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「360度評価(多面評価)」について徹底解説!メリット・デメリット・導入方法や事例についても紹介!

目次

企業の成功には、社員のパフォーマンス向上が欠かせません。多くの企業が社員の評価に頭を悩ませる中、従来の評価方法に代わり新たな評価制度が注目を集めています。今回紹介するのは「360度評価」という評価方法です。360度評価の定義からメリット・デメリット、他の人事評価制度(コンピテンシー評価やMBO制度)の比較、導入する際の注意点などを詳しく解説していきます!

360度(多面)評価とは

360度(多面)評価とは

360度評価とは、社員のパフォーマンスや行動、態度を多角的に評価する手法の一つです。この評価方法は、従来の一方向の評価(上司から部下への評価)と大きく異なり、同僚や部下からも評価されフィードバックをもらえます。一方的な評価と異なり、公平で客観的な評価を得やすいため、フィードバックに納得しやすいという特徴があります。このような包括的な評価は、社員自身の成長を促すだけでなく、モチベーションやエンゲージメントの向上にも繋がるため、組織全体のパフォーマンス向上に寄与します。

360評価の目的2つ

360度評価の目的は大きく2つあり、以下で解説していきます。

1.公平で客観的な評価の実現

上司だけの評価では主観や偏見が入りやすいですが、同僚や部下など多方面からのフィードバックを取り入れることで、公平性が向上します

2.人材育成とモチベーションの向上

多面的な評価とフィードバックによって、社員は自分の強みや改善点を客観的に理解できます。また、公平な評価を実感することで、社員のモチベーション向上が期待できます。

注目されている背景

360度評価が多くの企業に導入されている背景として、コロナ禍でテレワークが普及し、上司が部下を直接評価する機会が減ったことがあります。終身雇用や年功序列の崩壊、管理職削減、社内コミュニケーションのクラウド化など働き方改革によって、従来の企業の形から変革する時期に来ています。それにより多くの社員を巻き込んだ評価が必要となりました。絶え間なく変化が起こる今の時代において、公平で客観的な評価が求められており、360度評価はこうしたニーズに応える方法として注目を集めています。

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人事評価制度の種類と導入率の遷移

現在多くの人事評価制度が提唱されていて、どの評価制度が自社に適しているのか判断する際に困りますよね。そんな人事評価制度の中でも主要な3つの人事評価制度を比較して、それぞれの特徴や導入率を解説します。

1.360度評価

通常は上司が部下を評価しますが、360度評価では上司や同僚・部下など複数の社員が評価者となり、一人の社員を評価します。異なる立場の人が複数人で行う評価なので、公平性・客観性のある多面的な評価が可能です。360度評価が上手く機能すれば、社内の人間関係の改善やチームワークの向上も期待できます。

2023年に実施した調査によると、現在360度評価を実施している企業は57%という結果でした。そして「今後も継続して実施する/今後実施してみたい」と答えた企業は、60%を占めました。

主に規模の大きな企業で導入が進んでいて、従業員数が5000人以上の企業では導入率が66%にまでのぼりました。

参考文献:https://www.cbase.co.jp/download/

2.コンピテンシー評価

コンピテンシー評価は、従業員の行動特性に基づいて評価する手法です。個人のスキルや能力だけでなく、成果を上げるための具体的な行動に着目するため、より客観的で公正な評価が可能です。この評価方法は、従業員に納得感を与え、企業の人材育成計画を具体化する利点があります。ただし、行動特性のモデル化や評価項目の設定には企業独自の基準が必要で、導入には準備が求められます。

コンピテンシー評価について紹介している記事です。是非参考にしてください。

【2024年最新】コンピテンシー評価とは?具体的な導入手順を徹底解説!

 1999年調査時点での導入率は5.7%、2003年時点でのコンピテンシーの導入率は15.8%と、年々導入率は高まっています。 2023年現在の導入率は40%にまで増加しました。これは人材評価だけでなく、新卒採用などで利用する企業が増加したからだと考えられます。

3.目標管理制度(MBO)

MBO (Management by Objectives)は、1954年にピーター・ドラッカーが提唱した目標管理制度です。この制度では、会社の方針と社員の目指す方向性をすり合わせ、個々の目標を設定します。社員が自ら目標を設定し、その達成度を管理することで、業務効率の向上やモチベーションアップが期待できます。また、目標は明確かつ具体的に設定され、第三者が評価しやすいものとすることが理想です。MBOで自ら定めた目標の達成への道筋を自分で管理することで、自発的な行動が生まれ、組織の活性化やチームワークの向上などが期待できます。

目標管理制度(MBO)について紹介している記事です。是非参考にしてください。

目標管理制度(MBO)について徹底解説!意味やメリット、OKRやKPIとの違いも紹介

2024年現在、日本企業でのMBOの導入率が高くなっています。労務行政研究所が行った「人事労務諸制度の実施状況調査」によると、日本では78.4%の企業で目標管理制度を導入しています。目標管理制度(MBO)は他の評価制度と平行して行われることが多いようです。

360度評価の導入メリット・デメリット

360度評価の導入には、多くのメリットがあるものの、デメリットもいくつか存在しています。また、導入する前に知っておきたい注意点を紹介しているので、導入の失敗を未然に防ぎましょう。

◎導入のメリット

1.客観的で公平な評価が可能になる

360度評価では従来の一方的な評価とは異なり、多方面からフィードバックをもらうため客観的で公平な人事評価が可能になります。上司の主観だけで評価が決まることはないので、不安が解消される上に、自身の成長やモチベーションアップが期待できます。

2.改善点や活かしきれていない能力を客観視できる

普段の一方的な評価では気づけなかった従業員の能力や改善点を発見することができます。生かし切れていない能力に気づく、または改善点や認識のずれを知ることで、成長や改善が期待でき、さらなる自己理解に貢献できます。

3.社員のエンゲージメントを向上させることができる

360度評価でポジティブな意見を取り入れることができ、チームの信頼関係の構築や従業員のエンゲージメント向上に寄与します。エンゲージメントの向上やチームの信頼関係構築により、会社全体の士気が向上し、生産性も向上します。

4.上司からの評価だけを気にする必要がなくなる

従来の評価では、上司からの評価が重視されるため、上司の気持ちや意向に合わせて、自らの行動を律する必要がありました。しかし、360度評価では評価の視点が増えるため、上司からの評価におびえる必要がなくなり、自らの意思を上司に言いやすくなります。

5.パワハラなど職場の人間関係の問題が見つけやすくなる

360度評価のフィードバックにより、従業員の不利的状況やハラスメントの存在に気づくことができ、見落とされがちな人間関係の問題に対して、早めに対策することができます。

6.管理職の育成に効果的

360度評価では自分以外の従業員に対して評価を行います。この評価方法は管理職に求められるマネジメントスキル向上に寄与し、将来の管理職人材の育成につながります。また、得られたフィードバックを基に、自らで改善策を実行する能力も向上でき、人材育成につながります。

7.評価への納得感が得られる

人事評価の結果に納得してもらい、自ら課題に取り組んでもらうことが重要です。360度評価では上司以外から評価されるため、評価に納得しやすいという特徴があります。

◎導入のデメリット

1.導入から運用まで時間や労力が必要

従来の評価制度と異なり、多くの従業員が評価に携わるためコストや時間やかかりやすいです。また、導入前に導入背景や運用手順、フィードバックの方法、評価へを全従業員に伝える必要があるため、導入の初期段階で特にコストが発生します。

2.評価の一貫性が欠如しやすい

評価に慣れていない従業員が互いに評価を行うため、評価のポイントを絞り切れず、評価の一貫性が欠如してしまう可能性があります。

3.評価に慣れていない社員は難しい

多くの従業員は他者を評価することに慣れていないです。自分とその人の関係性やその人への感情、偏見を全く無視して、評価する必要があります。したがって、主観に基づいた評価や遠慮がちな評価になりやすいです。

4.上司の指導が甘くなってしまう可能性がある

上司も部下からの厳しい評価を恐れ、厳しい指導ができなくなってしまうことが考えられます。具体的には、指導の目的や背景が部下に伝わらないと、ただの厳しい上司という印象をもたれ、部下からの評価が低くなることがあります。これを防ぐためには、上司と部下のコミュニケーションを積極的にとり、理解を深める必要があります。

5.評価者との関係性に影響が出る可能性がある

360度評価では、誰もが評価する側と評価される側になるため、評価の仕方によっては、互いに不信感が生まれたり、関係性が悪化してしまう可能性があります。したがって、評価者の名前を匿名性にするなどの工夫が求められます。

6.評価に馴れ合いが生まれる

仲のいい従業員同士や同期間の評価では、実態とは異なり、お互いに評価を高め合ってしまう可能性が高いです。一方で、苦手意識を持つ同僚や先輩に対しては、実態と異なり低い評価を付けてしまう可能性もあります。このように、関係性を無視した評価が難しいという一面があるため、評価者は慎重に選んだほうが良いと考えられます。

失敗しないための注意点

  • 導入目的が不明確なまま始めない
  • 評価結果を給与や賞与に直結させない
  • 従業員全員に対して評価を行う
  • 平均化した評価を評価得点にする
  • 評価項目が多すぎて負担が重くならないようにする
  • 評価後のフォローやフィードバックを疎かにしない
  • 匿名での評価を徹底する

360度評価の導入方法

ステップ1:導入目的や回答人数(範囲)を設定する

人事評価や人材育成などの目的を設定し、どの社員を対象に実施するのかについて決める必要があります。このタイミングで、目的や導入背景、評価対象などを詳細に決めないと、後でいざこざが生じたり、社員への周知の際に問題が生じやすくなります。

ステップ2:運用方法を検討する

紙媒体でのアンケート形式か、オンラインツールを活用して集計する方法があります。近年はオンラインツールが多く存在するので、どのツールを導入するのか検討が必要です。

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ステップ3:評価項目・設問の決定

被評価者の立場や職種によって求められる評価項目が異なるので、それぞれの評価項目を選定する必要があります。

この記事で、一般社員向けや管理職向けの評価項目を記載しているので、ぜひ活用してみてください!

ステップ4:社員への周知

対象者や回答者に導入の目的、評価後のフィードバック制度、評価結果の活用先などを明確に説明することが重要です。 この時点でトライアルとして導入することも一つの手です。社員の理解が足りていないと、評価やフィードバックが適切に行われない可能性が高くなるので、しっかりと事前説明を行いましょう。

ステップ5:評価の実施とフィードバック

紙媒体でアンケート用紙を配布するか、専用のツールを導入しアンケートを集計しましょう。集計された評価結果を社員にフィードバックするのですが、ただ返却するだけではなく、上司との面談を実施したり、今度の改善に生かす必要があります。特にネガティブな評価をもらった際は特に、フォローが必要になります。

360度評価(多面評価)の評価項目

執務態度を中心とした評価項目を設定するようにし、その評価で処遇が変わることがないように注意しましょう。以下の評価項目を客観的に数値化し、総合的に評価しましょう。

①一般社員向けの評価項目の具体例

  • 態度
  • 印象
  • 受け入れ・対応力
  • 問題分析力
  • 企画力
  • チャレンジ精神部署での態度
  • 仲間への対応
  • 業務遂行
  • チームワーク
  • 挨拶
  • 協調性

②上層部などのリーダー向けの評価項目の具体例

  • 課題思考力
  • 業務遂行力
  • 現状把握力
  • 目標達成志向
  • 判断力
  • 責任感
  • リーダーシップ
  • コミュニケーション
  • 人材育成力
  • 組織の動機付け力
  • 包容力
  • 傾聴力

360度評価の具体的な導入事例

2023年に360度評価の導入率は57%という結果で、特に従業員数が5000人以上の企業では導入率が66%にまでのぼっています。今後も導入企業が増えていくと考えられるので、導入の注意点やメリット・デメリットを評価して、導入を検討してみてください。

導入企業

  • アイリスオーヤマ
  • マネーフォワード
  • DeNA
  • クラスメソッド
  • ジョンソンヘルステックジャパン株式会社

◎DeNAでの360度評価の導入事例

◎DeNAでの360度評価の導入事例

ここからは、360度評価の具体的な導入事例を紹介します。DeNAでは、マネージャーの能力向上を目的として、360度フィードバックを導入しました。

①360度評価を導入した理由/背景

DeNAは、マネージャーの能力向上を目的に360度フィードバックを導入しました。2017年春に実施した社内調査で、マネジメントに関する課題が浮き彫りとなり、これを受けて適切なフィードバックを通じてマネージャーの能力開発を促進することが必要と判断されました。特に、社員全体からのフィードバックを重視することで、マネージャーが組織全体の成長を牽引できるようにすることを目指しました。この取り組みは、DeNAの企業文化である「DeNA Quality」に基づき、相互フィードバックを活用して組織改善を図るためのものです。

②360度評価の導入方法/手順

360度フィードバックは、記名制で実施され、マネージャーの要件に基づいたフィードバックコメントが集められます。導入初期には、全マネージャーが参加する合宿を行い、フィードバックの内容を共有し、ディスカッションを行うことで具体的な改善策を検討しました。フィードバックを受けたマネージャーは、内容を内省し、自部署のメンバーと改善策を共有しながら取り組みを進めます。

③360度評価を導入による影響/効果

360度フィードバックの導入により、DeNAではマネージャーが自身の課題を明確に認識し、改善に向けた具体的なアクションを取ることが可能となりました。フィードバックの結果をもとに、マネージャーは自己評価と他者評価のギャップを把握し、コミュニケーションやリーダーシップの向上に努めています。また、記名制によるフィードバックにより、具体的な改善点が明確化され、実行に移しやすくなりました。

◎360度評価を実践する上で、おススメのツール紹介

株式会社Fusicの360(さんろくまる)

上司や同僚・部下といった周囲の人間が対象者に対しフィードバックを行う360度評価を実施する、人事評価システムです。従業員が入力する回答画面は、シンプルかつスマホやタブレットでも入力でき非常に手軽です。結果資料も自動生成できるので管理者の手間もかかりません。

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360度評価におけるコメントテンプレート

①部下から上司へ

部下が上司を評価する機会は360度評価以外では少ないため、戸惑うこともあるでしょう。評価の際には、業務遂行能力よりもチームのマネジメント力に重点を置くことが重要です。チーム全体を見て部下を適切に管理し、サポートしているかどうかを考慮して、評価をすると良いでしょう。

  • 例1.チームを率いて業務に取り組む姿勢に刺激を受けています。他のメンバーが困っているときにも個別にサポートしてくれる配慮が、チーム全体のモチベーション向上に寄与していると思います。
  • 例2.仕事で成果が出ない時も、取り組む姿勢を評価してもらえるので前向きに業務を進められています。適切な改善策を提案していただけるおかげで目標を達成できましたし、チームの業務が円滑に進んでいると思います。

②同僚へ

同僚を評価する際は、役職の違いが少なく、日常的に関わる機会も多いため、主観的な意見が出やすくなります。しかし、好き嫌いなどの個人的な感情を排除し、仕事への取り組み方に焦点を当ててコメントすることが大切です。自分の立場だからこそ気づけた点や改善点についてアドバイスしましょう。

  • 例1:上司への積極的な提案や、困っているメンバーへの積極的なサポートは素晴らしいです。ただ、時々自分の意見を押し進めすぎることがあるので、もう少し柔軟な姿勢で取り組み周りの意見を取り込むと、さらにリーダーシップを発揮できると思います。
  • 例2:スキルアップに熱心で、休憩時間を利用して資格取得のために勉強している姿に刺激を受けています。取引先や同僚からの信頼も厚く、見習うべき点が多いですが、一人で仕事を抱え込むことが多いので、周囲に相談することも時には重要だと思います。

③上司から部下へ

批判的なコメントばかりすると、部下はプレッシャーを感じてやる気を失うことがあります。褒めるべき点を述べると同時に、業務改善につながる具体的な提案を示すと効果的です。

  • 例1:前年から15%の売上増加という目標を達成した点は、大いに評価できます。研修やセミナーでの努力の成果が現れたと言えるでしょう。しかし、業務に集中するあまり、周囲のメンバーの意見やアドバイスを取り入れることが少ないようです。広い視野を持つためにも、積極的に他の意見を取り入れることが重要です。
  • 例2:新入社員のフォローやチームのムードメーカーとしての役割も素晴らしいですが、業務では上からの指示を待ってしまっているように見受けられます。より主体的に課題を見つけ、改善に取り組むことでさらに成長することができると思われます。どんな小さなことでも気軽に相談してください。

まとめ

ここまで読んで頂きありがとうございました!360度評価について詳しく理解できましたか?上司からの一方的な評価方法が主流でしたが、近年では上司と部下、同僚間の双方的な評価方法が主流になりつつあります。また、導入にはメリット・デメリットがあるので、それぞれの企業に合う方法なのかをよく検討し、社員の能力を最大限に生かせる評価方法を導入しましょう。

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