CSR調達とは|事例や策定手順を徹底解説
最終更新日:2024/10/08
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目次
「CSR調達とは具体的に何をするのか」と悩む企業の担当者も多いでしょう。CSR調達はサプライチェーンを含め、企業が環境や労働面といった社会的な責任を果たす取り組みです。
CSR調達を実行すれば、事業の透明性により企業価値の向上や経営リスクの回避につながります。一方で、社員やサプライチェーンの協力も必要なため、CSR調達は手順を踏んだうえでの実行が重要です。
本記事では、CSR調達の概要や実行の手順、メリット・デメリットなどを詳しく解説します。
CSR調達とは
CSRは「Corporate Social Responsibility」の略語で、企業の社会的責任を指します。CSR調達は、企業が材料や人材などの資源を仕入れる際、サプライチェーンを包括して自社の社会的責任を果たす取り組みです。
具体的には、環境や人権、コンプライアンスへの配慮など、社会的責任の遵守に協力的なサプライヤーを選択したり、調達条件を調整したりします。持続可能な社会への関心が高まる現代において、自社の利益のみを追求するのではなく、全体に配慮する高い倫理観を持った経営が求められているのです。
CSR調達の取り組み事例
大企業が行っているCSR調達の取り組みには以下のような事例があるので、参考にしてください。
国際的な普遍的原則に基づきCSR調達方針を策定し、従来の取り組みに「人権・人格の重視」「コンプライアンスの向上」を取り入れた
自社への協力依頼だけでなく、取引先へのアンケート調査を行いCSR調達の取り組み状況を把握し、課題や問題を発見した際は改善を要求した
調達の基本方針やガイドラインに基づき、サプライチェーン上での人権・環境リスクを低減するため取り組みを行う。サプライヤーにはガイドラインのほか、動画の送付や対面でのヒアリングにより現状を把握し、リスク要素を取り除く
大企業がCSR調達を導入した結果、取り引きを行う中小企業は方針の遵守や課題の改善を要求されるでしょう。また、ステークホルダーの印象を高めるためにも、CSR調達への取り組みは急務と言えます。
CSR調達の実施方法
CSR調達の実行に向けて、基準策定やCSR調達を実施する旨の公表など、手順を追って取り組むことが重要です。ここでは、CSR調達の具体的な実施方法を解説するので参考にしてください。
1.CSR調達の基準策定
まずは、自社の経営理念や方針とあわせてCSR調達の基準を策定します。自社の果たすべき社会的責任に沿って労働面、法律面などの基準を設定しましょう。
CSR調達の基準を定めるにあたって、今後CSR調達を担当する社員の確保も重要です。現時点で業務量が多く多忙だったり、人員が不足していたりする場合、CSR調達を実行するためのリソースを確保できない可能性があります。
CSR調達の基準は、現在の業務量や調達プロセスを考慮し、必要に応じて状況を改善したうえで設定しましょう。
2.CSR調達ガイドラインの作成
CSR調達の基準や目的が定まれば、ガイドラインを作成します。ガイドラインの作成にあたって法的な規定やルールはありませんが、法律を遵守した内容であるかどうかの確認が必要です。
ガイドラインに記載される一般的な項目を以下で紹介するので参考にしてください。
労働:職場の安全確保に努め、強制労働を禁止する
人権:ハラスメント行為や差別を禁止する
法律:職権乱用や反社会的組織との交友を禁止する
製造:製品に関する情報提供や安全性の確保に努める など
ガイドラインに記載する項目に悩んだ際は、一般社団法人 電子情報技術産業協会が無料で公開している「サプライチェーンCSR推進ガイドブック」を参考にするのもおすすめです。基本的な遵守事項がわかります。
3.CSR調達実施の説明
CSR調達を実施する旨や作成したガイドラインを社内外に公表・説明します。自社の重視しているポイントや、社会から求められる責任に対してどのように果たしていくのかを伝え、理解を獲得することが重要です。
公表方法は企業によって異なりますが、自社が発行するメールマガジンやHPなどに掲載し協力を仰ぎましょう。
公表後はガイドラインに沿ってCSR調達を実行します。実行中は、ガイドラインが有効に機能しているかどうか確認するために社内外から随時意見を収集し、ガイドラインの定期的な見直しを行いましょう。
4.取り組みへの評価・公表
CSR調達の基準を満たした仕入れを実際に行っているか、新規サプライヤーが条件を満たしているかなどを評価します。
既存サプライヤーには年に1回アンケート調査を実施し、スコア化して客観的にパフォーマンスを評価する手法が有効です。
評価は長期的に繰り返し行い、調査結果をもとに改善策の立案・実行が欠かせません。長期的な視点でCSR調達の目的を達成するよう取り組みましょう。
また、CSR調達の取り組みは定期的な公表が重要です。経営の内情が可視化されれば、ステークホルダーは事業の透明性を確認できます。結果的に、ユーザーや取引先などからの信頼獲得につながるでしょう。
CSR調達のメリット
CRS調達に取り組めば、経営リスクの回避や企業価値の向上につながり、会社の長期的な存続に寄与するメリットがあります。ここでは、CSR調達に取り組むメリットを解説するので参考にしてください。
1.経営リスクを回避できる
CSR調達を実施すれば人権侵害や環境汚染などの発生を抑制し、ステークホルダーの不買運動を回避できます。事業を行ううえで、企業は社会への配慮やコンプライアンスを遵守しつつも、日々リスクにさらされているでしょう。
しかし、CSR調達に取り組めば、事業で発生し得るリスクを早期発見し事前に対処できます。リスクが表面化した際も迅速な対応が可能です。
また、サプライヤー企業がCSR調達のガイドラインに沿って活動すれば、社会的問題の発生を回避できます。自社にとってのリソース損失や信用失墜を防ぎ、経営リスクを低減できるでしょう。
2.企業価値を向上させられる
CSR調達で企業価値が向上し、市場での優位性を得られる点もメリットです。環境保全や人権保護などへの取り組みを通じてステークホルダーに信頼され、取り引きの増加や資金調達が容易になる可能性があります。
CSR調達の方針や実施した取り組みをSNSやHPで公表すると、企業イメージの向上に効果的です。積極的に社会的な責任を負う姿勢を評価され、信頼や認知度の拡大につながり、企業価値を底上げできるでしょう。
自社の価値が向上すれば、価格競争で競合他社と争う必要がなくなるほか、顧客の幅が広がり新たなビジネスチャンスを得られます。
3.人材採用・定着につながる
CSR調達を実行すれば、社員の満足度向上による定着や優秀な人材の獲得につながる可能性があります。社会的な意義のある事業に携わっていると実感できれば、社員は仕事へのやりがいを感じ、モチベーションが向上するでしょう。
仕事へのパフォーマンスを発揮し生産性が上がりやすくなるほか、離職者の減少も期待できます。
また、CSR調達の取り組みにより、サステナブルに関心の高い人材の目にも留まりやすくなるでしょう。社会をよりよくする向上心を持った優秀な人材を確保できれば、自社の長期的な存続にも寄与します。
CSR調達のデメリット
CSR調達はメリットがある一方で、コスト肥大化による経営圧迫や人手不足に陥りやすいなどのデメリットもあります。ここでは、CSR調達の取り組みで起こり得るデメリットを解説するので参考にしてください。
1.自社のイメージを損ねる
CSR調達の方針が自社の事業やイメージに合致しない場合、かえって自社の評判を損ねかねません。
たとえば、自社事業で農薬を使用した安全な作物を使用し、食事を提供しているとします。CSR調達の方針で「農薬を使用しない食材で安心を提供する」と掲げた場合、自社の事業に合わず、顧客や取引先だけでなく社員からの印象も悪くなりかねません。
また、CSR調達方針に沿わないサプライヤーとの契約を継続する場合も、自社のイメージを損ねる恐れがあります。
CSR調達を行う際は、自社の事業内容やイメージを明確にしたうえで、CSRに関する方針を設けるほか、調達方法の検討が重要です。
2.コストがかかり経営を圧迫する
CSR調達を実施する際、手間や本業以外への支出が増え、経営を圧迫する恐れがあります。たとえば、「適切なサプライヤーが見つからずリソースの確保に時間がかかる」「CSR活動へのコストが肥大化する」といった課題が起こり得るでしょう。
企業規模によっては、新たな人材の採用やCSR調達へのコスト投入により、経営状態の悪化を招きかねません。
また、CSR調達の取り組みは持続可能な社会の実現に向けて行うものであり、直接的に収入を得られるわけではない点も押さえておくべきです。長期的な目線でCSR調達の目標設定や計画を立案し、自社の状況にあわせて運用しましょう。
3.人的リソースが不足する
CSR調達の取り組みに既存の社員を配置した場合、ほかの仕事の人的リソースが不足しやすい点もデメリットです。
CSR事業を行うにあたって、CSR調達のルール策定や取引先への説明、サプライヤーに対する改善プロセスの提示といった業務が発生するでしょう。CSR事業を担当する社員だけでなく、本来の事業を遂行する社員のリソース不足や負担増加が懸念されます。
CSR調達における上記のようなデメリットを回避するために、CSR調達システムを導入するのがおすすめです。CSR調達システムを利用すれば、業務を視覚化・効率化し、社員への負担が低減するでしょう。
間接材は、直接材とあわせて企業の購買管理でよく聞かれる言葉です。間接材とは、生産や売上に直接関係しない資材のことで、備品や消耗品といった比較的少額のものが該当します。
本記事では、間接材とは何か、直接材との違いから購買業務における課題と対策までを解説します。間接材の管理を怠ると、過剰在庫が増え、無駄なコストが生じる可能性が高いため注意が必要です。
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まとめ
本記事では、CSR調達を実行する際の手順やメリット・デメリットなどを解説しました。CSR調達は、企業が資源を調達する際、サプライヤーとともに環境や人権保護などの社会的責任を果たす取り組みです。
CSR調達を実行するにあたって、まずは基準やガイドラインを作成・公表し、社内外への協力を仰ぎましょう。基準やガイドラインは定期的に見直し、実用性の追求が重要です。
CSR調達は企業のリスク回避やブランド力向上といったメリットがあります。一方で、コストの肥大化や人的リソースが確保できないなどのデメリットの発生に注意してください。必要に応じてCSR調達システムを導入すれば、業務の効率化を図りデメリットを回避することが可能です。
CSR調達を通じて持続可能な社会の実現に協力し、企業の長期的な存続を目指しましょう。
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