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ナーチャリングとは?7社の事例に共通する始め方と続け方

目次

ナーチャリングという言葉は、見込み客への定期的な情報提供を指す場面もあれば、既存顧客との関係維持や、採用候補者とのつながりを保つ取り組みを指す場面もあります。同じ言葉で違う対象を語っているために、社内で話が噛み合わないことも起こります。

この記事では、まずナーチャリングという言葉が何を指すのかを対象別に整理したうえで、実際に取り組んでいる企業7社の公開事例をもとに、少人数の組織・拠点が分かれた組織・検討期間が長い業種のそれぞれで、何から始めて何が成果につながったのかを見ていきます。数値はすべて各社が公開している導入事例の記載に基づいています。

1. ナーチャリングとは?対象によって3つに分かれる

Three domains of nurturing by target audience and purpose

ナーチャリングは、すぐには成約に至らない相手と接点を持ち続け、必要になったときに自社を思い出してもらえる状態を保つ活動です。まず言葉の範囲を確認します。

1-1. 言葉の意味と、育てる対象

ナーチャリング(nurturing)は、英語で「育成する」「養育する」を意味する nurture の動名詞です。マーケティングの文脈では、相手を教育するという意味ではなく、相手が自分で判断できるだけの材料を、適切な時期に渡し続けることを指します。育てているのは相手ではなく、相手との関係と、相手側の理解度です。

この区別は実務上重要です。育成という言葉を文字どおり受け取ると、自社の製品説明を繰り返し送る施策になりがちです。しかし相手が求めているのは、次のような判断材料です。

  • 自社の課題が何なのか
  • どの手段が現実的なのか
  • 社内をどう説得するのか

送る内容が相手の判断を助けるものになっているかどうかが、続くかどうかの分かれ目になります。

1-2. リード・既存顧客・採用候補者の3領域

ナーチャリングの対象は、大きく3つに分かれます。

呼び方 対象 主な目的
リードナーチャリング まだ取引のない見込み客 検討が始まったときに相談先の候補に入ること
カスタマーナーチャリング 既に取引のある顧客 継続利用と、追加提案の機会を保つこと
採用候補者のナーチャリング 応募に至っていない候補者 転職を考えた時期に接点が残っていること

BtoBで単にナーチャリングと言うとき、多くはリードナーチャリングを指します。ただし実際の運用では、この3つが同じ配信基盤の上で動くことも珍しくありません。後述する事例でも、既存顧客向けの広報誌の案内と、新規見込み客向けの情報配信を、同じツールで並行して行っている企業があります。対象が違えば送る内容も頻度も変わるため、リストの上でどう分けるかを最初に決めておく必要があります。

1-3. 「ナーチャリングをやる」が指す具体的な行為

ナーチャリングという言葉は抽象的ですが、実際に行われている作業は限られています。公開されている導入事例に共通して登場するのは、メールやニュースレターの定期配信、セミナーやウェビナーの案内と開催、資料やレポートの追加提供、Webサイト上での行動の記録、そして反応があった相手への個別連絡です。

特別な施策があるわけではなく、これらを続けられる形にすること自体が実務の中身です。1回のイベントで終わらせず、参加した人・しなかった人を分けて次の接点を用意する。この繰り返しがナーチャリングと呼ばれています。

関連する言葉の整理については、MA・SFA・CRMの違いを扱った記事で、それぞれのツールが担当する範囲を確認できます。

リードナーチャリングを始めるには、育てる対象のリードが必要です。製品を提供している場合、検討層が集まる場所への掲載が、その母数をつくる方法の一つになります。

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2. 自社にナーチャリングが要るかを判断する4つの条件

nurturing necessity conditions

ナーチャリングはすべての事業に必要な取り組みではありません。着手する前に、自社の商材と営業体制がどの条件に当てはまるかを確認しておくと、投じる労力の見当がつきます。

2-1. 検討期間が数ヶ月以上ある

最初の条件は、問い合わせから契約までの期間の長さです。相手が資料を見た当日に決められる商材であれば、獲得したリードをその場で営業に渡すほうが早く、間に育成の工程を挟む意味は小さくなります。

一方、検討に数ヶ月から数年かかる商材では、獲得した時点の相手はまだ情報収集の段階にあります。非臨床試験を受託する株式会社イナリサーチは、導入事例のなかで「商談から受注までの期間が非常に長く、数年単位で追客することもよくある」と述べています。この長さが、接点を維持する仕組みを必要とする直接の理由になっています。

出典:株式会社イナリサーチ様 導入事例(List Finder)

2-2. リードの数が営業の処理能力を超えている

2つ目は、獲得したリードの数と、営業が対応できる件数の差です。展示会やウェビナーで数百件の名刺やリストが集まっても、営業担当者が数名であれば、全件に個別対応することはできません。結果として、対応されないまま放置されるリードが積み上がります。

事業創出支援を手がけるmichinaru株式会社は、従業員10名以下の体制で、導入前の課題として「ウェビナーからのアポイント獲得業務に割くリソースが足りない」「増えていくリストに対して中長期的なアプローチができない」を挙げています。人手で追えない量になったことが、仕組みを入れる契機になっています。

出典:michinaru株式会社様 導入事例(List Finder)

2-3. 買い手と売り手の情報量の差が大きい

3つ目は、扱う分野の専門性です。相手が業界の慣行や技術的な前提を知らない場合、価格や機能を並べても比較ができません。この状態では、比較のための前提知識を渡すこと自体が接点になります。税務、物流、試験受託のように、外部からは中身が見えにくい業種ほど、この効果が大きくなります。

2-4. 効きにくいケース

逆に、効果が出にくい条件もあります。単価が低く即決される商材、リード数が月に数件しかない場合、そして問い合わせのほとんどが既存の紹介経由である場合です。

リード数が少ないうちは、配信の仕組みを整えるより、営業担当者が1件ずつ連絡したほうが確実です。ナーチャリングは、個別対応では手が回らない量になったときに効く手段であり、量が足りない段階ではリード獲得の側を先に手当てするほうが合理的です。

4つの条件に当てはまらない場合でも、検討が始まった瞬間に候補として見つかる状態は必要です。

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3. 事例に共通する立ち上げの型

公開されている導入事例を並べると、業種や規模が違っても、始め方には共通した順序があります。

3-1. すでにある接点から始める

新しい集客手段を作るところから始めた事例は多くありません。すでに手元にある接点を配信対象にするところから始まっています。事例で最初の配信対象になっているのは、次のような接点です。

  • 名刺交換した相手
  • 過去のセミナー参加者
  • Webサイトからの問い合わせ

SBSロジコム株式会社は、営業担当者が名刺交換した相手へのメール配信を、名刺管理システムとの連携で行っています。

3-2. 誰が手を動かすかを先に決める

次に共通するのが、担当の明確化です。事例に登場する企業では、営業企画部やデジタルマーケティング部といった部署名、あるいは個人名で担当者が示されています。専任でなくとも、配信の判断をする人が決まっていることが、継続の前提になっています。

3-3. 最初の1本を小さく作る

初回から複雑な条件分岐を組んだ例は見当たりません。月に数通のメール、1本のウェビナー、1つの申込フォームといった単位で始まっています。株式会社グロップの事例では、ウェビナーの知見がない状態から、企画から開催まで約1か月半で1本を実施しています。

3-4. 営業への渡し方をセットで決める

配信して終わりにせず、反応があった相手をどう扱うかを同時に決めている点も共通しています。グロップの事例では、ウェビナー後に参加者と欠席者を分けたうえで、営業部門と連携する体制を作っています。辻・本郷 税理士法人の事例では、セミナー参加者へのフォローコールを行う体制が組まれています。

出典:株式会社グロップ様 導入事例(Kairos3)

「すでにある接点から始める」が型であるなら、その接点そのものを増やす手段も並行して検討する価値があります。

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4. 専任者を置けない小規模組織の事例

まず、担当者が他業務と兼務している規模の組織の例を2社見ます。

4-1. michinaru株式会社:6人の体制で継続配信を回す

michinaru株式会社は、事業創出支援・組織開発支援・人材育成および人材採用支援を手がける企業です。導入事例では従業員規模が10名以下と記載され、少数精鋭の体制であることが述べられています。

導入前は、ウェビナーからアポイントを獲得する業務にリソースが足りず、増えていくリストに中長期的なアプローチができない状態でした。表計算ソフトによるリスト管理にも限界を感じていたとされています。

導入後に実施しているのは、ウェビナーやホワイトペーパーの案内メール、オフラインイベントの告知と事後レポートの配信、定期ニュースレター、ラジオ番組の週1回の配信告知、コミュニティ運営、個社別の勉強会です。1つの大きな施策ではなく、複数の小さな接点を重ねる形になっています。

成果として公開されているのは、定期的なニュースレターの開封率が38%ほど、最近の配信からのダウンロード率が10%近くという数値です。少人数の体制でも、配信の型が決まれば継続できることを示す例といえます。

出典:michinaru株式会社様 導入事例(List Finder)

4-2. 羽立工業株式会社:架電営業と並行して立ち上げる

羽立工業株式会社は、導入事例で業種がメーカー・製造、従業員規模が11〜50名と記載されている企業です。インサイドセールスを立ち上げることになり、あわせて見込み顧客の育成に取り組むことになった段階で導入しています。

導入前の課題は、架電営業を中心とした従来手法における通電率の低さと、アポイント取得の効率化でした。利用している機能はメール配信、フォーム作成・管理、アクセス分析で、事例では架電営業と並行して活用し、メールマガジン配信とWeb解析で関係を構築しながらニーズを掴んでいく方針が述べられています。

この事例に具体的な成果数値の記載はありません。ただし、既存の電話営業を止めずに、並行して配信の仕組みを立ち上げるという進め方は、営業人数が限られる組織で現実的な選択肢になります。電話がつながらなかった相手に対して、別の接点を残しておく位置づけです。

出典:羽立工業株式会社様 導入事例(List Finder)

4-3. 2社から読み取れること

2社に共通するのは、人手が足りないことが導入理由になっている点です。人員に余裕がある状態で高度化のために導入したのではなく、追いきれないリードが発生したことが出発点になっています。また、いずれも既存の活動(ウェビナー、架電)を土台にしており、まったく新しい集客経路を作るところからは始めていません。

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5. 部門や拠点が分かれた組織の事例

次に、複数部門・複数拠点を抱える組織の例を見ます。この規模では、施策の巧拙よりも、分散した活動をどうまとめるかが課題になります。

5-1. 辻・本郷 税理士法人:部門ごとの配信を1つに集約する

辻・本郷 税理士法人は、国内約80拠点、顧問先15,000社、従業員1,700名を擁する税理士法人です。相続税申告件数は年間3,000件で国内トップクラスとされ、税務業務のほかITコンサルティング、M&A、不動産業務などの専門会社を傘下に持ちます。

導入前の課題として挙げられているのは3点です。デジタルマーケティング部の立ち上げ時に別のマーケティングオートメーションツールと営業支援システムを導入したものの、ツールが複雑すぎてうまく活用できなかったこと。セミナー参加者へのフォローが実施されていなかったこと。そして各部門がバラバラにメール配信を実施していたことです。

導入後は、セミナーの申込フォーム作成・受講案内・出欠管理を1つのツールで一元化し、参加者へのフォローコール体制を構築しました。各部門のメール配信も同じ基盤に集約し、案件化した顧客を営業支援システムに登録してグループ会社と連携する流れを作っています。

公開されている成果は、セミナーフォローを担うインサイドセールスが機能したこと、チームが8名に増員されたこと、顧問先のニーズが推測しやすくなったことです。件数や率の数値は公開されていませんが、組織が大きいほど、施策の新規追加より既存活動の集約が先に効くことを示しています。

出典:辻・本郷 税理士法人様 導入事例(Kairos3)

5-2. 株式会社グロップ:知見ゼロからウェビナーを1本立ち上げる

株式会社グロップは、人材派遣、製造受託、コールセンター業務などの人材サービスと、経理・採用・Web動画制作・SNS運用といったBPOサービスを展開する企業です。

導入事例によれば、すでにメールマガジン配信は実施していたものの、次の段階であるウェビナー施策の立ち上げで行き詰まっていました。社内にウェビナーの知見がなく手探りの状態で、担当者はウェビナーの経験がなく、必要な段取りや集客方法を把握できておらず、社内に教えられる人もいない状況だったとされています。

実施したのは、顧客課題やターゲット・目的を明確にする企画、バナー画像・申込ページ・集客メールの作成、集客、当日の運営、開催後のフォロー体制の整備です。フォローでは参加者と欠席者を分け、営業部門と連携しています。

成果として、企画から開催まで約1か月半で実施できたこと、ウェビナー後に1件が受注見込みとなり他1件も商談が進んでいること、新規アポイント数が当初の目標を大きく上回る見込みであることが記載されています。

出典:株式会社グロップ様 導入事例(Kairos3)

5-3. 2社から読み取れること

いずれも、担当部署が明確に置かれている点が共通します。辻・本郷 税理士法人はデジタルマーケティング部、グロップは担当者が個人名で示されています。複数部門にまたがる組織では、配信内容の判断を誰が行うかが決まらないと、集約そのものが進みません。

もう1点は、どちらも「複雑なツールが使われなくなった」経験を経ている、あるいは知見がない状態から始めている点です。高機能であることより、担当者が自分で操作を完結できることが選定基準になっています。ツールの分類ごとの機能差については、MAツールの比較記事で各製品の対応範囲を確認できます。

部門や拠点が分かれていても、製品として掲載する窓口は1つにまとめられます。

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6. 検討期間が長い業種の事例

最後に、受注までの期間が長く、追客そのものが業務になっている業種の例を3社見ます。

6-1. 株式会社イナリサーチ:数年単位の追客を前提に組む

株式会社イナリサーチは、医薬品や医療機器、化学品、農薬などのための非臨床試験サービスを手がける企業で、従業員は連結で180名です。

導入前は、メール配信の設定に毎回かなりの手間と時間がかかること、全件数に一括送信できずタイムリーな情報発信ができないことが課題でした。効果測定も十分に活かせていなかったとされています。そのうえで、商談から受注までの期間が非常に長く、数年単位で追客することもよくあるという業種特性が述べられています。

導入後の取り組みとして記載されているのは、メール配信とセミナーページの設置、そして今後の個人データを用いた案件創出への活用です。具体的な成果数値は公開されていません。

この事例が示すのは、追客期間が長い業種では、1回あたりの反応率より、配信作業を軽くすることが優先課題になるという点です。数年にわたって接点を保つには、担当者が負担を感じずに続けられる状態であることが前提になります。

出典:株式会社イナリサーチ様 導入事例(List Finder)

6-2. SBSロジコム株式会社:紙とメールを併用する

SBSロジコム株式会社は、国内外の物流サービスを提供する企業で、従業員規模は1,000名以上です。導入前は案件管理を表計算ソフトで行っており、月末の会議前に慌てて案件進捗を入力するような状態だったと述べられています。また、Webサイトにターゲット企業がアクセスしているのかが分からない状態でした。

導入後の施策は、営業企画部が中心となって進めています。Webサイトへの来訪企業からピックアップした企業への紙のパンフレット送付、広報誌の発刊を告知するダイレクトメール、営業担当者と名刺交換した相手へのメール配信(名刺管理システムとの連携)、そして月3〜4件のメール配信です。配信内容は空き倉庫の状況、展示会情報、広報メールマガジンとされています。

成果として記載されているのは、直近に送ったメールで普段の7倍以上のクリック率が出たという点です。倉庫の空き状況のように相手の意思決定に直結する情報を配信したときに反応が集中することを示す例といえます。

出典:SBSロジコム株式会社様 導入事例(List Finder)

6-3. リコーPFUコンピューティング株式会社:製品ごとに分けて配信する

リコーPFUコンピューティング株式会社は、リコーグループで培った画像処理技術やコンピュータ技術を活かし、インダストリ分野の製品を開発・提供する企業です。センシング技術とコンピューティング技術を融合させた作業支援カメラシステムなどを展開しています。

導入前は別のマーケティングオートメーションツールを導入していましたが、設定が複雑なためメールマガジン配信くらいでしか活用できておらず、活用度に対して費用が高額に感じられていたとされています。営業情報も、営業支援システム導入前は表計算ソフトで管理しており、全体像の把握が困難でした。

導入後は、新製品情報やキャンペーン情報のメールマガジン配信を継続・拡大し、ウェビナーの集客や運営を自社で行うようになりました。あわせてリードにタグを付けて製品ごとに顧客を分類し、セグメント配信を実施しています。商談管理では更新順の並べ替えやデータ抽出による売上予測を行っています。

具体的な成果数値の公開はありませんが、施策の改善サイクルが回しやすくなったこと、売上予測が立てやすくなったことが述べられています。複数の製品を扱う企業では、リスト全体に同じ内容を送るのではなく、関心の対象ごとに分けることが前提になります。

出典:リコーPFUコンピューティング株式会社様 導入事例(Kairos3)

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7. 事例から見える失敗パターンと続けるための条件

Three conditions common to organizations that keep their nurturing programs running

7社の事例には、導入前につまずいた内容も記載されています。そこから、避けるべき状態と、続いている組織の条件を整理します。

7-1. ツールが複雑で使われなくなる

複数の事例で共通して挙げられているのが、この状態です。辻・本郷 税理士法人は「ツールが複雑すぎてうまく活用できなかった」、リコーPFUコンピューティングは「設定が複雑なためメルマガ配信くらいでしか活用できていなかった」と述べています。

いずれも機能が足りなかったのではなく、機能を使いこなす前に手が止まっている点が共通します。選定時に機能の多さだけを比較すると、この状態に陥りやすくなります。担当者が他業務と兼務する場合は特に、実際に操作する人が試用段階で自分で設定を完了できるかどうかを確認しておく必要があります。

7-2. 配信が目的化して営業に渡らない

2つ目は、配信は続いているが商談につながらない状態です。辻・本郷 税理士法人の事例では、導入前の課題として「セミナー参加者へのフォローが実施されていなかった」ことが挙げられています。イベントは開催できていても、参加者をその後どう扱うかが決まっていなければ、接点は途切れます。

これを避けている事例では、配信の設計と同時に受け皿が用意されています。グロップは参加者と欠席者を分けて営業部門と連携し、辻・本郷 税理士法人はフォローコールを行うインサイドセールスの体制を作りました。誰が、どの反応を見て、いつ連絡するかを決めていない配信は、記録は残っても行動につながりません。

7-3. 効果測定が開封率で止まる

3つ目は、指標の置き方です。開封率は配信が届いているかを確認する数値ですが、それだけでは次の行動を決められません。

michinaruの事例では、開封率38%ほどという数値とあわせて、配信からのダウンロード率が10%近くという数値が公開されています。SBSロジコムはクリック率の変化を見ています。開封の次に何を見るかを決めておくと、内容の良し悪しを判断できるようになります。メール施策の評価指標や配信ツールごとの計測範囲については、メールマーケティングツールの比較記事で各製品の対応内容を確認できます。

7-4. 続いている組織に共通する3点

ここまでの事例を通して、継続できている組織には次の3点が共通しています。

条件 事例での現れ方
担当が決まっている 営業企画部、デジタルマーケティング部など、部署または個人が明示されている
既存の接点から始めている 名刺交換者、セミナー参加者、Web来訪企業を最初の配信対象にしている
営業への引き渡し経路がある フォローコール、参加者と欠席者の振り分け、営業支援システムへの登録

逆に言えば、この3点が決まっていない状態でツールだけを導入すると、事例が導入前の課題として挙げていた状況をそのままなぞることになります。他社がどの機能をどう使っているかは、マーケティングオートメーションの導入事例をまとめた記事でも確認できます。

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8.【まとめ】既存の接点を1つ選んで配信を始める

ナーチャリングは、見込み客・既存顧客・採用候補者のいずれを対象にする場合も、相手が判断するための材料を適切な時期に渡し続ける活動です。着手を判断する条件は、検討期間の長さ、リード数と営業人数の差、分野の専門性の3つで、リード数がまだ少ない段階では獲得側を先に手当てするほうが合理的です。

今回取り上げた7社は、従業員10名以下の組織から1,000名以上の組織まで規模が異なりますが、始め方は共通していました。すでにある接点を配信対象にし、担当を決め、最初の1本を小さく作り、反応があった相手を営業に渡す経路を同時に用意しています。開封率38%、クリック率が普段の7倍以上といった数値も、この順序を踏んだうえで出ています。

自社で始める場合も、新しい集客手段を用意するより、名刺交換した相手やセミナー参加者といった手元のリストから1つ選び、月1本の配信を続けられる形にすることが最初の一歩になります。

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よくある質問

ナーチャリングとは何を指す言葉ですか。

すぐには成約に至らない相手と接点を持ち続け、必要になったときに自社を思い出してもらえる状態を保つ活動です。相手を教育するという意味ではなく、相手が自分で判断できるだけの材料を適切な時期に渡し続けることを指します。

ナーチャリングの対象にはどのような種類がありますか。

大きく3つに分かれます。まだ取引のない見込み客を対象とするリードナーチャリング、既に取引のある顧客を対象とするカスタマーナーチャリング、応募に至っていない候補者を対象とする採用候補者のナーチャリングです。BtoBで単にナーチャリングと言う場合は、多くがリードナーチャリングを指します。

リードナーチャリングとナーチャリングは違うものですか。

リードナーチャリングはナーチャリングの一領域で、まだ取引のない見込み客を対象とするものです。ナーチャリングという言葉自体は既存顧客や採用候補者への取り組みも含むため、社内で話すときは対象を明示しておくと認識のずれを防げます。

自社にナーチャリングが必要かどうかは、どう判断すればよいですか。

検討から契約までの期間が数ヶ月以上あるか、獲得したリードの数が営業の処理能力を超えているか、扱う分野の専門性が高く買い手と売り手の情報量の差が大きいか、の3点で判断できます。いずれにも当てはまらない場合は、優先度が下がります。

ナーチャリングが効きにくいのはどのような場合ですか。

単価が低く即決される商材、リード数が月に数件しかない場合、問い合わせのほとんどが既存の紹介経由である場合です。リード数が少ないうちは配信の仕組みを整えるより、営業担当者が1件ずつ連絡したほうが確実で、リード獲得の側を先に手当てするほうが合理的です。

少人数の組織でもナーチャリングは可能ですか。

公開されている導入事例には、従業員10名以下の組織が定期ニュースレターやウェビナー案内を継続し、開封率38%ほど、ダウンロード率10%近くという数値を公開している例があります。専任者がいなくても、配信の型を決めれば継続できることを示しています。

何から始めればよいですか。

事例に共通しているのは、新しい集客手段を作るのではなく、名刺交換した相手や過去のセミナー参加者、Webサイトからの問い合わせなど、すでに手元にある接点を最初の配信対象にすることです。そのうえで担当を決め、月に数通のメールや1本のウェビナーといった小さな単位で始めています。

配信は続いているのに商談につながりません。何が足りませんか。

反応があった相手を誰がいつ営業に渡すかという受け皿が決まっていない可能性があります。事例では、ウェビナー後に参加者と欠席者を分けて営業部門と連携する、セミナー参加者へのフォローコールを行う体制を作るなど、配信の設計と同時に引き渡しの経路を用意しています。

効果はどの指標で測ればよいですか。

開封率は配信が届いているかを確認する数値にとどまるため、その次に見る指標を決めておく必要があります。公開事例では、配信からの資料ダウンロード率やクリック率の変化を追っている例があります。開封の次に何を見るかを決めると、配信内容の良し悪しを判断できるようになります。

ツールを導入したのに使われなくなるのはなぜですか。

複数の公開事例で、設定が複雑でメール配信程度にしか使えていなかったという状態が導入前の課題として挙げられています。機能が足りないのではなく、機能を使いこなす前に手が止まっている状態です。担当者が他業務と兼務する場合は特に、実際に操作する人が試用段階で自分で設定を完了できるかを確認しておく必要があります。

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