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税理士の選び方・費用相場ガイド|料金相場と失敗しない選び方

目次

1. 税理士とは?依頼できることと会計士・記帳代行の違い

税理士に頼める仕事には、有資格者でなければ引き受けられない「独占業務」があり、ここを取り違えると安く頼んだはずが申告も相談もできずに行き詰まります。選び方や費用の話に入る前に、誰に何を頼めるのかという土台だけ先に押さえておくと、見積もりの安さに釣られて選んで後悔する事態を避けられます。

税理士に依頼できること(3つの独占業務)

税理士の中心的な仕事は、税理士法第2条第1項(国税庁・税理士業務)で3つに定められています。税務署など税務官公署への申告・申請を代理する「税務代理」、申告書や届出書などを作る「税務書類の作成」、税額や課税標準の計算にかかわる個別の相談に応じる「税務相談」です。この3つは、報酬を取らない無償の場合でも税理士でない人が引き受けてはならない「無償独占業務」とされています。確定申告を任せたい、節税の相談に乗ってほしい、税務署とのやり取りを代わってほしい——こうした用件はすべて、税理士(または税理士法人)にしか頼めないと考えてください。

記帳代行業者との線引き(安さの裏にある制約)

月数千円からといった低価格をうたう記帳代行サービスは、税理士事務所とは扱える範囲が異なります。領収書や伝票をもとに仕訳を入力し、帳簿や試算表を作るところまでは税務官公署に対する仕事ではないため、資格がなくても行えます(freee・税理士の独占業務とは)。ただし、その先の申告書の作成・税務相談・税務代理は記帳代行業者には頼めません。税理士法第52条が税理士でない者の税理士業務を禁じ、違反には2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科されるためで、無資格者が税務相談や申告書作成を請け負うこと自体が違法です(九州北部税理士会・無資格者にご注意を)(罰則の根拠は税理士法第59条第1項第4号で、国税庁・税理士法違反行為が示すとおりです)。記帳だけ安く外注し、申告と相談は別途税理士に依頼するという組み合わせは成り立ちます。逆に「記帳から申告まで丸ごと格安で」とうたう相手が税理士登録を持っているかは、依頼前に確かめておきたいところです。

公認会計士との違い(会計士=税務の専門家とは限らない)

会計の専門家といえば公認会計士を思い浮かべる方も多いのですが、独占業務は別物です。公認会計士の独占業務は財務諸表の監査(日本公認会計士協会)であり、税務代理や申告書の作成、税務相談は含まれません。公認会計士が税務を扱うには、別途税理士登録(日本税理士会連合会)が必要です。会計士の肩書きがあるからといって自社の税務をそのまま任せられるとは限らず、税理士としても登録しているかを見ておくと安心です。

なぜ今、専門家の必要性が増しているのか

制度の変更が続いたことで、自己流の経理では追いつきにくくなっています。一つは、2023年10月に始まったインボイス制度(国税庁)です。仕入税額控除を受けるには登録番号などを記載した適格請求書の保存が要るようになり、登録の要否や取引先との関係を含めて判断が複雑になりました。もう一つは電子帳簿保存法で、2024年1月から、電子取引でやり取りしたデータは電子データのまま保存することが義務化されました(国税庁・リーフレット)。メールやネットで受け取った請求書を印刷して紙で残す従来のやり方は原則認められず、検索要件など一定のルールに沿った保存が求められます。こうした実務に対応できるか、クラウド会計の導入を含めて相談できるかが、税理士を選ぶ理由に加わってきました。具体的にどんな基準で見極め、費用はいくらが妥当なのかは、このあとの章で順にたどっていきます。

2. 依頼範囲で選ぶ=丸投げ/スポット/通年顧問

税理士選びは「どの事務所が良いか」の前に、まず「何をどこまで頼むか」で分かれます。記帳から決算・申告まで全部任せるのか、申告だけスポットで頼むのか、月次で相談できる通年顧問を結ぶのか。この依頼範囲が、かかる費用も、見るべき選定軸も大きく変えます。本章では3つの頼み方を整理し、それぞれの向き不向きと落とし穴を押さえます。費用の細かな相場は次章で扱い、ここでは「自社でどこまでやるか」とのトレードオフに絞ります。

前提として、税理士に頼める中核業務は「税務代理」「税務書類の作成」「税務相談」の3つで、これらは国税庁「税理士の業務」が示すとおり税理士でない者が無償でも行ってはならない独占業務です。つまり申告書の作成や個別の税務相談を頼める相手は税理士に限られます。この点を土台に、依頼の「範囲」を考えていきます。

記帳まで丸投げ=楽だが、数字が見えなくなる逆説

領収書や請求書を渡せば、記帳から決算・申告まで事務所側がすべて引き受けてくれる頼み方です。経理の手間を最小化できる一方で、費用は高くなります。法人が記帳代行込みで依頼すると月額顧問料は4万円〜が目安となり、業務範囲が広がると月4万〜8万円、IDEMAEによれば年間で60万〜100万円規模になるケースもあります。小規模な法人でも決して小さくない固定費です。

ただし丸投げの本当の代償は、金額よりも「自社の数字が見えなくなる」ことにあります。ハーバーズは、経理を任せきると経営者が財務状況をリアルタイムで把握できなくなり、記帳資料を渡してから試算表が手元に届くまで数週間から数か月かかることがあると指摘します。その結果、赤字の兆候を見逃したり改善の機会を逃したりと、意思決定の速さと精度が落ちかねません。ミツモアも、経費という経営に直結する数字を把握しないまま進むことになり、税務知識が身につかず節税も自分で進めにくくなると述べています。

実際の現場でも、試算表が約束どおり作られず月次の数字が出てこない、処理の誤りで身に覚えのない役員貸付金が積み上がる、といった声があります。税理士変更を重ねた経営者の手記では、過去に処理が原因で社長への役員貸付金が1,500万円発生し、数字が二か月遅れで出てくる時期が続いたと振り返っています(※この発信は税理士変更サービス側のものである点は割り引いて読む必要があります)。丸投げ自体が悪いのではなく、自社にチェック機能と判断材料が残らない構造になりやすい、という点を理解して選ぶことが肝心です。

申告だけスポット=最小構成だが、期中は見えない

顧問契約を結ばず、確定申告や決算だけを単発で依頼する頼み方です。「税理士 費用」で検索する人の中でも需要が最も大きい入口で、費用を抑えたい個人事業主や、取引がシンプルな事業者に向きます。記帳まで含めて委託する場合の相場は、植村会計事務所によれば個人の白色申告で5万〜10万円程度、青色申告は売上規模に応じて10万円〜と段階的に上がります。必要なときだけ専門家に頼める柔軟さがメリットです。

一方で、スポットは申告に関する相談に限られ、期中の経営はカバーされません。SMC税理士法人は、決算日を過ぎてからできる節税は限られるため対策が不十分になりがちで、申告時以外はアドバイスを受けられず、決算が終わるまで正確な業績がはっきりしないことがあると整理しています。サミット税理士法人も、スポットには記帳代行が含まれず相談が申告関連に限定される点を挙げています。月次の数字は自分で押さえられる、税務調査の対応は別途でよい、という事業者には合理的な選択です。

通年顧問=月次で相談でき、節税や融資の提案まで期待できる

固定の顧問料で、記帳や月次の数字確認、税務・経営相談、税務調査への対応支援までを継続的に受ける頼み方です。税理士ドットコムは、税理士が常に利益状況を把握できる顧問契約のほうがスポットより効果の高い節税が見込めること、決算書や申告書に顧問税理士の記名・押印があると金融機関の信頼度が高まり融資時に有利に働くこと、悩みをいつでも気軽に相談でき俯瞰した助言を受けられることを挙げています。期中に手を打てるのが最大の価値です。

費用は継続して発生します。弥生によれば、売上1,000万円未満・3か月に1度の訪問なら、個人で月額1万5,000円〜+決算料8万円〜、法人で月額2万円〜+決算料10万円が相場のアンカーです(より広い相場では辻・本郷 税理士法人が個人事業主・売上1,000万円以下で月1万〜2万円・決算料7.5万円〜としています)。スポットなら決算だけで済むところに、月々の顧問料が積み上がる構造になります。だからこそ「毎月何をしてくれるか」を契約前に確認する価値があります。毎月訪問と試算表作成を口約束されたのに半年で訪問一回・試算表ゼロだったという体験談もあり、口約束ではなく書面で業務内容を取り決めておくことが失敗を防ぎます。

自社でどこまでやるか――トレードオフで決める

3つの頼み方は、突き詰めれば「コストを払って手間を減らすか、手を動かして数字を自分で握るか」のトレードオフです。下表に向き不向きの目安を整理します。

頼み方 向いている人 注意点
記帳まで丸投げ 経理に手が回らない・記帳の手間を最小化したい事業者 費用が大きく、試算表の遅れで数字がブラックボックス化しやすい
申告だけスポット 取引がシンプルで期中の数字を自分で押さえられる人 期中の相談や踏み込んだ節税は受けにくい
通年顧問 月次で相談したい・融資や資金繰りの提案を求める事業者 顧問料が継続発生。約束された業務内容を書面で確認したい

近年はクラウド会計ツールの普及で、自社で回せる範囲が広がっている点も判断材料です。フリーランス7年目で確定申告に年2時間しか使っていないという当事者は、クラウド会計と必要なところだけのスポット支援を組み合わせる仕組みで回しています。取引が単純なら、丸投げや顧問より「自分で記帳+申告だけスポット」が最適なこともあります。逆に、数字を見て手を打ちたい・融資を見据えるなら顧問が効きます。自社の取引量と、数字を自分で把握したい度合いから逆算して範囲を決め、そのうえで次章の費用相場と照らし合わせてください。

3. 税理士費用の相場=依頼範囲×規模で読む

税理士費用は一律の相場表では読み解けず、「何を頼むか(依頼範囲)×どのくらいの規模か(売上・遺産総額)」の組み合わせで総額が決まります。同じ「税理士費用」でも、確定申告を一度だけ頼むスポット依頼と、毎月の顧問契約では金額の桁が違います。まず自分がどのセルに当てはまるかを見定め、そのうえで同条件の事務所を複数並べて比較することが、払い過ぎや「思ったより高かった」を防ぐ近道です。以下では確定申告スポット、法人の月額顧問、個人事業主、相続税申告、税務調査の立会いという代表的な依頼パターンごとに、出典の数値を幅で示します。

まず確定申告スポットの早見表で「自分のセル」を読む

確定申告だけを単発で頼む場合、費用を左右するのは「白色か青色か」「売上規模」「記帳を自分でやる(自計)か丸投げするか」の3点です。最も簡易な白色申告は記帳負担が軽く、弥生株式会社の解説では総額が10万円未満に収まるケースが大半とされ、複数の出典がおおむね5万〜10万円程度を目安にしています。青色申告は売上規模と記帳代行の有無で次のように分かれます。

区分 売上規模 自分で記帳(自計) 記帳も丸投げ
白色申告 規模問わず 総額5万〜10万円程度
青色申告 〜500万円 5万円程度 10万円程度
青色申告 〜1,000万円 7万円程度 15万円程度

この自計と丸投げの数値は弥生株式会社の整理によるものです。同じ青色申告でも、丸投げ前提でレンジを示す出典では金額が一段高くなります。税理士法人植村会計事務所は青色申告を丸投げした場合の相場を、500万円未満で10万円〜、500万〜1,000万円未満で15万円〜、1,000万〜3,000万円未満で20万円〜、3,000万〜5,000万円未満で25万円〜、5,000万円以上は要相談としています。つまり同じ売上帯でも「自計か丸投げか」と「どの出典で見るか」で数万円の幅が出るため、見積もりを取るときは記帳をどちらが担うかを必ず揃えて比較してください。記帳代行だけを切り出して頼む場合の相場は、仕訳300以下で2万円程度、500以下で3万円程度(弥生株式会社)です。

法人は「月額顧問料+決算料」の合算で年間総額を読む

法人で顧問契約を結ぶ場合、費用は毎月の顧問料と、年に一度の決算申告料を足した年間総額で考える必要があります。月額だけを見て安いと判断すると、決算料を含めた実際の負担を読み違えます。月額顧問料は売上(年商)に連動して段階的に上がります。税理士紹介センター ビスカスの年商別早見表では、年商1,000万円未満で10,000円〜、1,000万〜3,000万円で15,000〜20,000円、3,000万〜5,000万円で15,000〜25,000円、5,000万〜1億円で20,000〜30,000円、1億〜3億円で30,000〜50,000円、10億円以上で50,000円〜とされています。

別の出典でも刻みの構造は同じで、辻・本郷 税理士法人は年商1,000万円未満で1万〜2.5万円、1,000万〜3,000万円で1.7万〜3万円、3,000万〜5,000万円で2.2万〜3.5万円、5,000万〜1億円で3.2万〜4.5万円、1億〜5億円で4.5万〜6万円を目安としています。PRONIアイミツは起点の金額として年商1,000万円未満で月1.5万円〜、1,000万〜3,000万円で月2万円〜、3,000万〜5,000万円で月2.5万円〜、5,000万〜1億円で月3万円〜、1億〜5億円で月4万円〜、5億円以上で月5万円〜を示します。出典ごとに刻みの起点や幅が違うのは、含まれる作業範囲や訪問頻度の前提が異なるためです。

決算料は月額顧問料の4〜6か月分が目安

年に一度の決算申告料は、月額顧問料の約4〜6か月分が目安とされます(税理士紹介センター ビスカス)。月額3万円なら決算料はおよそ12万〜18万円という換算になり、年額は10万円〜が下限の目安です。売上規模別に見ると、辻・本郷 税理士法人では法人の決算料が年商〜1,000万円で10万円〜、1,000万〜3,000万円で13万円〜、3,000万〜5,000万円で20万円〜、5,000万〜1億円で30万円〜、1億〜5億円で35万円〜とされています。月額の安さだけで選ぶと決算料を含めた年間総額で逆転することがあるため、見積もりは必ず「月額×12+決算料+オプション」の合算で読んでください。

訪問頻度と記帳代行で総額は動く

同じ売上規模でも、毎月訪問して面談・監査を行う手厚い契約は報酬が高く、訪問を3か月に1回・基本はオンラインやメールのみにすると拘束時間が減るぶん月額1〜2万円ほど安くなる傾向があります(leapal)。公開料金表でこの差は明確で、さくら税理士法人では記帳代行ありの月額顧問料が毎月訪問28,000〜88,000円、2か月毎24,000〜82,000円、3か月毎22,000〜52,000円、6か月毎20,000〜50,000円、年1回訪問19,000〜49,000円となり、決算料は売上規模により88,000〜352,000円です。

記帳代行を加えるかどうかも総額に効きます。辻・本郷 税理士法人では記帳代行の追加費用が法人で月5千円〜(〜1,000万円)、3,000万〜5,000万円で月1万円〜、5,000万〜1億円で月1.5万円〜(1億〜5億円では月3万円〜)とされ、料金は仕訳・伝票の枚数に連動します。税理士紹介センター ビスカスの例では〜200枚で15,000円、201〜300枚で20,000円、301〜400枚で25,000円、401〜500枚で30,000円、501枚〜で35,000円と段階的に上がります。自社で記帳できれば、この部分は抑えられます。消費税の申告がある場合は別途加算されることも一般的で、PRONIアイミツの公開例では決算料一律15万円に対し消費税申告がある場合は+3万円となっています。

個人事業主は依頼範囲を絞ると顧問でも月1万円台から

個人事業主の顧問料は法人より一段低い水準です。辻・本郷 税理士法人では売上〜1,000万円で月1万〜2万円が目安とされ、決算料は〜1,000万円で7.5万円〜です。記帳まで丸投げするか、顧問相談だけにとどめるかで月額は変わるため、自分で会計ソフトに入力できるなら顧問のみの契約に絞って費用を抑える選択肢があります。取引がシンプルな個人事業主は、そもそも顧問をつけずクラウド会計とスポット支援の組み合わせで回している例もあり、フリーランス7年目の体験記では確定申告に使う時間は年2時間程度と記されています。顧問を結ぶ前に「毎月の記帳を誰がやるか」を決めると、必要な依頼範囲と妥当な金額が見えてきます。

相続税申告は料率の目安と「定額ランク」の両面で見る

相続税申告は単発の大型依頼で、報酬は遺産規模に連動します。よく示されるのは遺産総額(プラスの財産)の0.5%〜1.0%という料率で、遺産1億円なら50万〜100万円が一般的とされます(税理士法人チェスター)。報酬は基本報酬に、土地の数・相続人数・非上場株式の有無・申告期限の短さなどに応じた加算報酬を足す構成です。同社の遺産総額別の基本報酬は、1億円以下で20万〜55万円(税込22万〜60.5万円)、1億〜1.5億円で70万円(税込77万円)、2億〜2.5億円で115万円(税込126.5万円)、4億〜5億円で200万円(税込220万円)などと定額で示され、低額帯では実質的に20万〜50万円台の最低報酬レンジになります。

ただしこの料率の扱いには注意が要ります。トゥモローズは、0.5〜1.0%という数字は過去の税理士報酬規定に由来する参考値で、この報酬規定は平成14年3月に廃止されていると指摘し、現在は事務所ごとに遺産総額ランク別の定額(例:遺産5,000万円で25万〜50万円)を基本報酬とする方式が一般的だとしています。したがって料率を絶対視せず、「料率は廃止規定由来の目安」「実際はランク別の定額見積もり」の両面で複数事務所の見積もりを比べるのが妥当です。

税務調査の立会いは「単価」でなく「総額」で比べる

税務調査の立会い費用は出典でレンジが割れるため、ひとつの数字を鵜呑みにせず幅で押さえます。税理士ドットコムは1日3〜5万円×調査日数(実例で1日約5万円、3日間で15万円)とし、修正申告が必要な場合は別途10万〜20万円としています。立会いそのものの日当に加えて、事前準備(3万〜5万円)と修正申告(10万〜20万円)が別途かかるため、同じ立会いでも前後の作業まで含めると総額は大きく変わります。立会いの単価だけを並べても実態はつかめないため、事前準備と修正申告まで含めた総額で見積もりを取り、同じ前提で比較してください。

「自分の依頼範囲と規模で総額を試算し、同条件で複数比較する」が結論

ここまでの数値はいずれも単価ではなく、依頼範囲と規模の組み合わせで動くものでした。判断の順番は、まず自分が当てはまるパターン(確定申告スポット/法人顧問/個人事業主/相続/税務調査)を選び、次に売上や遺産総額のセルを読み、記帳を自分でやるか丸投げするか・訪問頻度・消費税や年末調整などの追加範囲を決めることです。そのうえで法人なら月額×12+決算料+オプションの年間総額に直し、同じ前提で複数の事務所から見積もりを取って並べます。単価の安さや一律の相場表に引きずられず、自分の条件で総額を試算して横並びにすることが、後悔しない選び方の土台になります。具体的にどの事務所が地域にいるか・誰に頼むかは、地域別の記事で確認してください。

4. 顧問料の総額と「別料金の罠」+費用を抑えるロジック

月額顧問料の安さだけで税理士を選ぶと、後から決算料やオプション料金が積み上がって総額が読めなくなります。税理士費用は「月額顧問料」だけで決まるものではなく、年に一度の決算申告料と、記帳代行や年末調整といった別料金で構成されています。Farrow Partners税理士法人の整理によれば、月額顧問料に含まれるのは通常「会計データの監査」と「月次試算表の作成」までで、それ以外は別料金になるのが一般的です。前章で見た相場はあくまで一部分の金額であり、ここでは提示された月額を疑い、年間の総額に組み直して読む視点をお渡しします。

総額は「月額顧問料+決算料+別料金」で組み直す

見積もりを比べるときは、月額の数字をそのまま比較してはいけません。年に一度発生する決算申告料は、leapalの相場解説では月額顧問料の4〜6か月分が目安とされています。たとえば月額3万円であれば、決算料だけで12万〜18万円が別途加算される計算です。月額の安さに引かれても、決算料を足した年額で並べ直すと順位が入れ替わることは珍しくありません。さらに記帳代行・年末調整・給与計算・消費税申告などを頼めば、その分が月額や年額に上乗せされていきます。比較の単位は「月額」ではなく「依頼範囲を揃えた年間総額」だと覚えておいてください。

別料金がどの程度の幅になるかは、依頼範囲ごとに目安があります。leapalによれば、年末調整は基本料1〜2万円に従業員1人あたり数千円、給与計算は従業員1人あたり月数千円、税務調査の立会いは1日あたり3〜5万円が別料金の目安とされています。消費税の申告も決算料に加算されるのが通例で、PRONIアイミツが紹介する会計事務所の例では決算料15万円に対し消費税申告がある場合は+3万円でした。こうした項目が「契約時に聞いていなかった」状態で後から請求されると、総額の印象は大きく変わります。

契約前に「月額に何が含まれるか」を切り分けるチェックリスト

後から驚かないための最大の防御は、契約前に月額の中身を一つずつ確認することです。ひがしむらやま会計も、顧問契約前に最も重要なのは「月次顧問料にどこまで含まれているか」だと指摘し、曖昧なまま契約すると後から追加費用が発生するケースがあると注意を促しています。発注前に、次の項目それぞれが「月額に含まれるのか、別料金なのか」を書面で確認しておくと安全です。

  • 記帳代行:仕訳入力を税理士側に任せるか、自社で入力するか。任せる場合は仕訳・伝票の枚数で料金が変動します。
  • 決算申告料:年に一度の決算・申告は月額に含まれるか別料金か、金額はいくらか(月額顧問料の何か月分か)。
  • 年末調整:基本料に従業員1人あたりいくらが加算されるか、合計表・支払調書の作成は別か。
  • 給与計算:従業員1人あたり月いくらか、基本料が別途かかるか。
  • 消費税申告:課税事業者になった場合に決算料へ加算されるか、独立した項目か。
  • 税務調査対応:立会いは顧問料に含まれるか、1日いくらの別料金か。
  • 節税提案・税務相談・融資や補助金のサポート:月額の範囲内か、スポットの別料金か。

これらが別料金として具体的にいくら積み上がるかは、料金表を公開している事務所を見ると掴めます。さの会計の料金表では、記帳代行は仕訳数別(50仕訳以下3,500円〜450超500以下35,000円)、給与計算は基本料月10,000円+1人700円、年末調整は1人につき3,000円+合計表・支払調書作成10,000円が、いずれも月額顧問料とは別に設定されています。チェックリストの各項目が「実際に別料金として並ぶ」ことを、こうした実例で確かめておくと見積もりの読み方が変わります。

費用を抑える①自計化=記帳を自社で持つと等級が一段下がる

総額の読み方が分かったら、次は下げ方です。最も効くのは、記帳を税理士に丸投げせず自社で入力する「自計化」です。記帳代行は税理士側の工数そのものなので、これを自社に移すと料金の等級が一段下がります。西山税理士事務所の料金表では、記帳料が自社入力プランと丸投げ(記帳代行)プランでちょうど2倍違い、仕訳50未満で自計化3,000円に対し丸投げ6,000円、200未満で12,000円に対し24,000円と、記帳を自社で持つかどうかが料金を約半額に分けています。月額顧問料の本体はどちらのプランでも共通で、差がつくのは記帳の部分だけという構造です。手間と費用のトレードオフですが、取引がそれほど多くなければ自計化は現実的な選択肢になります。

費用を抑える②訪問頻度を下げる

毎月の訪問は最も手厚い一方で、移動や拘束の時間がそのまま料金に乗ります。訪問頻度を下げると、その分だけ月額が下がるのが一般的です。税理士紹介センター ビスカスの相場では、年商3,000万〜5,000万円未満の法人で訪問「毎月1回」が月25,000円〜、「2か月に1回」が20,000円〜、「3〜4か月に1回」が15,000円〜と、毎月から四半期に1回へ落とすと月額で約1万円の差が出ます。leapalも、訪問を3か月に1回・基本はZoomやメールのみにすると月額が1〜2万円ほど安くなる傾向があるとしています。毎月の対面が本当に必要かを見直すだけで、サービスの質を大きく落とさずに費用を圧縮できます。

費用を抑える③クラウド会計を導入する

クラウド会計を導入すると、銀行口座やクレジットカードと連携して仕訳が自動で作られるため、記帳にかかる工数が大きく減ります。ここで気をつけたいのは、安くなる先がどこかです。石黒健太税理士事務所は、クラウド会計で削減できるのは「記帳代行」の部分のみで、顧問料そのものは下がらないと明言しています。顧問料を下げたいなら、前の見出しで触れた面談回数を減らすほうが効くという整理です。つまりクラウド会計は記帳代行料を下げるレバー、訪問頻度は顧問料を下げるレバーで、効く先が違います。両方を組み合わせると総額への効果が大きくなります。

クラウド会計は費用面だけでなく、自社で数字を把握できるようになる点でも意味があります。実際に、フリーランス7年目の浜本さんの体験記では、クラウド会計とスポットの専門家支援を組み合わせ「確定申告のことを考える時間は年間2時間くらい」と書かれています。freeeを7年使う別のフリーランスも、紙ベースの経費精算からスマホ撮影での申請に変わったと述べる一方、ツールのUIには好みがあり、後から別ツールへ乗り換えるのはしんどいとも率直に書いています。導入を検討する際は、自社の取引に合うか、入力のしやすさはどうかを無料トライアルで先に確かめておくと失敗が減ります。どのクラウド会計が自社に合うかは、記事末の会計ソフト比較で機能や料金を見比べながら絞り込んでみてください。

経理そのものを効率化したい場合は、税理士選びとあわせて会計ソフトの比較も役立ちます。以下の比較表もあわせてご覧ください。

「会計ソフト」の製品比較表

※税込と表記されている場合を除き、全て税抜価格を記載しています

  • 製品名
  • 注目ポイント
  • 料金プラン
  • プラン名金額
  • 無料トライアル
  • 最低利用期間
  • 基本的な機能
    • 伝票入力
    • 帳簿作成
    • 入金管理
    • 支払管理
    • 経営分析
    • 資金管理
    • 予実管理
    • 決算書作成
    • 税務申告
    • 固定資産管理
    • データ連携
    • 自動取込
    • 自動仕訳機能
    • データ書出し
  • サービス資料
  • 無料ダウンロード
  • ソフト種別
  • サポート
基幹業務をまるごとDX
初期費用 0円
備考
初期費用は発生しません。
PCAクラウド会計 13,860円~(税込)/月額
備考
会計クラウドサービスを、月額の「利用ソフトとサーバーのライセンス費用」にて利用するプランです。
PCAサブスク会計 9,900円~(税込)/月額
備考
会計ソフトをオンプレミスで、月額料金(サブスク)にて利用するプランです。設備を自社構築・運用する場合に最適です。
PCA会計DX 224,400円~(税込)
備考
会計ソフトをパッケージソフトとして購入するプランです。設備を自社構築・運用する場合に最適です。
制限なし
クラウド型ソフト オンプレミス型ソフト パッケージ型ソフト 
電話 / メール / チャット /
要相談 要相談
制限なし
クラウド型ソフト パッケージ型ソフト 
電話 / メール / チャット /
要相談 要相談
制限なし
クラウド型ソフト オンプレミス型ソフト 
電話 / メール / チャット /
要相談 要相談
要相談
クラウド型ソフト オンプレミス型ソフト パッケージ型ソフト 
電話 / メール / チャット /
要相談 要相談
要相談
クラウド型ソフト オンプレミス型ソフト 
電話 / メール / チャット /
初期費用 0円
備考
初期費用は発生しません。
ベーシック 1,800円/月額
プラス 2,500円/月額
制限なし
クラウド型ソフト 
電話 / メール / チャット /
初期費用 40,000円
利用料金 要相談
制限なし
パッケージ型ソフト 
電話 / メール / チャット /
初期費用 0円
備考
初期費用は発生しません。
スモールビジネス 2,980円/月額
備考
部門管理が不要な企業や、請求業務の少ない小規模事業者向けプランです。
ビジネス 4,980円/月額
備考
バックオフィス業務全般を効率化したい、中小企業向けプランです。
IPO準備・中堅〜大企業向け 別途ご案内です。
制限なし
クラウド型ソフト 
電話 / メール / チャット /
初期費用 0円
備考
初期費用は発生しません。
スタンダード セルフプラン 30,600円/年間
備考
小規模法人・個人事業主向けです。
最初の1年間は無料で試せます。
スタンダード ベーシックプラン 40,500円/年間
備考
小規模法人・個人事業主向けです。
最初の1年間は無料で試せます。
スタンダード トータルプラン 53,900円/年間
備考
小規模法人・個人事業主向けです。
最初の1年間は半額で試せます。
プロフェッショナル セルフプラン 41,500円/年間
備考
中小規模法人向けです。
最初の1年間は無料で試せます。
プロフェッショナル ベーシックプラン 54,200円/年間
備考
中小規模法人向けです。
最初の1年間は無料で試せます。
プロフェッショナル トータルプラン 75,000円/年間
備考
中小規模法人向けです。
最初の1年間は半額で試せます。
制限なし
クラウド型ソフト オンプレミス型ソフト パッケージ型ソフト 
電話 / メール / チャット /
初期費用 0円
備考
初期費用は発生しません。
スタートアップ 2,500円/月額
備考
3ユーザーまで利用可能です。
ビジネス 5,000円/月額
備考
5ユーザーまで利用可能です。
エンタープライズ 50,000円/月額
備考
ユーザー上限なしで利用可能です。
1年間
クラウド型ソフト 
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初期費用 別途お問い合わせ
備考
別途お問い合わせ
詳しい料金については要問い合わせです。
制限なし
パッケージ型ソフト 
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ミニマムプラン 1,980 円 / 月
ベーシックプラン 3,980 円 / 月
プロフェッショナルプラン 39,800 円 / 月
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5. 良い税理士・ダメな税理士の見極め

良い税理士かどうかは、顧問料の安さではなく「毎月の数字をどれだけ早く・深く返してくれるか」と「困ったときに誰がどう動くか」で決まります。税理士への不満で実際に多いのは料金よりもコミュニケーションと提案の不足で、税理士みつかるproの不満ランキングでも第1位は「質問しても返事が遅い/報告が来ず不安」というコミュニケーションの問題、第3位が「節税の提案がない」でした。価格の見極めは費用の章に譲り、ここでは価格以外の選定軸を、発注の前後に自分で確認できる粒度まで落として整理します。

提案力=決算着地と納税額まで先回りできるか

提案力を測るいちばん分かりやすい基準は、月次の試算表をただ読み上げるだけで終わらず、決算の着地見込みと納税額の予測まで踏み込んでくれるかどうかです。発生主義・税抜経理・月割計上・月次棚卸といった条件を満たした試算表があれば、成長企業の税金のツボが解説するように決算3か月前の時点で残り期間の利益と納税額をおおまかに見積もれます。つまり「期末になって急に税額を告げられる」のではなく、事前に資金を準備したり節税の手を打ったりできるかが、提案力のある税理士とそうでない税理士の分かれ目になります。

一方で、提案がないという不満の一部は契約範囲のすれ違いから生まれます。マネーフォワード クラウド会計は、依頼業務が「記帳代行」「税務顧問」「決算申告」に分かれており、記帳代行だけの契約なのに経営アドバイスを期待してすれ違う例があると指摘しています。だからこそ発注前に、顧問料の中に節税や経営の提案まで含まれるのかを契約内容として確認しておくことが、後悔を避ける近道になります。

レスポンスの速さは期日のある場面で実害になる

返事の速さは性格の問題ではなく、融資や申告のように期日が決まった業務で直接効いてきます。税理士探しのタックスボイスは、社長が試算表を早く求める理由として経営判断・金融機関への提出・先手の節税対策を挙げ、提出が遅いと(中には3か月待つケースもあると)これらに支障が出ると説明しています。遅れの背景には顧問料が安く優先順位を下げられている、入力担当者のスキルやマンパワー不足があり、人手が足りない事務所では提出の遅さだけでなく会計ミスのリスクも高まるとされています。問い合わせへの返信や試算表が出てくるまでの早さは、契約前の面談でのレスポンスや「試算表は翌月何日までに出るか」という確認である程度見極められます。

自社の業種・課題に実績があるか

税務は業種によって論点が変わるため、自社と同じ土俵で経験があるかは確認しておきたい軸です。小谷野税理士法人も、良い税理士の条件として自分の業界・業種に精通していることを挙げ、業種ごとに適用される制度や控除が異なる点を指摘しています。建設、飲食、医業、IT、EC、不動産、相続など、それぞれ勘所は違います。ただし「◯◯業に特化」という打ち出しは事務所側の主張でもあるので、そのまま信じるより、自社と同業・同じ悩みでの関与実績を具体的に尋ねる方が確実です。煽り文句ではなく実例で答えられるかを見てください。

担当は税理士本人か、職員か

契約後に「所長が出てくると思っていたら、ふだんの担当は職員だった」というずれは起こりがちで、ここは税務調査の場面で特に意味を持ちます。税理士向け情報サイトKACHIELは、無資格の職員だけで税務調査に立ち会うのは法的にグレーで、税務官公署への主張・反論は税理士の独占業務であるため、調査の場で「主張するなら税理士でお願いします」と言われることがあると述べています。日常の窓口が職員であること自体は規模のある事務所では普通ですが、いざというときに誰が責任を持って対応し、税務調査には税理士本人が立ち会うのかは、契約前に確認しておく価値があります。

書面添付に対応しているか

関与の品質を外から測りにくいぶん、書面添付に対応しているかは一つの目安になります。これは税理士法第33条の2に基づく制度で、税理士が申告書の作成にあたって計算・整理・相談に応じた事項を書面にまとめ、申告書に添付できるものです(e-Gov法令検索・税理士法では作成した税理士本人の署名も求められています)。日本税理士会連合会は、税務調査の前に税務職員が添付書面の内容について税理士の意見を聴かなければならないと説明しており、これは税理士だけに認められた権利だとしています。書面添付に対応している事務所は、いきなり調査に入られる前に税理士が先に説明できる体制を整えているとも読め、申告内容に責任を持つ姿勢の一つの証になります。

クラウド会計に対応し、自計化を後押ししてくれるか

インボイスや電子帳簿保存法への対応、そして自社で日々の入力を回す自計化を考えると、クラウド会計への対応も見ておきたい軸です。実際、取引がシンプルな個人事業主であれば、クラウド会計とスポット支援の組み合わせで顧問契約なしに回している例もあります。フリーランス7年目の浜本さんの手記では、クラウド会計と元税理士事務所スタッフのスポット支援を組み合わせ「確定申告に使う時間は年間2時間くらい」と書かれています。一方で、freeeを7年使うフリーランスの体験記はUIへの不満も率直に「100点満点で70点」と記しており、ツールの相性は事前のトライアルで確かめておくに越したことはありません。良い税理士は、こうしたツールへの対応可否だけでなく、自社がどこまで自分でやり、どこを任せるかの線引きまで一緒に考えてくれます。

口約束と実際のずれを見抜く

最後に、ここまでの軸を貫く一点として「契約時の口約束が、実際の毎月の動きと合っているか」を見てください。Yahoo!知恵袋に寄せられた体験では、契約時に「毎月訪問し試算表を作る」と約束されたのに、半年経っても訪問は初回1回・試算表はゼロという状態が報告されています。乗り換え時のトラブルも実害が大きく、別の投稿では解約後に前任が会計データを返さず決算直前に窮地に陥った例があります。だからこそ「毎月何をするか」「データの返却はいつ・どの形式か」を口頭ではなく書面で確認しておくことが、選び方の最後の安全装置になります。税理士は何度も乗り換えれば良いというものでもなく、7回変えてきた当事者の手記は、変更のたびに過去資料の整理や引き継ぎで社内の時間と集中力が削られる代償の方が痛いと振り返っています。最初の見極めに時間をかけることが、結局いちばんの近道です。

6. 税理士法人 vs 個人事務所

税理士法人と個人事務所の違いは「規模と距離感のトレードオフ」ですが、選定の決め手は形態名そのものではなく、自社を実際に担当するのが誰か・体制が途切れない仕組みがあるかです。税理士法人は税理士法第48条の4で社員が税理士に限られると定められており、さらに社員が1人になると解散事由となる規定(第48条の18第2項)の裏返しとして、最低2名以上の税理士で設立する法人とされています。一方の個人事務所は税理士1人でも開業でき、法人格を持ちません(辻・本郷 税理士法人)。この人数要件の差が、体制や距離感の違いの出発点になります。

体制の継続性:法人は2名以上が制度で担保される

大きな違いは、担当者が急病や退職で抜けたときに業務が途切れにくいかどうかです。税理士法人は税理士法第48条の18第2項で、社員が1人になり6か月以内に2人以上へ戻らない場合は解散すると定められています。つまり最低2名の体制が法律で要求されており、別の税理士が引き継げる仕組みが制度として残ります。これに対し個人事務所は複数体制の法的担保がなく、所長が業務を続けられなくなれば廃業に直結しやすい構造です(freee)。これは形態の構造差であって、個人事務所が危険という意味ではありません。引き継ぎ体制を重視するなら、個人事務所でも提携先や後任の有無を確認すれば補えます。

拠点と対応範囲:法人は広域、個人は1拠点の地域密着

もう一つの違いは、拠点を増やせるかどうかです。税理士法第40条第3項により個人の税理士は事務所を2か所以上設けられず、1人につき1拠点に限られます。税理士法人は支店(従たる事務所)を設置でき、各支店に税理士を在籍させる必要があるため、人数が増えるほど拠点も広げられます。複数拠点・広域での対応を求める案件は法人が向き、地域に根ざした近い距離感を求めるなら個人事務所と相性が良いことが多い、という傾向につながります。

誰が実際に担当するか:ここが見極めの本質

形態の差以上に効いてくるのが、契約後に自社を実際に見るのが誰かという点です。税理士法人は担当制を採り職員が窓口になることが多く、個人事務所は所長が直接担当するケースが多いとされます(辻・本郷 税理士法人)。法人なら担当者に何かあっても所内の別の税理士が引き継げ、各人の強みを集約した総合的な対応が期待できます。個人なら税理士本人に直接会い、人柄や力量を自分の目で見極めて契約できる利点があります(税理士紹介エージェント)。どちらが優れているかではなく、自社の窓口になるのが税理士本人か職員か、引き継ぎ体制があるかを契約前に具体的に確認することが肝心です。

向き不向きの目安

規模や案件の性質から、相性の出やすい傾向を整理しておきます。あくまで出発点の目安で、最終判断は次章の個別チェックに委ねてください。

こんな場合 相性が良い傾向 理由
創業期・小規模事業者、近い距離で相談したい 個人事務所 所長が一貫対応しやすく、小回りが利いて深い関係を築きやすい
相続・国際税務・組織再編・M&Aなど複雑/大規模な案件 税理士法人 専門チームで対応でき、代表者の急病時も組織として継続できる(ジャスネット
複数拠点・広域での対応や信用力を重視したい 税理士法人 支店設置が可能で、組織の安定性が金融機関からの信用にもつながる

ただし個人事務所でも他士業や専門家と提携して複雑案件をこなす事務所はあり、法人でも担当者次第で距離感は変わります。「法人だから安心、個人だから不安」と素朴に二分せず、形態はあくまで絞り込みの第一フィルターと考えてください。実際に決め手になるのは、自社の業種や課題に対応できるか、月次でどんな対応をしてくれるか、退任や乗り換え時に引き継いでくれるかといった個別の中身です。これらの見極め方は前章で扱った確認ポイントに沿って、候補ごとにあてはめて判断していきましょう。

7. 税理士の変更・乗り換えの進め方

今の税理士に不満があっても、まず「変える前にやれること」を試し、引継ぎの負担が最も軽い時期を選び、書類とデータを確実に手元へ戻したうえで穏やかに区切る——この順番を守るだけで乗り換えの失敗はかなり防げます。変更は感情の勢いで進めると、二重の費用や決算直前のデータ未返却といった実害につながりがちです。本章では、買い手が自分の判断で安全に乗り換えを進めるための勘所を整理します。

そもそも変えるべきか——先に「伝えて直る余地」を試す

不満の多くは「質問の返事が来ない」「月次で来ても試算表の説明だけで経営の話がない」「高圧的で家族が相談に行きたがらない」といった、関係の運用面に集中します。これらは担当替えや訪問頻度の見直し、面談のオンライン化など、契約の調整で解消できることも少なくありません。乗り換えには後述する引継ぎ工数がかかるため、まずは具体的に「毎月何をしてほしいか」を率直に伝え、改善されるかを見極めるのが先決です。

一方で、放置できないのは品質に関わる不満です。ある投稿者は、設立時に「毎月訪問し融資や経営のアドバイスを行う」「毎月試算表を作成する」と約束されたのに、半年経っても訪問は初回の一度きりで試算表は一度も作られず、紹介の約束も後から翻されたと書いています(Yahoo!知恵袋・法人化した投稿者の体験)。別の投稿者は、税理士が異動届を出しておらず期日後申告となって青色申告取消の危機に直面し、解約を申し出ると「契約解除後なのでできることはない」と引き継ぎを拒まれたと記しています(Yahoo!知恵袋・支店増設の体験)。約束の不履行や申告の遅延、引き継ぎの拒否といった一線を越えた問題なら、改善を待つより変更を検討する局面です。

なお、変えること自体が常に最善とは限りません。税理士選定を14年間担い7回変えてきたという当事者は、変更のたびに過去の決算書・総勘定元帳・試算表・会計データを整理して説明し直す作業や税務代理権限証書の再提出が発生し、「社内の時間と集中力が削られることの方が痛い」と振り返っています(note・3年ごとに変え続けた理由と代償)。顧問料の差額を惜しんで頻繁に乗り換えると、関係を立て直す期間に経営判断の数字が見えなくなる機会損失のほうが大きくなりかねません。

変えるベストタイミング——決算・申告が終わった直後

引継ぎの負担を最も軽くできるのは、その年度の主要業務が終わった直後です。顧問税理士は月次記帳から年度末の決算書作成、法人税申告書の作成へと動き、申告書を税務署へ提出するまでがその年度の仕事になります。法人税の申告は通常、事業年度終了日の翌日から2か月以内(3月決算なら5月末)で、この申告書提出後は同年度に残った業務がないため、後任への引継ぎが最もスムーズだとされています(鈴木税理士事務所・変更のベストなタイミング)。

逆に避けたいのが期の途中での変更です。前年度の決算までは現在の税理士に依頼し、新年度から新しい税理士に切り替える形が望ましいとされますが、年の途中で動くと数か月は新旧両方に依頼することになり、顧問料が二重にかかります(武内総合会計・顧問税理士を変更したい方へ)。タイミングを決算・申告の節目に合わせるだけで、この二重コストと年度内の引き継ぎ作業を避けられます。

引継ぎ——書類とデータの返却は税理士の義務

乗り換えで最も実害が出やすいのが、前任者からの書類・データの回収です。ある投稿者は「領収書等を渡し入力までしてもらう」契約だったのに、解約後に会計ソフトのバックアップと帳簿データが送られてこず、紙資料は戻ったがデータファイルは未返却のまま決算直前に窮地に立たされたと書いています(Yahoo!知恵袋・税理士変更時のデータ未返却の体験)。返却の期日と方法を解約前に書面で取り決めておくことが、こうした事態を防ぎます。

そもそも顧問先の書類は本来顧問先のものであり、預かっている書類を返却するのは税理士の義務とされ、返却の拒否は税理士法違反となる可能性があります(THE CXO・税理士変更でよくあるトラブルと対策)。受け取るべき主な書類は次のとおりで、引継ぎには少なくとも過去3期分が必要とされています(濱岡英好税理士事務所・解約税理士から返却してもらう書類)。

  • 総勘定元帳・補助元帳、仕訳帳、試算表などの会計データ
  • 決算書(別表・勘定科目内訳明細書・固定資産台帳を含む)
  • 確定申告書の控え、消費税の計算書、年末調整関係の書類
  • e-Tax・eLTAXの利用者識別番号とパスワード
  • 記帳代行のために預けた請求書・領収書などの証憑

万一、書類を返してもらえないなどの紛争になった場合は、所属する税理士会に「紛議調停」を申し立てられます。これは税理士法第49条の2第2項第7号に基づく制度で、調停費用は原則無料(弁護士報酬などの特別費用を除く)、手続きや議事は非公開とされ、裁判によらず話し合いで解決する窓口になります(東京税理士会・紛議調停制度)。こうした窓口があると知っておくだけでも、交渉のうえで安心材料になります。

円満な断り方——本音より建前で伝える

解約の連絡は、引継ぎ協力を得るうえで意外なほど重要です。「対応や方針に不満がある」という本心をそのままぶつけるより、希望の形に言い換えて伝えるほうが、感情的なしこりを残さず後任への協力を得やすいとされています(税理士法人オンデック・税理士変更の断り方)。たとえば「自社の業態や規模に合った体制に切り替えたい」「コスト構造を見直す経営判断」「取引先からの指定」「法人成りやIPOを見据えた専門性が必要になった」といった伝え方であれば、相手の面子を保ったまま区切れます。前任者は当面、書類返却や後任への引継ぎで協力してもらう相手でもあります。最後まで穏やかに進めるほうが、結局は自社の負担が軽くなります。

次は同じ不満を繰り返さない——見極めの軸へ

乗り換えのゴールは、税理士を替えること自体ではなく、同じ不満を二度と抱えないことです。前述の7回変えた当事者は、過去に税理士の処理が原因で社長へ1,500万円の役員貸付金が生じたり、数字が2か月遅れで出てくる時期があったと振り返り、7人目に替えてからは「年間で約350万円キャッシュが残る体質に改善した」と具体額を挙げています(※筆者は税理士変更サービス運営側のペンネームである点は割り引いて読む必要があります/note・税理士を7回変えて分かった見つけ方)。ここから読み取れるのは、顧問料の安さではなく、月次の早さ・処理の正確さ・キャッシュへの貢献で次の相手を選ぶべきだという教訓です。

そのためには契約時の口約束を鵜呑みにせず、「毎月いつ・何をするのか」「繁忙期にどれくらいの速さで返事が来るのか」「退任時に引き継ぎへ協力する姿勢があるか」を、書面と面談で確認しておくことが効きます。どの軸でどう見極めるかは次章以降で詳しく扱います。あわせて、取引がシンプルな個人事業主であれば、そもそも顧問契約を結ばずクラウド会計とスポット支援の組み合わせで回す選択肢もあります。実際に確定申告に年2時間しか使っていないというフリーランスの例(note・確定申告に年2時間の理由)や、会計ソフトを7年使い税理士なしで申告まで完結させている例(note・freeeを7年以上使い続ける理由)もあります。変えるか・内製化するか・体制を見直すかを、自社の取引の複雑さと使える時間に照らして判断するのが、失敗しない次の一歩です。

8. 税理士の探し方と見積もりの取り方

税理士は探し方によって出会える事務所も交渉のしやすさも変わるため、入口を選んだうえで、必ず同じ条件で複数の事務所から総額の見積もりを取って比べます。ここまでで「何をどこまで頼むか」「規模ごとの費用感」「見極めの軸」がそろっているはずなので、最後はそれを実際の問い合わせと比較の手順に落とし込みます。1社だけを見て決めるのが、後悔のいちばん多い入り方です。

探し方は紹介・検索・マッチングサイトの3つ

探し方は大きく分けて、知り合いの経営者や金融機関からの紹介、税理士会などの検索サイト、そして税理士ドットコムやミツモアといったマッチングサイトの3つです。会計ソフト各社の解説でも、紹介は信用できる情報源としつつ「少なくとも2〜3件程度はあたって自分に合うところを探すことが大事」とされており、入口が何であれ複数を比べる姿勢は変わりません(freee「税理士の選び方」)。

マッチングサイトは利用者側が無料で使えるぶん手軽ですが、いくつか気をつけたい点があります。登録後に営業の電話やメールがしつこく続いたという声、紹介された税理士が自社に合わず、紹介経由だと断りにくかったという声が見られます。仕組みとしても、紹介された税理士側がサイトに紹介手数料を支払う形が一般的で、その手数料が報酬に上乗せされて利用者に回ってくるケースがある点は知っておくとよいでしょう。手数料の水準は運営会社によって幅があります(木山公認会計士事務所「税理士紹介サービスの仕組み」)。どの入口でも、料金と対応範囲は自分の目で確かめる前提で使うのが安全です。

同じ条件で「総額」の見積もりを取る

見積もりは、各社にバラバラの条件で投げてはいけません。依頼範囲(記帳代行の有無・決算申告・消費税申告・年末調整など)、自社の規模(年商や仕訳の量)、希望する訪問頻度をそろえて、同じ前提で複数の事務所に出すのが鉄則です。とくに顧問料は会う回数で大きく動き、毎月の訪問を3か月に1回やZoom中心に変えるだけで月1〜2万円ほど差が出ることもあります。同じ訪問頻度で並べないと、安く見える事務所が実は対応が薄いだけ、という見落としが起きます(leapal「税理士の顧問料・報酬相場」)。

比べるときは月額だけを見ず、月額顧問料・決算申告料・記帳代行などのオプションを合算した年間総額で横並びにします。目先の月額1万円の安さを取ったつもりが、別料金が積み上がって年間では割高になる、というのはよくある落とし穴です。

発注前に確認しておく項目

面談や見積もり依頼の段階で、次の点を一通り確かめておくと、契約後の「聞いていない」を防げます。

  • 依頼範囲がどこまでか(記帳・決算・申告・年末調整・給与計算のどれが含まれるか)
  • 含まれない作業の別料金(オプション)はいくらで、どんなときに発生するか
  • 実際に対応するのは税理士本人か、職員か
  • 申告書に税理士の見解を添える書面添付制度に対応してもらえるか(日本税理士会連合会「書面添付制度」
  • 自社が使う(使いたい)クラウド会計に対応しているか

担当が本人か職員か、書面添付やクラウド会計の中身をどう評価するかは、見極めの章でくわしく触れたとおりです。ここでは「契約前に必ず口に出して聞く項目」としてリスト化しておくと取りこぼしがありません。

よくある質問

最後に、依頼前に多く寄せられる疑問を整理します。費用や契約のタイミングなど、判断の前に押さえておきたいものを取り上げます。

確定申告だけを単発で頼めますか

頼めます。顧問契約を結ばず、確定申告だけをスポットで依頼することは一般的で、個人事業主の費用の目安は、白色申告なら年商500万円未満で6〜7万円程度、500万〜1,000万円未満で8万円〜、青色申告なら500万円未満で7〜8万円程度、500万〜1,000万円未満で10万円〜とされています(売上規模や取引の量で上下します)。記帳がまったくできていない場合は記帳代行費用が別途かかることがあります(税理士紹介センター「確定申告のスポット依頼費用相場」)。取引がシンプルなうちは、まずスポットから始める選び方もあります。

個人事業主はどのくらいの売上から顧問契約を考えるべきですか

一つの目安は、年間売上が1,000万円を超えるタイミングです。課税売上高が1,000万円を超えると、基準期間(前々年)の判定を経て原則としてその2年後から消費税の課税事業者になり、消費税を意識した仕訳や各種届出の管理が必要になるためです。それ未満の規模であれば、確定申告だけのスポット依頼や、必要なときだけ相談する形から始めても無理はありません(マネーフォワード クラウド確定申告「税理士に依頼するタイミング」)。

途中で税理士を変えてもいいですか

いまの契約内容に抵触しなければ、変更は可能です。変えやすいのは法人税の申告を終えた直後や税務調査が一段落したタイミングで、逆に決算の3か月前から申告が終わるまでは引き継ぎが煩雑になりやすいため避けるのが無難とされています(鈴木税理士事務所「税理士を変更するタイミング」)。変えるべきかの見きわめや、会計データの引き継ぎ・円満な断り方といった進め方は、乗り換えの章でくわしく扱っています。

税理士法人と個人の事務所、どちらが良いですか

どちらが優れているという話ではなく、規模や継続性、相性で選ぶものです。税理士法人は2名以上の税理士で設立する組織で、担当者が不在のときも体制が途切れにくく、複雑な案件や継続性の面で安心感があります(あいせ税理士法人「税理士法人と個人事務所の違い」)。一方、税理士1人の個人事務所は本人が一貫して対応し、小回りや距離の近さが魅力です。形態そのものより、自社の課題に対応できるか、実際に担当するのが誰かのほうが本質的です。

無料の見積もり比較サービスを使っても費用は上がりませんか

利用者が無料でも、税理士側が紹介手数料を負担し、それが報酬に転嫁されるケースがあるため、必ずしも割安とは限りません。便利な入口の一つとして使いつつ、提示された総額が同条件の他社と比べて妥当かは、自分で複数の見積もりを並べて確かめるのが確実です。

ここまでの探し方・見積もり・チェック項目をおさえたら、あとは実際の候補をしぼり込む段階です。地域別のおすすめ記事では、それぞれのエリアで相談しやすい具体的な事務所や窓口を紹介しているので、住んでいる地域の記事とあわせて、問い合わせる先を絞り込んでください。

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