製品を導入することになった背景

株式会社百音設計は、医薬品や医療分野の建築設備設計に特化し、基本設計から竣工まで一貫して図面を扱う体制を持つ企業である。これまでの業務においては、複雑な設備構成やメンテナンス動線の確保といった高難度な要求に対応する必要があった。特に、千代田テクノエース株式会社と協業した約2万㎡の医薬品製造工場の改修プロジェクトでは、設計期間が非常に限られていたため、従来の2D中心の設計フローでは対応が困難であった。この状況を打破するため、建築設備専用の3次元CADである「レブロ」の導入に踏み切り、BIMによるフロントローディングの効果を最大化する体制を整えた。

導入前に企業が抱えていた課題

百音設計が抱えていた最大の課題は、設計期間の短さと設計精度の両立である。特に、医薬品工場のように設備密度が高く、衛生管理上の制約が多い設計対象では、天井内設備の納まりや保守動線の確保といった要素を高精度で検討する必要があった。また、建築・構造・機械・生産設備の複雑な干渉関係を調整する作業に多大な労力がかかり、作業の属人化や設計ミスのリスクも顕在化していた。これらの課題に対し、短期間で高品質な図面作成を可能とする新たなソリューションの導入が急務となっていた。

導入前の課題に対する解決策

これらの課題を解決するために、百音設計はArchiCADとレブロの連携を基盤とした3D統合設計手法を導入した。特にレブロは、設備設計に特化した機能とBIMへの対応力が高く、建築モデルとの整合性を保ちながら設備の納まりを高精度で検証できる点が評価された。実際のプロジェクトでは、設備機器の3Dモデルを作成して建築モデルに統合し、断面図作成機能を活用することで、問題箇所をリアルタイムに共有・解決するフローを確立。さらに、社内教育としてCAD講習を実施し、短期間で設計者が操作習得できる体制を整えたことで、新ツールの導入をスムーズに進めることができた。

製品の導入により改善した業務

レブロの導入により、設備と建築の取り合い検討が格段に効率化され、設計段階から施工フェーズを意識した図面作成が可能となった。これにより、各施工担当者との調整作業が前倒しで実施できるようになり、現場での手戻りが大幅に削減された。特に、断面図による3D統合図面の可視化により、施主や現場関係者への設計意図の伝達が的確に行えるようになった点は大きな成果であった。また、設計変更に伴う作業時間の短縮やモデルの品質向上が図られ、結果として工期短縮にも貢献するなど、フロントローディングによるBIM活用の効果が実証された。今後も同社はBIM中心の業務体制を強化し、より効率的かつ高品質な設備設計を目指していく方針である。