コストリダクションとは｜手順やポイントなど徹底解説

「コストリダクション」とは、英語の「cost（費用）」と「reduction（削減）」を組み合わせた言葉で、中長期的にコストを削減・縮小する取り組みを意味します。近年は、技術革新のペースの早まりやグローバル化の進展により、競争の激化や不安定な市場変動に対応した企業競争力が求められています。こうした環境下で「コストリダクション」は、未来を見据えた、新しいコスト管理手法として注目を集めています。本記事では、「コストリダクション」の手順やポイント、混同されがちな「コストダウン」「コストコンロトール」との違いについて、詳しく解説していきます。

コストリダクションとは

言葉の意味

「コストリダクション」とは、英語の「cost（費用）」と「reduction（削減）」を組み合わせた言葉で、製品やサービスの構造やデザイン、製造プロセスを見直して、中長期的にコストを削減・縮小する取り組みを意味します。

コストリダクションが求められる背景

現在「コストリダクション」が求められている背景には、技術革新のペースの早まりやグローバル化の進展により、競争の激化や不安定な市場変動に耐えうる経営能力が必要とされていることが挙げられます。これまでは、主に「コストダウン」で現在の無駄を削減する“事後対応”で十分でしたが、これからの時代には、未来を見据えた、新しいコスト管理が必要です。「コストリダクション」により、中長期的な視点での利益率向上を図ることで、企業競争力を高めることができます。

「コストダウン」「コストコンロトール」との違い

「コストリダクション」とよく混同されがちな言葉に「コストダウン」や「コストコントロール」があります。いずれも企業がコストを削減し、利益を最大化するための取り組みですが、目的や対象が異なります。

「コストダウン」とは、製品やサービスの大枠を維持しながら、短期的にコストを削減・縮小する取り組みのことです。「コストリダクション」では、製品やサービスそのものを見直すため、取り組みに時間がかかりますが、「コストダウン」は、あくまでも現在の製品やサービスの範囲内で、コストを見直すため、短期間にコスト削減が可能です。一方で、無理に「コストダウン」を進めると、将来的に取引先との関係悪化や必要な人員の不足を招き、製品やサービスの品質低下に繋がる可能性があります。

「コストコントロール」とは、「コストリダクション」や「コストダウン」の計画に基づいて、現場や製造ラインのコスト管理を行って、コストを削減・縮小する取り組みのことです。予算やコスト削減目標を遵守するために、定期的なモニタリングやコストチェックを行って、無駄の削減や支出の最適化を行います。

このように「コストリダクション」で未来を見据えたコスト削減、「コストダウン」で現在のコスト削減を、それぞれ計画・実行して、「コストコントロール」で維持管理する流れで、企業の利益率向上に繋げていきます。３つの言葉の違いを理解し、上手に組み合わせることが、持続可能なコスト削減に有効です。

メリット・デメリット

「コストリダクション」には、メリット・デメリットの両方が存在します。

メリット

「コストリダクション」の最大のメリットは、抜本的な改善により、中長期的にコスト削減効果を得られるダイナミックさです。将来を見通した施策のため、コスト削減のリスク見積りや品質管理の手法などを十分に検討することができ、コスト削減を実現しながらも、品質やサービスレベルを維持することが可能です。また、新しい時代フェーズに、他社に先んじて自社製品やサービスに価格競争力をつけることができ、安定した企業経営に繋がります。

デメリット

一方「コストリダクション」にはデメリットもあります。製品やサービスの構造を大規模に見直すため、コスト削減を目的としながら初期投資が必要です。施行開始や効果の創発にも時間がかかり、直ちにコスト削減効果があらわれるわけではありません。また、製品やサービスの構造を変えることで、従業員や顧客から反発や一時的な混乱に直面するリスクがあります。

以上のように「コストリダクション」には大きな効果がある一方で、デメリットも存在します。「コストリダクション」は、未来を見据えたコスト削減のため、急いで策定する必要はありません。従業員や顧客の意見に耳を傾け、実現可能な施策を検討することが重要です。

コストリダクションの手順

「コストリダクション」は以下の５つのステップを経て実行していきます。それぞれの段階に意味があるので、しっかりと順序立てることが重要です。

Step1.コストの把握

「コストリダクション」を行うには、コストの種類や状態を把握しておく必要があります。5W1H（「When（いつ）」「Where（どこで）」「Who（だれが）」「What（なにを）」「Why（なぜ）」「How（どのように）」）を細かく洗い出すことで、コストの発生場所や関係部署、関連する人物などを把握することができます。5W1Hは、次以降の各ステップをこなすのに必要な情報となるため、なるべく詳細まで把握しましょう。

Step2.削減コストの決定

Step１で抽出したコストの中から、削減に取り組むコストを決定します。特に、相場よりもかかりすぎている項目や、数値が大きい項目は、無駄なコストや省略可能なコストが含まれている可能性があります。

このとき、気を付けたいのは、誤って削減すべきでないコストを削減可能なコストとして選出してしまうことです。相場よりもコストがかかっていても、自社の製品やサービスの品質を維持するために必要な場合もあり得ます。削減してはならないコストを削減した結果、顧客が競合商品に流出したり、安全性が損なわれて多額の賠償を負うケースも考えられます。やみくもに削減コストを選出するのではなく、「削減は可能か？」「本当に無駄か？」「削減後、製品やサービスにどう影響を与えるか」をしっかり考慮する必要があります。

Step3.目標設定

コストリダクションに取り組む項目を選出したら、次は目標を設定します。「いつまでに」「どれだけ」削減するか、目標を立てましょう。目標が曖昧だと、部署や担当者によって取り組み内容に大きな差異が生じ、意図したコスト削減が困難となります。なるべく具体的に期間や削減数量を決定し、社内で共有しましょう。

Step4.削減方法の検討

コストリダクションを実現するためには、新しい手法やルールを設定する必要があります。例えば、これまで手作業で行っていた仕事を自動化するためには、新しいシステムやロボットを導入し、それを使うこなすための教育が必要です。コストを削減するための方法や手順を決定しましょう。

このとき、経営部門が充分に検討して定めた方法でも、急激な手法やルールの変更に現場が追い付かず、混乱や反発が生じることがあります。コスト削減の方法や順序を決定するに当たっては、現場従業員と相談し、現場が受け入れ可能な方法を取り入れることで、社内でコスト削減の理解が浸透しやすくなり、円滑なコスト削減に繋がります。

Step5.実行

目標達成に向けて、Step4で策定した方法を実行します。「コストコントロール」を意識し、部署や担当者ごとに、コスト削減の進捗管理を徹底しましょう。コスト削減が遅れている部署や担当者を発見した場合は、計画通りに削減が進まない事実を叱責するのではなく、コスト削減の障壁となっている要因や背景を聞き取り、必要に応じて追加の対応策を検討しましょう。

「コストリダクション」成功へ向けたポイント

「コストリダクション」を成功させるためには、以下のポイントを欠かさないことが有効です。順番に説明していきます。

1.経営者と従業員でコスト認識を共有

経営者と従業員でコスト意識を共有することで、部門を超えて全社一体となった目標の策定に繋がります。現場従業員が経営側の意向や目標を理解することで、各部門が一致団結して効率化を取り組めるようになります。これにより、現場でもコスト削減意識が高まり、「コストリダクション」施策の実行力が向上します。

2.現場の声を取り入れる

現場の従業員からの意見や提案を受け入れることは、実用的で効果的な改善施策やアイディアの創発に繋がります。現場は、実査の業務に精通しており、改善すべき点や無駄の発見において、経営者とは異なる視点や考えを持っています。企業の経営部門は、業績などの数値的なデータを加味してコスト削減の計画を立案しますが、それが現場において必ずしも実用的とは限りません。現場の声に耳を傾けることで、「コストリダクション」後の混乱を低減し、現場従業員からのコスト削減への理解や協力を得やすくなります。

3.無理ない計画と目標設定

あまりに高い目標を立てすぎると、現場従業員に過度な負荷をかけ、反発や混乱の原因になります。生産を滞らせないためにも、段階的に目標を設定し、進捗に応じて柔軟に計画を見直すことが重要です。現場の負担を軽減させつつ、着実な成果を積み上げる手法をとることで、従業員のモチベーションを維持しつつ、中長期的なコスト削減に繋がります。

4.外部パートナーとの連携

サプライヤーや外部の専門家などと意見交換することも有効です。サプライヤーや専門家が持つ、コスト削減に有効な技術や手法を共有してもらうことで、視野が広がり、有効な経費削減方法の発見や技術導入が可能になります。また、サプライヤー企業に自社の「コストリダクション」の取り組みを共有し、サプライヤーにもコスト削減を実行してもらうことで、サプライヤーからの調達価格を引き下げることに繋がる可能性もあります。

購買管理のコストリダクション

購買業務で「コストリダクション」を行う手法の一つとして、「購買管理システム」の導入による、デジタル化・一元管理化があります。「購買管理システム」の詳細は、以下のサイトで解説しています。

購買管理システムの詳細はこちら

まとめ

このように「コストリダクション」に取り組むことは、様々な良い効果をもたらすことが分かりました。中長期的なコスト削減「コストリダクション」と短期的なコスト削減「コストダウン」を組み合わせ、無駄を省いた盤石な経営体制を構築しましょう。最後になりますが、「コストリダクション」成功のためには、現場従業員の協力は欠かせませんし、場合によっては消費者の理解も必要かもしれません。「コストリダクション」を開始する前に、現場従業員の声や顧客が自社の製品やサービスに求める価値を振り返り、品質や信頼の維持とコスト削減の両立を目指しましょう。