント出展と3回のセミナー開催で多くの名刺を獲得しながら、その後のフォローアップ体制が整っていないという課題を抱えていました。獲得した名刺への対応は営業個人任せで、進捗管理も手作業の集計に頼っていたとされています。
同社は「List Finder」を導入し、20日間のトライアル期間に約300件の見込み顧客情報を登録してメール配信を実施しました。1回のメール配信で33件のサイトアクセス情報を得られたことが、導入の手応えとして公表されています。なお、受注率の改善など、それ以外の数値は公式ページに記載がありません。
出典:デジタル総合印刷株式会社様の導入事例(List Finder 公式サイト)
3件に共通するのは、新しい集客手段を増やしたのではなく、すでに接点を持っている見込み客を取りこぼさない仕組みを整えたという点です。BtoBマーケティングの改善余地は、多くの場合、入口よりも入口の後ろ側にあります。
自社で業務システムやSaaSを提供している場合は、以下からデジタル化の窓口への掲載についてご相談いただけます。
製品を提供している企業のご担当者は、こちらから「デジタル化の窓口」への掲載についてご相談いただけます。
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8.【まとめ】目標分解とKPI定義から着手する
BtoBマーケティングは、複数の意思決定者が関わり、検討期間が長く、対象企業の母数が限られるという3つの制約のうえに成り立ちます。この前提を踏まえると、やるべきことの順序は自然に決まります。
事業目標を受注件数・商談数・リード数へ分解し、狙う企業像と関わる人を定義し、購買プロセスの各段階で必要な情報を洗い出し、そこにチャネルとコンテンツを割り当て、営業への引き渡し条件を先に合意しておく。この順番です。
施策を増やすことよりも、すでに持っている接点を取りこぼさない仕組みを作るほうが、多くの場合、先に効果が出ます。まずは自社の受注率と商談化率を実測し、必要なリード数を逆算するところから始めてください。
あわせて、自社サイトのSEOが立ち上がるまでの期間を補う手段として、業界メディアへの製品掲載も検討の余地があります。デジタル化の窓口では、SaaS・ITツールを提供する企業からの掲載相談を受け付けています。掲載条件や掲載後の導線については、下記より個別にご相談いただけます。
よくある質問
BtoBマーケティングとBtoCマーケティングの違いは何ですか?
大きく3点です。1つ目は意思決定者が複数いること(現場担当者・部門長・情報システム部門・決裁者がそれぞれ違う評価軸で判断します)。2つ目は検討期間が長く単価が高いこと。3つ目は対象になり得る企業の母数が限られていることです。BtoCと同じ「量を集める」戦い方が成立しないため、狙う企業を定義して取りこぼさない設計が必要になります。
BtoBマーケティングは何から始めればよいですか?
事業目標の分解から始めます。年間の目標受注金額を平均受注単価で割って必要な受注件数を出し、受注率で割って必要な商談数、商談化率で割って必要なリード数を求めます。この逆算をしないまま施策を始めると、リードをいくつ増やせば足りるのかが誰にも分からないまま運用が進みます。自社の受注率が不明な場合は暫定値を置き、3か月後に実測値へ差し替える前提で始めてください。
BtoBマーケティングのKPIには何を設定すべきですか?
段階ごとに分けて設定します。認知はセッション数や表示回数、リード獲得はリード獲得数と獲得単価、リード育成はメール開封率・クリック率や再訪問数、リード選別は営業引き渡し数と引き渡し率、商談は商談化数と商談化率、受注は受注数・受注率・平均受注単価です。1段階につき1つか2つに絞り、KGI(最終目標指標)から分解して導くのが原則です。
リード獲得数だけをKPIにするとなぜ失敗するのですか?
リード獲得数は測りやすく増やしやすいため、それだけを目標にすると、対象外の業種・規模の企業や、検討意思のない情報収集目的の登録が積み上がります。結果として数字は伸びているのに商談が増えない状態になります。対策は、リード獲得数と商談化率を必ず対で見ることです。獲得数が伸びて商談化率が落ちているなら質が下がっています。
BtoBマーケティングの主な手法にはどのようなものがありますか?
コンテンツマーケティングとSEO、ウェビナーと展示会、メールマーケティング、広告、業界メディアへの掲載やパートナー連携が代表的です。それぞれ効く段階が違うため、認知・獲得・育成・選別のどこを埋めたいのかを決めてから選びます。流行で選ぶと、特定の段階だけに施策が偏り、リードが滞留する原因になります。
BtoBマーケティングが重視されるようになった背景は何ですか?
取引と情報収集そのものがデジタルへ移ったためです。経済産業省の令和6年度電子商取引に関する市場調査では、2024年のBtoB-EC市場規模は514.4兆円、EC化率は43.1%でした。総務省の令和7年版情報通信白書では、2024年の企業のクラウドサービス利用率は80.6%です。買い手が画面上で比較・選定を進める前提が整っており、そこに存在しない企業は検討対象に入りません。
マーケティングと営業の連携で決めておくべきことは何ですか?
営業への引き渡し条件を、施策を始める前に文章で明文化して合意しておくことです。条件には行動条件(料金ページを閲覧した、など)と属性条件(対象業種・規模に合致している、など)の両方を含めます。あわせて、渡した後に営業がいつまでに接触するかも取り決めます。走り出してから決めようとすると、実績の解釈をめぐる議論になり合意しにくくなります。
MA・SFA・CRMはどう使い分けますか?
MA(Marketing Automation)は見込み客の管理と育成を自動化する仕組み、SFA(Sales Force Automation)は商談の進捗を管理する仕組み、CRM(Customer Relationship Management)は顧客情報を一元管理する仕組みです。おおまかにはリード獲得から選別までがMA、商談以降がSFA、受注後を含む顧客全体がCRMの守備範囲になります。製品によって機能の重なりがあるため、自社のどの段階が詰まっているかを先に特定してから選定してください。
BtoBマーケティングの成果はどのくらいの期間で出ますか?
BtoBは検討期間が数か月から年単位に及ぶため、今月獲得したリードの受注が今月の数字に現れることはまれです。評価は、獲得月ごとにリードを束ねて、その後の商談化・受注を時間の経過とともに追う形にします。単月の受注額だけを見ていると、半年前の施策の成果を今月の施策の手柄と誤認します。
自社サイトのSEOが立ち上がるまでの集客はどうすればよいですか?
自社サイトの外側に接点を作る方法があります。業界メディアや製品比較メディアへ製品情報を掲載すると、まだ自社を知らない検討層に対して、比較段階のタイミングで露出できます。掲載先を選ぶ際は、掲載後に問い合わせがどのように自社へ届くのか、その導線と条件を事前に確認しておくことが重要です。
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