入退室管理システムの耐用年数・勘定科目は?減価償却と2026年改正をわかりやすく解説
最終更新日:2026/07/13
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目次
入退室管理システムの会計処理は「資産か経費か」でまず分かれる

入退室管理システムを導入するとき、経理や総務の担当者がまず迷うのは、費用を資産に計上するのか、その期の経費として落とせるのか、資産にするなら何年で償却するのかという点です。この答えは、選んだシステムがクラウド型か買い切り型かで大きく変わります。はじめに全体像を結論から整理します。
会計処理は大きく2つに分かれる
- クラウド型(月額サブスク型):機器やソフトを保有せず利用する形のため、原則として月額利用料をその都度の経費として処理し、資産計上しないのが一般的です。
- 買い切り型・オンプレミス型:カードリーダーや制御装置などの機器を固定資産に計上し、耐用年数にわたって減価償却します。一体で機能するシステムは「器具及び備品」として法定耐用年数6年が一つの目安になりますが、構成要素をどう分けるかで年数の考え方は分かれます。
この記事で分かること
自社のケースがどちらに当たるかを見分けたうえで、次の点を順に確認していきます。
- 資産に計上するか経費で処理するかの分岐
- 耐用年数(何年で償却するか)と勘定科目の考え方
- 少額なら一括で経費にできる金額の目安と、2026年の税制改正の動き
- 工事費や初期費用の扱い、リース・補助金・除却の処理
なお本記事は、一般的な会計処理の考え方を整理したものです。実際の資産区分や耐用年数、少額資産の特例が使えるかどうかは、個々の契約内容やシステムの構成、所轄税務署や顧問税理士の判断によって変わることがあります。最終的な処理を決める際は、必ず顧問税理士や所轄税務署にご確認ください。
資産計上か、経費か(クラウド型と買い切り/オンプレ型の違い)

入退室管理システムの費用は、まず「その仕組みを自社の資産として所有するのか」で処理が分かれます。製品タイプによって考え方が変わるため、契約前に自社がどちらに当たるのかを確認しておくと、後の処理で迷いにくくなります。
クラウド型(月額サブスク型)は月額利用料を経費にするのが一般的
Akerun や Safie のように月額課金で利用する形態では、利用者側に所有する資産が生じないため、月額利用料をその都度の経費として処理するのが一般的です。勘定科目は支払手数料・通信費・賃借料・システム利用料(雑費)などのなかから、自社の実態に合うものを選び、いったん決めたら継続して同じ科目を使います(継続性の原則)。資産計上や減価償却の手間がかからない点が、実務上の特徴です。
買い切り・オンプレミス型は固定資産に計上して償却する
機器一式を購入して所有する買い切り型・オンプレミス型は、固定資産に計上し、法定耐用年数にわたって減価償却するのが原則です。導入時の据付費や設定費なども、原則として取得価額に含めて計上する扱いが基本になります(付随費用。詳しくは次章)。具体的な耐用年数は次章で整理します。
| 区分 | クラウド型(月額) | 買い切り・オンプレ型 |
|---|---|---|
| 会計処理 | 月額をその都度経費計上 | 固定資産に計上して減価償却 |
| 主な勘定科目 | 支払手数料・通信費・賃借料 など | 器具備品 など(ソフト分は別途) |
| 償却資産税 | 対象外が一般的 | 対象になりうる |
固定資産税(償却資産税)の対象になるかも変わる
資産計上した機器は、市区町村が課す償却資産(固定資産税)の対象になりうる一方、クラウドの月額経費は対象外です。償却資産には課税標準の免税点(一定額未満は課税されないしくみ)などの条件があるため一律ではありませんが、所有するか利用するかで負担が変わる点は、中小企業の実務では地味に効いてきます。
「サブスク=全額経費」と機械的に決めない
クラウド型でも、初期にカードリーダーや制御盤などの機器を買い取る場合、その機器部分は器具備品として資産計上する余地があります。また自社仕様の大規模なカスタマイズ開発費が生じる場合は、その開発費が無形固定資産(自社利用のソフトウェア)に当たることもあります(国税庁 No.5461 ソフトウェアの取得価額と耐用年数)。契約形態の呼び名だけで判断せず、実際に何を所有し何に支払うのかで見分けることが大切です。区分は個別の契約内容によって分かれるため、判断に迷う場合は顧問税理士に確認するのが安全です。
会計処理はクラウド型かオンプレ型かで大きく変わります。自社にどちらが向くかを費用面と処理のシンプルさの両面から見比べたい場合は、入退室管理システムの比較・選び方もあわせて確認しておくとよいでしょう。
資産計上する場合の耐用年数は何年か
買い切り型やオンプレミス型で入退室管理システムを資産として計上した場合、いったん決めた区分に沿って毎年少しずつ費用にしていきます。ここで問題になるのが「何年で償却するか」という耐用年数です。実務では6年とされる例をよく見かけますが、その根拠と、6年で片付かないケースを順に整理します。
「6年」とよく言われる根拠
入退室管理システムそのものを名指しした耐用年数の定めはありません。参照されているのは、国税庁の質疑応答事例「ドア自動管理装置の耐用年数」です。ここでは、ドアの施錠や解錠、入室の遠隔監視を制御装置やモニター、インターホン等が一体となって行う装置(取得価額約100万円の例)について、「器具及び備品」の「事務機器及び通信機器」のうち「インターホーン及び放送用設備」に当たるとされ、法定耐用年数は6年と示されています(国税庁 質疑応答事例「ドア自動管理装置の耐用年数」)。入退室管理システムも認証と解錠を一体で制御する仕組みが近いため、この考え方を援用して6年とされることが多い、という流れです。
構成要素ごとに分けて計上する場合
一方で、システム全体を一つの装置とみなさず、機器やソフトを個別の資産に分けて計上する考え方もあります。その場合は、資産の区分ごとに耐用年数が変わります。おおまかな目安は次のとおりです。
| 構成要素 | 区分の例 | 耐用年数の目安 |
|---|---|---|
| 認証端末・制御盤・一体型システム | 器具及び備品/インターホーン及び放送用設備 | 6年 |
| 管理用パソコン | 電子計算機/パーソナルコンピュータ | 4年(PC以外の電子計算機は5年) |
| その他の器具及び備品(前掲の区分によらないもの) | 器具及び備品/主として金属製のもの | 10年(金属製以外は5年) |
| 配線・電気工事など建物に固着する部分 | 建物附属設備/電気設備・その他のもの | 15年(停電対策の蓄電池電源設備は6年) |
| 管理ソフト(自社利用) | 無形固定資産/ソフトウェア | 5年・定額法 |
機器の年数は国税庁 主な減価償却資産の耐用年数表や耐用年数省令 別表第一に、ソフトウェアの5年は国税庁 No.5461に基づきます。
「一律に6年」とは限らない点に注意
どの区分に、どこまで分解して当てはめるかは、システムの構成や契約の内容、実際の使われ方、そして所轄税務署や顧問税理士の判断によって分かれます。たとえば監視や防犯としての役割が主だと評価される場合には、6年ではなく5年、8年、15年といった別の年数に区分されることもあります。ここで示した数字はあくまで目安として捉え、自社の構成に即して確認することをおすすめします。
1システムを1資産にできる?構成要素の切り分けと工事費の扱い
認証端末や制御盤、配線、管理ソフトが一式で導入されると、経理では「まとめて1つの資産として計上できないのか」という疑問が生じやすくなります。ここは実務で判断が割れる代表的な論点で、捉え方によって勘定科目も償却年数も変わります。以下は考え方の整理であり、自社のケースは顧問税理士や所轄税務署に確認するのが確実です。
一体の装置として捉えるか、構成要素ごとに分けるか
制御装置と認証機器が一体となって初めて機能する設備とみなす場合は、全体をまとめて器具及び備品(インターホーン及び放送用設備)として計上し、6年で償却する考え方があります。前章のドア自動管理装置の例がこれにあたります。一方、認証端末や制御盤(器具及び備品)、建物に固着する配線・電気工事の部分(建物附属設備)、管理ソフト(無形固定資産)に区分し、それぞれの年数で処理する捉え方もあります。どちらによるかは構成や契約、設置の実態によって分かれます。
据付費・設置工事費は取得価額に含めるのが原則
機器を使用できる状態にするために直接必要な据付費や設置工事費などは、原則としてその資産の取得価額に含めます(付随費用)。一方で、一部の費用は取得価額に含めないことも認められています(国税庁 No.5400 減価償却資産の取得価額に含めないことができる付随費用)。ただし建物に固着する電気配線工事などは、本体とは別に建物附属設備として区分される余地があり、この区分次第で償却年数(器具及び備品の6年か、建物附属設備の15年か)が変わってきます。
見積もりに別の工事が混ざるとき
同じ見積書に、入退室管理と直接関係のない工事(別設備の移設や照明の増設など)が含まれることがあります。その分は入退室管理システムの取得価額には含めず、本来の区分で処理します。どこまでを取得価額に含めるかの線引きは実務で迷いやすいところです。
判定単位が処理全体に影響する
金額基準による少額特例など(後の章)は「通常1単位として取引される単位ごと」に判定します。そのため、どこまでを1つの資産とみなすかという最初の切り分けが、その後の処理全体を左右します。一体で捉えるか個別に分けるか、工事費を取得価額に含めるかは、構成や実態、所轄税務署・顧問税理士の判断で結論が分かれます。導入内容が固まった段階で、見積もりの内訳を示しながら相談しておくと安心です。
勘定科目の一覧(場面別)
入退室管理システムの費用は、何をどう導入したかによって使う勘定科目が変わります。資産として計上するのか、その期の経費として処理するのかも含め、場面ごとに代表的な考え方を整理します。まずは下表を目安にしてください。
| 場面 | 想定される勘定科目 |
|---|---|
| 機器を資産計上する(一体のシステム・機器を買い取り) | 工具器具備品(器具及び備品。制御装置などの状況により機械装置) |
| 配線・電気工事で建物に固着する部分 | 建物附属設備(本体の取得価額に含めるか、電気設備として別計上かは実態で判断) |
| 管理ソフトを自社利用として資産計上する | ソフトウェア(無形固定資産) |
| クラウド型の月額利用料 | 支払手数料/通信費/賃借料/システム利用料(雑費)など |
| 少額(10万円未満)で全額を経費にする | 消耗品費 など |
| 設置工事費・据付費 | 原則として本体の取得価額に算入(付随費用) |
クラウド費用は継続して同じ科目を使う
クラウド型の月額利用料をどの科目で処理するかは、上表のように複数の候補があります。いったん決めたら、以後も継続して同じ科目を使うのが会計の原則です。合理的な理由なく年度ごとに科目を入れ替えると、費用の推移が比較しにくくなります。
科目は自社の実態に合わせて決める
勘定科目は法律で一つに固定されているわけではありません。上表はあくまで代表的な例で、実際には自社の資産管理の実態や従来の会計処理との整合、そして顧問税理士との相談を踏まえて決めるのが実務です。判断に迷う場合は、独自に決めずに専門家へ確認してください。
少額なら一括経費にできる?金額の閾値マップと2026年の改正

入退室管理システムは、原則として耐用年数にわたって減価償却します。ただし取得価額が一定額を下回ると、その年度に全額を経費(損金)にできる、あるいは短期間で償却できる特例が使えます。分かれ目になるのは「10万円」「20万円」「40万円」という3本の境界線です。まずは全体像を地図として整理します。
金額で変わる3つの境界線(閾値マップ)
| 取得価額(1単位あたり) | 主な処理 | 実務上のポイント |
|---|---|---|
| 10万円未満 | 事業に使い始めた年度に全額を損金算入(消耗品費など) | 減価償却せず一度に費用化できる |
| 20万円未満 | 一括償却資産として3年間で均等償却する選択が可能 | 地方税法上、償却資産税(固定資産税)の対象外になるのが実務上のメリット |
| 40万円未満(中小企業者等の特例) | 少額減価償却資産の特例で全額を損金算入 | この特例で処理した資産は償却資産税の対象になる点が一括償却資産との違い |
| 40万円以上 | 通常の減価償却(耐用年数で費用配分) | 特例は使えない |
10万円未満・20万円未満の扱いは国税庁 タックスアンサー No.5403に、40万円未満の特例は同 No.5408に基づきます。
2026年(令和8年度)改正で「30万円未満」が「40万円未満」に
中小企業者等の少額減価償却資産の特例は、令和8年度税制改正で見直されました。主な変更点は次のとおりです(財務省「令和8年度税制改正の大綱」)。
- 対象となる取得価額を、従来の30万円未満から40万円未満に引き上げ。
- 適用期限を令和11年3月31日まで3年延長。
- 対象法人から、常時使用する従業員数が400人を超える法人を除外(従来の「500人以下」からの厳格化)。
- 令和8年4月1日以後に取得して事業の用に供する資産から適用。それ以前に取得したものは30万円未満が基準です。
- 年間合計300万円が上限という枠と、青色申告書を提出する中小企業者等が対象という基本は維持されています。
注意したいのは、改正が施行された後も国税庁のタックスアンサー本文には旧「30万円未満」の表記がしばらく残る場合がある点です。取得した時期に応じて、どちらの基準が適用されるかを確認しておくと安心です。
金額は「一式」でなく「1単位ごと」に判定する落とし穴
これらの金額基準は、まとめた合計額ではなく「通常1単位として取引されるその単位ごと」に判定します。入退室管理システムは、制御機器・リーダー・電気錠・設定工事などの一式で数十万円から数百万円になることが多く、一式でまとめて判定すると各閾値を超え、結局は通常の減価償却になりやすい構成です。機器ごとに単体で判定できるかどうかは、契約や請求の実態によって変わります。
さらに、判定に使う金額は消費税の経理方法によっても動きます。税込経理なら税込額、税抜経理なら税抜額で判定するため、税抜きなら閾値内に収まるケースもあります。特例が使えるか、どの単位で判定するかは自社の状況や所轄税務署の取扱い、顧問税理士の判断によって結論が変わります。導入前に見積書の内訳と判定単位を税理士に相談しておくと、処理の見通しが立てやすくなります。
リース・補助金・除却の実務
入退室管理システムは、購入だけでなくリースや補助金で導入することも多く、古い設備からの入れ替えも起こります。導入や撤去の方法によって会計・税務の扱いが変わるため、経理・総務で見落とされやすい三つの場面を整理します。
リースで導入した場合
リース契約で導入するケースは少なくありません。所有権移転外ファイナンスリースは、税務上、資産の引渡し時に売買があったものとして取り扱われ、リース資産を計上したうえでリース期間定額法により償却するのが原則です(国税庁 No.5704 所有権移転外リース取引)。ただし中小企業などでは、少額のリース資産などについて、支払ったリース料をその都度損金に算入する賃貸借処理が認められる場合もあります。どちらの処理になるかは契約内容や企業規模によって変わるため、契約書の内容を確認したうえで顧問税理士に相談すると判断を誤りにくくなります。
補助金を使って導入した場合
IT導入補助金などを利用して導入した場合、その補助金が国庫補助金等に該当し一定の要件を満たすと、圧縮記帳によって補助金相当額の課税を繰り延べられることがあります。圧縮記帳は税金がかからなくなる仕組みではなく、課税のタイミングを後ろにずらす繰延べである点に注意が必要です。適用できるかどうかや具体的な方法は、補助金の性質や交付要綱の要件によって異なります。交付要綱を確認し、自社で適用できるかを顧問税理士に確かめてから進めると安心です。
買い替え・撤去したとき(除却)
既存のシステムを撤去して新しいものに入れ替える場合、まだ償却が終わっていない旧設備は、帳簿価額(未償却残高)を除却損として計上します。実際に撤去・廃棄するときは除却として、使わないまま残しておくときは有姿除却として扱うなど、状況によって処理は分かれます。リプレイスの際は新しい設備の計上に気を取られ、旧設備の除却が見落とされやすい論点です。撤去の実態や帳簿価額を踏まえ、処理の可否は顧問税理士や所轄税務署に確認しておくと確実です。
経理から見た製品選びのヒントとよくある質問
ここまで整理してきた耐用年数や勘定科目の考え方は、そのまま製品を選ぶときの判断材料になります。会計処理のしやすさという観点を加えると、自社に合うタイプが見えやすくなります。
経理から見た製品選びのヒント
- 資産計上や減価償却の手間を避けたい場合は、月額の経費として処理しやすいクラウド型(サブスク型)が向いています。
- 償却資産税(固定資産税)や資産管理の負担を抑えたい場合は、クラウド型や、少額の範囲に収まる構成が選択肢になります。
- 耐用年数の目安が6年前後と長く使う前提だからこそ、6年後も使い続けられる拡張性やサポート体制、認証方式で選ぶことが、結果的にコストに効いてきます。
製品タイプごとの違いを具体的に比べたい場合は、入退室管理システムの比較・選び方を参照してください。税務の最終判断は顧問税理士に委ねる領域ですが、どのタイプが自社の運用に合うかは、自社で判断できる部分です。
よくある質問
Q. 入退室管理システムの耐用年数は何年ですか。
一体のシステムであれば器具及び備品として6年が一つの目安ですが、構成によって区分が分かれることがあります。個別の判断は顧問税理士にご確認ください。
Q. 勘定科目は何になりますか。
資産として計上する場合は工具器具備品やソフトウェア、クラウドの月額利用であれば支払手数料や通信費などで処理するのが一般的です。
Q. クラウド型は資産計上が必要ですか。
月額の利用料は経費として処理するのが一般的です。ただし初期の機器買取や個別のカスタマイズ費用は、資産計上となる余地があります。
Q. 工事費は本体価格に含めますか。
据付や設置にかかる費用は、原則として取得価額に算入します。建物に固着する電気工事は、別の区分になる余地があります。
Q. 少額の特例は使えますか。
2026年4月以後の取得は40万円未満が対象で、年間300万円の上限や青色申告の中小企業といった要件があります。一式で導入すると金額を超えやすい点にご注意ください。
Q. 買い替え時の古い設備はどうしますか。
使用をやめた設備は、未償却残高を除却損として計上します。詳細は所轄税務署や顧問税理士にご確認ください。
本記事は一般的な会計処理の考え方を整理したものです。実際の資産区分や耐用年数、特例の適用可否は、個々の契約内容や構成、所轄税務署や顧問税理士の判断によって異なります。導入を検討する際は、最終的な処理を必ず専門家に確認したうえで進めてください。
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