製品を導入することになった背景

鹿島建設株式会社では、建設現場の複雑化や多様な協力会社との連携を背景に、従来の業務フローだけでは対応しきれない課題が増えていた。特に着工前の計画精度を高めることの重要性が増し、情報の可視化と共有を強化するニーズが顕在化していた。このような状況下で、同社はBIM(Building Information Modeling)の施工段階での有効活用に着目し、より高度な総合調整を可能にするためにGraphisoftの「Archicad」および「Solibri」の導入を決定した。また、ICT技術による業務効率化を積極的に推進するという経営方針のもと、グローバルBIMを設立し、専任体制でのBIM運用の高度化を進めていった。

導入前に企業が抱えていた課題

導入前の鹿島建設では、複数の協力会社が提出する図面やモデルの整合性を保つことが難しく、特に施工前の意思決定が遅れることによる手戻りや現場での調整作業の増加が業務の効率を低下させていた。また、2次元図面ベースの情報伝達では設計や施工に関わる多くの関係者間で認識のズレが生じやすく、品質やコスト、工期に悪影響を及ぼすリスクが存在していた。さらに、干渉チェックや施工の調整にかかる人的・時間的リソースの増大も大きな負担となっており、BIMの本格導入による抜本的な改革が求められていた。

導入前の課題に対する解決策

このような課題に対し、鹿島建設はまずBIMを推進するための専任組織として西日本プロダクションセンターを新設し、設計から施工にかけての意思決定を早期に行う体制を整えた。さらに、複数の業者が作成する3Dモデルを統合し、施工前に徹底的な総合調整を行う仕組みとして、Solibriの導入を進めた。このソフトウェアを活用することで、干渉チェックや設計ミスの早期発見、さらには関係者間のリアルタイムなコミュニケーションと記録の一元管理が可能になった。併せて、ルール統一による整合性の確保や、モデルのクラウド共有による業務の効率化も図られた。

製品の導入により改善した業務

SolibriおよびArchicadの導入により、鹿島建設では施工現場における総合調整業務が飛躍的に改善された。特に、3Dモデルをベースとした課題共有と意思決定の迅速化が実現され、これまで時間を要していた調整会議が短縮されただけでなく、リアルタイムでの課題認識と修正対応が可能となった。また、モデル上で問題点を明確にし、BCF形式での記録・共有を行うことにより、関係者間の認識のズレが大幅に解消され、作業の手戻りやミスの削減にもつながっている。クラウドによるデータ連携も強化され、施工に関わるすべての担当者が同じ情報基盤のもとで作業を進められる体制が構築されたことで、建築現場の生産性は確実に向上した。