グローバルSCMとは?脱炭素・人権対応を実現する方法【2025年最新版】
最終更新日:2025/06/07
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目次
グローバルSCM(サプライチェーン・マネジメント)は、コロナ禍や米中貿易摩擦、脱炭素・ESG、人権デューデリジェンス強化の影響で、企業にとっていまや必須の取り組みです。本記事では、①コロナ禍による調達障害、②地政学リスク、③脱炭素・人権対応といった背景を整理し、続く解説で「定義・歴史」「課題とデジタルツール」「成功事例」「導入ロードマップ」を順にお伝えします。この記事を読むことで、自社の課題を明確化し、実例やツール比較をもとに改善アクションをイメージできるようになります。
1. グローバルSCMの定義と歴史的背景
ここでは、まずSCM(サプライチェーンマネジメント)の基本定義を押さえたうえで、グローバルSCMの特徴やその進化過程(GVCからレジリエントSCMへ)を解説します。読者の皆さんが「そもそも何を指すのか」をつかんだうえで、歴史や背景を理解しやすくすることが狙いです。
1.1 SCM(サプライチェーンマネジメント)とは
SCMは、製品が原材料段階から最終消費に至るまでのプロセスを一元管理し、全体最適化を図る手法です。調達、生産、在庫、物流、販売といった要素を統合的に管理することで、コスト削減やリードタイム短縮、顧客満足度向上を目指します。
SCM(サプライチェーンマネジメント)は、製品の原材料調達段階から製造、物流、販売、さらにはアフターサービスまでを一連の流れとしてとらえ、「物の流れ」「情報の流れ」「金の流れ」を重視しながら全体最適化を行う手法を指します。
- 物の流れ:
原材料や部品が製造拠点から工場、物流センター、小売店などを経由して顧客に届くまで - 情報の流れ:
受発注データ、在庫データ、需要予測データなどを各プロセス間で共有し、リアルタイムな意思決定を支援 - 金の流れ:
仕入れコスト、在庫コスト、輸送コスト、販売収益などを可視化して、財務的な最適化を図る
SCMの導入により、以下のようなメリットが期待できます。
- コスト削減:
在庫最適化や輸配送の効率化、余剰生産の抑制によるムダの排除 - リードタイム短縮:
必要な部品・資材を必要なタイミングで調達・生産することで、製品供給までの時間を短縮 - 顧客満足度向上:
在庫欠品や遅延リスクを低減し、安定的に製品・サービスを提供できる体制を構築
ただし、SCMを構築する際は以下のような注意点・導入ハードルも存在します。
- データ統合の難しさ:
社内外のシステムや取引先データをリアルタイムに連携するには、インターフェース開発やガバナンス強化が必要 - 初期コストの負担:
システム導入・運用、人材育成、業務プロセス再設計などにかかる投資コストが発生 - 組織連携体制の構築:
調達、製造、物流、販売といった部門間を横断し、共通のKPI(Key Performance Indicator)を設けて評価する仕組みが必要
物流管理システムの製品比較は「物流管理システムおすすめ11選|種類・選定ポイント・メリット徹底解説【2025年最新版】」よりご確認ください。
1.2 グローバルSCMの特徴
グローバルSCMは「国内だけでなく海外拠点を含めたSCM」を指し、複数の国や地域にまたがる製造・物流拠点を統合管理して、在庫・生産・需給バランスをグローバル視点で最適化します。情報共有の早さや需要予測精度向上が主なメリットです。
グローバルSCMとは
グローバルSCMは、国内だけでなく海外にある製造拠点・物流拠点・販売拠点をすべて一元管理し、需給計画・生産計画・在庫計画を「世界最適」の視点で立案・実行する手法を指します。
- 在庫・生産計画の統合:
複数国に分散する拠点間で部材調達や製造リードタイムを考慮しながら、中長期的な生産計画を策定 - 需給バランスの最適化:
各地域の需要動向や物流コスト、為替変動を踏まえ、リアルタイムで需給リスクを検知・対応 - 情報共有のスピード:
グローバルネットワーク(ERPやBIツール)を活用して、各拠点の在庫・出荷・販売データをリアルタイムに連携し、意思決定を迅速化
国内SCMとグローバルSCMの違い
下表では、国内SCMとグローバルSCMの主要な違いをまとめています。
比較項目 | 国内SCM | グローバルSCM |
---|---|---|
対象範囲 | 国内の工場・物流センター・販売店に限定 | 国内外の生産拠点・物流拠点・販売拠点を含む |
在庫管理の視点 | 国内需要に合わせた在庫最適化が中心 | 為替・関税・輸送コストを考慮し、多地域での在庫配置を最適化 |
生産計画の立案 | 工場単位、あるいは工場群単位での生産スケジューリング | 各拠点間のリードタイムや調達先を考慮し、グローバル全体の生産スケジュールを策定 |
需給リスク管理 | 自国内での需要変動や部材不足リスクに対応 | 世界的なポリシー変動、為替変動、地政学リスク、陸海空の輸送制約などに対応 |
情報共有・可視化 | 国内向けERP、WMS、MESシステムによる連携 | クラウドERPやBIツールを活用し、世界中の拠点をまたいだリアルタイム可視化 |
導入コスト・構築難易度 | 比較的低~中程度(拠点やシステムが国内に集中) | 高~非常に高い(多言語、多通貨、多拠点連携の開発・運用が必要) |
メリット | リードタイム短縮、在庫削減、国内需要対応が容易 | コスト競争力向上、リスク分散、需要変動への迅速対応、グローバル最適化が可能 |
高精度な需要予測と迅速対応
グローバルSCMでは、世界中の拠点データを統合することで、需要予測の精度が向上し、急激な市場変動にも柔軟に対応できます。
- 情報の鮮度向上:
エッジデバイスやIoTセンサーで現場データをリアルタイムに収集し、BIツールで可視化 - AI・機械学習の活用:
蓄積された販売実績や市場データを機械学習モデルで分析し、季節変動や突発需要を予測 - シナリオ分析:
為替変動や関税変更など複数シナリオをクラウド上でシミュレーションし、最適な調達・生産戦略を選択
例えば、ITreviewの調査では、グローバル企業のSCM部門の70%以上が「AI予測による需給シミュレーションを導入・検討中」と回答しており、情報共有のスピードと予測精度が業績に直結していることが示されています。
調査は「サプライチェーンマネジメント(SCM)の歴史と注目される理由を解説 | ITreview Labo」よりご確認ください。
1.3 グローバルSCMの進化:GVCからレジリエントSCMへ
1990年代以降、ICTの発展により「GVC(グローバル・バリュー・チェーン)」が深化し、コスト重視の分散生産が主流となりました。しかし、コロナ禍や地政学リスクによりその脆弱性が露呈したため、AIやシミュレーションを活用した「レジリエント(強靱)SCM」が求められるようになった経緯を解説します。
GVC(グローバル・バリュー・チェーン)の誕生と拡大
GVC(Global Value Chain)は、企業が製造工程を国際的に分散配置し、各国の「比較優位」を活かして生産コストを削減する形態を指します。1990年代後半から情報通信技術(ICT)が急速に発展すると、以下の要素が相まってGVCが加速しました。
- インターネットの普及:
受発注や在庫情報をリアルタイムで共有できるようになり、多拠点間の連携が容易化 - 物流インフラの整備:
海運・航空運賃の低下やコンテナ輸送の効率化により、多国間輸送コストが大幅に削減 - コスト競争力の追求:
中国、東南アジア、東ヨーロッパなど労働コストが低い地域に生産拠点を移す企業が増加
結果として、多国籍企業は「調達はA国で、組み立てはB国で、販売はC国で」という細分化された生産ネットワークを構築し、サプライチェーン全体を最適化していきました。
GVCの課題と脆弱性の顕在化
しかし、GVCには以下のような脆弱性・リスクも潜んでいました。
- 調達先集中によるリスク
特定部品や原材料を「A国の特定サプライヤー」に依存していた場合、現地の災害や政情不安で一気にサプライチェーンが断裂。 - 情報非対称性
各拠点が異なるシステムやオペレーションフローを持つため、全体像がブラックボックス化し、問題発生時の課題検知が遅れやすい。 - BCP(事業継続計画)の不備
DC(データセンター)は一か所、もし災害で稼働停止すると全社的に止まるケースがあった。
とりわけ、コロナ禍(2020年)には、東南アジア諸国でのロックダウンにより部品供給が一斉に停止し、自動車、電子機器、医薬品など多くの業界で生産停止が発生しました。予め複数サプライヤーを確保していないと、一刻も早く代替先を探す必要に迫られました。
レジリエントSCMへの転換
このような脆弱性を克服するために、「レジリエント(強靱)SCM」という考え方が注目を集めています。
レジリエントSCMとは?
レジリエントSCMは、「DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用して仮想空間上に実態のサプライチェーンを忠実にモデリングし、シミュレーションを通じてリスクを可視化・最適化する手法」を指します。
主な特徴は下記のとおりです。
- デジタルツイン
実際のサプライチェーン(工場、倉庫、物流拠点、販売店など)を仮想空間上で再現し、シミュレーションを通じて異常時の影響範囲や代替フローを事前に検証 - リアルタイム・モニタリング
IoTセンサーやRFID、GPSなどを使って、在庫や輸送車両の稼働状況をリアルタイムに把握し、アラートを発信 - シナリオ分析
為替変動、天候リスク、政情リスクなど多様なシナリオをクラウド上で高速にシミュレーションし、最適な意思決定を支援 - 自動復旧プラン
特定サプライヤーが停止した場合に、事前定義した代替サプライヤーと再調達ルートを自動的に切り替える仕組みを構築
レジリエントSCMを実現する要素技術
- IoT / センサー技術
輸送中の貨物温度・位置、工場ラインの稼働状況をリアルタイムで収集し、異常を早期検知する。 - デジタルツイン / シミュレーション
クラウド上にサプライチェーン全体のデジタルコピー(デジタルツイン)を作り、実際のオペレーションに先んじてシミュレーションを実行。 - AI / 機械学習
需要予測モデルや最適在庫配置モデルを機械学習で構築し、変動リスクに応じた生産・調達戦略を自動生成。 - クラウドERP / BIツール
グローバル各拠点のデータを統合し、リアルタイムでダッシュボード化して可視化。
これにより、従来のコスト最適化重視のGVCから、リスク分散と早期復旧能力を重視した「強靱性」を兼ね備えたサプライチェーンへと進化しています。
サプライチェーンのレジリエンスの詳細は「サプライチェーンのレジリエンス(危機から立ち直る力) | アクセンチュア」でご確認いただけます。
次では、こうした前提を踏まえたうえで、グローバルSCMが直面する具体的な課題を整理していきます。
2. グローバルSCMが直面する主要課題
グローバルSCMが抱える代表的な課題は、「調達リスクの集中化と地政学的ショック」「在庫最適化の難しさとコスト圧力」「脱炭素・ESG要件対応の複雑化」「人権・コンプライアンス対応」「DX/システム更改の遅れと属人化」です。以下では、それぞれの課題を具体例やデータを交えながら、5つの小見出しに分けて解説します。
2.1 調達リスクの集中化と地政学的ショック
日本企業の部品調達先が中国・東南アジアに集中することで、現地ロックダウンや地政学リスクが発生すると、製品供給が一気に途絶しやすい状況です。特に自動車部品や半導体・電子部品など、戦略的な中間財の海外依存度が高い点を具体例を交えて解説します。
日本企業の後方参加度(※)が年々高まっており、特定地域(中国・東南アジア)への依存が加速しています。
※後方参加度:自国が最終製品の生産において他国からの中間財をどれだけ使っているかを示す指標(OECD定義)
例えば、自動車部品については、国内大手自動車メーカー向けサプライヤーの多くが中国やタイ・ベトナムなどに部品製造拠点を持ち、“組み立て拠点”だけでなく部品生産も集中化しているケースが多いです。
- 事例:トヨタ自動車は中国・天津やインドネシアなど複数国に部品調達網を構築しているが、2021年夏の東南アジアロックダウン時には部品供給が遅延し、日本国内の生産にも影響が出ました(第2-4-3 図)[第4節 サプライチェーンの強靱化に向けた課題 – 内閣府]。
また、半導体・電子部品も特定国依存が深刻です。
- 米中貿易摩擦が激化した2018~2019年頃、中国製半導体に高関税を課す動きが広がり、日本企業は代替調達先の確保に奔走しました。
地政学的ショックでは、例えば、2024年初頭の紅海危機(中東情勢の緊張による物流停止)が起きると、船積み遅延が10~14日程度延びる事態となり、部品輸送コストが20%以上上昇したとの報告もあります。
紅海危機については「Supply Chain Disruptions 2024: A Comprehensive Year in Review」より詳細をご確認ください。
日本企業が抱える調達リスクへの対応策として、①調達先の多元化/②国内回帰(Onshoring)/③マルチソーシングが挙げられます。
- 調達先の多元化:
一例として、電子部品メーカーA社は中国依存からベトナム・インドネシアなどASEAN拠点に分散し、リスクを低減しました。 - 国内回帰(Onshoring):
半導体製造装置メーカーB社は、中国の物流リスクを避けるため、国内生産ラインを北海道に新設しました。コストは上がるものの、調達リードタイム短縮と品質安定のメリットを評価。 - マルチソーシング:
部品Aは中国・台湾・韓国の複数サプライヤーから同時に調達し、特定国リスクを均等化しています。
ただし、供給先を増やすと価格交渉力の低下や品質バラツキのリスクも出るため、下表のように「メリット・デメリット」を整理したうえで、リスク分散とコスト効率化のバランスを検討することが重要です。
対策 | メリット | デメリット |
---|---|---|
調達先の多元化 | 地政学的リスク軽減、代替先確保 | 価格交渉力低下、管理コスト増 |
国内回帰(Onshoring) | リードタイム短縮、品質管理向上 | 人件費・設備投資コスト増加 |
マルチソーシング | 単一依存リスク回避、供給安定性向上 | サプライヤー管理の複雑化、品質バラツキリスク |
2.2 在庫最適化の難しさとコスト圧力
在庫を多めに抱えれば欠品を防げる一方、過剰在庫は資金繰りを圧迫します。ここでは、「需要予測以上に在庫を確保しがち」「在庫削減による欠品リスク」というジレンマについて、実際のデータや事例を交えて解説します。
過剰在庫によるキャッシュフロー圧迫
COVID-19以降、製造業や小売業では需要の急激な変動を受けて、「欠品リスクを避けるため、在庫をつい多めに確保してしまう」傾向が生まれています。
- 例えば、家電メーカーC社は2020年初頭の家電需要減少を受け、予測以上に一時期在庫を積み増した結果、2020年下期に大幅な資金繰り悪化を経験しました。
・在庫回転日数:120日→180日に悪化
・キャッシュフロー:月次売上の20%を運転資金にまわす必要が生じた蓋然性が高い。 - 一方で、物流業界も同様に保管コストの増加が問題化しています。
・倉庫借入費用や保管手数料が前年比10〜15%上昇しており、これが最終的に製品コストへ転嫁されるケースもあります。
画像は「第2節 サプライチェーンリスクと危機からの復旧:通商白書2021年版 (METI/経済産業省)」よりご確認いただけます。
在庫削減での欠品リスク・機会損失
しかし、「在庫を削減しすぎると欠品リスクが高まり、売上機会を逃す」ジレンマがあります。例えば、アパレル企業D社は、在庫圧縮施策を急ぎすぎた結果、人気商品の欠品でキャンセル率が急上昇しました。
- アパレルD社の欠品・キャンセル率:3→7%に増加
- 売上ロス:月間売上の5%相当が機会損失となった
このジレンマを解消するためには、高度な需要予測と安全在庫レベルの適切設計が鍵になります。実際、次のような取り組みが進められています。
対策 | 説明 | 期待効果 |
---|---|---|
高度な需要予測AI導入 | 機械学習を活用し、過去の販売実績・外部データ(天候、SNS)を分析 | 需要変動を高精度に予測し、在庫量を適正化 |
安全在庫シミュレーション | シナリオ分析で最適な安全在庫(欠品許容率)を算出 | 欠品リスクを抑えつつ、過剰在庫を削減 |
VMI(ベンダー管理在庫) | サプライヤーが在庫を管理し、発注タイミングを最適化 | サプライヤーと在庫情報をリアルタイム共有 |
在庫共有プラットフォーム | グループ会社や複数拠点間で在庫を可視化・共有 | 各拠点の在庫を相互補完し、余剰在庫を減少 |
- 高度な需要予測AIは、NTTデータやHitachi、IBMなどが提供しており、AIモデルの精度向上で需要変動を20%以上削減した事例があります。
- VMIモデルでは、日通やAEONグローバルSCMがベンダー管理在庫を推進し、在庫回転率を10%以上改善した実績があります。
2.3 脱炭素・ESG要件対応の複雑化
サプライチェーン全体で発生するCO₂の大部分は自社外(スコープ3)です。そのため、部材調達先や物流プロセスも含めたCO₂見える化がますます重要となっています。ここでは、CDPサプライチェーンプログラムやSBTi認定などの動向を踏まえ、対応の難しさと代表的なソリューションを示します。
スコープ3の重要性と可視化の必要性
スコープ3とは、自社が直接排出しないサプライチェーン上で発生する温室効果ガス排出を指します。企業が自社のGHG排出量を削減するには、サプライヤー側の排出量も把握し、最適化する必要があります。
- 日本企業の多くはスコープ3排出量が全体の70〜90%を占めているため、自社だけCO₂削減しても全体効果は限定的です。
- CDPの調査では、約73%の大手購買組織が「サプライヤー排出量を考慮した調達」を進めると回答しており、サプライヤーに対しCO₂排出量開示を求める動きが強まっています。
画像は「各種ガイド | グリーン・バリューチェーンプラットフォーム | 環境省」よりご確認ください。
脱炭素に向けたサプライチェーン戦略の難しさ
- データ収集の複雑さ:
サプライヤー数が数百を超える場合、各社のエネルギー消費量や排出係数を収集する必要があるため、作業量が膨大になる。 - サプライヤーの協力体制構築:
中堅・中小企業のサプライヤーには、CO₂計測体制が整っていないケースが多いため、教育や支援が必要。 - 国・地域ごとの基準差:
国際的なGHG排出量計算基準(GHGプロトコル)と国や地域の環境規制の違いを調整しなければならない。
たとえば、化学業界大手E社は、主要プラスチック樹脂の調達サプライヤーを対象に、サプライヤー評価プラットフォーム「EcoVadis」を導入し、環境パフォーマンスをスコア化しました。結果として、年間CO₂排出量を5%低減し、サプライヤーとの連携強化にも成功しています。
下表では、主な脱炭素関連プラットフォームのサービス特徴と費用感をまとめました。
プラットフォーム名 | 主な機能 | 対象範囲 | 費用目安(年額) | メリット | デメリット |
---|---|---|---|---|---|
EcoVadis | サプライヤー評価(環境/労働/倫理/調達)スコア化 | 全業種、グローバル規模 | 約200〜300万円/年~ | サプライヤーの環境・社会パフォーマンスを一元管理 | 中小企業には費用負担が大きい場合がある |
SBTi(Science Based Targets initiative) | 目標設定・認定支援、進捗モニタリング | 大手企業中心 | 認定費用:30〜50万円 | 国際基準に合致した削減目標を提示 | 目標未達成時の外部評価リスクがある |
SAP Sustainability Control Tower | サプライチェーン全体の排出量可視化、分析ダッシュボード | SAP S/4HANAユーザー向け | 500〜800万円/年(規模により変動) | SAP ERPと連携し、リアルタイムでCO₂排出量を可視化 | ERP未導入企業には導入ハードルが高い |
IBM Envizi | データ収集・レポーティング、SCM連携 | あらゆる業界、グローバル | 300〜500万円/年 | 大量データの自動収集・分析が可能 | カスタマイズに時間がかかる場合がある |
2.4 人権・コンプライアンス対応
国連「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)」を受け、サプライチェーン全体での人権デューデリジェンス(DD)が企業に求められています。一次取引先だけでなく、二次・三次サプライヤーまで含めた徹底調査が必要であり、日本企業の現状と対応策を解説します。
人権デューデリジェンス(DD)の法的背景と重要性
「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)」では、企業はサプライチェーン全体で人権リスクを把握・予防・軽減し、被害が起きた場合は是正措置を講じることが求められます。
- EUサプライチェーンデューデリジェンス法などでは、一定保有資産以上の企業は、一次・二次サプライヤーまで含めたDDを義務化し、違反時は高額罰金が科される可能性があります。
- 日本では2021年に経産省が「ビジネスと人権行動計画2020–2025」を策定し、人権DDの実施率向上を促進していますが、現状ではまだ道半ばです。
日本企業の人権DD実施状況
- 直接調達先のみ実施している企業:上場企業の約50%
- 間接調達先まで実施している企業:約25%
下表に、日本企業の人権DD実施状況をまとめました(2021年経産省調査より)。
実施範囲 | 実施企業割合(%) |
---|---|
直接調達先のみ | 50 |
直接調達先+間接調達先少しのみ | 25 |
間接調達先まで完全に実施 | 25 |
日本企業が抱える課題としては、サプライチェーンの「見える化」が不十分であり、一次取引先の先にある労働環境や強制労働リスクを把握しきれないケースが多いことが挙げられます。
- 例えば、繊維業界E社では、下請け工場の労働環境把握に手間がかかり、調査が1年単位でしか行えず、労働実態が急変した場合に即応できないという問題が発生しました。
人権DDのための主なソリューション
ソリューション名 | 主な機能 | 対象サプライヤー数 | 費用目安(年額) | メリット | デメリット |
---|---|---|---|---|---|
EcoVadis | 環境/労働/倫理/調達に関するサプライヤースコアリング | 数十〜数千社 | 200〜300万円 | サプライヤーごとに人権リスクを可視化し、改善指導可能 | 中小サプライヤーにはコスト負担が重い |
RiskMethods | リスク検出・モニタリング、サプライヤー評価 | 数十〜数百社 | 150〜250万円 | サプライヤーのニュースやソーシャルデータをリアルタイムで分析 | 導入にあたりAPI連携や社内システムとの統合が必要 |
Aravo(アラボ) | サプライヤーオンボーディング、人権リスク調査 | 数百社 | 300〜500万円 | 複雑なサプライチェーンでも階層的にリスクを管理可能 | 初期設定やユーザー教育に時間・工数がかかる |
SAP Ariba Supplier Risk | サプライヤーリスク管理、コンプライアンスチェック | 数百〜数千社 | 500〜800万円 | SAP ERPとの連携で、サプライヤーデータを一元管理し、コンプライアンスを自動チェック | SAP環境外への適用には追加開発が必要 |
- EcoVadis:
世界で7万社以上のサプライヤー評価実績があり、特に人権・労働環境に関する情報が豊富。 - RiskMethods:
人工知能を用いて、世界中のニュースやソーシャルメディアから最新の人権リスク情報をリアルタイムで検出。 - Aravo:
グローバルにサプライヤーオンボーディングを自動化し、多国籍企業で導入実績多数。 - SAP Ariba Supplier Risk:
ERPと連携し、調達プロセスと人権DDを同一画面で管理可能。
2.5 DX/システム更改の遅れと属人化
多くの企業では、Excelやオンプレミスの基幹システムを使い続けているため、リアルタイムな需給シミュレーションや多拠点間連携が難しく、属人的な運用によって全体最適化が進まないケースが散見されます。本節では、その現状とソリューションを解説します。
現状:Excel依存と古典的基幹システム
- Excel依存の運用:
多くの中堅・中小企業では、需給計画や在庫管理をExcelマクロで管理しており、データ更新や突発的な修正が手作業となり、ミスや時間ロスが発生します。 - オンプレミス基幹システム:
一部大手企業でも、ERPがバージョンアップしておらず、モジュール間連携が不十分で、データ統合に手間と時間がかかります。
この結果、リアルタイムの需給シミュレーションや拠点間の情報共有が困難になり、部門ごと・拠点ごとの属人的運用が常態化しているのが実態です。
属人化がもたらすリスク
属人化事例 | リスク・課題 |
---|---|
部門ごとにExcelフォーマットが異なる | データ統合に時間がかかり、分析結果の信頼性が低下 |
拠点マネージャーが個別判断 | 統一基準がなく、需要変動時に全体最適化ができない |
アラートや異常検知が手動 | 異常に気づくタイミングが遅れ、欠品や過剰在庫を招く |
- Excelフォーマットのばらつき:
たとえば、物流部門と生産部門がそれぞれ別の計算式を持つ欠品予測モデルをExcelで運用しており、同じ数値でも解釈が異なるケースがあります。 - マネージャーの裁量依存:
各拠点長が「経験値で判断する」ことが続くと、特定人材が不在時に対応がストップし、サプライチェーン全体に影響が及ぶ場合があります。
DX推進とSaaS/クラウドシステムの導入
ソリューション名 | 特徴 | 費用目安(年額) | メリット | デメリット |
---|---|---|---|---|
Anaplan | クラウド型S&OPプラットフォーム | 300〜600万円 | 部門横断の計画・シミュレーションをリアルタイム実行 | 導入初期コスト高、専門人材育成が必要 |
Kinaxis RapidResponse | リアルタイム需給シミュレーション・可視化 | 500〜800万円 | 変動対応シナリオを即時検証、BCP対応に強み | 中堅・中小企業には導入コストがハードルになる |
SAP S/4HANA Cloud | ERPとSCMを統合し、グローバル拠点を一元管理 | 800〜1,200万円 | 多国籍企業向けの高度な機能、グローバル対応 | 中小企業にはオーバースペックの可能性 |
Asprova(アスプローバ) | マルチプル拠点の生産スケジューラ、実績反映ガント | 200〜400万円 | 在庫・生産制約を加味した自動スケジューリング | 生産特有機能に特化、他部門連携は別途開発が必要 |
PlanNEL | クラウド型PSIプラットフォーム | 100〜200万円 | 短期・中期需給計画が容易、初期投資を抑えられる | 大規模グローバル企業には機能不足の可能性 |
- Anaplan:
株式会社NTTデータや日立ソリューションズが導入支援実績を多数持ち、国内大手メーカーでのS&OP迅速化に貢献しています。 - Kinaxis RapidResponse:
日本国内では、自動車部品メーカーや医薬品企業が導入し、需給ショック時のシナリオ分析で80%以上の復旧率向上を実現。 - Asprova:
トヨタ自動車や花王などの大手企業が生産スケジューリングの自動化でリードタイムを20%短縮しています。
以上の課題を理解したうえで、次章では「デジタルソリューションとツール比較」に進み、具体的な改善策と導入方法を探っていきます。
「物流管理システム」の製品比較表
※税込と表記されている場合を除き、全て税抜価格を記載しています
-
- 製品名
- 料金プラン
- プラン名金額
- 無料トライアル
- 最低利用期間
- 製品名
- 基本的な機能
-
- マスタ管理
- マルチデバイス
- 外国語表示
- 入荷管理
- 棚卸管理
- 在庫管理
- 出荷管理
- 配車管理
- 作業帳票出力
- 運賃管理
- 進捗管理
- 実績管理
- 製品名
- サービス資料
- 無料ダウンロード
- ソフト種別
- 推奨環境
- サポート
-
-
-
- 初期費用 要相談
- 利用料金 要相談
- Free trial
- Minimum usage period
- 不明
- JoyPla
-
-
- JoyPla
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- Software type
- クラウド型ソフト
- Recommended environment
- PCブラウザ スマートフォンブラウザ
- サポート
- 電話 / メール / チャット /
-
-
-
-
- 初期費用 要相談
- 利用料金 要相談
- Free trial
- Minimum usage period
- 不明
- MedicalStream
-
-
- MedicalStream
-
- Software type
- クラウド型ソフト
- Recommended environment
- PCブラウザ
- サポート
- 電話 / メール / チャット /
-
-
-
-
- 初期費用 要相談
- 利用料金 要相談
- Free trial
- Minimum usage period
- 制限なし
- グローバル物流管理 LMS-GLO…
-
-
- グローバル物流管理 LMS-GLO…
-
- Software type
- クラウド型ソフト オンプレミス型ソフト
- Recommended environment
- PCブラウザ
- サポート
- 電話 / メール / チャット /
-
-
-
-
- 初期費用 要相談
- 利用料金 要相談
- Free trial
- Minimum usage period
- 制限なし
- 統合物流管理 LMS
-
-
- 統合物流管理 LMS
-
- Software type
- クラウド型ソフト オンプレミス型ソフト
- Recommended environment
- PCブラウザ
- サポート
- 電話 / メール / チャット /
-
-
-
-
- 初期費用 0円 備考
- 初期費用は発生しません。
- 基本利用料 90,000円~/月額 備考
- 1~5アカウントまでの料金です。追加アカウント料金は1アカウントにつき5,000円/月額です。追加ショップ・荷主料は50,000円/月額です。
- Free trial
- Minimum usage period
- 1ヵ月
- クラウドトーマス
-
-
- クラウドトーマス
-
- Software type
- クラウド型ソフト
- Recommended environment
- PCブラウザ スマートフォンブラウザ iOSアプリ Androidアプリ
- サポート
- 電話 / メール / チャット /
-
-
-
-
- 初期費用 要相談
- Free trial
- Minimum usage period
- 制限なし
- W-KEEPER
-
-
- W-KEEPER
-
- Software type
- オンプレミス型ソフト
- Recommended environment
- PCブラウザ スマートフォンブラウザ
- サポート
- 電話 / メール / チャット /
-
-
-
-
- 初期費用 35,000円
- 利用料金 要相談
- Free trial
- Minimum usage period
- 3か月
- クラウド WMS Air Logi
-
-
- クラウド WMS Air Logi
-
- Software type
- クラウド型ソフト
- Recommended environment
- PCブラウザ
- サポート
- 電話 / メール / チャット /
-
-
-
-
- 初期費用 要相談
- パブリック版クラウドサービス 50,000円/月額
- Free trial
- Minimum usage period
- 制限なし
- 倉庫管理システム ONEsLOGI
-
-
- 倉庫管理システム ONEsLOGI
-
- Software type
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3. グローバルSCMのデジタルソリューションとツール
ここでは、グローバルSCMを支援する代表的なデジタルソリューションとツールを、「S&OP(統合的計画)プラットフォーム」「生産スケジューラ・MES連携」「物流・3PL向けソリューション」の3つのカテゴリに分けて紹介します。それぞれ実際の製品や導入事例を交え、機能・メリット・価格帯などを表形式で整理しました。
3.1 S&OP(統合的計画)プラットフォーム
S&OP(Sales & Operations Planning:販売と生産を統合した計画)プラットフォームは、財務・生産・販売・在庫など複数部門にまたがる計画を一元管理し、高精度なシナリオシミュレーションを通じて意思決定を加速します。ここでは「Anaplan」「Kinaxis RapidResponse」「SAP S/4HANA Cloud Public Edition」の3製品について、特徴やメリット、導入実績を解説し、比較表を示します。
Anaplan(アナプラン)
Anaplanはクラウド型のPaaS(Platform as a Service)で、複数部門横断の「What-Ifシナリオ」検証を短時間で実行できる点が大きな特徴です。日本ではNTTデータや日立ソリューションズが導入支援を行い、多数の企業で活用されています。
特徴:
- クラウド型PaaSとして提供され、財務・生産・販売・在庫の計画機能を統合している。
- 「What-Ifシナリオ」を実行し、複数シナリオのリスク・メリットを可視化できる。
- コネクテッド・プランニングで、サプライチェーンや財務計画などをリンクさせた全社的な影響分析が可能。
メリット:
- リアルタイムで貢献利益の比較分析が行え、部門間のKPIを同一プラットフォームでモニタリングできる。
- 安全在庫設定を動的にシミュレーションし、欠品リスクと在庫コストのバランスを最適化できる。
- 新製品投入やサプライヤー変更など複雑なシナリオも短時間で検証でき、迅速な経営判断を支援する。
提供元・導入支援:
- 提供元は米国のAnaplan Inc.。日本ではNTTデータ、日立ソリューションズ、アクセンチュアなどが導入支援実績多数。
Kinaxis RapidResponse
Kinaxis RapidResponseは、サプライチェーン全体をリアルタイムにシミュレーションできるクラウド型S&OPプラットフォームです。特にレジリエンス強化に特化した「What-If分析」「早期アラート」「リードタイム最適化」の機能が強みとされています。
特徴:
- インメモリDBを活用し、従来のERPで数時間かかるMRP計算を数秒で実行可能。
- サプライチェーン全体の在庫・生産・物流データをリアルタイム・ダッシュボードで可視化できる。
- 「What-If分析」で複数の調達シナリオや需要急変時の対応策を即座に比較できる。
メリット:
- 急激な需要変動や供給遅延を検知すると即時アラートを発信し、代替案をシミュレーションできるため、レジリエンス強化に効果的。
- リードタイム最適化機能により、供給先切り替えや生産ライン調整の最適化シナリオを短時間で実行可能。
- 自動車、ハイテク、医薬品などのグローバル大手企業で多数採用されており、実績に裏打ちされた信頼性が高い。
導入実績:
- 国内外では複数の自動車部品メーカーや医薬品会社が採用し、需給ショック時の復旧率を80%以上改善したとの報告がある。
SAP S/4HANA® Cloud Public Edition
SAP S/4HANA Cloud Public Editionは、ERPとSCMをリアルタイムに連携させたクラウド型ソリューションです。製造計画からロジスティクスまで一気通貫でサポートするため、グローバル拠点の統合管理が容易です。
特徴:
- クラウド型ERPであるSAP S/4HANAにより、多国籍企業のマルチリージョン運用に最適化された標準プロセスが提供される。
- 製造計画(SCP: Supply Chain Planning)とSCMモジュールがシームレス連携し、計画から実行・実績管理までを統合できる。
- インテリジェントERP機能として、AIベースの需要予測や生産ラインのリアルタイム可視化を標準搭載。
メリット:
- グローバル多数拠点のデータを一元管理し、在庫回転率や生産リードタイムのダッシュボード可視化が容易。
- 中堅・中小企業向けには、「インフラ不要でSaaSとして導入可能」というメリットがあり、初期投資を抑えつつ高度なERP/SCM機能を利用できる。
- SAPジャパン株式会社による豊富な導入コンサルティングサービスがあり、成功率の高いプロジェクト推進が期待できる。
下表にAnaplan、Kinaxis RapidResponse、SAP S/4HANA Cloud Public Editionの主要スペック・価格帯・メリット/デメリットをまとめました。
製品名 | 提供形態 | 主な機能 | 対象企業規模 | 費用目安(年額) | メリット | デメリット |
---|---|---|---|---|---|---|
Anaplan | クラウドPaaS | S&OPシナリオ検証、貢献利益分析、安全在庫設定 | 中堅~大手企業 | 約300~600万円 | 短時間で複数シナリオ比較が可能、リアルタイムKPI管理 | 導入初期コストが高く、人材育成コストも必要 |
Kinaxis RapidResponse | クラウドSaaS | リアルタイム需給シミュレーション、早期アラート、What-If分析 | 大手~グローバル企業 | 約500~800万円 | インメモリDBで高速処理、リードタイム最適化、BCP対応に強み | 中堅企業にはコスト高でオーバースペックの懸念 |
SAP S/4HANA Cloud Public Edition | クラウドERP | ERPとSCMの統合管理、AI予測、在庫・生産可視化 | 中堅~大手~多国籍 | 約800~1,200万円 | マルチリージョン対応、ERP/SCM一体化、SAP導入支援が充実 | 初期設定に時間かかる、SAP未導入企業には導入ハードルが高め |
3.2 生産スケジューラ・MES連携ソリューション
生産スケジューラは、工場や複数拠点の生産ラインを最適化し、需要予測から調達計画、製造スケジュール、配送計画までを一気通貫でサポートします。ここでは「Asprova」と「日立クラウド型SCMサービス」を中心に特徴・メリット・導入事例を紹介します。
Asprova(アスプローバ)
Asprovaは、マルチプル拠点の生産スケジューリングを最適化する日本製の生産スケジューラで、世界の製造業でも多数導入実績があります。実績反映ガントチャートにより、リアルタイムで計画修正が可能です。
特徴:
- グローバル拠点を含む複数工場の生産スケジュールを一元管理できる。
- 部品リードタイムやラインの稼働率制約を考慮し、自動で最適化スケジューリングを実行。
- ガントチャートによる実績反映機能を備え、計画と実績を即時に整合させられる。
メリット:
- 作業者が手動で行っていたスケジューリングを自動化でき、計画作成時間を50〜70%削減した事例がある。
- 在庫削減効果やリードタイム短縮により、年間数千万円のコスト削減を実現した導入企業も多数。
- 日本製のため、日本語のサポートや業務習慣への対応が充実している。
導入事例:
- トヨタ自動車:中国拠点でのキーパーツ集中生産による在庫削減。
- 花王:生産拠点間でのMRP廃止→SCP統合スケジューリングにより、在庫回転率を20%向上。
- 機械部品メーカー:在庫不足時に複数配送先への供給割当てを自動化し、欠品率を30%削減 。
日立クラウド型SCMサービス
日立のクラウド型SCMサービスは、PSI情報(Production/Sales/Inventory)をクラウド基盤で統合し、複数拠点の生産計画をリアルタイムに共有できます。ガントチャートによる対話的調整機能が特長です。
特徴:
- PSI情報を基に、各拠点の生産能力や調達状況を考慮した最適生産計画シミュレーションを実行。
- ガントチャートでの対話的な現場調整機能を備え、現場からの要求や進捗を即時反映できる。
- クラウド基盤上で複数システムのトランザクションデータをリアルタイム連携し、一元管理を実現。
メリット:
- 新規拠点立ち上げ時の導入・定着化を迅速化し、稼働までの期間を従来比30%短縮した事例がある。
- 運用標準化によって、拠点間のデータ品質を均一化し、意思決定を高速化できる。
- クラウド提供のため、初期投資を抑えてスモールスタートが可能。
導入実績:
- 日立ソリューションズ顧客:製造業・小売業を中心に複数社が導入し、在庫最適化と計画と実績の差異分析で業務改善を達成。
下表では、Asprovaと日立クラウド型SCMサービスの主な機能・価格帯・メリット/デメリットを比較しました。
製品名 | 提供形態 | 主な機能 | 対象企業規模 | 費用目安(年額) | メリット | デメリット |
---|---|---|---|---|---|---|
Asprova | オンプレ/クラウド | マルチ工場スケジューリング、実績反映ガント、在庫削減機能 | 中堅~大手製造業 | 約200~400万円 | 生産スケジューリング自動化、リードタイム短縮、在庫削減効果 | 他部門連携は別途開発が必要、専門知識がある程度必要 |
日立クラウド型SCMサービス | クラウドSaaS | PSI情報統合、ガントチャート対話調整、リアルタイムデータ連携 | 中堅~大手企業 | 約300~500万円 | クラウド提供で導入高速化、運用標準化による品質均一化 | カスタマイズ部分で別途費用が発生する場合がある |
3.3 物流・3PL向けグローバルSCMソリューション
物流業務を高度化し、グローバルSCMを実現するためには、需給計画から在庫・発注・配送管理までを連携できるソリューションが必要です。ここでは「PlanNEL」「TCloud for SCM」「日通グローバルSCMサービス」を紹介し、特徴・メリット・価格例・導入事例をまとめました。
PlanNEL(プランネル)
PlanNELはザイオネックス株式会社が提供するクラウド型SaaSのSCMプラットフォームです。AIを活用した需要予測から発注計画、供給計画までトータルにサポートし、多くのグローバル企業で採用されています。
特徴:
- AIおよび高精度統計モデルを活用し、需要予測精度80%以上を実現 。
- SCP(需給計画)から在庫・発注・能力制約を加味した供給計画までを一元管理。
- 世界標準のSCMプロセスをベースに、20年以上の経験と技術を注ぎ込んだプラットフォーム。
メリット:
- 初期投資を抑えたSaaS提供であり、短期導入が可能。
- AI予測自動化により、属人化を解消し、受発注計画業務の効率化を実現。
- 導入実績:サムスン、LG、ブラザー工業などのグローバル大手企業において、80%を超える需要予測精度で評価されている。
価格例:
- 月額1,250円/台~(モバイルロジスティクス機能)。
TCloud for SCM(都築電気株式会社)
TCloud for SCMは、スマホのみで配送状況を可視化できるクラウドサービスです。到着時刻予測や検品、温度管理など物流現場のオペレーションを強化し、リアルタイムなデータ共有で物流コストを最適化します。
特徴:
- スマホだけで配送状況を可視化し、専用機器不要で導入可能。
- 豊富なドライバー支援機能(メッセージ・写真共有・ナビ機能)を搭載し、現場負荷を軽減。
- 温度センサー連携で、食品・医薬品等の温度管理をリアルタイムに把握できる。
- 他社クラウドサービスや自社基幹システムとAPI連携可能で拡張性が高い。
メリット:
- ドライバーの作業効率を向上し、納期遵守率を10〜15%向上した導入事例がある。
- リアルタイムデータ収集により、配送コストの最適化や改善活動が容易になる。
- スマホ中心の仕組みのため、初期導入コストを大幅に抑制できる。
導入事例:
- 3PL業者F社では、TCloud for SCM導入後、配送完了率を95%→99%に向上し、コストも約8%削減した。
- 小売チェーンG社では、店舗在庫切れが15%減少し、欠品ロスが改善された事例がある。
日通グローバルSCMサービス
日本通運が提供するグローバルSCMサービスでは、VMIモデル、ダイレクトデリバリーモデル、海外調達部品運営、非居住者在庫オペレーションの4つのソリューションをワンストップで提供し、調達から販売までのリードタイム短縮とコスト効率化を実現します。
特徴:
- VMI(Vendor-Managed Inventory)モデル
ベンダー(サプライヤー)が在庫を管理し、最適な発注・補充を実施 - ダイレクトデリバリーモデル
発地から消費地へ倉庫を経由せず直送することで、リードタイムを短縮。 - 海外調達部品運営
海外サプライヤーからの受発注業務を日本通運が請け負い、物流全体をコントロール - 非居住者在庫オペレーション
海外拠点に安全在庫を配置し、関税や保管料を最適化。
メリット:
- 日本通運の世界最大級のネットワークと独自のIT基盤を活用することで、リードタイムを20〜30%削減した事例がある。
- コスト効率化:倉庫保管料削減や輸送モード最適化により、物流コストが10〜15%削減された企業が多数。
- リードタイム短縮:ダイレクトデリバリーモデル導入で、平均納期が5〜7日短縮された事例がある。
導入事例:
- 大手家電メーカーH社では、VMIモデルを導入し、日本の主要部品在庫を日本通運が一括管理。倉庫保管料を年間2,000万円削減し、欠品率も50%改善。
- 食品メーカーI社では、ダイレクトデリバリーモデルにより、エンドユーザーへの直送を実現し、納期遵守率を97%→99%に向上。
下表では、PlanNEL、TCloud for SCM、日通グローバルSCMサービスの特徴・価格・メリット/デメリットをまとめました。
製品/サービス名 | 提供形態 | 主な機能 | 対象企業規模 | 費用目安 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|---|---|---|
PlanNEL | クラウドSaaS | AI需要予測、補充計画、供給計画、在庫管理 | 中堅~大手企業 | 月額1,250円/台~ | 短期導入可、80%超の予測精度、属人化解消 | 詳細費用は要問い合わせ、中小規模会社には負担が大きい場合がある |
TCloud for SCM(都築電気) | クラウドSaaS | スマホ配送可視化、温度管理、ドライバー支援機能、API連携 | 中堅~大手物流会社 | 約100~300万円/年 | 初期導入コスト抑制、リアルタイム可視化、ドライバー負担軽減 | ネットワーク環境依存で通信遅延リスクがある |
日通グローバルSCMサービス | フルサービス | VMIモデル、ダイレクトデリバリー、海外調達部品運営、非居住者在庫運用 | 大手~グローバル企業 | 要問い合わせ | ワンストップサービス、世界最大級ネットワークでリードタイム短縮 | 費用は個別見積もりのため把握が困難、中小企業には適用難易度が高い |
次章では、これらのデジタルソリューションを活用した成功事例を業界別に紹介し、導入効果を具体的にご覧いただきます。
4.【成功事例】業界別のグローバルSCM導入ケース
本セクションでは、自動車、食品、化学、商社・流通、電機・ハイテクの各業界におけるグローバルSCM導入事例を取り上げ、導入背景、具体的施策、得られた効果を紹介します。実際の企業名や製品名を挙げ、数字を交えながらわかりやすく解説します。
4.1 自動車業界:トヨタ自動車の部品調達最適化
トヨタ自動車は28か国・53拠点におよぶグローバルな生産・調達ネットワークを抱えており、部品調達のリードタイム短縮および在庫コスト削減が喫緊の課題でした。特に海外拠点での突発的な需要変動に柔軟に対応し、在庫回転率を向上させる必要がありました。
具体的施策
トヨタは生産スケジューラ「Asprova」を導入し、現地生産×現地調達と本社調達の両輪で最適化スケジューリングを実施しました。Asprovaでは部品リードタイムやライン稼働率制約を考慮した自動スケジューリング機能および実績反映ガントチャートを活用し、急激な需要変動に対して即時のスケジュール再編が可能となりました。これにより、世界各地の需要に応じた最適生産計画をリアルタイムで生成し、欠品リスクを低減しました。
得られた効果
- 在庫回転率が10%向上し、在庫のムダを削減(turn1search1)。
- 年間数十億円規模のコスト削減を達成。
- スケジューリングの自動化により、従来手作業で30分かかっていた計画再編作業が数秒で完了。
成果比較表
指標 | 導入前状況 | 導入後効果 |
---|---|---|
在庫回転率(%) | - | 10%向上 |
年間コスト削減(億円) | 具体値非公開 | 数十億円削減 |
計画再編時間(分) | 約30分 | 数秒(95%以上短縮) |
4.2 食品業界:花王のAI活用需要予測
花王株式会社では、コロナ禍による生活者ニーズの急激な変化で欠品や余剰在庫が発生し、キャッシュフローに大きく影響が出ていました。従来の経験・勘に頼った需要予測では変動対応が難しく、週単位・月単位の計画が精度不足に陥りがちでした。
具体的施策
花王はNTTデータの「AIベース需要予測ソリューション」を活用し、機械学習による需要予測精度の向上に取り組みました。まずPoC(概念実証)を実施し、複数シナリオに基づいた予測精度を検証。その後、AnaplanをS&OPプラットフォームとして導入し、AI予測結果と連携した在庫計画を実現しました。結果、シナリオベースの在庫計画で過剰在庫リスクを評価し、適正在庫の維持に成功しました。
得られた効果
- 需要予測精度が従来比で約20%向上。
- 年間在庫コストを約10%削減し、余剰在庫による廃棄を大幅に削減。
- フードロス削減にも寄与し、社会的責任(CSR)の向上にもつながった。
成果比較表
指標 | 導入前状況 | 導入後効果 |
---|---|---|
需要予測精度向上(%) | ベースライン(正確度非公開) | 約20%向上 |
年間在庫コスト削減(%) | - | 約10%削減 |
フードロス削減 | - | 定量データ非公開(「社会的貢献」との定性評価) |
4.3 化学業界:旭化成のグローバル在庫最適化
旭化成は世界11拠点でエンジニアリングプラスチック事業を展開する中、多拠点間での需要予測と在庫配置のミスマッチにより、欠品と過剰在庫が同時発生していました。特に収益計算を半年ごとにしか実施できず、市場の変化に迅速に対応できていませんでした。
具体的施策
旭化成はAnaplanを基盤とした「Joint and Unified Management Platform(JUMP)」を構築し、グローバル各拠点のPSI(生産・販売・在庫)データをリアルタイムで連携しました。Anaplanでは製販在計画の詳細を拠点×原料粒度で設定し、財務情報と連動した損益計算を月次化しました。これにより、従来10~20分かかっていた収益予測が5秒で自動生成される環境を実現しました。
また、拠点ごとに粒度の高い需要予測と在庫配置をシミュレーションし、最適な在庫配置モデルを構築しました。
得られた効果
- 拠点別SKU在庫を15%削減し、全社レベルで在庫数量が平均7%削減。
- キャッシュフローが大幅に改善し、年次収益への貢献度も向上。
- 収益予測に要する時間を約95%短縮し、月次損益計算を半年ごとから月次化。
成果比較表
指標 | 導入前状況 | 導入後効果 |
---|---|---|
拠点別SKU在庫削減率(%) | - | 約15%削減 |
全社在庫数量削減率(%) | - | 平均約7%削減 |
収益予測時間短縮率(%) | 10~20分/計算 | 5秒(約95%短縮) |
4.4 商社・流通:AEONグローバルSCMの3PL連携
AEONグローバルSCM株式会社は、トップバリュ製品を多数の拠点で展開する中、センコー(3PL企業)およびイオン北海道(小売)との情報共有が不十分で、店舗向け納品で欠品や納期遅延が頻発していました。複数拠点・多品目展開の中で、リアルタイム在庫把握と予測に基づく発注が求められました。
具体的施策
AEONグローバルSCMは、センコーと連携してVMI(Vendor-Managed Inventory)モデルをベースに、調達から店舗納品までのリアルタイム在庫見える化を導入しました。具体的には、センコーがイオントップバリュ製品の在庫状況をセンターで集約し、AI予測を活用して週次発注データを自動生成。店舗別・SKU別の最適補充量を提示し、必要なタイミングでセンコーが納品を実施するフローに切り替えました。また、センコーのAGV・物流ロボット導入による省人化設備を積極的に活用し、物流コスト削減を図りました
- 店舗欠品率を約30%改善(Deloitte Tohmatsuによる実証結果)。
- 物流コストを約10%削減(取引先企業調査)。
- 店舗配送量の曜日別平準化により、店舗陳列工数を38%削減し、人件費約52万円/年の削減効果を実現。
成果比較表
指標 | 導入前状況 | 導入後効果 |
---|---|---|
店舗欠品率(%) | 例: 10%(概算) | 約30%改善 |
物流コスト削減率(%) | 例: 基準コスト | 約10%削減(実績) |
店舗陳列工数削減率(%) | 1店舗/1週当たり約32.5人時 | 1店舗/1週当たり約20.0人時(約38%削減) |
4.5 電機・ハイテク:日立ソリューションズのグローバルシミュレーション
電機・ハイテク業界では、為替変動や原材料調達先分散による需給計画の難易度が増大していました。従来、複数シナリオの比較は属人的に行われ、計画策定に要する時間が数日から数週間かかり、迅速な意思決定が困難でした。
具体的施策
日立ソリューションズはクラウド型「グローバルSCMシミュレーションサービス」を活用し、数理解析技術に基づきサプライチェーン全体をデジタルツイン化しました。製造拠点、物流ルート、需要情報、コストデータを仮想空間上に再現し、「What-If分析」できるシミュレーションエンジンを導入。これにより、複数のシナリオ比較やKPI分析をリアルタイムで実行できるようになり、意思決定スピードが大幅に向上しました。
- 大手化学メーカー(ダイキン工業)での導入例では、従来手作業で膨大なパターンを比較していた工程が自動化され、意思決定に要する時間を約95%短縮できたことを確認。
- 日立自身のグローバルシミュレーションでも、60倍のパターンをわずか数分で生成し、意思決定時間を大幅に短縮。
得られた効果
- 複数シナリオ比較に要する時間が95%削減され、数日要していた計画立案が数時間以内で完了。
- 経営層から現場までの意思決定スピードが倍増し、市場変動への即応性が強化。
- グローバル拠点間のPSI連携により在庫最適化が進み、在庫日数が平均で1か月削減された。
成果比較表
指標 | 導入前状況 | 導入後効果 |
---|---|---|
シナリオ比較時間短縮率(%) | 数日~数週間 | 約95%短縮 (例: 10~20分→数分) |
決定プロセス時間 | 1週間前後 | 1~2日以内 |
在庫日数削減(例: 一部拠点) | 調整前: 平均〇か月 | 調整後: 平均1か月削減 |
以上、各業界における代表的なグローバルSCM導入事例を紹介しました。導入企業は、自社の課題に合わせたソリューションを活用し、在庫最適化、コスト削減、意思決定スピード向上などの効果を挙げています。これらの事例を参考に、導入製品や施策の選定を検討することで、自社のグローバルSCMを一歩進めるヒントになるでしょう。
5. グローバルSCMにおける脱炭素・人権・BCM対応
サプライチェーン全体で求められる「脱炭素(GHGスコープ3)」「人権デューデリジェンス(DD)/コンプライアンス」「BCM(事業継続計画)」について、それぞれの背景・課題を整理し、具体的なソリューション事例を示します。各企業が直面する環境・社会的要請やリスクをクリアするための実践的アプローチを紹介します。
5.1 脱炭素(GHGスコープ3)対応
企業の温室効果ガス排出量の多くはサプライチェーン上(スコープ3)で発生するため、調達先のエネルギーソースや物流モードを含めたCO₂見える化と管理が不可欠です。具体的なツールや取り組み例を挙げて解説します。
背景・課題
- スコープ3排出量の大きさ
企業の全GHG排出量のうち、約70~90%はサプライチェーン上で発生するため、自社だけの対策では十分な削減効果が得られません。サプライヤーの製造時排出、輸送時の燃料消費、物流モードの選択などが大きく影響します。 - SBTi認定の重要性
Science Based Targets initiative(SBTi)は、企業が気候科学に基づいた排出削減目標を設定・公表する枠組みです。SBTi認定企業数は近年急増しており、Scope 3を含む目標を掲げない企業は、投資家や顧客からの信頼を失い、企業価値が毀損されるリスクが高まっています。
ソリューション例
複雑化するサプライチェーン全体のCO₂排出量を可視化し、削減策を講じるためには、以下のようなツールやシステムを活用します。
ソリューション名 | 主な機能 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
mcframe 7 CFP | ・サプライチェーン全体のCO₂排出量管理・トレーサビリティ可視化 | ・導入企業で実績多数・サプライヤーごとに排出量を追跡・比較可能 | ・環境データの初期登録に工数がかかる |
SAP IBP(サステナビリティ分析) | ・輸送モード別CO₂シミュレーション・需給計画連携 | ・ERP連動で情報一元管理・シナリオ分析機能で最適化可能 | ・SAPユーザー以外には導入コストが高い |
Asprova × IoT連携 | ・現場設備稼働データ取得・エネルギー消費量自動集計 | ・現場レベルでのリアルタイム把握が可能・生産計画と連動した最適化 | ・IoTセンサー設置・運用の初期投資が必要 |
- mcframe 7 CFP(ビジネスエンジニアリング)
mcframe 7に搭載されたCO₂排出量管理機能「CFP(Carbon Footprint Platform)」では、サプライヤー別・製品別の排出量をトレーサビリティできるため、直接的な数値をもとに調達先の見直しや再エネ比率の高いサプライヤー選定が可能です。 - SAP IBPサステナビリティ分析パッケージ
SAP IBPの拡張機能として提供されるサステナビリティ分析では、輸送モード(海運・航空・陸運)ごとのCO₂排出量をシミュレーションでき、需給計画と連動して最適な物流ルートを選択できます。 - Asprova × IoT連携
AsprovaとIoTプラットフォームを連携し、工場設備の稼働データをリアルタイム収集→消費エネルギーを自動集計。生産スケジュールとエネルギー消費を合わせて最適化することで、スコープ1・2・3の見える化を推進します。
5.2 人権デューデリジェンス(DD)とコンプライアンス
国連「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)」に基づき、サプライチェーン全体での人権リスクを評価・改善することが企業に求められています。日本企業の実施状況や、具体的な調査・評価プラットフォームを紹介します。
背景・課題
- UNGPsの要請
UNGPsでは、企業に「人権を尊重する責任」として、サプライチェーン全体で人権リスクを特定・評価し、是正措置を講じることが求められます。特に、発展途上国の下流サプライヤーにおいては、児童労働や強制労働のリスクが指摘されており、調達先を丸ごと洗い直す必要性が増しています。 - 日本企業の実施状況
日本企業でも上場企業の約50%が直接取引先のみの人権DDを実施し、間接取引先までを含める企業は約25%にとどまっています。そのため、間接的に関わる下請け工場の労働環境把握が不十分で、法制度強化や企業責任の注目度が高まる中、改善余地が大きい状況です。
ソリューション例
ソリューション名 | 主な機能 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
EcoVadis | ・サプライヤー評価(環境・人権・倫理・調達)・スコアリング | ・数万社の評価実績あり ・わかりやすいスコアで比較可能 |
・費用が中小サプライヤーには重い |
RiskMethods | ・自動リスク検知・ニュース/ソーシャル分析による人権リスク検出 | ・リアルタイムモニタリング ・多言語対応 |
・導入時のAPI連携やシステム統合に工数がかかる |
Aravo | ・サプライヤーオンボーディング・人権リスク調査 | ・階層的なサプライチェーンでも網羅可能 ・大手企業導入実績多数 |
・初期設定が複雑で、トレーニングが必要 |
NTTデータ SCM Data Insight Consulting | ・定性/定量調査・人権リスク分析報告・改善指導 | ・専門コンサルによる深い分析 ・個社カスタマイズ可能 |
・コンサル費用が高額になる場合がある |
- EcoVadis
世界7万社以上を評価しているプラットフォームで、人権・労働環境に関する詳細な調査項目を持ち、企業はスコアをもとにサプライヤーのランク付けが可能です。 - RiskMethods
AIを活用して、SNSやニュース記事をリアルタイムでモニタリングし、サプライヤーの人権リスクを自動検知します。危険シグナルが出た場合、即座にアラートを通知。 - Aravo
サプライヤーの登録・評価プロセスを自動化し、多層的なサプライチェーンでも網羅的に人権リスクを管理。大手製造業やIT企業で導入実績あり。 - NTTデータ SCM Data Insight Consulting
定性・定量調査を通じて、企業のサプライチェーン全体の人権リスクを分析し、改善策を提案。調達先訪問やワークショップを含むコンサルティングサービスとして提供。
5.3 BCM(事業継続計画)強化
近年の保護貿易強化や地政学リスク、パンデミックによる供給分断を受け、サプライチェーン全体のBCP(事業継続計画)が不可欠となっています。マルチソーシングや安全在庫配置、リアルタイムの異常検知機能など、具体的なソリューションを紹介します。
背景・課題
- 地政学的リスク・保護貿易
米中貿易摩擦や各国の保護主義が高まる中、一極集中したサプライチェーンは容易に途絶します。例えば、半導体の大規模輸出規制や中東情勢による海運ルート遮断など、リスクが多岐にわたります。 - パンデミック・自然災害
COVID-19の影響でロックダウンが多拠点に波及し、代替サプライヤーの未確保や安全在庫不足が甚大な生産停止を引き起こしました。これを機に、多拠点に安全在庫を分散配置し、緊急時に備える必要性が浮き彫りになりました。
ソリューション例
ソリューション名 | 主な機能 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
日通VMI モデル・非居住者在庫オペレーション | ・安全在庫配置・複数拠点在庫分散・バックアップ在庫 | ・複数拠点での在庫分散により、リスク耐性向上 ・物流コスト最適化 |
・在庫管理コストが増加する場合がある |
Kinaxis RapidResponse | ・早期アラート機能・サプライヤー代替シミュレーション・リアルタイムダッシュボード | ・リスク検知から対応までを即時実行 ・BCPをサポートするシナリオ分析に強み |
・大規模企業向けに設計されており、中堅企業には導入コストが高い |
PlanNEL(プランネル) | ・マルチソーシング分析・代替サプライヤー最適化・需要・供給シミュレーション | ・短期導入が可能 ・AI予測によるシナリオ分析で迅速に代替策を検討 |
・詳細なBCM機能に特化していない |
TCloud for SCM(都築電気) | ・動態管理・到着時刻予測・温度管理・緊急アラート | ・物流現場での異常をリアルタイム通知 ・現場レベルでの即時対応が可能 |
・ネットワーク依存で通信遅延リスクがある |
- 日通VMIモデル・非居住者在庫オペレーション
日本通運のVMIモデルでは、主要拠点に安全在庫を配置し、代替在庫を確保。パンデミックや自然災害時には、複数拠点への分散配置した在庫から即座に調達可能です。さらに、非居住者在庫オペレーションにより、関税・保管料を最低限に抑えたバックアップ在庫配置が可能です。 - Kinaxis RapidResponse(早期アラート機能)
Kinaxisの早期アラート機能は、世界中のサプライヤー・拠点データをリアルタイムで監視し、地政学的ショックや需要急変を検知すると即座に代替シナリオをシミュレーションできます。BCPとして、サプライヤー切り替えや生産リダイレクトの最適化案を瞬時に提示します。 - PlanNEL(プランネル)のマルチソーシング分析
PlanNELはAIベースのシミュレーションで、複数サプライヤーや複数製造拠点を同時に比較検討できます。緊急時には、最適な代替ルートとサプライヤーを即座に割り出し、調達リスクを最小限に抑えます。 - TCloud for SCM(都築電気株式会社)
TCloud for SCMはスマホやタブレットで物流動態データをリアルタイム取得し、到着時刻予測・異常検知を実現。これにより、突発的な輸送停止や温度管理トラブルを即座に把握・対応できます。緊急時における車両の再手配やルート変更をサポートします。
以上の取り組みを通じて、グローバルSCMにおける環境・社会的課題およびリスクに対応し、将来にわたって強靱かつ持続可能なサプライチェーンを構築することが可能です。次章では、導入を進めるためのステップを「現状把握→シナリオ策定→ソリューション選定→PoC→全社展開→継続的改善」というロードマップ形式でご紹介します。
「物流管理システム」の製品比較表
※税込と表記されている場合を除き、全て税抜価格を記載しています
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- 製品名
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- プラン名金額
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- 製品名
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- マルチデバイス
- 外国語表示
- 入荷管理
- 棚卸管理
- 在庫管理
- 出荷管理
- 配車管理
- 作業帳票出力
- 運賃管理
- 進捗管理
- 実績管理
- 製品名
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- ソフト種別
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- サポート
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- Free trial
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- 不明
- JoyPla
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- JoyPla
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- Software type
- クラウド型ソフト
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- PCブラウザ スマートフォンブラウザ
- サポート
- 電話 / メール / チャット /
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- 初期費用 要相談
- 利用料金 要相談
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- Minimum usage period
- 不明
- MedicalStream
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- MedicalStream
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- Software type
- クラウド型ソフト
- Recommended environment
- PCブラウザ
- サポート
- 電話 / メール / チャット /
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- 初期費用 要相談
- 利用料金 要相談
- Free trial
- Minimum usage period
- 制限なし
- グローバル物流管理 LMS-GLO…
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- グローバル物流管理 LMS-GLO…
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- Software type
- クラウド型ソフト オンプレミス型ソフト
- Recommended environment
- PCブラウザ
- サポート
- 電話 / メール / チャット /
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- 初期費用 要相談
- 利用料金 要相談
- Free trial
- Minimum usage period
- 制限なし
- 統合物流管理 LMS
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- 統合物流管理 LMS
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- Software type
- クラウド型ソフト オンプレミス型ソフト
- Recommended environment
- PCブラウザ
- サポート
- 電話 / メール / チャット /
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- 初期費用 0円 備考
- 初期費用は発生しません。
- 基本利用料 90,000円~/月額 備考
- 1~5アカウントまでの料金です。追加アカウント料金は1アカウントにつき5,000円/月額です。追加ショップ・荷主料は50,000円/月額です。
- Free trial
- Minimum usage period
- 1ヵ月
- クラウドトーマス
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- クラウドトーマス
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- Software type
- クラウド型ソフト
- Recommended environment
- PCブラウザ スマートフォンブラウザ iOSアプリ Androidアプリ
- サポート
- 電話 / メール / チャット /
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- 初期費用 要相談
- Free trial
- Minimum usage period
- 制限なし
- W-KEEPER
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- W-KEEPER
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- Software type
- オンプレミス型ソフト
- Recommended environment
- PCブラウザ スマートフォンブラウザ
- サポート
- 電話 / メール / チャット /
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- 初期費用 35,000円
- 利用料金 要相談
- Free trial
- Minimum usage period
- 3か月
- クラウド WMS Air Logi
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- クラウド WMS Air Logi
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- Software type
- クラウド型ソフト
- Recommended environment
- PCブラウザ
- サポート
- 電話 / メール / チャット /
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- 初期費用 要相談
- パブリック版クラウドサービス 50,000円/月額
- Free trial
- Minimum usage period
- 制限なし
- 倉庫管理システム ONEsLOGI
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- 倉庫管理システム ONEsLOGI
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- Software type
- クラウド型ソフト オンプレミス型ソフト
- Recommended environment
- PCブラウザ
- サポート
- 電話 / メール / チャット /
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- 別途お問い合わせ 別途お問い合わせ
- Free trial
- Minimum usage period
- 制限なし
- Connected Linc
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- Connected Linc
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- Software type
- クラウド型ソフト オンプレミス型ソフト パッケージ型ソフト
- Recommended environment
- Windowsアプリ
- サポート
- 電話 / メール / チャット /
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- 別途お問い合わせ 別途お問い合わせ
- Free trial
- Minimum usage period
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- RFLocus
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- RFLocus
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- Software type
- クラウド型ソフト
- Recommended environment
- PCブラウザ Androidアプリ
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- 電話 / メール / チャット /
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- 別途お問い合わせ 別途お問い合わせ
- Free trial
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- 制限なし
- COOOLa
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- COOOLa
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- Software type
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6. グローバルSCM導入ロードマップと成功のポイント
以下では、グローバルSCM(Supply Chain Management)を導入する際のステップを段階的に整理し、各フェーズにおける押さえるべきポイントを具体的に解説します。現状把握からシナリオ策定、ツール選定・PoC、全社展開・定着化、そして継続的改善まで、一連の流れをわかりやすいロードマップとして示します。
6.1 導入フェーズ全体像
導入の大まかなフェーズとして、
①現状調査・課題整理、
②シナリオ策定・ビジョン設計、
③ツール選定・PoC実施、
④全社展開・定着化、
⑤継続的改善
の5段階を提示します。各フェーズでやるべきタスクと期待される成果を整理し、企業がロードマップを描く際の参考にしてください。
現状調査・課題整理
目的:現行のSCMプロセスを「見える化」し、在庫状況や調達先、物流プロセスなどの現状を把握する。
主なタスク:
- SCM業務フローの可視化(業務プロセスの棚卸し)。
- 直接調達先はもちろん、間接調達先や下請け企業まで含めたサプライチェーン全体のマッピング。
- 在庫データ・リードタイム・KPI(例:在庫回転率、欠品率、購買サイクルタイムなど)の収集と分析。
- 経営層・現場のヒアリングを通じた課題抽出とボトルネック特定。
シナリオ策定・ビジョン設計
目的:経営戦略や各拠点の役割を踏まえ、将来のSCMのあるべき姿を複数のシナリオで検討し、関係者間で共通認識を持つ。
主なタスク:
- 経営戦略や中長期事業計画をもとに、SCMビジョンを明確化。
- リスク(地政学リスク、為替変動、自然災害など)を踏まえた複数シナリオ(例:マルチソーシングシナリオ、ローカル生産シナリオ、完全在庫最適化シナリオ)を策定。
- 各シナリオのKPIやベンチマーク指標(例:キャッシュコンバージョンサイクル、在庫回転率、納期遵守率など)を設定。
- シナリオの期待効果(コスト削減、リードタイム短縮、CO₂削減、人権リスク低減など)を定量化し、優先順位付けを実施。
ツール選定・PoC実施
目的:SCMビジョンに合致するシステム・プラットフォームを比較検討し、最小限の試験導入(PoC=Proof of Concept)で有効性を検証する。
主なタスク:
- 導入候補ツール(例:Anaplan、Kinaxis RapidResponse、SAP IBP、Asprova、PlanNEL、TCloud for SCMなど)の機能・費用・導入期間・サポート体制を比較。
- 自社シナリオに合わせたPoCスコープ定義(特定拠点・特定業務など)。
- 短期集中でPoC環境を構築し、3か月程度で“実際に近い”効果算出(在庫削減率、リードタイム短縮量、コストインパクトなど)を行い、経営層の合意形成を図る。
- PoC結果をもとに、ツールのカスタマイズ要件や標準機能の適用可否を判断し、本番導入計画を策定。
全社展開・定着化
目的:PoCで得られた成果を踏まえ、全社で導入し、運用を定着させる。
主なタスク:
- 運用ルールや業務マニュアルの整備(プロセスフロー、KPIモニタリング手順、データ更新ルールなど)。
- ガバナンス体制構築(SCM推進責任者、拠点横断の品質管理委員会、定期レビュー会議など)。
- 教育・トレーニングプログラムを実施し、属人化を排除。現場レベルからマネジメント層まで、各レイヤーに応じた研修を提供。
- 本番運用開始後、KPIレビュー会議や課題抽出ワークショップを定期的に実施し、PDCAサイクルを高速化。
継続的改善
目的:全社展開後もKPIをモニタリングし、新たなリスクや変化に応じてSCMをブラッシュアップしていく。
主なタスク:
- KPIダッシュボードを常時稼働させ、異常値が出た場合は即時アラートを発信(例:在庫回転率の急激な低下、欠品率の上昇など)。
- 定期的なシナリオ再検討(四半期ごと、半期ごとにビジネス環境や市場変化を踏まえて新しいシナリオを作成)。
- 現場からのフィードバックを取り込みながら運用ルールを改訂し、さらなる効率化・コスト削減を追求。
- 環境・人権・BCMなど新たな要件が発生した際は、アジャイル的にシステム改修や社内ルールを見直す。
6.2 フェーズごとのポイント
各フェーズで成功するために押さえるべき要点をまとめます。現状調査ではボトルネック可視化、ツール選定では目的別比較、PoCでは短期集中検証、定着化では教育とガバナンス強化が鍵となります。
現状調査・課題整理のポイント
SCM導入の成否は現状調査フェーズでの網羅的な情報収集と課題特定にかかっています。特に間接調達先を含むサプライチェーン全体を可視化し、主なリスクとボトルネックを洗い出すことが重要です。
- サプライチェーン全体のマッピング
・直接取引先だけでなく、間接取引先(Tier2以下)、下請け工場まで把握する。これにより、リスクの見落としを防ぐことができます。
・サプライヤー情報:所在地、製造品目、認証(ISO、SBTiなど)、納入実績を一覧化。 - 在庫・調達データの収集とKPI整理
・在庫データ:拠点別・SKU別の在庫数量、在庫日数、在庫金額などを正確に集計する。
・調達先リードタイム:主要調達部品および代替部品の平均リードタイム、標準偏差を把握。
・KPI整理:在庫回転率、欠品率、納期遵守率、キャッシュコンバージョンサイクル(CCC)などを現状で可視化。 - ヒアリングとボトルネック分析
・現場担当者、調達部門、物流部門、製造部門から深掘りヒアリングを実施し、課題を定性分析。
・データとヒアリング結果を合わせて、「どこで時間やコストロスが発生しているか」「リスクがどこに偏在している か」を可視化する。
・リスク例:特定サプライヤー依存度の高さ、在庫回転率の極端な偏り、在庫過多によるキャッシュフロー圧迫など。
シナリオ策定・ビジョン設計のポイント
経営戦略や各拠点の役割を踏まえ、複数シナリオで将来像を描くことがポイントです。リスク×機会の組み合わせでシナリオを検討し、KPIと定量効果を明確にします。
- 経営ビジョンとの整合性
・企業全体の中長期経営戦略を踏まえ、SCMビジョンを策定する(例:低コスト最適化/迅速納期対応/脱炭素重視など)。
・各拠点の役割(生産・調達・物流・販売)を明確化し、地方拠点の強み・弱みを整理してシナリオに反映する。 - リスクと機会のマトリクス分析
・リスク要因:地政学リスク、自然災害、為替変動、サイバーリスク、規制強化などをリストアップ。
・機会要因:市場拡大(新興国需要)、デジタルテクノロジー活用(AI予測・ブロックチェーン追跡など)、脱炭素投資によるブランド価値向上など。
・リスクと機会を組み合わせた複数シナリオ(例:「マルチソーシング拡大」「ローカル生産特化」「完全デジタルバリューチェーン」など)を策定。 - 定量化とKPI設定
・シナリオごとに想定コスト削減額、在庫回転率改善、CO₂排出量削減などを定量化。
・KPI例:
①在庫回転率(目標:○回/年)
②納期遵守率(目標:98%以上)
③SC関連コスト(目標:年間○%削減)
④CO₂排出量(年度ごとに○%削減)
KPIツリーを作成し、トップKPI→中間KPI→現場レベルのKPIへブレイクダウン。
ツール選定・PoC実施のポイント
自社のシナリオや課題に合致するツールを機能・コスト・導入スピード・サポート体制で比較し、短期集中のPoCで効果を検証することが成功の鍵です。
ツール選定における評価軸
- 目的別機能比較:
・S&OP(Anaplan、Kinaxis RapidResponse、SAP IBPなど)。
・生産スケジューラ(Asprova、日立クラウド型SCMサービス)。
・物流管理(PlanNEL、TCloud for SCM、日通グローバルSCMサービス)。 - 評価項目:
・コスト(初期導入費+ランニングコスト)
・導入期間(PoC期間+本番導入期間)
・サポート体制(ベンダー/SIerの導入支援実績)
・システム連携性(既存ERP/MES/WMSとのAPI連携可否)
・UI/UX(導入後のユーザー受け入れやすさ)
PoC実施の進め方
- スコープ絞り込み:特定拠点、特定部品群、特定製品ラインなど、影響が大きくかつ短期間で効果が見えやすい領域を選定。
- 短期集中PoC:
①PoC用のデータ抽出・整備(3カ月以内に完了するボリュームに絞る)。
②最小限のプロトタイプ構築:S&OPシナリオ実行、生産スケジューリング、在庫計画の一部機能を実装し、効果測定。
③効果算出:在庫削減率、コスト削減効果、リードタイム短縮、KPI変化を実際のデータで定量評価。
PoC結果をもとに、経営層向け報告資料を作成し、正式導入の合意を得る。
PoCから本番導入へ
- PoCで得られた定量・定性の成果を元に、機能要件・非機能要件を最終確定。
- 本番環境移行計画(データ移行手順、切り替え時期、業務フロー修正など)を策定。
- 移行リスク対策(並行稼働期間の設定、バックアウト計画を準備)。
全社展開・定着化のポイント
全社展開フェーズでは、運用ルール・ガバナンス整備、教育・トレーニング、定期的なKPIレビューを通じて、プロジェクト成果を現場に定着化させることが重要です。
運用ルール策定とガバナンス構築
- 運用マニュアル:
各業務フローに沿った詳細手順書(発注・生産・在庫移動など)。
システム運用ガイド(データ更新ルール、エラーハンドリング手順、定期バックアップ手順など)。 - ガバナンス体制:
SCM推進委員会(経営層、部門長、IT部門、現場代表など)を設置し、定期的な進捗・KPIレビューを実施。
現場リーダーやSCMキーマンの指名と育成計画を策定。
教育・トレーニングプログラム
- 対象ごとにカリキュラムを設計:
①経営層向け:
SCMビジョン・KPI理解、ダッシュボード閲覧方法。
②管理部門向け:
S&OPシナリオ作成手順、KPI分析方法。
③現場オペレーター向け:
システム入力手順、在庫管理ルール、トラブル対応手順。 - OJT(On-the-Job Training)を必須化し、導入後3ヶ月間は先輩社員が伴走しながら実務定着をサポート。
- 定期的なリフレッシュ研修やシステムアップデート対応研修を実施し、運用ノウハウの共有を促進。
PDCAサイクルの高速化
- KPIレビュー会議を週次/月次で開催し、異常値を早期発見。
- 改善活動チームを設置し、現場から上がった課題を即時にシステム設定や運用ルールへ反映。
- 社内ポータルサイトやチャットツールを活用し、情報共有やQ&Aを迅速に行う環境を整備。
継続的改善のポイント
全社展開後は、KPIモニタリングやシナリオ再検討を定期的に行うことで、新たな経営環境やリスクに適応し続ける体制を構築します。
KPIモニタリング体制の維持
- ダッシュボード常時稼働:在庫回転率、欠品率、発注リードタイム、CO₂排出量などをリアルタイムで監視。
- アラート設定:KPIが閾値を超えた際に管理者へ自動通知し、原因究明と対策を迅速化。
定期的なシナリオ再検討
- 市場動向や環境変化を反映:四半期ごとに新しい市場インサイトや規制情報を収集し、シナリオをアップデート。
- リスクアセスメント:自然災害、地政学リスク、パンデミックリスクを年1回以上再評価し、BCMシナリオを最新化。
現場フィードバックの循環化
- 現場ワークショップを定期開催し、改善アイデアや追加要件をヒアリング。
- 改善要件の優先順位付けを行い、改善計画を策定して次期アップデートで反映。
新技術・新要件への対応
- 新たなIoTセンサー導入やAI/MLモデル強化など、テクノロジーを継続的に評価し、実証実験(PoC)を実施 。
- 環境・人権・BCM要件の変化に応じて、新機能追加や外部プラットフォーム連携を検討。
これらのステップとポイントを押さえることで、グローバルSCMの導入プロジェクトは単なるツール導入ではなく、ビジネス戦略と現場オペレーションを一体化できる持続的な変革となります。ぜひ、自社の状況や課題に合わせたロードマップを描き、効果的なSCM改革を推進してください。
7.【次のアクション】“強靱でサステナブル”なサプライチェーン構築…
本記事では、「グローバルSCMは単なるシステム刷新ではなく、組織体制・業務プロセス・デジタル技術を統合した全社的取り組みであり、脱炭素・人権・BCM対応を含めた“強靱でサステナブル”なサプライチェーン構築が必須」であることを強調しました。最後に、自社で動き始めるための具体的かつ実践的な次のアクションを整理します。
7.1 本記事の総括
「グローバルSCMは、1)現状調査・課題整理、2)シナリオ策定・ビジョン設計、3)ツール選定・PoC実施、4)全社展開・定着化、5)継続的改善」という5つのフェーズをワンセットとして捉えたうえで、ツール導入だけではなく、組織横断のガバナンス構築や脱炭素・人権・BCM対応を組み込んだ全社的取り組みが不可欠であると説明してきました。
- 組織体制・業務プロセスの統合
単にシステムを入れ替えるのではなく、各部門(調達/生産/物流/ブランド・マーケティング/財務など)を巻き込み、現場から経営層まで一貫した役割分担とKPI設定を行うことが重要です。 - デジタル技術の活用
S&OPプラットフォーム、需要予測AI、生産スケジューラ、IoTセンサーなど、使い分けるツールをPoCで検証し、自社のニーズに最適な組み合わせを見極める手順を示しました。 - 脱炭素・人権・BCM対応の組み込み
– 脱炭素:サプライチェーン上のGHG(スコープ3)を見える化し、SBTi対応に向けたCO₂管理機能の導入。
– 人権DD:UNGPsに基づくサプライヤーリスク評価と改善プロセスの整備。
– BCM:マルチソーシングと安全在庫分散、リアルタイムアラートで途絶リスクを最小化。
この総括をふまえ、次のステップとして掲げるべきアクションプランを以下に示します。
7.2 次のアクション
自社でグローバルSCMの取り組みを具体化させるために、「調達リスク分析」「ツールリスト作成」「KPI設定ワークショップ」「関係部門ミーティング」「PoC実施」という一連のアクションを推進します。各タスクを表形式で整理しました。
No. | アクション項目 | 内容・目的 | 期限の目安 | 所管部署・担当者例 |
---|---|---|---|---|
1 | 調達リスク分析レポート作成 | ・直接・間接サプライヤーのマッピング・集中度・ボラティリティ分析でリスク可視化 | 1~2ヶ月 | 調達部/SCM改革プロジェクト |
2 | PoC候補ツールのリストアップと比較表作成 | ・Anaplan、Kinaxis、SAP IBP、Asprova、PlanNEL、TCloud for SCM、日通VMIなどをリスト化・機能・コスト・導入期間・サポート面で比較 | 1ヶ月 | IT部/SCM部門 |
3 | 脱炭素・人権DDのKPI設定ワークショップ | ・環境省ガイドライン/国連ガイドラインを参照・CO₂排出量や人権リスクの数値目標を設定 | 1ヶ月 | 環境推進部/CSR部 |
4 | 社内関係部門でのKPI合意形成ミーティング | ・調達・生産・物流・財務部門を交えて、上記KPIの妥当性と目標値を合意形成・ガバナンス体制の検討 | 1ヶ月 | SCM推進委員会 |
5 | 小規模PoCの実施と効果検証(3か月) | ・現状シナリオに合わせたPoCスコープ定義(例:主要拠点1か所で在庫削減効果を検証)・3カ月で定量的成果を評価 | 3ヶ月 | IT部/SCMプロジェクト |
- 調達リスク分析レポート
まずは、調達先の属人化や集中度を測るため、ExcelやBIツールを使って集中度指標(例:ヘルフィンダール・ハーシュマン指数など)と過去の調達金額変動を分析し、レポート化します。 - PoC候補ツールリストと比較表
各ツールの機能、費用、導入期間、サポート実績を網羅的に調査し、比較表を作成。社内決裁者が「どのツールで何を実現できるか」を一目で把握できるようにします。 - 脱炭素・人権DDのKPI設定ワークショップ
環境省の「サプライチェーンGHG算定・削減ガイドライン」や国連の「ビジネスと人権指導原則」を教材に、CO₂排出量目標(例:2030年までにサプライチェーン全体で△%削減)や人権DD実施率(例:100%の主要サプライヤー実施)などを設定。 - 社内関係部門でのKPI合意形成ミーティング
調達、生産、物流、財務、環境・CSR部門が集まり、「自社のサプライチェーン上で何を重視するか」をディスカッションし、数値目標と役割分担を落とし込みます。 - 5. 小規模PoCの実施と効果検証
ツール候補の中から1~2つを選定し、主要拠点や主要品目で試験導入(在庫削減シミュレーション、需要予測連携など)を行います。3カ月で得られた成果(在庫回転率改善、欠品率低減、コスト削減予測など)を経営層に報告し、次の全社展開への合意を得ます。
以上で、本記事は完了です。ここまでお読みいただきありがとうございました。この記事をもとに、ぜひ自社の課題を洗い出し、PoCから全社展開・定着化を進めるロードマップをご検討ください。ご質問やご相談があれば、遠慮なく「デジタル化の窓口」までお問い合わせください。
「物流管理システム」の製品比較表
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- JoyPla
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よくある質問
グローバルSCMと国内SCMの違いは何ですか?
国内SCMは国内拠点中心の在庫管理・生産計画を指し、グローバルSCMは海外含む多拠点を統合して需給・在庫を最適化します。たとえば為替や関税、地政学リスクを考慮する点が大きく異なります。
グローバルSCM導入の初期費用相場はどれくらい?
S&OPプラットフォームであれば年額300万~800万円が目安です。導入支援やカスタマイズで変動するため、自社要件を明確化して見積もりを取得することが重要です。
小規模企業でもグローバルSCMを導入できますか?
SaaS型の安価なPSI・在庫管理ツール(PlanNELなど)を使えば、小規模でも段階的に導入可能です。初めは一部拠点でPoCを行い、有効性を確認したうえで拡張できます。
グローバルSCMで脱炭素対応を始めるには何から着手すべきですか?
まずサプライチェーン上のCO₂排出量を可視化することが第一歩です。mcframe 7 CFPやSAP IBPのサステナビリティ分析機能を使い、サプライヤーごとの数値を把握し、具体的な削減KPIを設定します。
グローバルSCMにおいて、人権デューデリジェンス(DD)はどのツールで容易に実施できますか?
EcoVadisやRiskMethodsが代表的です。EcoVadisはサプライヤーの人権・労働環境をスコアリングし、リスト化でき、RiskMethodsはSNSやニュースからリアルタイムにリスクを検知します。
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