テレワーク・在宅勤務における健康管理の方法を解説！課題や注意点とは

テレワークや在宅勤務の普及により、働き方が多様化する一方で、オフィス勤務とは異なる環境での従業員の健康管理が重要な課題として浮上しています。労働安全衛生法では、従業員の安全と健康を守るため、適切な体調管理や労働時間の管理、メンタルヘルス対策が求められています。

本記事では、テレワーク時の健康管理における具体的な課題や対応策、リスクへの対策方法について解説し、従業員の健康を守りながら生産性を維持するためのポイントを探ります。厚生労働省のガイドラインをもとに従業員と企業双方にとって快適で安全な職場環境を構築するためのヒントをお届けします。ぜひ参考にしてください。

おすすめの健康管理システムはこちらで解説しています▽

【監修記事】最新｜健康管理システム比較！選び方・機能を徹底解説

労働安全衛生法の健康管理とは

まずは法律面から見ていきましょう。従業員の安全と健康を守るために制定された法律に「労働安全衛生法」があります。この法律に基づき、企業は従業員の健康を適切に管理し、快適な職場環境を提供する義務があります。事業者は従業員の健康診断の実施や、ストレスチェックなどのメンタルヘルス対策を行うことを義務付けています。テレワークや在宅勤務の場合でも、労働安全衛生法は適用され、オフィス勤務と同様に健康管理や労働時間の管理が求められます。

労働安全衛生法は、労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境を形成することを目的としています。この法律に基づき、企業は以下の義務を負っています。

1. 安全衛生管理体制の整備
2. 危険防止措置
3. 安全衛生教育の実施
4. 健康診断の実施

参考：厚生労働省　労働安全衛生法

以下では、労働安全衛生法に基づく健康管理のポイントを具体的に解説します。

労働安全衛生法に基づく企業の義務

労働安全衛生法は、従業員の安全と健康を守るため、企業に様々な義務を課しています。以下では、特に重要な3つの義務について具体的に解説します。

1. 健康診断の実施
2. ストレスチェックの実施
3. 長時間労働の防止

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1.健康診断の実施

労働安全衛生法第66条に基づき、事業者は常時使用する労働者に対し、定期的に医師による健康診断を実施する義務があります。通常は年1回、深夜業務に従事する従業員の場合は年2回の実施が必要です。テレワークを行う従業員も対象であり、業務形態にかかわらず、全従業員が受診できる環境を整えることが求められます*。

また、健康診断の結果に基づき、必要に応じて再検査の受診を勧奨し、異常が見つかった場合は医師の指導を受けさせる義務もあります。特にテレワークでは、健康診断の結果が従業員本人のみに共有される場合が多いため、結果をもとに従業員との連絡を密にし、適切なフォローアップを実施する体制が重要です。健康リスクを早期に発見し、重症化を防ぐことができます。

*参考：厚生労働省　東京労働局　健康診断による健康管理を進めましょう

2.ストレスチェックの実施

従業員50人以上の事業場では、年1回のストレスチェックが義務化されています*。このチェックは、メンタルヘルス不調を早期に発見し、対応するために重要です。ストレスチェックの結果に基づいて、必要な従業員には医師との面談を実施し、適切な措置を講じることが求められます。

テレワーク従業員の場合、オンラインでの実施が推奨されており、健康管理システムを活用することでスムーズに運用可能です。また、個別結果は本人のみが確認できるため、結果を従業員に周知した上で、医師面談や職場改善策を提供することが重要です。さらに、ストレスチェックの集団分析を活用して、職場環境の改善を図ることも企業の義務の一環です。

*参考：厚生労働省　ストレスチェックなどの職場におけるメンタルヘルス対策

3.長時間労働の防止

長時間労働は、従業員の心身に重大な悪影響を及ぼすため、企業には適切な労働時間の管理が求められます。労働基準法では、法定労働時間（1日8時間、週40時間）を超える場合には36協定の締結が必要ですが、これを遵守しつつ、実際の労働時間を適切に管理することが重要です。

テレワークでは、従業員が勤務時間と休憩時間の区別をつけにくい状況が生じるため、勤怠管理システムを導入し、勤務開始・終了時刻を正確に記録することが推奨されます。また、長時間労働が発生しないよう、システムによるアラート機能を活用して管理者が早期に対応する仕組みを整えることが必要です。

さらに、月間残業時間のチェックや有給休暇の取得状況を定期的に確認し、従業員に対して適切な休息を取るよう促す取り組みを行うことで、過労や健康リスクを回避できます。

労働基準法の概要

労働基準法では、法定労働時間を超えて労働者に時間外労働や休日労働をさせる場合、労使間で「時間外・休日労働に関する協定」（通称「36（サブロク）協定」）を締結し、所轄の労働基準監督署長に届け出る必要があります。

＜法定労働時間の概要＞

• 1日の労働時間：8時間以内
• 1週間の労働時間：40時間以内

これらを超える労働を行わせる場合、36協定の締結と届け出が必要となります。

＜36協定の主な内容＞

• 時間外労働を行う業務の種類
• 1日、1か月、1年当たりの時間外労働の上限
• 労働者の過半数を代表する者との合意

36協定を締結せずに法定労働時間を超えて労働させた場合、労働基準法違反となり、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。

参考：厚生労働省　労働時間・休日

テレワーク・在宅勤務の課題

テレワークや在宅勤務は柔軟な働き方を可能にする一方で、従業員の健康や労働環境において新たな課題を生み出しています。 以下では、主な課題とその背景を解説します。

1. 従業員の体調管理
2. メンタルヘルスの管理
3. 適切な労働時間の管理

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1.従業員の体調管理

テレワークでは、運動不足や生活習慣の乱れが顕著になりやすいです。 通勤が不要になることで身体を動かす機会が減少し、運動不足や筋力低下が問題となる場合があります。 また、在宅勤務では仕事と生活の境界が曖昧になりがちで、睡眠不足や食生活の乱れが生じるケースも少なくありません。

さらに、長時間のパソコン作業により目の疲れや肩こりが蓄積するなど、デジタル疲労の影響も見逃せません。 企業はこれらの課題に対応するため、従業員の体調を定期的に確認する仕組みを整備する必要があります。

2.メンタルヘルスの管理

テレワークの孤立感やコミュニケーション不足によって、従業員のメンタルヘルスに悪影響を及ぼすリスクが高まります。 職場の人間関係が希薄になることで、ストレスや不安が増加する傾向が見られます。 特に、一人で作業する時間が長い従業員は、上司や同僚に相談しにくく、問題を抱え込むことが多くなります。

このような課題に対して、オンラインでの相談窓口や定期的な面談を設けることで、従業員の精神的な健康を守る体制を整えることが重要です。

3.適切な労働時間の管理

テレワークでは労働時間の管理が難しく、長時間労働が発生しやすいという課題があります。 勤務開始・終了時間が曖昧になり、結果として休憩時間を取らずに働き続ける従業員も少なくありません。

労働安全衛生法では、労働時間の適正管理が義務付けられており、企業には勤怠を把握し、長時間労働を防止する責任があります。 これを実現するためには、勤怠管理システムを活用し、勤務時間を正確に記録・監視することが必要です。 また、管理者が定期的に従業員の働き方を確認し、業務量の調整を行うことも効果的です。

テレワーク・在宅勤務の具体的な管理方法

上記に述べたような課題に対処し、テレワークや在宅勤務時の従業員の健康と働きやすさを確保するため、適切な管理体制を構築することが重要です。以下に、具体的な管理方法を解説します。

1. コミュニケーションの普及・促進
2. 労務管理・勤怠管理システムの導入
3. ストレスチェック・面談の環境づくり

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1.コミュニケーションの普及・促進

テレワークでは、従業員が孤立したり健康管理が行き届かなくなるリスクを回避するため、細やかなケアが必要です。従業員同士や上司とのコミュニケーション不足が生じやすく、業務上の課題や体調不良を抱え込みやすい環境になることが懸念されます。

そのため、企業は意識的にコミュニケーションの場を設ける取り組みが重要です。上司や人事担当者が定期的に従業員の体調や業務状況を確認し、健康状態に変化がないか注視しましょう。

また、個別面談をオンラインで実施し、業務の進捗や健康状態をヒアリングすることで、従業員の不安を軽減できます。健康診断やストレスチェックを実施し、異常が見つかった場合には速やかにフォローアップを行います。定期的に従業員の体調確認を行い、不調者を早期に発見する体制を整備します。

さらに、業務に関する質問やメンタルヘルスの相談を受け付ける窓口を設置することで、気軽に相談できる環境を構築することが求められます。従業員が安心して働ける環境を構築すること ができます。

2.労務管理・勤怠管理システムの導入

テレワークでは労働時間の管理や勤務状況の把握が難しいため、長時間労働や勤務時間の不明確さがリスクとなりやすく、これらの対策として労務管理・勤怠管理システムの導入が有効です。 まず、勤務開始・終了時間や休憩時間など、労働基準監督署の指針に基づき、労働時間のルールを明確化し、システムで従業員に一括周知 することで管理者と従業員の認識を一致させます。

また、勤怠管理システムを活用し、勤務開始・終了時間、休憩時間を正確に記録することで、適切な労働時間を維持します。リアルタイムで労働時間をモニタリング することで、長時間労働の発生を防止できます。

さらに、リモート環境でも従業員が快適に働けるよう、作業環境のチェックを行い、必要に応じてサポートを提供することが重要です。 上司が定期的に勤務状況を確認し、過労やストレスの兆候を早期に発見し、適切に対応する体制 を整えることが効果的です。これらの施策により、テレワーク中の労務管理が効率化され、従業員の健康と業務効率の向上 が期待されます。

関連：監修｜労務管理システム比較！選び方・機能を徹底解説

3.ストレスチェック・面談の環境づくり

テレワークにおける従業員のメンタルヘルスを守るためには、ストレスチェックの実施と面談環境の整備が欠かせません。 健康管理システムを活用することで、定期的にストレスチェックを実施し、従業員の心理的ストレスを可視化 できます。早期にリスクを発見し、必要な対応を取ることが可能です。 また、産業医やカウンセラーによるオンライン面談を推進し、従業員が抱える精神的な課題を直接相談できる環境を整備 します。このような取り組みにより、従業員が安心して働ける職場環境を提供 し、メンタルヘルスの維持・向上を図ることができます。

ストレスチェックの実施で心理的ストレスを可視化

テレワークでは、従業員の心理的ストレスを把握するために、ストレスチェックが欠かせません。健康管理システムを活用して定期的にチェックを実施することで、従業員のストレスを可視化し、早期にリスクを発見することが可能です。発見された問題に対しては下記に述べるような迅速な対応を行い、未然にトラブルを防ぎましょう。

オンライン面談環境の整備で課題に直接対応

従業員が精神的な課題を気軽に相談できる環境を整えることも重要です。産業医やカウンセラーによるオンライン面談を推進することで、従業員が抱える課題に直接対応できます。健康管理システムやビデオ会議ツールを活用し、場所に関わらず相談の機会を確保しましょう。

ストレスチェック結果を活用したフォローアップ

ストレスチェックの結果を分析し、必要に応じて個別の面談を実施します。これにより、従業員一人ひとりの心身の状態を的確に把握し、適切なフォローアップを行うことが可能です。結果を基に改善点を見つけることで、メンタルヘルスの向上に繋げられます。こうした取り組みは、従業員の生産性向上や離職率の低下にも良い影響をもたらすでしょう。

おすすめの健康管理システム5選

ここからは、おすすめの健康管理システムをご紹介します。下記製品は、クラウド型健康管理システムとして、企業の健康管理業務を効率化することができます。従業員の健康診断結果やストレスチェック結果などを一元管理し、紙業務の削減や報告書の自動作成などで業務負担を軽減できます。また、健康状態やリスクの可視化を通じて適切なフォローアップや施策を支援。労働安全衛生法に基づく健康診断やストレスチェックの実施が簡単になり、法令遵守をサポートします。

1. Growbase
2. WELSA
3. mediment
4. Carely
5. HELPO

こうした健康管理システムの導入事例は下記記事で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。

まとめ：システムを導入して効率的に従業員の健康を守ろう

テレワークや在宅勤務における健康管理は、従業員の体調管理やメンタルヘルス、適切な労働時間の管理など、多岐にわたる課題への対応が求められます。労働安全衛生法に基づく管理を徹底するとともに、コミュニケーションの促進や労務管理システムの活用、ストレスチェックの実施など、具体的な取り組みを行うことで、リスクを未然に防ぎ、従業員の健康と生産性を守ることが可能です。企業は細やかなケアを通じて、従業員が安心して働ける環境づくりを目指しましょう。在宅勤務の長所を最大限に活かしながら、健康的で効率的な働き方を実現することが今後の鍵となります。

おすすめの健康管理システムはこちらで解説しています▽

【監修記事】最新｜健康管理システム比較！選び方・機能を徹底解説