1. 動画制作会社とは?動画で解決できる課題と目的の整理
動画制作会社は、伝えたい内容を映像として企画し、撮影・編集して一本の動画に仕上げる専門会社です。ただ、発注したあとで「思っていたものと違う」と感じるかどうかは、作り始める前に「何のために動画を作るのか」を自分の言葉で言えているかどうかで大きく変わります。この章では、動画制作会社が担う範囲と、動画を作る目的の整理のしかたを先に押さえておきます。
動画制作会社が担う範囲と、隣り合う領域との違い
動画制作会社が担うのは、映像そのものを企画し、撮影し、編集して納品するところまでです。作った動画をどこに載せるか、どう広告として配信するか、公開後にチャンネルとして育てていくかは、それぞれ別の会社や別の契約が受け持つことが多く、依頼先を探し始める前に区別しておくと迷いにくくなります。
| 領域 | 主にやること | この記事での扱い |
|---|---|---|
| 動画制作 | 映像そのものの企画・撮影・編集・納品 | 本記事が扱う対象 |
| サイト制作(Web制作) | 動画を載せるWebサイトやランディングページの設計・実装 | 動画の置き場所をつくる別領域 |
| 広告配信・運用 | できあがった動画をYouTube広告やSNS広告として出稿し、配信を運用する | 動画の届け方を担う別領域 |
| チャンネル運用 | YouTubeやSNSで継続的に投稿し、分析して改善していく | 継続の運用体制を担う別領域 |
| グラフィック・デザイン | ロゴ、印刷物、バナーなど静止画の制作 | 静止の表現を担う別領域 |
この線引きがあいまいなまま探すと、動画を作りたいつもりで広告運用の会社に相談してしまったり、継続的な発信をしたいのに単発制作だけを頼んでしまったりと、目的と依頼先がずれてしまいます。単発の制作なのか、継続的な運用なのかという分かれ道は第3章「単発の1本制作か、継続運用か」で扱います。まずは、動画制作会社は映像を作るところを担う相手だと押さえておいてください。
うまくいかない発注の多くは「目的のあいまいさ」から始まる
動画制作は、発注する側の準備で成果が大きく左右されます。BtoB企業の発注担当者への調査では、動画制作の外注に「失敗した」と感じた経験がある人が合わせて79.0%にのぼり、その理由として最も多かったのが「意図していたものとのズレ」(56.6%)でした(株式会社EXIDEAによる動画制作の外注に関する調査)。品質そのものよりも、何を作りたかったのかがうまく伝わっていなかったことが、失敗につながっています。
このズレは、抽象的な言葉のやりとりから生まれます。ある発注企業は、「構成から作り直します」という一言を自社は「既存素材の並べ替え」のつもりで受け取り、制作側は「素材ごと差し替える新規制作」の意味で進めていて、正反対の理解のまま話が食い違ったと振り返っています(発注した企業の担当者による体験談)。だからこそ、依頼先を選ぶより前に、自社が動画で何を実現したいのかを言葉にしておくことが、すべての判断の起点になります。
「何のために作るか」を先に言葉にする
動画を作る目的は、会社によってかなり分かれます。動画制作サービスを提供する企業が会社紹介動画の担当者200名への調査で、効果を実感した人(145名)が挙げた効果は「企業イメージ・信頼性の向上」(57.2%)、「認知度の向上」(50.3%)、「営業活動での企業理解の促進」(31.0%)、「問い合わせ・商談・受注機会の増加」(26.9%)、「採用応募数・応募者の質の向上」(24.8%)と、複数の方向に分かれていました(会社紹介動画の活用実態調査)。同じ会社紹介動画でも、担当者が実感した効果は一つではありません。
そこで、依頼内容を詰める前に、自社の目的がどれに近いかを整理しておきましょう。目的が決まると、作るべき動画のタイプも、届ける相手も変わってきます。
| 動画で実現したいこと | よくある動画の例 | 主に届ける相手・場面 |
|---|---|---|
| 採用の応募を増やす | 採用動画、社員インタビュー動画 | 採用サイト、求人媒体、会社説明会 |
| 商品・サービスを理解してもらい、問い合わせにつなげる | サービス紹介動画、商品PR動画 | 営業商談、ランディングページ、展示会 |
| 会社の認知と信頼を高める | 会社紹介動画、ブランディング動画 | 自社サイト、採用や営業の各場面 |
| 説明やレクチャーの手間を減らす | セミナー動画、マニュアル・研修動画 | 社内向け、顧客向けの配信 |
| 継続的に情報を発信する | YouTubeやSNS向けの連続した動画 | YouTube、各種SNS |
ここでは、無理に目的を一つへ絞り込む必要はありません。採用も認知も同時に狙いたい場合でも、いちばん解決したい課題を先頭に置いておくと、制作会社への説明も、上がってきた動画の良し悪しの判断もぶれにくくなります。自社の目的に合った動画のタイプと、それを得意とする会社の探し方は第4章「目的別の動画のタイプと、得意な制作会社の選び方」で掘り下げます。
費用は「種類・規模・尺・委託範囲」で決まる
動画制作の費用は、1本いくらと一律には決まりません。動画のタイプ、撮影の規模、動画の長さ(尺)、どこまでを外部に委託するかによって変わり、同じ用途でも金額に幅が出ます。一つの目安として、会社・店舗の紹介動画は約50万〜200万円とされています(NTT東日本のビジネス向けコラム)。ただしこれはタイプ別の目安の一例で、短いSNS向けの動画やCM規模の制作になると金額の水準は変わります。タイプ別・尺別の相場と見積もりの内訳、追加費用の注意点は第7章「費用相場と見積の内訳」で詳しく整理しますので、まずは自社の目的を固めることを優先してください。
2. 外注か、内製か、フリーランスか|依頼先の3つの選択肢を比較する
動画制作の依頼先は、大きく制作会社への外注、フリーランスへの個別発注、社内での内製の3つに分かれます。実際には「撮影は社内、編集は外注」のように工程ごとに使い分ける併用という選び方もあり、額面の安さだけで一つに決めると、かえって失敗しやすくなります。まずは選択肢ごとに、費用・品質の安定性・任せられる工程・請求書に出ない社内の負担がどう違うのかを見比べてください。
依頼先の選択肢と費用の目安
依頼先によって、費用の水準も、任せられる範囲も変わります。制作会社はチームで動くぶん単価が上がり、フリーランスは間に入る会社がないぶん抑えられます。内製はソフトと機材の実費で済む一方、作業する時間そのものが社内の負担として残ります。
| 依頼先 | 費用の目安 | 品質の安定性 | 任せられる工程 |
|---|---|---|---|
| 制作会社(外注) | 中小・特化型で約30万〜200万円、大手は300万円〜 | チーム体制で安定しやすい | 企画から撮影・編集まで一式 |
| フリーランス | 約3万〜50万円(業務範囲で変動) | 担当者個人の力量に左右される | 編集だけ、撮影+編集など範囲を選べる |
| 内製 | ソフトの月額・機材費のみ(作業時間は社内負担) | 社内のスキル次第でばらつく | 企画から編集まですべて自前 |
| 併用(撮影は社内・編集は外注 など) | 編集のみの外注は約5,000円〜20万円から | 要所だけ外部の品質を借りられる | 工程ごとに社内と外部で分担 |
制作会社に頼む場合の費用は、中小・特化型のプロダクションで約30万〜200万円、大手や広告代理店では300万円を超えることもあります(Freshtown「動画制作の費用相場」)。フリーランスは制作会社のような中間マージンが乗らないぶん安く、およそ3万〜50万円が目安で、編集だけを頼むか撮影から任せるかで幅が動きます(Workship ENTERPRISE)。「撮影は自社で行い、編集だけを切り出す」という併用なら、編集のみの外注は約5,000円〜20万円から始められます(Workship ENTERPRISE)。
「安さ」だけで選ぶと、かえって失敗しやすい
価格の低さは魅力に見えますが、発注者への調査では逆の傾向が出ています。BtoB企業の担当者105名を対象にした調査では、外注に「失敗した」と感じた経験がある人が合計で約8割にのぼりました(株式会社EXIDEAの調査(PR TIMES))。しかも「失敗した」と感じた案件の制作費は「10〜30万円未満」が最も多く、逆に「成功した」と感じた案件は「50〜100万円未満」が最多でした。安く抑えた案件ほど、期待とのズレが起きやすいという結果です。
失敗の理由で最も多かったのは「費用が高かった」ではなく「意図していたものとズレがあった」で56.6%を占め、次いで質の低さ51.8%、自社ビジネスへの理解不足43.4%と続きます(株式会社EXIDEAの調査(PR TIMES))。満足度を分けているのは金額そのものよりも、作りたいものをどれだけ具体的に伝えられたかです。安い依頼先を探すより先に、こちらの意図を詰めて共有できる相手かどうかを見てください。
内製と「見えないコスト」
社内で作る内製は、スマートフォンでの撮影と動画編集ソフトがあれば、実費だけで始められます。ただし請求書に出ない負担がここに隠れています。技術評論社は、内製と外注は金額だけでは比べられないとして、たとえば営業担当者が週に10時間を編集にあてれば、その時間を営業活動に使えば得られたはずの成果を失っていると指摘します(技術評論社(note))。習得にかかる時間や、担当者が抜けるとノウハウごと失われる属人化のリスクも、同じ見えないコストです。
同社は、社内で手が届く範囲は内製で回し、ブランドの要になる部分は外注する併用型を勧めています(技術評論社(note))。撮影を社内で担い、編集など専門性の高い工程だけを外に出す形は、費用と品質のバランスを取りやすく、有効な選択肢とされています。
外注が向くケース、内製が向くケース
どちらが正解ということはなく、作りたい動画の役割と、社内に割ける時間で決まります。判断の目安は次のとおりです。
- 外注が向く場合:会社紹介や採用、CMなど、対外的な信頼が問われる動画。品質の保証と工程の管理をまとめて任せたいときや、社内に編集の時間がないとき。
- 内製が向く場合:SNSの短尺や社内マニュアルなど、本数が多く更新頻度の高い動画。スピードを優先し、小さく作って改善を重ねたいとき。
- 併用が向く場合:撮影は社内で回し、編集や企画など専門性の高い工程だけを外へ出したいとき。こうした形を選ぶ企業もあります。
迷ったときは、その動画が「一度きりの勝負どころ」なのか「これから何本も作り続けるもの」なのかで切り分けると、判断しやすくなります。前者は外注、後者は内製や併用が合いやすい傾向です。
内製で手軽に動画を作る・更新頻度の高い定型動画を自社で回すなら、動画編集ソフトで内製する選択肢もあります。以下の動画編集ソフト比較もあわせてご覧ください。
3. 単発の1本制作か、継続運用か|依頼の目的で委託先は変わる
「1本の動画を作りたい」のか「継続的に発信し続けたい」のかで、頼むべき相手そのものが変わります。動画制作会社が引き受けるのは、企画から撮影・編集までを通して映像を作り上げ、完成品として納品するところまでです。毎週投稿してチャンネルを育てる、広告として配信して届けるといった継続的な取り組みは「作る」ではなく「運用する」仕事にあたり、担い手も費用の考え方も別になります。自社がどちらを求めているのかをここで見極めておくと、あとの会社選びで的を外しません。
「完成した1本」を買うのか、「毎月回る運用体制」を買うのか
単発の制作は、目的の決まった映像を1本仕上げて受け取る買い物です。採用動画や会社紹介、展示会で流す映像のように、作り切って手元に残るものが成果になります。費用も1本あたりで決まり、発注金額は中央値で54万円ほど、最も多い価格帯は50〜100万円という調査結果があります(動画幹事)。何本かをまとめて頼むシリーズ制作も、この「作る」仕事の延長線上にあり、動画制作会社が得意とする範囲です。複数本を依頼すること自体は、次に述べる継続運用とは別物だと考えてください。
一方、YouTubeチャンネルを継続的に伸ばしたい、毎月コンスタントに投稿し続けたい、という目的になると話が変わります。ここで必要になるのは1本を仕上げる制作力よりも、企画・撮影・編集・分析を毎月回し続ける運用の体制です。担い手もYouTube運用代行やSNS運用代行に移り、費用は1本単価ではなく月額で設計されます。撮影を伴わない運用支援で月額30〜50万円、撮影まで任せると月額100万円を超えることもあり、関与の度合いで幅があります(動画幹事)。継続的な運用を前提にしているなら、動画制作会社よりSNS運用代行(YouTube運用代行)の選び方のほうが実情に合います。
作った動画を「広告として配信する」のは、さらに別の予算
できあがった動画を広告として配信し、より多くの人へ届けたい場合は、制作費とも運用費とも別に配信費(出稿費)がかかります。YouTube広告の出稿は最低10万円程度から始められ、課金は再生1回あたり2〜25円ほどが目安です(動画幹事)。動画制作会社が担うのは映像を作るところまでで、どの媒体にいくら出して届けるかの設計と運用はWeb広告運用代行の選び方の領域です。「作る」「運用する」「配信する」は費用の性質が違うので、自社に必要なものを切り分けて考えると、見積もりの読み違いを防げます。
迷ったら「1本で終わる目的か、続く目的か」で判断する
自社の目的が1本で完結するなら、動画制作会社に依頼するのが素直な選び方です。採用、会社紹介、商品・サービスの説明、展示会用など、用途の定まった映像を作り切りたいケースがこれにあたります。反対に、チャンネルを育てて継続的に発信していきたいなら、要になるのは制作そのものより、投稿を止めずに回し続ける運用の体制です。作った動画を広く届けたい段階になれば、そこから広告配信という三つ目の選択肢が加わります。
気をつけたいのは、1本を作って公開したまま放置し、成果につながらないという失敗です。継続運用は、作った後に投稿と改善を積み重ねる前提で成り立っています。作った動画をどう成果につなげるか、効果をどう測るかはこの記事の後半で扱いますので、この章ではまず「単発で作り切る目的なのか、続けて運用していく目的なのか」を見定めることに絞ってください。
4. 目的別の動画のタイプと、得意な制作会社の選び方
動画制作会社と一口に言っても、得意な動画のタイプは会社ごとにかなり違います。会社を見比べるより先に、自社は何のために動画を作るのかを決めることが、外さない一社選びの近道になります。目的が決まれば、作るべき動画のタイプと、それを得意とする制作会社の種類はほぼ自動的に絞り込めます。この章では、その道筋を一枚の対応表でつなぎます。
なぜ目的から入るのかというと、動画のタイプが違えば、求められる表現も配慮も別物になるからです。動画制作会社のCrevoも、IR動画制作会社の選び方として「一般的な広告動画とIR動画では求められる表現や配慮が異なります」と述べ、その分野の実績があるかを判断基準に挙げています(Crevo VIDEO SQUARE「IR動画制作会社の選び方」)。実績の数が多い、料金が安いといった横並びの物差しではなく、自社が作りたいタイプの動画をその会社が手がけてきたかで見る、というのがこの章の考え方です。
| 実現したいこと | 作る動画のタイプ | 探すべき制作会社の類型 | 確かめたい実績 |
|---|---|---|---|
| 応募を増やしたい・社風を伝えたい | 採用動画(社員インタビュー・職場紹介) | 採用・インタビュー型 | 同業種・同規模の採用動画、人が自然に話せる撮影 |
| 認知と信頼を高めたい・ブランドを育てたい | 会社紹介・ブランディング動画 | TVCM・ブランディング型 | 世界観の設計と、情緒に訴える構成 |
| 商品やサービスの中身を分かりやすく伝えたい | 商品・サービス紹介動画(無形は図解・アニメ) | サービス紹介・説明(図解・アニメ)型 | 無形のサービスを可視化した実績 |
| 手順や操作を教えたい・研修に使いたい | マニュアル・研修動画 | サービス紹介・説明(図解・アニメ)型 | 手順を段階を追って見せた実績 |
| 広く認知を広げたい/問い合わせ・購入を増やしたい | 広告・PR動画(CM・Web広告) | 認知はTVCM・ブランディング型、獲得はWeb広告・PR特化型 | 狙いに合う配信・出稿の実績 |
| 展示会・イベントで足を止めたい | 展示会・イベント動画 | 目的で振り分け(理解促進はサービス紹介型、印象づけはブランディング型) | 短時間で伝える構成、大画面での見え方 |
| 続けて発信して伸ばしたい | YouTube等のチャンネル運用 | YouTube運用型(制作ではなく運用) | 運用の選び方は別記事へ |
会社紹介は「誰に何を伝えるための紹介か」を先に決める
会社紹介動画は目的の幅がいちばん広く、同じ名前でも中身が分かれます。Crevoは会社紹介動画の活用シーンとして、採用イベントや会社説明会で求職者に魅力を伝える使い方、展示会やセミナーで事業への関心を引く使い方、社内へ発信して社員の意識を高める使い方を挙げ、ブランディング動画・投資家向け・ビジョンムービー・採用向けといった種類も並べています(Crevo「会社紹介動画制作」)。採用のために作るのか、取引先や投資家からの信頼を得たいのか、社内の求心力を高めたいのかで、任せるべき相手は変わります。認知やブランドの醸成が主眼なら、世界観の設計と情緒に訴える構成に強いTVCM・ブランディング型が向きます。採用が主眼なら、後述の採用・インタビュー型のほうが噛み合います。
商品・サービスやマニュアルは、分かりやすく見せる会社に
形のないサービスや操作の手順は、そのままカメラで撮っても伝わりません。Crevoはサービス紹介動画の目的を「形のない無形サービスを可視化し、視聴者のサービス理解を促進、導入ハードルを下げて利用促進につなげる」ことと説明し、表現手法としてアニメーションが無形サービスの可視化に有効だとしています(Crevo「サービス紹介動画制作」)。SaaSや目に見えない仕組みを扱うなら、図解やアニメ、モーショングラフィックスの引き出しを持つサービス紹介・説明型が合います。業務手順や機器の操作を教えるマニュアル・研修動画も、根っこは同じ「分かりやすく説明する」力です。マニュアル動画はSaaSの管理画面デモや社内研修、機械操作の取扱説明などに使われ、一度作れば自社の資産として使い回せます(Video BRAIN「マニュアル動画の作り方」)。段階を追って手順を見せた実績があるかを確かめると、ミスマッチを避けやすくなります。
採用は社員の声と職場の空気が主役になる
採用動画で応募者の心を動かすのは、整った会社説明よりも、実際に働く人の言葉と職場の雰囲気であることが多いです。Video BRAINは採用動画を、社長が理念や業務を語る企業紹介、募集要項には触れず直感に訴えるブランドイメージ・プロモーション、先輩社員に直接インタビューする社員インタビュー、説明会だけでは伝わらない現場を見せる施設・職場環境紹介の四種類に整理しています(Video BRAIN「採用動画のメリットや作り方」)。この中心にあるインタビューと社風の描写は、人に自然に話してもらう撮影と編集の勘所を要します。同じ業種や規模の採用動画を手がけてきた採用・インタビュー型に当たると、狙いに近づきやすくなります。
広告・PRは「認知を広げたいのか、獲得したいのか」で分かれる
広告やPRが目的の場合、同じ広告動画でも狙いによって向く会社が変わります。テレビCMやWebCMでブランドの認知と印象を広げたいなら、映像の完成度と世界観で見せるTVCM・ブランディング型が中心になります。Web広告として配信し、問い合わせや購入といった数字を伸ばしたいなら、媒体ごとの勝ちパターンを持ち、成果から逆算して作れるWeb広告・PR特化型が向きます。展示会やイベントで足を止めてもらう動画も、この延長で考えられます。事業への理解を促したいならサービス紹介型に、ブランドの印象づけが主眼ならブランディング型に寄せると、短い接触時間でも伝わる構成になりやすいでしょう。
継続して発信するなら、制作ではなく運用の会社へ
YouTubeチャンネルを続けて伸ばしたいという目的は、これまでのタイプとは性質が違います。一本の映像を作り込む制作とは別に、企画から投稿、コメント対応、分析までを毎月回し続ける運用の体制が要るからです。この継続運用は、動画を一本ずつ作る制作会社ではなく、チャンネル運用そのものを引き受けるYouTube運用型の領域になります。作った動画をどこで生かすかという話と、チャンネルを育て続ける話は分けて考えると迷いません。運用を任せる相手の選び方や費用の相場は、SNS運用代行の選び方・費用相場ガイドにまとめています。
5. 実写かアニメ・モーショングラフィックスか|表現手法の選び方
動画の表現手法を実写にするか、アニメーションやモーショングラフィックスにするかは、多くの依頼者が最初に迷う分かれ道です。手法は予算の大小ではなく、「誰に、何を伝えたいか」から選ぶと失敗が減ります。実写には実在する人やモノが持つ説得力があり、アニメーションには目に見えない仕組みや概念を描ける強みがあります。それぞれの向き不向きを押さえたうえで、最後に「アニメは安い、実写は高い」という価格の思い込みを外していきます。
実写が向くのは、実在する人やモノの信頼が意思決定を左右するとき
実写は、画面に映る人物やオフィス、商品そのものが説得材料になります。動画制作会社のジーアングルは、実写が力を発揮する場面として、導入事例やインタビューのように「誰が語っているか」が意思決定に直結する領域を挙げています(ジーアングル「アニメと実写の違いを徹底比較!」)。実在の担当者や顧客が登場すること自体が、そのまま社会的な裏づけになるからです。
時計やジュエリー、自動車のように素材の質感が価値そのものである高級商材も、実写のほうが手触りを想像させやすくなります。組織の誠実さや重厚感が信頼につながる金融・医療・不動産、アニメーションに馴染みの薄い高齢層へ向けた動画でも、実写の現実感が生きます。
弱点もあります。起用した出演者の不祥事が、そのままブランドの印象を損なう出演者リスクは避けにくいものです。背景の街並みや服装、映り込んだ機器が数年で古く見え、作り直しが必要になる情報の風化も起こります。ロケ地の確保や天候、機材、出演者のスケジュールといった物理的な制約も受けます。
アニメ・モーショングラフィックスが向くのは、目に見えないものを見せたいとき
アニメーションやモーショングラフィックスは、実写では映せないものを描けます。ジーアングルは、データの流れやセキュリティの仕組みのように目に見えない概念を直感的に説明したい無形サービスやSaaS、工場内部の微細な動きや宇宙空間、まだ完成していない施設のように撮影そのものが難しい要素の可視化を、得意な場面として挙げています(ジーアングル「アニメと実写の違いを徹底比較!」)。実写の生々しさを抑え、理想的なビジュアルで業界のイメージを描き直したいときにも向きます。
運用面の利点もあります。登場人物が実在しないため出演者の不祥事リスクがなく、背景や服装の古さも出にくいので、ブランドの資産として数年単位で長く使えます。
一方で、本格的なフルアニメは実写の撮影より完成までの期間が長くなることがあります。演出がターゲットの感性に合わないと「子供っぽい」「安っぽい」と受け取られるおそれもあります。実在する組織や人物そのものが主役の動画では、実在しないことがかえって足かせになる場合があります。
決めきれないときは、実写とアニメのミックスも選べます
どちらか一方に絞り込む必要はありません。実写で撮ったインタビューや商品の映像に、数値やサービスの仕組みをモーショングラフィックスの図解で重ねる作り方は、企業の紹介動画などで取り入れられています。人への信頼感は実写で担保し、言葉だけでは説明しづらい部分をアニメーションで補えば、両方の強みを一本の動画にまとめられます。手法を一つに決める前に、伝えたい要素ごとに向いた見せ方を割り振ってみると、選択の幅が広がります。
「アニメは安い、実写は高い」という思い込みを外す
手法選びでつまずきやすいのが、価格の思い込みです。ジーアングルは「アニメだから高い/安い、実写だから高い/安いということはありません」と明言しています(ジーアングル「アニメと実写の違いを徹底比較!」)。実写はスタッフの人数や撮影日数、映像の尺、撮影場所を借りるかどうかで金額が大きく動きます。アニメーションもイラストアニメ、モーショングラフィックス、フルアニメで見積もりの考え方が違い、「アニメだからいくら」とは言い切れません。
アニメーションの費用は、動画の長さよりも作画の枚数で動く点が特徴です。ジーアングルの解説では、なめらかなフルアニメは1秒あたり24枚、動きを間引くリミテッドアニメは1秒あたり8枚を描き、費用の目安はフルアニメが1,500万円から、リミテッドアニメが200万〜500万円とされています(ジーアングル「フルアニメとリミテッドアニメの違い」)。同じ「アニメ」でも、選ぶ手法で価格帯はここまで開きます。
アニメーションの種類ごとの費用の目安は、次のように整理されています(フレッシュタウン「動画制作の費用相場」)。
| アニメーションの種類 | 費用の目安 |
|---|---|
| ホワイトボードアニメーション | 30万〜80万円 |
| モーショングラフィックス | 40万〜150万円 |
| 2Dキャラクターアニメーション | 60万〜200万円 |
| 3DCGアニメーション | 100万〜300万円以上 |
費用は撮影の規模や尺、クオリティで動くため、「30秒だからいくら」とは決まりません(ジーアングル「動画制作・映像制作費用の相場」)。予算が同じでも、実現できる範囲は手法で変わります。ジーアングルは予算100万円で実現しやすい内容として、実写なら自社オフィスで撮る採用動画やスタジオでの製品デモ、アニメなら30秒から60秒ほどのイラストアニメーションやモーショングラフィックスを挙げ、テレビシリーズや劇場版のようなフルアニメは100万円ではまず難しいとしています(ジーアングル「アニメと実写の違いを徹底比較!」)。まず伝えたい中身から手法を決め、そのうえで規模と尺、クオリティで見積もりを詰めていく順番が、価格の判断を誤りにくくします。
6. どこまで頼むか|単発制作の委託範囲(企画・撮影・編集・一式)と依頼できる業務
動画制作は企画・撮影・編集といった工程ごとに切り分けて依頼でき、どこまでを外注範囲に含めるかで費用も必要な体制も変わります。自社で用意できる部分と任せたい部分を先に決めておくと、複数社の見積もりを同じ基準で比べられます。単発で1本を作る場合、委託範囲はおおむね「企画のみ」「撮影済みの素材を渡して編集のみ」「企画から納品まで一式」の3つに分かれ、選ぶ範囲しだいで費用は数千円から数百万円まで開きます。
動画制作で依頼できる業務
動画制作の費用は、大きく企画費・撮影費・編集費・進行管理費に分かれ、それぞれに次のような業務が含まれます(LOCUSの解説)。この分け方が、そのまま「どこまで頼むか」を考えるときの切り分け軸になります。
- 企画・構成:動画の目的やターゲットの整理、シナリオ・絵コンテの作成、原稿づくり。
- 撮影:ディレクション、カメラ・照明・音声、機材やスタジオ・ロケ地の手配、出演するキャストや衣装・ヘアメイクの手配。
- 編集:カット編集、テロップや色調整、ナレーション収録やBGM、必要に応じたアニメーションやイラストの制作。
- 公開に付随する業務:多言語対応の字幕・吹き替え、公開後の効果測定と改善提案。
これらは一部だけを頼むことも、企画から納品までまとめて任せることもできます。社内に編集の担当者がいるなら企画と撮影だけを、撮影素材がすでにあるなら編集だけを、というように必要な工程を選んで発注する形が取れます。
委託範囲で費用はどれだけ変わるか
同じ1本でも、どの工程まで頼むかによって費用の目安は大きく変わります。よく選ばれる3つの範囲の目安は次のとおりです。
| 委託範囲 | 費用の目安 | 主な体制 |
|---|---|---|
| 企画のみ(構成・台本) | 台本・構成の作成で約5万〜30万円(NTT東日本のコラム)。一式で頼む場合、企画構成費は制作費全体の10〜20%程度を占めます(IMAGENICの解説)。 | 企画・構成の担当者 |
| 編集のみ(撮影済みの素材を渡す) | カット・テロップで5,000〜3万円、エフェクトを加えると1万〜5万円(ランサーズ)。依頼先で幅があり、フリーランスは数千円〜数万円、制作会社は10万〜100万円以上になります(X-DESIGNER)。 | 編集者(フリーランス〜制作会社) |
| 企画から納品まで一式 | 企画から一貫して頼む場合、100〜400万円がボリュームゾーンとされます(IMAGENICの解説)。 | ディレクター・撮影・編集のチーム |
「動画編集 外注」「編集のみ」で探している場合は、撮影を含まない編集だけの相場を尺と依頼先で見ておくと目安が立てやすくなります。
| 動画の尺 | フリーランス | 制作会社 |
|---|---|---|
| 1分以内 | 0.5〜2万円 | 3〜8万円 |
| 3分 | 1〜4万円 | 5〜15万円 |
| 5分 | 1.5〜6万円 | 8〜20万円 |
| 10分 | 2.5〜10万円 | 15〜40万円 |
| 30分以上 | 5〜20万円 | 30〜80万円 |
いずれも撮影を含まない編集だけの目安で、尺が長いほど、また制作会社に頼むほど単価は上がります(mogrowの相場情報)。
撮影を含めるかどうかが総額を大きく左右する
委託範囲の中で費用を最も動かすのは、撮影を頼むかどうかです。撮影費は制作費全体のおよそ4〜5割を占めるとされ(LOCUSの解説)、撮影済みの素材を自社で用意して編集だけを頼む場合と、撮影から任せる場合とでは総額が数倍変わります。たとえば採用動画では、編集のみで5万〜20万円、1〜2日の撮影を含めると20万〜80万円という目安が示されています(mogrowの相場情報)。社内に撮影できる素材や設備があるなら、編集だけを外注して費用を抑える選択が現実的です。
自社の工数と外注範囲の切り分け方
どこまで頼むかは、自社にどの工程を担う時間と技術があるかで決まります。動画の目的や見せたい内容を言葉にでき、撮影素材も用意できるなら、編集だけを外注すれば費用は数万円規模に収まります。反対に、何を撮ればよいかの設計から迷う場合は、企画から任せたほうが撮り直しなどの手戻りが減ります。多言語対応や公開後の効果測定・改善提案は本編の制作とは別に追加できる業務なので、必要になった段階で範囲に足す形にすると、最初の費用を抑えられます。見積もりを取るときは、どの業務が含まれ、どこからが追加費用になるのかを範囲ごとに確認しておくと、会社ごとの金額を同じ条件で比べられます。
7. 費用相場と見積の内訳|1本あたりの料金体系と追加費用の落とし穴
動画制作の費用は「1本いくら」という単価では決まらず、種類と尺、そしてどこまでを外部に委託するかで、数千円から数百万円まで開きます。だからこそ、受け取った見積が高いか安いかを判断する前に、そのお金がどの工程に乗っているのかという構造を先に押さえておくと、自社が受け取った見積の妥当性を自分の目で見極められるようになります。この章では、種類別と尺別の相場、見積の内訳、見落としやすい追加費用、そして「安く量産する」ことと「企画から成果につながる映像を作る」ことの違いを整理します。
種類別の1本あたり相場と、幅がここまで広い理由
まず、代表的な動画の種類ごとの相場を目安として示します。次の金額はNTT東日本のコラムが挙げる種類別の目安で、いずれも案件によって上下する前提の幅です。
| 動画の種類 | 1本あたりの相場(目安) |
|---|---|
| 会社・店舗紹介 | 約50万〜200万円 |
| 商品・サービス紹介 | 約30万〜100万円 |
| 採用 | 約50万〜200万円 |
| インタビュー | 約30万〜100万円 |
| セミナー・イベント | 約50万〜200万円 |
| マニュアル・研修 | 約30万〜80万円 |
この表はあくまで一例で、依頼先や規模によって上限はさらに動きます。たとえばWebCMや広告動画はVIDWEBのコラムで約50万〜300万円とされ、上振れが大きくなります。反対にSNS向けの短尺動画はFreshtownのコラムで約5万〜50万円と下限が低く、少額から着手できます。同じ「動画制作」でも、これだけ相場が離れるのは自然なことです。
料金を公開していない制作会社が多いのも、この幅の広さが背景にあります。Crevoの費用相場の解説は、料金の幅が大きくなる理由を、撮影の有無や規模、出演者、ロケーション、編集内容、CGやアニメーションの量など、案件ごとに必要な工程が違うためだと説明しています。特に実写は撮影日数やシーン数で大きく変わるため、条件が固まらないうちは正確な金額を出しにくいのが実情です(Crevoの予算別プラン)。
尺の長さだけでは費用は決まらない
「1分あたり◯万円」という単価で費用を見積もりたくなりますが、尺の長さと費用はきれいには比例しません。Crevoの解説が示す尺別の目安を見ると、同じ長さでも下限と上限の開きが極端に大きいことが分かります。
| 尺(動画の長さ) | 費用の目安 |
|---|---|
| 〜15秒 | 数万円〜300万円程度 |
| 15〜30秒 | 数万円〜100万円程度 |
| 30〜60秒 | 数十万円〜300万円程度 |
| 60〜120秒 | 数十万円〜300万円以上 |
同じ15秒でも、撮影済みの素材を編集するだけなら数万円で収まる一方、タレントを起用して撮影から作れば数百万円に達します。尺は費用を左右する要素の一つで、実際の金額は撮影の規模や表現手法によって決まると考えておくと、単価だけの比較で判断を誤らずに済みます。
見積の内訳:お金は撮影と人件費に最も多く乗る
見積の項目が会社ごとに違って比べにくいときは、金額の大きい工程がどこかを知っておくと整理しやすくなります。制作会社LOCUSのブログは、動画制作費を工程別の構成比で示し、企画費が全体の15〜25%程度、撮影費が40〜50%程度、編集・MA費が25〜35%程度、進行管理費が10〜30%程度としています。構成比で最も大きいのは撮影費で、規模による変動幅も撮影が最大です。撮影の日額の人件費や機材、スタジオが積み上がるほど、見積の総額は跳ね上がります。
金額の目安としては、NTT東日本のコラムが内訳項目ごとに次の水準を挙げています。
| 内訳項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 台本・構成 | 約5万〜30万円 |
| ディレクション | 費用全体の約10% |
| 人件費(撮影スタッフ等) | 約10万〜100万円 |
| キャスト手配 | 約10万〜50万円 |
| 機材費 | 約5万〜50万円 |
| スタジオレンタル | 約20万円 |
| 編集 | 約10万〜50万円 |
| ナレーション | 約5万〜20万円 |
この中で見落とされやすいのが、音楽や二次利用に関わる権利処理の費用です。市販の楽曲を動画に使う場合、JASRACが管理する曲であれば利用申込みと著作物使用料の支払いが必要になります(JASRAC 音楽をご利用の方へ)。また、納品後に動画を別の媒体で使い回したり編集し直したりする場合、著作者には同一性保持権などの著作者人格権があり、無断での改変ができません(著作権情報センターの解説)。動画は著作権法上の「映画の著作物」に当たるため(文化庁の解説)、二次利用の範囲を見積や契約の段階で確認しておくと、後からの追加費用や権利上のやり取りを避けられます。
「一式◯◯円」の見積に潜む追加料金
提示された金額が安く見えても、そこに何が含まれているかで実際の総額は変わります。プルークスのコラムは、「一式◯◯円」とだけ書かれた見積は後から追加費用が発生しやすいと指摘し、修正回数の上限や、BGM・ナレーション・素材費が費用に含まれるかを事前に確認するよう促しています。あわせて、急かすような対応や根拠のない値引きにも慎重に対応するよう勧めています。
追加費用が生まれやすい典型は、決められた回数を超える修正、当初より長い尺への変更、複数の形式での納品、素材の後出し、そして追加の撮影です。なかでも撮影の追加は費用を大きく押し上げます。実写は撮影日数やシーン数で金額が動くため、撮影を伴う変更はそのまま見積の増額につながると考えておくと安全です。
単価の額面だけで比べると判断を誤ることもあります。見積を比べるときは、表に出ている金額だけでなく、何が含まれ何が別料金かをそろえてから並べることが欠かせません。
「安く量産する」と「企画から成果につながる映像」は別物
費用を抑えたいときにまず知っておきたいのは、安い動画と高い動画では作り方そのものが違うという点です。プルークスのコラムによると、企画や撮影を伴う制作が数十万円から数百万円かかる一方で、YouTube動画の編集だけなら1本5,000円〜3万円、SNS向けのショート動画なら1本3,000円〜2万円で、1本あたりの単価に大きな差があります。
低い単価には、それに見合った作り方が対応します。Crevoの予算別プラン(49万円以下)では、この価格帯で作れるのは撮影済みの映像の編集や、シンプルなキャラクター・ピクトグラムのアニメーション、社員が出演する単体のインタビュー動画などが中心で、本格的な実写撮影は撮影日数やシーン数で料金が大きく変わるとされています。編集中心の量産型は手軽に本数を増やせますが、企画から作り込んで成果を狙う映像とは目的が異なります。
安さだけで選ぶと満足度が下がりやすいことは、発注者への調査にも表れています。株式会社EXIDEAの調査では、外注に「失敗した」と感じた案件の制作費は10〜30万円未満が29.0%で最も多く、逆に「成功した」と感じた案件は50〜100万円未満が24.5%で最多でした。低単価の案件ほど失敗と感じやすい傾向が示されています。安く量産する選び方が常に間違いというわけではありません。ただし、認知や採用、問い合わせといった成果を映像に期待するのであれば、その成果に必要な工程まで含んだ費用帯を選ぶという判断が先に立ちます。
継続的にSNSやYouTubeへ投稿する場合は、1本あたりの単価が編集中心になって下がる一方、月あたりの本数によって総額が決まります。単発の制作費と月額の運用費は考え方が異なるため、本ガイドでは単発の制作を基準に費用を扱い、継続運用の費用設計はSNS運用代行を扱う記事に譲ります。まずは自社が今回作りたい1本について、種類と尺、委託する範囲を決めてから相場と照らし合わせると、受け取った見積が妥当かどうかを落ち着いて判断できます。
8. 素材・著作権・2次利用の権利範囲と、動画広告のステマ規制
動画は納品されて終わりではなく、あとから別の媒体で使ったり作り直したり、広告として出したりする段になって権利の問題が表面化します。誰の権利がどこまで及ぶかは、発注前と契約の段階でほぼ決まってしまうため、作り始める前に確認しておくと納品後のトラブルを避けられます。この章では、制作物の著作権と2次利用の範囲、BGMや出演者の権利、そして公開時にかかるステマ規制について、作る段階で押さえておきたい点を扱います。配信や出稿そのものの設計は本ガイドの範囲外です。
発注して作らせた動画でも、著作権は原則として制作した側に生まれます
著作権法では、著作物を創作した者が著作者であり(第2条第1項第2号)、その著作者が著作権を持つと定められています(e-Gov法令検索 著作権法第17条第1項)。費用を出して制作会社に依頼した動画であっても、著作権はまず実際に作った制作会社やクリエイターの側に生まれ、契約で譲り受けない限り発注者には移りません。納品データを受け取ることと、その動画を自由に使える権利を持つことは別だと考えておくのが安全です。
動画やCMは、法律上は「映画の著作物」として扱われます(文化庁 著作権解説集)。保護期間も一般の著作物より長く、映画の著作物は公表後70年までとされています(著作権情報センター(CRIC))。長く残る資産だからこそ、使える範囲をあいまいにしないことが後々効いてきます。
他媒体への転用まで想定するなら、契約で著作権の譲渡を受けておきます
撮影した動画を後日SNSや別のキャンペーン、営業資料などに回す2次利用を考えているなら、著作権の譲渡を契約に盛り込みます。著作権法第61条第1項は「著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる」と定めており(e-Gov法令検索 著作権法第61条第1項)、この規定にもとづいて必要な権利を譲り受けます。譲渡がなければ、発注者が使えるのは契約で許諾された媒体や期間の範囲に限られ、あとから使い道を広げようとすると追加の交渉と費用が発生しやすくなります。
そこで発注時には、次の点を利用範囲として契約に書き出しておきます。
- 使う媒体(自社サイト、SNS、テレビCM、営業資料など)と、公開する地域
- 使う期間(公開の開始から終了まで、あるいは無期限か)
- 自社での編集や別バージョンの制作(改変)を含めるか
- 権利ごと買い取る(譲渡)のか、範囲を決めて使わせてもらう(利用許諾)のか
買い取りにする場合は制作費とは別の費用として交渉されることが多いため、見積りの段階で切り分けて確認しておくと、総額を見誤らずにすみます。
権利を買い取っても、制作側に残る権利があります
著作権(財産権)を譲り受けても、公表権・氏名表示権・同一性保持権といった著作者人格権は制作した側に残ります。著作者人格権は著作者本人だけが持ち、譲渡できないと定められているためです(e-Gov法令検索 著作権法第59条、著作権情報センター(CRIC))。とりわけ同一性保持権は、著作物を意に反して無断で改変されない権利です。
納品後に自社で尺を詰めたり別バージョンを作ったりする可能性があるなら、契約に著作者人格権を行使しない旨(不行使)の取り決めを入れておかないと、改変のたびに制作側の同意が必要になる場面が出てきます。作り直す前提があるかどうかを、契約の段階で制作会社と共有しておくとよいでしょう。
BGMと出演者の権利は、公開してから問題になりがちです
音楽と出演者は、動画そのものの著作権とは別に処理が必要です。公開前に手当てしておかないと、いざ公開する段になって使えないことが分かり、差し替えや撮り直しになります。
BGMや楽曲では、JASRACが管理する曲を映像作品で使う場合、公開を前提に事前の利用申込みと使用料の手続きが要ります(JASRAC「録音物・映像ソフト・出版物などの製作」)。市販の音源をそのまま使うときは、JASRACが扱う著作権とは別に、レコード会社が持つ原盤権の処理も必要になります。フリー素材や有料素材の曲でも、商用利用や広告での利用が許可された範囲かをライセンスで確認しておきます。
出演者については、社員に出てもらう場合でも肖像権への配慮が要ります。撮影と公開への同意を、掲載する媒体・掲載する期間・退職後の扱いまで含めて書面で取っておくと、公開後や人事異動のあとに使用の中止を求められて撮り直しになる事態を避けられます。
動画広告では、広告と分かる表示を怠った責任は広告主が負います
作った動画を広告やPRとして出すなら、2023年10月1日から始まったステルスマーケティング規制がかかります(消費者庁「ステルスマーケティングは景品表示法違反となります」)。広告であることを隠した表示が景品表示法上の不当表示として禁止されており、規制の対象は商品やサービスを供給する事業者、つまり広告主です。依頼を受けたインフルエンサーなどの第三者は対象にならず、発注する自社の側が責任を負う点に注意が必要です。
制度上は「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」(令和5年内閣府告示第19号)として、景品表示法第5条第3号にもとづき規制されます(消費者庁 運用基準)。動画の場合、広告である旨を一瞬しか映さなかったり、長い動画で冒頭以外にだけ小さく出したりすると「不明瞭」と判断されます。逆に「広告」「PR」「プロモーション」といった文言を示すことや、テレビCMのように本編と切り離して見せることは明瞭とされます。動画は全編を通して広告だと分かる表示にしておく必要があります。
社員に出演・発信させるPR動画も、事業者と一体とみなされる従業員の表示として規制の射程に入り得ます(消費者庁 運用基準 第2)。あわせて景品表示法は、実際より著しく優良に見せる優良誤認表示(第5条第1号)や、取引条件を著しく有利に見せる有利誤認表示(第5条第2号)も禁じています(消費者庁「表示規制の概要」)。動画の演出でこうした誤認を招かないかも、公開前に見ておく点です。作る段階では、これらの表示ルールを満たせる構成やテロップを制作会社と握っておくと、公開後の手戻りを防げます。
9. 失敗しない制作会社の見極め方|比較の判断軸と相見積もりの読み方
動画制作の外注では、依頼した企業の約8割が一度は「失敗した」と感じており、その最多の理由は撮影や編集の技術力ではなく発注側の意図がすり合っていないことでした。CINEMATO(EXIDEA)の発注者調査によると、失敗を実感した経験が「何度もある」25.7%と「ややある」53.3%で計79.0%にのぼり、理由の1位は「意図していたものとズレがあった」56.6%です。見極めるべきは実績の数や見積もりの安さではなく、こちらの狙いをくみ取って提案し、完成まで付き合ってくれる会社かどうかになります。
失敗理由から逆算した、見極めの5つの軸
同じ調査では、失敗理由の2位が「クリエイティブの質が低かった」51.8%、3位が「自社のビジネス理解が乏しかった」43.4%と続きます。裏を返せば、意図が伝わり、質が担保され、自社を理解してくれる会社を選べば失敗は避けやすいということです。この観点を発注前に確認できる形にすると、次の5つの軸になります。
| 見極めの軸 | 発注前に確かめること | 欠けていると起きること |
|---|---|---|
| 企画提案力 | ヒアリングのあとに、目的や訴求の切り口まで踏み込んだ提案が出てくるか。言われたものを作るだけで終わらないか | 狙いが動画に反映されず、「意図とのズレ」が生まれる |
| 修正・対応範囲 | 無料の修正は何回までか、どの工程をまたぐと追加費になるか | 初稿で認識違いが出たときに、想定外の追加費や妥協が生じる |
| コミュニケーション体制 | 専任のディレクターが付くか、問い合わせへの返信はどのくらいの速さか | 進行が見えなくなり、確認の往復で時間と品質を失う |
| 納品スピード | 撮影・編集・確認まで含めて現実的な日程か。短さそのものを売りにしていないか | 工程を削って質が犠牲になりやすい |
| 実績と質 | 本数の多さではなく、自社に近い目的や業種の実績で質を確かめられるか | 実績は多くても、自社の狙いに合う質は担保されない |
成功したと感じた発注者が挙げたポイントも、「意図していたどおりの出来上がりだった」47.6%、「コミュニケーションが円滑だった」33.3%、「スケジュール通り進められた」32.4%と、この5軸をなぞる結果でした(同調査)。とりわけ意図のズレは、抽象的な言葉のやり取りから生まれます。ある発注者は、「構成から作り直します」という一言を自分は既存素材の並べ替えと受け取り、制作側は素材ごと差し替える新規制作と解釈して食い違った経緯を自身の体験談で明かしています。見極めの段階では、こうした言葉の解釈を早いうちに合わせられる相手かどうかも見ておきたいところです。
「実績が豊富」「価格が安い」で選ぶと外れやすい
発注者が失敗した会社を選んだ理由は、「制作実績が豊富だったから」33.7%と「制作期間が短かったから」33.7%が同率で最も多く、「価格が安かったから」も24.0%を占めました(CINEMATO調査)。実績の量や納期の短さ、安さを決め手にした発注ほど、失敗に傾いていたことになります。費用の面でも、失敗したと感じた会社の制作費は「10〜30万円未満」29.0%が最多だったのに対し、成功した会社は「50〜100万円未満」24.5%が最多で、低予算の案件ほど意図とのズレが起きやすい傾向がありました。
低予算だと、ヒアリングや企画に時間をかける余地がなくなり、指示された作業をこなすだけの「作業型」になりやすいことが背景にあります。同じ調査で発注者が本当に期待していたものとして挙げたのは「提案力」「新しい発見、アイデア」「レスポンスの速さ」で、指示どおりに手を動かすことではありませんでした。問い合わせの段階で、目的を聞いたうえで切り口を返してくるか、それとも見積もりと納期だけを返してくるかを見ると、提案型か作業型かはある程度見分けられます。なお、書面での条件整備も、それだけで「思っていたものと違う」を防げるわけではありません。TVCMや企業VPを手がける制作者は、発注書に業務内容や納期を書いても認識のズレは残るため、撮影前に仕上がりイメージを突き合わせる確認の場を設けるべきだと実務者の立場から述べています。
相見積もりは「一式」をほどいて同じ基準で並べる
複数社から見積もりを取っても、「一式◯◯円」とだけ書かれていると、どこまでが含まれ、どこから追加になるのかが会社ごとに違い、そのままでは比べられません。動画制作費は工程によって構成が大きく変わり、LOCUSの解説では撮影費が全体の40〜50%と最も大きな割合を占めます。つまり撮影の条件がそろっていない見積もりは、総額だけを並べても意味を持ちません。CINEMATOの外注ガイドを踏まえると、次の4点を同じ基準にそろえて確認するのが実務的です。
| そろえる4点 | 会社に確認する具体項目 |
|---|---|
| 企画範囲 | ヒアリングや構成案、訴求の提案が費用に含まれるか。台本や絵コンテはどこまで作ってくれるか |
| 撮影体制 | 撮影は何日・何名・どの機材か。撮影費は総額の4〜5割を占めるため、ここが違うと総額は比較にならない |
| 編集条件 | 編集やMA、BGM・素材・ナレーションが込みか別か。無料の修正は何回まで対応してもらえるか |
| 追加費用 | どの条件から追加になるか(尺の追加、撮影日の追加、アニメーションの追加など) |
額面の単価だけで比べると、判断を誤ることもあります。安い見積もりほど、含まれていないものと追加費の線引きを一度ほどいて確かめておくと、発注後の食い違いを防ぎやすくなります。
10. 依頼から納品までの流れと、作った動画を成果につなげる方法
依頼から納品までは、撮影を含む動画でおよそ7〜10週間、2ヶ月前後を見ておくと無理がありません。工程の数を覚えることより、発注側がどの場面で手を動かすかで、仕上がりも公開後の成果も変わります。過去3年以内に制作会社へ発注したBtoB企業105名のうち、外注に失敗したと感じた人は株式会社EXIDEAの調査(PR TIMES)で79.0%に上っており、その多くは工程のどこで関わるかで防げます。
依頼から納品までの5つの工程
おおまかな流れは、ヒアリングと要件定義に始まり、企画・構成と絵コンテ、撮影、編集とMA・ナレーション、納品・公開の順に進みます。撮影を含む場合の目安を工程ごとに示すと、次の表のとおりです。
| 工程 | 主にやること | 期間の目安 |
|---|---|---|
| ヒアリング・要件定義 | 目的・ターゲット・使う場面のすり合わせ、企画と構成の決定 | 5〜10日 |
| 企画・構成・絵コンテ | 絵コンテの作成、撮影の準備(キャスト・ロケ地・機材の手配) | 7〜14日 |
| 撮影 | スタジオやロケでの撮影、素材の収集 | 1〜3日 |
| 編集・MA・ナレーション | 編集、音の調整(MA)、ナレーション収録、テロップ入れ | 7〜21日 |
| 納品・公開 | 修正対応、最終調整、指定形式での書き出しと納品 | 2〜5日 |
この目安はJPCの動画制作コラムによるもので、撮影素材を含む動画は合計でおよそ6〜8週間、短くても4週間ほどはかかります。別の集計では依頼から納品まで6〜13週間(1.5〜3ヶ月)が目安で、中央値は2ヶ月、約6割が2ヶ月以内に収まるとVIDWEBのコラムは示しています。撮影自体が1〜2日で終わっても、その前後の企画と編集に時間がかかる点は変わりません。公開したい時期が決まっているなら、そこから逆算して余裕をもって相談を始めるのが現実的です。
手戻りを防ぐのは絵コンテ段階のすり合わせ
失敗したと感じた理由を尋ねた同じ調査(複数回答・n=83)では、1位が「意図していたものとズレがあった」で56.6%、2位が「クリエイティブの質が低かった」で51.8%でした。品質そのものより、意図のすり合わせ不足が最上位に来ています。この認識のズレを防ぐ工程が絵コンテです。
絵コンテは動画の設計図にあたり、全体構成やセリフ、演出の骨組みを固めます。doga-marketing.jpの解説は、絵コンテを発注側と制作側の全員で映像の方向性や意図を共有し、ビジュアルの認識をそろえる役割と位置づけています。構成レベルの大きな変更は納期と費用にそのまま響きます。だからこそ、変えるなら絵コンテの段階で決着させるのが理想だとVIDWEBも述べています。
書面を整えれば安心というわけでもありません。TVCMや企業VPを手がける実務者は、発注書や契約書に業務内容や納期を書いても「思ってたのと違う」は防げず、撮影に入る前に演出と仕上がりのイメージを突き合わせる確認の場を設けるべきだと自身のnoteで指摘しています。ズレの怖さは具体例に出ます。AI動画を外注したある発注者は、「構成から作り直します」という一言を、自分は既存素材の並べ替えと受け取り、制作側は素材ごと差し替える新規制作と解釈して、初稿が素材のつなぎ合わせで届いた経緯をnoteに書いています。抽象的な言葉は、双方が別の絵を思い浮かべたまま進む火種になります。
発注側でできることは、大きく二つあります。一つは、絵コンテを受け取ったときに、色味やトーン、登場人物の見せ方まで具体的に確認しておくことです。もう一つは、修正を出すときに関係部署の意見を先に集め、一度にまとめて渡すことです。この二つを意識しておくと、後半の作り直しをかなり減らせます。
納品形式は発注のときに指定する
納品形式や解像度、アスペクト比は、発注の段階で伝えておくと形式選びで迷いません。公開先が自社サイトなのか、YouTubeなのか、広告媒体なのかで、必要な形式が変わるからです。VIDWEBのコラムも、動画を使う場面を発注時に伝えておけば形式の指定で迷わないとしています。縦型のショート動画をSNSで使う予定があるなら、最初に共有しておくと、撮影の構図から縦型を前提に組んでもらえます。
再生数だけでは成果を判断できない
100万円かけたのに問い合わせが来ない、という不満の多くは、何をもって成果とするかを決めないまま公開したところから生まれます。動画の効果は目的によって見る指標が違い、再生数だけでは検討や行動への貢献を判断できません。ヒューマンセントリックスの解説は、認知の段階では視聴回数やインプレッション、ユニークユーザー数、検討の段階では視聴完了率や再生時間、行動の段階ではクリック数や問い合わせ数、会員登録数、売上で測ると整理しています。目的ごとに見る指標を並べると、次のように分かれます。
| 動画の目的 | 主に見る指標 |
|---|---|
| 認知(知ってもらう) | 視聴回数、インプレッション、ユニークユーザー数、ブランド認知度 |
| 検討(比べてもらう) | 視聴完了率、再生時間、ブランド好感度 |
| 行動(問い合わせ・購入) | クリック数、問い合わせ数、会員登録数、売上 |
検討段階の視聴完了率は、動画が表示された回数のうち最後まで(または30秒以上)見られた割合を指し、再生完了数を表示回数で割って求めるとデジタルアイデンティティの解説は定義しています。途中の離脱が多ければ、冒頭の見せ方や長さを見直す手がかりになります。問い合わせやCVを増やしたいなら、その数値を最初のヒアリングで目標として制作会社と共有しておくと、構成もそこへ寄せてもらえます。
「作って終わり」にしない使い回しの設計
動画は公開した時点が終わりではなく、そこから複数の場所で使い回すほど費用対効果が上がります。1本の素材を目的やチャネルに合わせて出し分けるのが基本です。nexmedia24のコラムは、3分ほどのフル尺を公式サイトや製品ページ、展示会ブースに、30秒ほどの中尺をYouTube広告やWebディスプレイ広告に、15秒ほどの縦型ショートをTikTokやInstagramのリールに回す例を挙げています。
この出し分けは、発注のときに使う場面をまとめて伝えておくほど楽になります。フル尺で撮った素材から短い尺を切り出す前提で企画しておけば、追加の撮影なしに複数の動画をそろえられるためです。営業がメールに添える、商談で流す、採用説明会で使うといった社内での用途まで見込んでおけば、同じ制作費でも動画が届く相手が広がります。
11. よくある質問と、比較表で自社に合う制作会社を探す
ここまでの判断軸をふまえ、費用や修正、権利、進行の場面で発注前に迷いやすい点をまとめました。動画制作の失敗は、制作会社の技術力よりも発注側と制作側の認識のズレから起きることが多いため、質問への答えと最後の絞り込みの両方で、その予防を軸に据えています。
見積もりのどこを確認すれば、費用が妥当か判断できますか
総額だけでなく内訳の工程を見ると、金額の根拠が読み取れます。株式会社LOCUSによれば、制作費は工程別に企画15〜25%、撮影40〜50%、編集・MA25〜35%、進行管理10〜30%程度で配分され、撮影が最も大きな比率を占めます。撮影日数が延びるほど人件費が増えるため、Video BRAINは撮影日数を抑えることや見積書の不要項目の見直し、一部の内製を費用削減策として挙げています。台本・構成や編集、ナレーションなどの項目別の目安はNTT東日本のコラムで確認できます。
気をつけたいのは、額面に出てこない追加費用です。安さだけで選ぶのも避けたいところで、株式会社EXIDEAの調査では、失敗したと感じた案件は制作費10〜30万円未満が最多、成功した案件は50〜100万円未満が最多という差が出ています。
「思っていたものと違う」という失敗は、どう防げますか
発注前のすり合わせに時間をかけることが、結果的に手戻りを減らします。株式会社EXIDEAの調査では、過去3年以内に発注したBtoB企業の約8割が外注で失敗を実感し、その理由の1位は品質の低さ(51.8%)ではなく「意図していたものとズレがあった」(56.6%)でした。認識合わせの不足が最も多い原因という結果です。
ズレは言葉の受け取り方から生まれます。発注者の体験談(note)では、「構成から作り直します」の一言を発注側は素材の並べ替え、受注側は素材ごとの差し替えと正反対に解釈し、初稿が素材の寄せ集めで届いたと綴られています。映像制作の実務者(note)も、発注書に業務内容や納期を記しても「思ってたのと違う」は防げないとし、撮影前に演出や仕上がりイメージを突き合わせる工程を勧めています。修正回数を契約で決めておくことに加え、抽象的な指示語を避けて参考動画で完成像を共有しておくと、やり直しの往復を抑えられます。
完成した動画の著作権は、発注した自社のものになりますか
自動的に自社のものになるとは限らず、契約での取り決めによります。動画やCMは著作権法上「映画の著作物」に当たると文化庁が整理しており、著作権情報センターが示す著作権法第29条第1項では、制作に参加する約束があるとき著作権は映画製作者に帰属すると定められています。実務ではCrevoのように、著作権は制作側に残したうえで発注者に用途を問わない使用権を付与する整理もあり、帰属の形は会社ごとに異なります。
納品後に自社で編集し直したい場合は、もう一段の確認が要ります。著作権情報センターの解説では、著作者人格権のうち同一性保持権は制作者の意に反する無断の改変を認めない権利で、譲渡できず制作側に残るとされています。財産権としての著作権を譲り受けても、改変や再編集には制作者の同意(不行使の特約など)が別途必要になり得ます。市販の楽曲やBGMも、JASRACの管理曲であれば利用形態ごとの申込みと使用料の手続きが必要です。契約時に著作権の帰属、二次利用や改変の可否、使用期間を確かめておくと安心です。
依頼から納品まで、どのくらいの期間と工程を見ておけばよいですか
実写もアニメーションも1〜2ヶ月が目安で、1ヶ月以内の短納期を相談できる会社もあります(Crevo)。工程は問い合わせ、ヒアリングと企画提案・見積もり、発注、制作、納品という流れが一般的で、企画と見積もりは発注前の段階で提示されます(Crevo)。この発注前の段階で企画や見積もりがどこまで具体的に出てくるかは、その会社の進め方や相性を測る材料にもなります。
広告として動画を使うとき、法律で気をつけることはありますか
景品表示法とステルスマーケティング規制の二点はおさえておきましょう。2023年10月1日から、広告であることを隠す表示が景品表示法上の不当表示として禁止され、責任を負うのは依頼を受けた第三者ではなく商品・サービスを供給する事業者(広告主)の側だと消費者庁が示しています。あわせて、内容を実際より著しく優良に見せる優良誤認表示や、取引条件を著しく有利に見せる有利誤認表示も禁じられています(消費者庁)。PR動画や口コミ演出を作る際は、広告だと分かる表示になっているかを制作会社と確認しておくと安全です。
自社の目的と予算に合う制作会社を、比較表で絞り込む
判断軸がそろったら、あとは候補を並べて見比べる段階です。動画の目的(採用、商品紹介、広告など)、予算の上限、社内でどこまで対応できるかという委託範囲の三点を先に決めておくと、候補は無理なく絞り込めます。下の比較表では各社の対応領域や得意ジャンル、費用感を横並びで確認でき、気になる会社は資料をダウンロードして実績や見積もりの出し方を発注前に見比べられます。
特定の地域で探したい、近くの会社と直接会って進めたいという場合は、各地の動画制作会社をまとめた地域別の記事があります。地場の会社の傾向やその地域ならではの事情はそちらでくわしく紹介していますので、拠点のあるエリアの記事もあわせてご覧ください。

