勤怠管理システム比較7選 (全44選)｜最新の法令要件へ対応したシステムや業種別 (建設/IT/製造) の選び方を解説

毎月の勤怠締め処理に時間がかかっていませんか？また、2024年からの法改正（建設・運送業等）／複雑化する36協定の上限管理は、Excelでは限界に近づいています。

勤怠管理システムの導入は、今や単なる効率化（攻め）のためだけではなく、「有給5日義務」「月60h超割増50%」といった法令を遵守し、労務リスクを防ぐ「守り」のために必須となっています。

この記事では、導入実績の多い、主要7製品（全44選）を徹底比較。法令対応の重要性から、失敗しない「5つの比較軸」、業種別の選び方、導入の落とし穴まで、具体的に解説します。自社に最適な勤怠管理システムを選び、バックオフィス業務のDXを実現しましょう。

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1. なぜ今、勤怠管理システムが必須なのか？

タイムカードやExcel（エクセル）での勤怠管理は、手軽な一方で、近年の複雑な法改正への対応が追いつかないリスクを抱えています。毎月の集計作業の負担（攻め）だけでなく、気づかぬうちに法令違反を犯してしまう危険性（守り）を回避するため、なぜ今システム化が必須なのか、その理由を最新の法令要件から解説します。

実際に、「デジタル化の窓口」の独自調査で「勤め先の勤怠管理手法」を尋ねたところ、約３分の１（32.9％）が「タイムカード」や「PCソフト（ウェブサービス含む）」、10.6％が「エクセル等への入力」、12.9％が「用紙への記入（手書き）」と回答しており、6割以上がまだExcel／用紙／タイムカードといった旧来手法を使っていることが明らかになっています。

1-1. 危険！Excel管理で見落とす「時間外労働の上限規制」

多くの企業が「36協定（サブロク協定）」を締結していますが、その上限管理はExcelの手集計では限界を迎えています。

時間外労働の上限は、原則として「月45時間・年360時間」です。しかし、問題は臨時的な繁忙期に対応する「特別条項」を適用した場合です。特別条項を使ったとしても、

• 時間外労働は年720時間以内
• 時間外労働と休日労働の合計が、複数月平均80時間以内
• 時間外労働と休日労働の合計が、単月100時間未満
• 月45時間を超えられるのは、年6回まで

という「4つの複雑な上限」すべてを遵守しなくてはなりません。

• 「今月は60時間だったが、先月と先々月は75時間だった。複数月平均は超えていないか？」
• 「今月で月45時間を超えるのは年何回目か？」

これらをExcelでリアルタイムに集計し、従業員や管理者へ「警告（アラート）」を出すことは、実務上ほぼ不可能です。システム化は、この複雑な上限規制を自動で監視・警告するために不可欠です。

1-2. 2024年4月～ 建設業・ドライバーも「上限規制」適用

2024年4月からは、これまで上限規制の適用が猶予されていた業種にも、いよいよ規制が適用開始されました。

特に「建設業」「自動車運転の業務（ドライバー）」「医師」は、社会的な影響も大きく、勤怠管理のあり方を根本から見直す必要があります。例えば、自動車運転の業務では「年960時間」の特例的な上限が設けられましたが、これは従来の「改善基準告示」（拘束時間や休息期間のルール）とあわせて管理せねばならず、管理はより一層複雑化しています。

業種特有のルールに対応した労働時間の把握と集計は、専用のシステム導入が前提となります。

\ 建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制について紹介しています。 /
建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制｜厚生労働省

1-3.「有給5日取得義務」と「月60h超割増50%」への対応

2019年から施行された「年5日の年次有給休暇の取得義務」も、管理部門の負担を増やしています。これは、年10日以上の有給が付与される従業員に対し、企業側が時季を指定してでも年5日を取得させる義務です。

この対応のため、企業は従業員ごとの「年次有給休暇管理簿」を作成・保存（3年間）する義務も負います。Excel台帳での管理は、取得状況の把握漏れや、管理簿の更新忘れを誘発しかねません。

さらに、2023年4月からは、中小企業においても「月60時間を超える時間外労働」に対する割増賃金率が、従来の25%から50%以上へと引き上げられました。深夜労働と重なれば75%となります。「この改正」により、残業代の計算ミスは即、未払い賃金問題に直結します。正確な自動計算機能は、もはや必須と言えます。

1-4. 厚労省が求める「客観的な労働時間」の把握

厚生労働省は「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン ｜厚生労働省」において、「自己申告制」だけでなく「客観的な記録」を用いて労働時間を把握することを求めています。

客観的な記録とは、具体的に以下のようなものです。

• タイムカード、ICカード、指紋認証などの打刻記録
• PCのログオン・ログオフ履歴
• （直行直帰の場合）スマホのGPS打刻履歴

重要なのは、従業員からの自己申告（例：Excelへの手入力）と、これらの「客観的記録」に著しい乖離（かいり）がないかを確認し、必要に応じて実態調査と補正を行うことです。PCログと打刻時間が毎日30分以上ズレている状態を放置することは、サービス残業の温床となり、労務リスクを増大させます。

次の表は、Excel管理を続けた場合のリスクと、勤怠管理システムを導入した場合のメリットを比較したものです。

このように、Excelやタイムカードでの管理は、法令遵守（守り）と業務効率化（攻め）の両面で限界に達しています。

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2. 失敗しない勤怠管理システムの比較観点「5つの軸」

価格だけで選ぶと「自社のルールで使えなかった」と失敗します。自社の働き方と法令対応を両立するための「比較軸」を5つに整理しました。これを知るだけで選定ミスが防げます。

年齢別にみると、例えば25〜29歳の層では37.8％が「タイムカード」、13.5％が「用紙への記入（手書き）」と回答しており、若い世代であっても旧来型の手法が根強く残っていることがわかります。

こういった“デジタル非対応”の勤怠管理では、上限規制のリアルタイム監視や複数月平均の残業チェックが困難であるため、法令対応面で重大なリスクがあると言えます。

【軸1】打刻方法：在宅・現場・オフィスが混在していないか？

オフィスはICカード、在宅勤務者はPCログオン打刻、直行直帰の営業や現場はスマホGPS（指定エリア内のみ許可するジオフェンス機能）など、多様な働き方に合わせて打刻方法を「混在運用」できるかが最初の鍵です。顔認証や指紋認証は、不正打刻防止に効果的です。

従業員の働き方（どこで、どのように働くか）と、選択する打刻方法が一致しているか、そしてそれらを「混在運用」できるかが最初の鍵となります。例えば、オフィス勤務者はICカード、在宅勤務者は「KING OF TIME」などが提供するPCログオン打刻、現場への直行直帰担当者は「ジョブカン勤怠管理」などが持つGPSやジオフェンシング機能（指定エリア内でのみ打刻を許可する機能）といった使い分けです。

また、「Touch On Time」のように、顔認証や指静脈認証といった生体認証オプションを用意しているサービスもあり、これはなりすましによる不正打刻の防止に極めて有効です。

次の表は、主な打刻方式の特徴と、推奨される利用シーンを比較したものです。

自社の従業員がどのパターンに当てはまるか、そしてそれらを一つのシステム上で管理できる（混在運用できる）かを確認してください。

【軸2】法令・就業規則の再現性：複雑なルールに対応できるか？

「36協定アラート」が複雑な上限（複数月平均80h等）に対応できるか、フレックスタイム制（清算期間3ヶ月）や変形労働時間制の自動計算、自社の「法定休日/所定休日」の定義を正しく設定できるかは、給与計算エラーを防ぐ最重要ポイントです。

導入後にもっとも問題になりやすいのが、この「就業規則の再現性」です。特に給与計算の根幹となる割増賃金や労働時間集計のロジックが、自社のルールと一致しているかは最重要の確認ポイントです。

以下の項目に「はい」と答えられるか、必ずデモや無料トライアルで検証してください。

• 36協定アラート：
  「月45h・年360h」だけでなく、「年720h」「複数月平均80h」「単月100h未満」といった「複雑な上限」すべてに対し、超過予兆アラートを出せますか？
• フレックスタイム制：
  「2019年改正」に対応した「清算期間3ヶ月」での自動計算（繰り越し、不足）に対応していますか？
• 変形労働時間制：
  「1ヶ月単位」や「1年単位」の変形労働時間制の複雑な所定労働時間設定と、残業時間の自動集計に対応していますか？
• 休日定義：
  「法定休日（割増35%）」と「所定休日（法定外休日）」を就業規則通りに区別し、休日出勤の割増計算を正しく自動で行えますか？

次の表は、システム選定時に検証すべき「就業規則の再現性」に関する重要チェックポイントです。

これらの項目が自社のルール通りに設定できないシステムを選ぶと、結局Excelでの再計算や手動管理が発生し、システム導入の意味が半減してしまいます。

【軸3】連携機能：給与計算ソフトと自動連携（API）できるか？

勤怠データをCSVで出力できても、給与ソフト側で加工が必要では非効率です。「奉行クラウド」「弥生給与」「PCA給与」「freee人事労務」「マネーフォワード クラウド給与」など、利用中の給与ソフトとAPI連携（自動同期）できるかを確認しましょう。

勤怠管理のゴールは「正確な給与計算」です。そのため、勤怠管理システムと給与計算ソフトがスムーズに連携できるかは、バックオフィス全体の効率化を左右します。

連携には大きく分けて2つの方式があります。

1. CSV連携：
   勤怠システムから集計データ（CSVファイル）を出力し、給与ソフト側で手動で取り込む方式。
2. API連携：
   API（Application Programming Interface）を通じて、システム同士が直接データをやり取りする方式。ボタン一つで自動同期されることが多いです。

CSV連携は多くのソフトが対応していますが、「給与ソフト側でインポート設定が必要」「毎月手動での作業が発生する」といった手間が残ります。

一方で、「マネーフォワード クラウド勤怠」とマネーフォワード クラウド給与の連携や、「freee勤怠管理Plus」とfreee人事労務の連携のように、同一ベンダーの製品やAPI連携に対応した製品同士は、従業員マスタや勤怠データを自動で同期でき、転記ミスや作業工数をゼロに近づけられます。「KING OF TIME」や「ジョブカン」も、主要な給与計算ソフト（奉行、弥生、PCAなど）との連携メニューを豊富に用意しています。

次の表で、CSV連携とAPI連携の違いを整理します。

現在利用中の給与計算ソフト、または将来乗り換えたいソフトと「API連携」できるか否かは、効率化の度合いを大きく変える重要な比較軸です。

【軸4】価格モデル：1人300円の「人課金」か「定額制」か？

料金体系は主に3つです。

• 人課金（ワンプライス）：
  1人月額300円前後（KING OF TIME, Touch On Timeなど）
• 人課金（機能別）：
  必要な機能だけ選ぶ（ジョブカン：1機能200円/人〜）
• テナント定額制：
  50名以下なら月額固定（マネーフォワード クラウド勤怠など（※参考画像））

自社の従業員数と必要な機能で総額を比較します。

勤怠管理システムの料金体系は、主に3つのモデルに分類されます。自社の従業員数や、将来的な人員増減の計画によって、最適なモデルが異なります。

1. 人課金（ワンプライス型）：
   「1ユーザーあたり月額〇〇円」というシンプルな体系です。「KING OF TIME」や「Touch On Time」の「1人月額300円（税別）」がこの代表例で、初期費用0円と合わせて市場のボリュームゾーンとなっています。
2. 人課金（機能別・モジュール型）：
   「打刻機能だけなら1人月額200円」「シフト管理を追加すると+100円」といった具合に、利用する機能（モジュール）に応じて単価が変動する体系です。「ジョブカン勤怠管理」がこのモデルを採用しており、スモールスタートしやすいのが特徴です。
3. テナント定額制（小規模向け）：
   「従業員50名までなら月額〇〇円」といった、一定の人数までは月額固定料金となる体系です。「マネーフォワード クラウド勤怠」の小規模向けプラン（例：月額2,480円〜）がこれにあたり、少人数の企業では1人あたりのコストを抑えられる可能性があります。

次の表で、各価格モデルの特徴と代表的な製品例を比較します。

自社の従業員数（現在および将来）と、必要な機能（打刻だけか、シフト管理も必要か）を照らし合わせ、どのモデルが最もコスト効率が良いかシミュレーションすることが重要です。

【軸5】セキュリティと保存年限：監査に耐えられるか？

勤怠データは重要情報です。ISMS(ISO/IEC 27001)やSOC2といった第三者認証の有無、SSO（シングルサインオン）や二要素認証（2FA）への対応は必須です。また、出勤簿の法定保存年限「原則5年（当面3年）」に対応できるかも確認しましょう。

勤怠データは、従業員の労働履歴と給与に直結する、極めて重要な個人情報です。万が一の漏洩や改ざん、紛失は、企業の信頼を著しく損ねるだけでなく、法的な問題にも発展します。

したがって、機能や価格だけでなく、「監査に耐えられるか」というセキュリティとガバナンスの視点が不可欠です。

• 第三者認証：
  ISMS（ISO/IEC 27001）認証や、「SmartHR」などが公表しているSOC2レポート（内部統制に関する第三者保証報告書）の取得状況は、サービス提供事業者の信頼性を測る客観的な指標となります。
• 不正アクセス対策：
  IDとパスワードの使い回しを防ぐ「SSO（SAML認証）」や、不正ログインを防止する「ジョブカン」などが対応する「二要素認証（2FA）」は、今や必須のセキュリティ機能です。
• データ保存年限：
  労働基準法第109条により、出勤簿などの労働関係の重要書類は「原則5年間（当面は経過措置として3年間）」の保存が義務付けられています。利用するシステムのデータ保存期間がこの法令要件を満たしているか、または満たない場合でも5年分のデータを安全にエクスポート・保管できるか、必ず確認が必要です。

次の表は、セキュリティと監査耐性に関する主なチェック項目です。

これらの非機能要件は、特に上場企業やその関連会社、公共機関との取引がある企業にとっては、機能以上に重要な選定基準となる場合があります。