CSR調達とは｜策定手順や問題解決の方法も解説【2025年最新版】

「CSR調達とは具体的に何をするのか」と悩む企業の担当者も多いでしょう。CSR調達はサプライチェーンを含め、企業が環境や労働面といった社会的な責任を果たす取り組みです。

CSR調達を実行すれば、事業の透明性により企業価値の向上や経営リスクの回避につながります。一方で、社員やサプライチェーンの協力も必要なため、CSR調達は手順を踏んだうえでの実行が重要です。

1.CSR調達とは

「CSR調達」とは、「CSR」と「調達」を組みあわせた造語で、CSR（Corporate Social Responsibility、日本語訳：企業の社会的責任）を果たしながら、調達を行う取り組みのことです。

通常、企業活動は利益を獲得することを目的にしていますが、目先の利益だけを追求していては、ステークホルダーからの信頼喪失や環境破壊などにより、中長期的に成長が行き詰まる要因になります。「CSR調達」は、長く厚い信頼関係や持続可能性を担保し、中長期的に安定した調達環境を構築する手法です。

2.CSR調達の具体的な取り組み内容4つ

「CSR調達」で企業に求められる「社会的責任」は、一般社団法人 電子情報技術産業協会が無料で公開している「サプライチェーンCSR推進ガイドブック」で以下の4項目が説明されています。

• 1.労働
• 2.人権
• 3.法律
• 4.製造

それぞれの項目について具体的な取り組み内容を確認していきましょう。

1.労働

従業員の労働環境に関する内容です。しっかりとした安全管理を行っている会社を取引先として選定することで、摘発や業務改善命令などによる生産停止や調達の滞りを回避できます。

2.人権

近年は、世界的な人権意識の高まりを受けて、人権侵害や軽視する企業や団体から取引を受ける企業へも批判が集中する傾向にあります。相手企業が人権意識を持ち、適切な従業員待遇や生産体制を行っているか、しっかりと確認しましょう。

3.法律

法令を遵守することは、極めて重大な社会的責任です。特に、賄賂、談合などの非合法な手段での取引を行った場合は、自社に罰則が科されることになります。法律を遵守するだけでなく、合法経営を継続できるよう、監視する仕組みも必要です。

4.製造

近年は環境意識も高まっています。特に廃棄物やCo2の削減、省エネ化は、消費者にとって身近で分かりやすい社会的責任の果たし方と言えます。もちろん、合法的な範囲内であれば、Co2削減や再エネ利用は義務ではありませんが、社会での企業の見え方や評価を左右する項目です。

3.CSR調達の手順4ステップ

CSR調達の実行に向けて、基準策定やCSR調達を実施する旨の公表など、手順を追って取り組むことが重要です。ここでは、CSR調達の具体的な実施方法を解説します。

• 1.CSR調達の基準策定
• 2.CSR調達ガイドラインの作成
• 3.CSR調達の実行
• 4.取り組みへの評価・公表

1.CSR調達の基準策定

まずは、自社の経営理念や方針とあわせてCSR調達の基準を策定します。自社の果たすべき社会的責任に沿って労働面、法律面などの基準を設定しましょう。CSR調達の基準を定めるにあたって、今後CSR調達を担当する社員の確保も重要です。現時点で業務量が多く多忙だったり、人員が不足していたりする場合、CSR調達を実行するためのリソースを確保できない可能性があります。CSR調達の基準は、現在の業務量や調達プロセスを考慮し、必要に応じて状況を改善したうえで設定しましょう。

2.CSR調達ガイドラインの作成

CSR調達の基準や目的が定まれば、ガイドラインを作成します。ガイドラインの作成にあたって法的な規定やルールはありませんが、法律を遵守した内容であるかどうかの確認が必要です。ガイドラインに記載する項目に悩んだ際は、一般社団法人 電子情報技術産業協会が無料で公開している「サプライチェーンCSR推進ガイドブック」を参考にするのもおすすめです。

3.CSR調達の実行

CSR調達を実施する旨や作成したガイドラインを社内に公表・説明し、実行します。自社の重視しているポイントや、社会から求められる責任に対してどのように果たしていくのかを伝え、理解を獲得することが重要です。公表方法は企業によって異なりますが、自社が発行するメールマガジンやHPなどに掲載し協力を仰ぎましょう。公表後はガイドラインに沿ってCSR調達を実行します。実行中は、ガイドラインが有効に機能しているかどうか確認するために社内外から随時意見を収集し、ガイドラインの定期的な見直しを行いましょう。

4.取り組みへの評価・公表

CSR調達の基準を満たした仕入れを実際に行っているか、新規サプライヤーが条件を満たしているかなどを評価します。既存サプライヤーには年に1回アンケート調査を実施し、スコア化して客観的にパフォーマンスを評価する手法が有効です。評価は長期的に繰り返し行い、調査結果をもとに改善策の立案・実行が欠かせません。長期的な視点でCSR調達の目的を達成するよう取り組みましょう。また、CSR調達の取り組みは定期的な公表が重要です。

以上の4項目は、1度実行したら終わりということではなく、評価後に、再び基準の策定（改善や修正）に戻り、サイクルを繰り返していくことが重要です。繰り返し、アップデートを加えてくことで、時代や社会情勢の変化への耐性が向上し、安定したCSR調達が可能となります。

4.CSR調達の3つのメリット

CRS調達に取り組めば、経営リスクの回避や企業価値の向上につながり、会社の長期的な存続に寄与するメリットがあります。順番に説明していきます。

• 1.経営リスクを回避できる
• 2.企業価値を向上させられる
• 3.人材採用・定着につながる

1.経営リスクを回避できる

CSR調達を実施すれば人権侵害や環境汚染などの発生を抑制し、ステークホルダーの不買運動を回避できます。CSR調達に取り組めば、事業で発生し得るリスクを早期発見し事前に対処できます。リスクが表面化した際も迅速な対応が可能です。また、サプライヤー企業がCSR調達のガイドラインに沿って活動すれば、社会的問題の発生を回避できます。自社にとってのリソース損失や信用失墜を防ぎ、経営リスクを低減できます。

2.企業価値を向上させられる

CSR調達で企業価値が向上し、市場での優位性を得られる点もメリットです。環境保全や人権保護などへの取り組みを通じてステークホルダーに信頼され、取り引きの増加や資金調達が容易になる可能性があります。CSR調達の方針や実施した取り組みをSNSやHPで公表すると、企業イメージの向上に効果的です。積極的に社会的な責任を負う姿勢を評価され、信頼や認知度の拡大につながり、企業価値を底上げに繋がります。自社の価値が向上すれば、価格競争で競合他社と争う必要がなくなるほか、顧客の幅が広がり新たなビジネスチャンスを得られます。

3.人材採用・定着につながる

CSR調達を実行すれば、社員の満足度向上による定着や優秀な人材の獲得につながる可能性があります。特にサステナブルに関心の高い人材の目にも留まりやすくなります。社会をよりよくする向上心を持った優秀な人材を確保できれば、自社の長期的な存続にも寄与します。

5.CSR調達の3つのデメリット

CSR調達はメリットがある一方で、コスト肥大化による経営圧迫や人手不足に陥りやすいなどのデメリットもあります。デメリットもしっかり把握することが重要です。ここでは、CSR調達の取り組みで起こり得るデメリットを解説します。

• 1.コストが増加する
• 2.人出不足になりやすい
• 3.人的リソースが不足する

1.コストが増加する

CSR調達を実施する際、手間や本業以外への支出が増え、経営を圧迫する恐れがあります。また、CSR調達を新たに行った場合に、取引先企業の物品にコストが上乗せされ、単純に調達コストが増加することも考えられます。また、CSR調達の取り組みは持続可能な社会の実現に向けて行うものであり、直接的に収入を得られるわけではない点も理解しておくべき事項です。

2.人出不足になりやすい

CSR調達の取り組みの検討・周知には、調達部門や本社部門からプロジェクトを推進する人材を用意する必要があります。通常の業務を進めながら、CSR調達のルール策定や取引先への説明、サプライヤーに対する改善プロセスの提示といった業務が追加で発生します。従って、すでに調達部門の人出不足に直面している会社では、CSR調達のために更なる人的リソースの捻出が難しいことが予測されます。

3.自社のイメージを損ねるリスク

CSR調達の方針が自社の事業やイメージに合致しない場合、かえって自社の評判を損ねる可能性があります。また、これまで継続的に取引を行ってきた企業や団体と、一方的に契約を解除すると、取引先企業からの信頼喪失に繋がるリスクも否定できません。CSR調達を行う際は、自社の事業内容やイメージを明確にしたうえで、CSRに関する方針を設けるほか、調達方法の検討が重要です。

6.購買管理システムはデメリットを補完可能！

CSR調達のデメリットの多くは、購買管理システムを導入すれば解消できます。購買管理システムは、以下のような効果をもちます。購買管理システムを導入し、業務効率化することで、CSR調達に必要なコストや人材を補うことが期待されます。

＜購買管理システムの導入メリット＞

• 所要時間の短縮
• 最適な購買プロセスの算出
• 不正やミスの防止
• 属人化の解消

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まとめ

本記事では、CSR調達を実行する際の手順やメリット・デメリットなどを解説しました。CSR調達は、企業が資源を調達する際、サプライヤーとともに環境や人権保護などの社会的責任を果たす取り組みです。CSR調達を実行するにあたって、まずは基準やガイドラインを作成・公表し、社内外への協力を仰ぎましょう。基準やガイドラインは定期的に見直し、実用性の追求が重要です。CSR調達は企業のリスク回避やブランド力向上といったメリットがあります。一方で、コストの肥大化や人的リソースが確保できないなどのデメリットの発生に注意してください。必要に応じてCSR調達システムを導入すれば、業務の効率化を図りデメリットを回避することが可能です。CSR調達を通じて持続可能な社会の実現に協力し、企業の長期的な存続を目指しましょう。