ゼロクリックでアクセス減？原因と影響、Web担当者がすべき7つの対策

Webサイトの検索順位は悪くないのに、なぜかアクセス数が伸び悩んでいる…。多くのWebサイト担当者が、今こうした不可解な現象に直面しています。その原因は、ユーザーの検索行動が大きく変化し、検索結果ページだけで情報を得て満足してしまう「ゼロクリック検索」が急増していることにあるかもしれません。
この記事では、Webマーケティングの新たな常識となりつつある「ゼロクリック検索」とは何か、その背景からビジネスへの具体的な影響（メリット・デメリット）までを徹底的に掘り下げます。さらに、この変化を乗りこなし、機会損失を防ぐための7つの具体的な対策を、明日から実践できるレベルで分かりやすく解説します。脅威と捉えられがちなこの変化を、新たなビジネスチャンスに変えるためのヒントがここにあります。

1. なぜかアクセスが増えない？原因は「ゼロクリック検索」かもしれません

Webサイトの検索順位は悪くないはずなのに、アクセス数が伸び悩んでいる、あるいは減少していると感じていませんか。その原因は、ユーザーが検索結果ページだけで情報を得て満足してしまう「ゼロクリック検索」の増加にあるかもしれません。本章では、多くのWebサイト担当者が直面しているこの現象の概要と、注意すべきもう一つの「ゼロクリック」との違いを分かりやすく解説します。

1-1. ゼロクリック検索とは？検索結果だけで満足するユーザー行動

ゼロクリック検索とは、ユーザーが「Google」などの検索エンジンでキーワードを入力した際に、検索結果ページに表示された情報だけで疑問を解決し、どのWebサイトのリンクもクリックせずに検索行動を終えてしまう現象を指します。

例えば、「東京の天気」や「1ドルは何円？」、「徳川家康の生年月日」といった質問を検索すると、Webサイトを訪問しなくても検索結果画面の最上部に答えが表示されます。このような便利な機能により、ユーザーは目的の情報を素早く得られますが、一方でWebサイト運営者にとっては、サイトへのアクセス機会が失われることになります。

かつては検索行動の多くがWebサイトへのクリックに繋がっていましたが、検索エンジンの進化に伴い、その構造は大きく変化しています。以下の表は、ゼロクリック検索が発生しやすいクエリ（検索キーワード）の典型的な例です。

このように、ユーザーの単純な疑問に即座に答える機能が充実した結果、Webサイトへ遷移する必要性が低下しているのです。

1-2. なぜゼロクリック検索は増え続けるのか？Googleの狙い

ゼロクリック検索が増加している背景には、Googleの「ユーザーの利便性を最優先する」という明確な方針があります。Googleの使命は、世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすることであり、その一環として、ユーザーが求める答えを可能な限り速く、そして最も簡単な形で提供することを目指しています。

この目的を達成するために、Googleは検索結果ページ（SERP：Search Engine Results Page）に様々な機能を追加し、リッチ化を進めてきました。

• 強調スニペット：
  ユーザーの質問に対する簡潔な答えを、Webページから引用して検索結果の最上部に目立つ形で表示する機能です。
• ナレッジパネル：
  企業、人物、場所などのエンティティ（特定の対象物）に関する情報を、検索結果の右側（PCの場合）にボックス形式でまとめて表示します。
• ローカルパック：
  「地域名＋サービス名」などで検索した際に、地図と共に近隣の関連店舗やビジネスの情報を3つほどリスト表示する機能です。
• アンサーボックス：
  天気、スポーツの試合結果、株価など、客観的な事実に関する質問に直接回答を表示します。

これらの機能はすべて、ユーザーがWebサイトを一つひとつ訪れなくても、検索結果ページ上で素早く情報を得られるように設計されています。ユーザー体験の向上を追求する限り、Googleは今後もSERPのリッチ化を推進し、結果としてゼロクリック検索の割合は維持、あるいは増加していく可能性が高いと考えられます。

1-3.【注意】もう一つの意味「ゼロクリック攻撃」との違い

ここで注意しておきたいのが、「ゼロクリック」という言葉には、本記事で解説しているWebマーケティングの文脈とは全く異なる、サイバーセキュリティ分野での意味も存在する点です。それが「ゼロクリック攻撃（Zero-Click Attack）」です。

ゼロクリック攻撃とは、ユーザーがメールの添付ファイルを開いたり、不正なリンクをクリックしたりといった操作を一切行わなくても、デバイスにメッセージが届くだけでマルウェア（悪意のあるソフトウェア）に感染させられてしまう、非常に高度で危険なサイバー攻撃を指します。この攻撃は、OSやアプリの脆弱性（セキュリティ上の欠陥）を悪用して行われるため、ユーザーが気付くことは極めて困難です。

Webサイト運営者が知っておくべき2つの「ゼロクリック」について、以下の表で違いを整理しました。

このように、両者は全く異なる概念です。本記事では、以降Webマーケティングにおける「ゼロクリック検索」に焦点を当て、その影響と具体的な対策について詳しく解説していきます。

2. ゼロクリック検索がもたらすWebサイトへの具体的な影響

ゼロクリック検索は、Webサイト運営者にとってデメリットばかりではありません。これまで重要視されてきたアクセス数という観点ではマイナスですが、ブランド認知という観点ではプラスに働く側面もあります。メリット・デメリットの両面を正しく理解し、自社への影響を冷静に分析した上で対策を検討することが重要です。

2-1. デメリット：Webサイトへのアクセス数が減少する

ゼロクリック検索がもたらす最も直接的で大きな影響は、オーガニック検索（自然検索）からのWebサイトへの流入数が減少する可能性です。

これまでユーザーが情報を得るためには、検索結果に表示されたリンクをクリックし、Webサイトを訪れる必要がありました。しかし、検索結果ページ上で疑問が解決してしまうため、ユーザーはわざわざサイトを訪問する必要がなくなります。これにより、たとえ検索順位で上位表示を維持していても、クリック率（CTR：Click Through Rate）が低下し、結果としてサイトへのアクセス数が減少するという事態に繋がります。

実際に、マーケティング分析ツールを提供する「Semrush」の調査によると、多くの検索がゼロクリックで終わる傾向が指摘されています。Webサイトへのアクセス数は多くの企業にとって重要な指標（KPI）であるため、この減少はWebマーケティング戦略全体の見直しを迫る大きな課題と言えるでしょう。

以下の表は、ゼロクリック検索がWebサイトのトラフィックに与える影響を簡潔に示したものです。

この表から分かるように、検索順位という指標だけではWebサイトの成果を正しく測れなくなりつつあるのです。

2-2. デメリット：コンバージョン（成果）に至る機会の損失

Webサイトへのアクセス数が減少することに伴い、もう一つ深刻なデメリットが生じます。それは、コンバージョン（CV）に至る機会の損失です。コンバージョンとは、Webサイト上で設定された最終的な成果のことで、B2Bビジネスにおいては「製品に関する問い合わせ」「サービスの資料請求」「セミナーへの申し込み」などがこれにあたります。

当然ながら、ユーザーがWebサイトを訪問しなければ、これらのアクションを起こすことはできません。

例えば、自社の強みや製品の詳細な機能、導入事例などをまとめたコンテンツを用意していても、ユーザーがサイトを訪れなければその情報が届かず、比較検討の土台にすら上がらない可能性があります。つまり、見込み顧客（リード）を獲得し、商談へと繋げるための重要なプロセスが、入り口の段階で断たれてしまうリスクがあるのです。これは、Webサイトを単なる情報発信の場としてだけでなく、事業成長のための重要なチャネルと位置付けている企業にとって、売上に直結する大きな問題となります。

2-3. メリット：クリックされなくても企業名や情報が露出する

一方で、ゼロクリック検索はデメリットばかりではありません。視点を変えれば、クリックされなくても自社の名前や情報をユーザーの目に触れさせることができる、新たなブランディングの機会と捉えることも可能です。

検索結果の最上部に位置する強調スニペットや、企業の基本情報をまとめたナレッジパネルに自社の情報が表示されれば、ユーザーは自然と「この質問（キーワード）に関する専門家・権威はこの会社なのだ」という印象を抱きます。これは、コストをかけずにブランドの認知度や信頼性を高める絶好のチャンスです。

たとえその場ではクリックされなかったとしても、ユーザーの記憶に企業名やサービス名が刷り込まれることで、以下のような効果が期待できます。

• 指名検索の増加：
  後日、何か課題に直面した際に「そういえば、あの会社が詳しそうだった」と思い出し、会社名で直接検索（指名検索）してくれる可能性が高まります。
• 第一想起の獲得：
  特定の分野における第一人者（第一想起）としての地位を確立し、競合他社に対する優位性を築くことができます。
• サイテーション効果：
  他のWebサイトやSNSで「〇〇（自社名）によると～」といった形で言及（サイテーション）されやすくなり、さらなる認知拡大に繋がります。

次の表は、ゼロクリック検索がもたらす影響をメリットとデメリットに分けてまとめたものです。

このように、ゼロクリック検索はWebサイトへの直接的なトラフィックを奪う脅威であると同時に、検索結果ページ自体を新たなマーケティングの場として活用できる機会でもあります。この変化を正しく理解することが、今後のSEO戦略を考える上で不可欠です。

3.【対策①】検索結果での露出を最大化する直接的SEO施策

ゼロクリック時代に対応するには、「クリックされること」だけをゴールにするのではなく、「検索結果ページ（SERP）でいかに目立つか」という視点への転換が求められます。ユーザーがクリックしなくても、自社の情報を効果的に届けるための直接的なSEO（検索エンジン最適化）施策から着手しましょう。

3-1. 強調スニペットへの表示を狙うコンテンツ作成術

強調スニペットは、ユーザーの質問形式の検索キーワード（クエリ）に対して、Webページから抜粋された簡潔な回答が検索結果の最上部に表示される仕組みです。この「ポジションゼロ」とも呼ばれる特別な場所に表示されることで、アクセスに繋がらなくとも、自社がその分野の権威であるとユーザーに強く印象付けることができます。

強調スニペットへの表示を狙うには、ユーザーが抱くであろう疑問を想定し、その答えを簡潔かつ的確に提示するコンテンツ作りが鍵となります。具体的な作成のポイントは以下の通りです。

• 1つの記事で1つの疑問に答える：
  1つのテーマに絞り、専門性を深掘りしたコンテンツを作成します。
• 結論を冒頭に記述する：
  ユーザーの疑問に対する答えを、見出しの直後や記事の冒頭に50文字〜150文字程度で明確に記述します。「〇〇とは、〜です。」といった形式が有効です。
• 論理的な文章構成を心掛ける：
  見出しタグ（H2, H3）を適切に使い、文章の構造を検索エンジンが理解しやすいように整えます。箇条書きや表（テーブル）を活用して情報を整理することも効果的です。

例えば、「ゼロクリックとは」という疑問に答えるコンテンツであれば、記事の冒頭で「ゼロクリックとは、ユーザーが検索結果ページだけで情報を得て、どのサイトもクリックせずに検索を終える現象のことです。」と端的に定義することが、表示の可能性を高めます。

3-2. 構造化データで検索エンジンに情報を正しく伝える

「構造化データ」とは、Webページに書かれているテキストが何を意味するのか（例えば、「これは会社名です」「これは製品の価格です」など）を、検索エンジンが正確に理解できるようにするための専用のコード（マークアップ）です。

この構造化データをWebサイトに実装することで、検索結果に通常よりも豊富な情報（価格、評価、レビュー数、Q&Aなど）を表示させる「リッチリザルト」の対象となる可能性が高まります。リッチリザルトは検索結果ページで非常に目立つため、クリック率の向上だけでなく、ゼロクリック環境下での情報提供にも大きく貢献します。

構造化データの記述ルールは、「Schema.org」という共同プロジェクトによって標準化されており、様々な情報タイプに対応したボキャブラリー（記述方法の辞書）が提供されています。次の表は、B2Bビジネスで特に活用しやすい代表的な構造化データの種類とその効果をまとめたものです。

これらの構造化データを正しく実装することで、Googleに対して自社コンテンツの価値をより明確に伝え、検索結果ページでの存在感を高めることができます。

3-3. ユーザーが思わずクリックしたくなる魅力的なタイトル設定

ゼロクリック検索が主流になっても、すべての検索がクリックなしで終わるわけではありません。検索結果に表示された情報だけでは物足りず、「もっと詳しく知りたい」「専門家の意見が聞きたい」と感じたユーザーは、最終的にリンクをクリックします。その最後のひと押しとなるのが、Webページの「タイトル」です。

たとえ強調スニペットに競合サイトの情報が表示されていても、その下に続く自社のタイトルがユーザーの悩みや好奇心に深く刺されば、クリックを勝ち取ることが可能です。魅力的なタイトルを設定するためのポイントは以下の通りです。

• 具体的な数字を入れる：
  「5つの方法」「3つの注意点」のように数字を入れることで、記事の構成が分かりやすく、具体性が増します。
• ターゲットを明確にする：
  「中小企業担当者向け」「初心者必見」のように、誰に向けた記事なのかを明確にすることで、当事者意識を喚起します。
• 得られるメリットを提示する：
  「コストを30%削減する」「明日から使える」など、記事を読むことでユーザーが得られる未来（ベネフィット）を具体的に示します。
• 簡単さや網羅性をアピールする：
  「たった3分でわかる」「完全ガイド」といった言葉で、情報収集の手間を省きたいユーザーのニーズに応えます。

検索結果ページという限られたスペースで、いかにユーザーの心を動かし「この記事には、検索結果に表示された以上の価値がありそうだ」と思わせられるかが、クリックを勝ち取るための鍵となります。

4.【対策②】店舗や企業情報をアピールするMEO・指名検索施策

ゼロクリック検索は、「地域名＋業種」といったローカル検索（特定の地域に関連する検索）で特に顕著に見られる傾向があります。ここでは、実店舗を持つビジネスや、企業としての信頼性そのものを高めていきたい場合に特に有効な、MEO（マップエンジン最適化）と指名検索の施策について解説します。

4-1. Googleビジネスプロフィールを最適化し地域からの集客を狙う

ローカル検索において最も重要なプラットフォームが、「Googleビジネスプロフィール」（旧：Googleマイビジネス）です。これは、Google検索やGoogleマップ上に表示される店舗や企業の情報を管理するための無料ツールです。ユーザーが「西新宿 ITコンサル」などと検索した際、地図情報と共に表示されるローカルパックの情報源は、このGoogleビジネスプロフィールです。

この領域はゼロクリックで情報収集が完結されやすいため、プロフィール情報を徹底的に充実させることが、Webサイトへのクリックに依存しない集客の鍵となります。具体的には、以下の項目を常に最新かつ正確な状態に保ちましょう。

• 基本情報（NAP情報）の統一：
  企業名、住所、電話番号（NAP）を公式サイトやその他媒体と完全に一致させます。
• 営業時間・定休日の更新：
  通常の営業時間に加え、祝祭日や臨時休業などの情報もこまめに更新します。
• 写真や動画の追加：
  外観、内観、製品、スタッフの働く様子など、魅力的で高品質な写真や動画を定期的に追加することで、ユーザーの関心を引きます。
• 口コミへの返信：
  投稿された口コミには、良い内容・悪い内容にかかわらず、丁寧に返信します。誠実な対応は他のユーザーからの信頼獲得に繋がります。
• 最新情報の投稿：
  新サービスのお知らせやキャンペーン情報などを「投稿」機能を活用して発信します。

次の表では、Googleビジネスプロフィールの各最適化項目と、それによって期待される効果をまとめています。

これらの地道な最適化が、ゼロクリック環境下における強力な集客チャネルを育てることに直結します。

4-2. 知名度を向上させ指名検索（ブランド名での検索）を増やす

ゼロクリック検索の影響を受けにくい、最も強力な集客経路の一つが「指名検索」です。指名検索とは、ユーザーが企業名やブランド名、製品・サービス名で直接検索する行動を指します。この検索行動は、すでに自社のことを認知しており、関心度が高いユーザーによるものであるため、コンバージョンに結びつきやすい極めて質の高いアクセスと言えます。

SEO（検索エンジン最適化）が「待ち」の施策であるのに対し、知名度を向上させて指名検索を増やす取り組みは、より能動的な「攻め」の施策です。具体的には、以下のようなSEOの枠を超えたマーケティング活動が挙げられます。

• プレスリリースの配信：
  新製品の発表や業務提携、調査レポートの公開など、社会的なニュース価値のある情報をメディアに向けて発信します。
• SNSでの情報発信：
  X（旧Twitter）やFacebook、LinkedInなどを活用し、専門知識や業界のトレンド、企業の文化などを継続的に発信してファンを増やします。
• イベント・ウェビナーの開催：
  業界の展示会に出展したり、オンラインでウェビナー（Webセミナー）を開催したりすることで、見込み顧客と直接的な接点を持ちます。
• 外部メディアへの寄稿：
  業界専門メディアやビジネス系ニュースサイトに、自社の専門家が記事を寄稿し、ソートリーダーシップ（特定の分野における第一人者としての地位）を確立します。

次の表は、指名検索を増やすための各施策と、その主な目的を比較したものです。

これらの活動を通じてブランドの認知度が高まれば、ユーザーは何か課題を感じた際に、一般的なキーワードで検索するのではなく、「〇〇社なら解決してくれるかもしれない」と考え、貴社名を直接検索するようになります。これは、検索エンジンのアルゴリズム変動に左右されにくい、安定的かつ持続的な資産となります。

5.【対策③】SEOだけに依存しない集客チャネルを育てる

Googleのアルゴリズムアップデートやゼロクリック検索の増加といった、検索エンジンの動向に一喜一憂しない盤石なWebマーケティング体制を築くためには、SEO以外の集客経路（チャネル）を複数確保しておくことが不可欠です。オーガニック検索だけに依存するのではなく、自社から能動的にユーザーへアプローチできるチャネルを育てていきましょう。

5-1. SNSを活用してファンを増やし直接アクセスを促す

今やSNSは、B2CだけでなくB2Bビジネスにおいても顧客との重要な接点となっています。「X」（旧Twitter）や「Facebook」、あるいは企業の文化やビジョンを視覚的に伝える「Instagram」などのプラットフォームを活用し、有益な情報を継続的に発信することで、自社の「ファン」を育成することができます。

SNSの最大の強みは、検索エンジンを経由せずにユーザーと直接的な関係を構築できる点にあります。フォロワー（ファン）は、貴社の発信する情報に関心を持つ、いわば「見込み顧客」の集団です。彼らにとって価値のある専門知識や業界の最新動向、あるいは課題解決に繋がるヒントを提供し続けることで信頼関係を深め、最終的にはWebサイトへの直接的なアクセスや指名検索へと繋げることができます。

ただし、SNS運用はすぐに結果が出るものではなく、中長期的な視点での地道な情報発信とコミュニケーションが求められます。短期的な成果を追うのではなく、将来の資産となるコミュニティを育てるという意識で取り組むことが重要です。

5-2. Web広告（リスティング広告）で検索結果上部を確実に確保する

より即効性のある対策を求めるのであれば、Web広告の活用が有効です。特にリスティング広告（検索連動型広告）は、ゼロクリック対策として非常に直接的な効果を発揮します。

リスティング広告とは、「Google広告」に代表されるサービスで、ユーザーが検索したキーワードに連動して検索結果ページの上部（オーガニック検索の結果よりも上）にテキスト形式の広告を表示するものです。この手法の最大のメリットは、予算を投じることで、対策したいキーワードの検索結果において最も目立つ位置を確実に確保できる点です。オーガニック検索で上位表示が難しい激戦キーワードや、コンバージョンに直結する重要なキーワードでゼロクリックによる機会損失を防ぎたい場合に、大きな力を発揮します。

一方で、広告は費用を支払い続けることで表示されるため、出稿を停止すれば露出もなくなります。SNSが長期的に資産を築く「ストック型」の施策であるのに対し、リスティング広告は短期的に成果を出す「フロー型」の施策と理解しておくと良いでしょう。

次の表では、ここまで紹介したSEO以外の2つの集客チャネルの特性を比較しています。

これらの特性を理解し、自社の目的や状況に応じてSEO施策と組み合わせることで、ゼロクリック検索の時代においても安定した集客基盤を構築することが可能になります。

6. ゼロクリック時代の対策を支援するおすすめツール＆企業

ここまでに紹介したゼロクリック検索への対策を自社だけで進めるのが難しい、あるいは何から手をつければ良いか分からない、という場合もあるでしょう。その際は、専門的なツールや知見を持つ企業の力を借りるのも有効な一手です。ここでは、ゼロクリック対策を強力に支援してくれる代表的なサービスをご紹介します。

6-1. 検索順位と露出状況を把握する：「Ahrefs」「Semrush」

ゼロクリック対策の第一歩は、現状把握から始まります。自社サイトや競合サイトが、どのようなキーワードで、検索結果のどの位置に、どのような形式（強調スニペットなど）で表示されているかを詳細に分析できるのが、高機能SEOツールです。

中でも、世界中のマーケターに利用されているのが「Ahrefs」（エイチレフス）と「Semrush」（セムラッシュ）です。これらのツールは、単に検索順位を計測するだけでなく、以下のようなゼロクリック対策に不可欠な分析を可能にします。

• SERPフィーチャー分析：
  自社や競合が強調スニペットやローカルパックなど、どのような検索結果の特別機能に表示されているかを把握できます。
• 被リンク分析：
  サイトの権威性に関わる、どのようなサイトからリンクを獲得しているかを詳細に調査します。
• キーワード調査：
  ユーザーの検索意図や、自社が狙うべき新たなキーワードを発見するのに役立ちます。

これらのグローバル標準のツールを活用することで、データに基づいた客観的な戦略立案が可能になります。

6-2. MEO対策を効率化する：「Canly」「MEOチェキ」

ローカル検索におけるゼロクリック対策の要であるGoogleビジネスプロフィールの運用は、特に多店舗展開している企業にとっては管理が煩雑になりがちです。そうした課題を解決するのが、MEO（マップエンジン最適化）対策を効率化する専門ツールです。

国内発の代表的なサービスとして、「Canly」（カンリー）や「MEOチェキ」などが挙げられます。これらのツールを導入することで、以下のようなメリットが得られます。

• 情報の一括管理・更新：
  全店舗のGoogleビジネスプロフィール情報を一つの管理画面で更新でき、作業時間を大幅に削減します。
• 口コミの一元管理と分析：
  各店舗に寄せられる口コミをまとめて管理し、返信作業や顧客の声の分析を効率化します。
• 順位計測と効果測定：
  指定したエリアとキーワードにおけるGoogleマップ上での順位を自動で計測し、施策の効果を可視化します。

手作業での管理に限界を感じている場合や、データに基づいた本格的なMEO対策を行いたい企業にとって、これらのツールは強力な味方となるでしょう。

次の表では、ここまでご紹介したSEO・MEO対策ツールを比較しています。

この表から、自社の課題がWebサイト全体のSEOにあるのか、あるいは店舗集客のMEOにあるのかによって、選ぶべきツールが異なることが分かります。

6-3. 総合的なWeb戦略を相談できる制作・コンサル会社

ツールを導入しても使いこなせる人材がいない、あるいはSEOだけでなく広告運用やSNS活用まで含めた総合的な戦略を相談したいという場合には、専門のデジタルマーケティング支援企業に依頼することを検討しましょう。

国内には、SEOコンサルティングやコンテンツ制作で豊富な実績を持つ企業が数多く存在します。例えば、SEO事業を中核に据え、自社開発ツール「SEARCH WRITE」も提供する「株式会社PLAN-B」や、データ分析を強みとし、自社開発のマーケティングツール「Keywordmap」を軸にしたコンサルティングを提供する「株式会社CINC」などが代表的です。

こうした専門企業に相談するメリットは以下の通りです。

• 専門的なノウハウの活用：
  最新のアルゴリズム動向や業界の成功事例に基づいた、質の高い戦略立案が期待できます。
• リソース不足の解消：
  コンテンツ制作や分析・改善といった実務を委託することで、社内の担当者は本来のコア業務に集中できます。
• 客観的な視点の獲得：
  第三者の専門家による客観的な分析や提案により、社内だけでは気付けなかった課題や新たな機会を発見できます。

もちろん外部委託にはコストがかかりますが、自社で試行錯誤を繰り返す時間と労力を考慮すれば、結果的に費用対効果の高い投資となるケースも少なくありません。

7.【まとめ】検索結果での露出を最大化し、機会損失を防ぐ

ゼロクリック検索の拡大は、Webサイト運営者にとって、これまでの常識が通用しなくなる大きな環境変化です。しかし、これは単なる脅威ではなく、ユーザーとの新たな接点を生み出すチャンスでもあります。最も重要なのは、思考を転換し、検索結果ページそのものを「自社をアピールする一つのメディア」と捉え直すことです。クリックという最終行動だけに固執せず、そこに至るまでの過程でいかにユーザーの目に留まり、信頼を勝ち取るかという視点が求められます。

本記事で解説してきたゼロクリック対策は、単一の施策で完結するものではなく、多角的なアプローチを組み合わせることで最大の効果を発揮します。

次の表は、本記事でご紹介した対策の方向性を改めて整理したものです。

このように、従来のSEO施策を深化させると同時に、MEOやブランディング、さらにはSEO以外の集客チャネルへと視野を広げることが、これからのWebマーケティング戦略の鍵となります。

Webサイトへのアクセス数が伸び悩んでいると感じたら、それはゼロクリック検索の影響かもしれません。しかし、それは決して打つ手がないということではありません。本記事で紹介した対策の中から、まずは自社で着手しやすいものから一つでも実践してみてください。変化する検索の世界に適応し、新たなビジネスチャンスを掴み取りましょう。