効果的な1on1のやり方とは?「話すこと」や企業の導入事例も紹介
最終更新日:2024/06/07
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目次
上司と部下の信頼関係を築くことは、仕事を進める上で非常に重要です。1on1(または1on1ミーティング)は、信頼関係を構築するための方法として注目されていますが、ただ時間を設けるだけでは効果が出にくいです。従業員のニーズやキャリア目標に合わせた具体的で戦略的なアプローチが必要です。そこでこの記事では以下のポイントに着目して、効果的な1on1を実践するやり方を提供します。
- 1on1の目的とメリット
- 効果的に1on1を進めるためのやり方
- 1on1が効果的に実施できていない原因と対策
- 実際に企業で1on1を実践している事例
- 実際の1on1で「話すこと」の具体例
特に1on1は、やり方によっては、逆効果になることも少なくありません。本記事では、具体的に1on1の進め方を解説していくので、効果的な1on1を実施したい方は是非参考にしてください。
1on1とは
それでは、まず1on1(ワンオンワン)とは何なのかについて改めて解説します。1on1ミーティングは、通常、上司と部下の間で定期的に行われる個別の対話のことを指します。このミーティングの主目的は、部下のキャリア成長や個人的な問題、職務上の課題についてのサポートを提供することです。1on1は、部下のモチベーションを高め、彼らの仕事のパフォーマンスを向上させるために有効な手段とされています。
- 1on1は2人だけの空間で行われ、個々のニーズや懸念に専念する時間が確保される
- 多くの組織では月に1回や週に1回の頻度で行われることが一般的
- 部下が自由に意見や感情を表現できる安全な環境を提供することで、オープンなコミュニケーションができる
- 部下の成長に合わせた具体的なフィードバックやキャリアの指導が行われる
- 部下のキャリア目標達成に向けた具体的な行動計画を設計
1on1ミーティングは、信頼関係の構築と個々の従業員のポテンシャルを最大限に引き出すための効果的な手段として、多くの組織で利活用されています。
MBO面談・人事面談との違い
1on1と似たものとして、MBO(Management by Objectives)面談や人事面談があります。それぞれどのような違いや特徴があるでしょうか?それぞれの特徴を表でまとめると以下の通りです。
種類 | 特徴 |
---|---|
1on1 |
|
MBO面談 |
|
人事面談 |
|
1on1が注目される理由・背景2つ
1on1が注目されるようになった理由として大きいのは、人的資本の考え方の普及によるものです。それには、多様化が求められるようになってきた現代の時代背景が関係しています。具体的にどのような理由なのか、2つの観点から見ていきましょう。
1.多様化する個人やキャリアを捉え、個々人の前提を他者に共有できる
現代の職場は多様性に富み、それぞれの従業員が異なるバックグラウンドやキャリアの目標を持っています。この多様性は企業の強みとなり得ますが、同時に個々人のニーズに合わせたサポートを提供することが組織にとっての課題でもあります。1on1ミーティングは、この課題に対応するための有効な手段です。従業員一人ひとりとの対話を通じて、その人の現在の立場・抱えている課題・将来の目標などを深く理解する機会を提供します。
1on1の価値は以下の点です。
- 個人の職業的成長:従業員のキャリアパスを理解し、それに合わせた支援を提案できる
- 個々の課題への対応:個人が直面している問題を特定し、解決策を一緒に考えられる
- 目標設定のサポート:従業員の目標達成を支援し、達成感を共有する
1on1ミーティングを通じて、管理者は従業員の期待に応え、彼らのキャリアと個人的な成長を支えることが可能です。また、従業員は自身の職業生活における目標や課題について、より深く考える機会を持つことができます。このように、1on1ミーティングは個人と組織双方にとっての成長と発展を促進する貴重な機会となります。
2.個人では捉えにくいビジネスにおける変化を確実に捉えることができる
ビジネス環境は常に変化しています。技術の進歩・市場の変動・消費者の需要の変化など、企業は外部環境の変化に迅速に対応しなければなりません。しかし、組織全体としての変化を個々の従業員が直接的に感じ取ることは困難です。そこで、このギャップを埋めるのに役立つのが1on1ミーティングです。
具体的には、以下のようなメリットがあります。
- 情報の共有:組織全体の変化や戦略に関する情報を直接共有し、理解を深める
- 適応の促進:変化に対する個々の適応計画を立て、フォローアップする
- フィードバックの収集:従業員からの直接的なフィードバックを通じて、変化への対応策を改善する
1on1ミーティングを定期的に行うことで、管理者と従業員は組織の変化についての認識を共有し、それぞれが直面する具体的な課題に対して一緒に取り組むことが可能です。これにより、ビジネスの変化を捉え、迅速に対応するための共通の理解と準備を促進できます。
1on1の目的2つ
次に、1on1ミーティングの根本的な目的に焦点を当て、その目的がどのように従業員と組織に利益をもたらすのかを掘り下げていきます。1on1は単なる形式的なミーティングではなく、より深い意味と目的を持っています。
1.社員同士の関係性構築の実現
1on1ミーティングの主要な目的の一つは、社員同士、特に上司と部下間の信頼関係を築くことにあります。強固な関係性は、コミュニケーションの向上、協力性の強化、そして最終的には組織全体のパフォーマンスの向上に繋がります。
この目的を達成するためには、以下のような点に注意を払う必要があります。
- オープンな対話:双方が心配事や期待などを自由に表現できる雰囲気を作ることが重要
- 個人への理解:それぞれの個性や価値観を理解し、尊重することが基本
- 定期的な実施:1on1を定期的に行うことで、関係性の継続的な強化を図ることが大事
1on1ミーティングを通じて、部下は自身が価値を持ち、組織内での役割が認識されていると感じるようになります。一方、上司は部下の真のポテンシャルやニーズを理解し、それに基づいた支援ができるようになります。このように、1on1は社員同士の関係性を深め、働きやすい職場環境の実現に効果的です。
2.部下の成長の促進・支援
1on1ミーティングは、部下の成長を促進し支援するための強力なツールです。この対話の場を通じて、部下は自身の現在地をしっかり把握して、自身のキャリア目標に向けた具体的なステップを計画することができます。
この過程で重要なポイントは、以下の通りです。
- 個人の目標の明確化:部下自身のキャリア目標を明確にし、それに向けた行動計画を立てること
- 強みと弱みの理解:自身の強みを活かし、弱みを改善する方法を一緒に考えること
- 継続的なフィードバック:定期的なフィードバックを通じて、部下の進捗と成長を確認すること
このように、1on1ミーティングを活用することで、部下は自己実現の道を歩むためのサポートを受けることが可能です。上司はリーダーとして、部下の潜在能力を引き出し、それを最大限に発揮させるための助言や指導を行います。結果として、部下は自分自身の成長を実感し、より高いモチベーションと自信を持って仕事に取り組むことができるようになります。
大きな目的は以上の2つですが、1on1を実施することで具体的にどのような効果やメリットがあるでしょうか?
1on1の具体的な効果/メリット4つ
1on1の実施することによる効果やメリットは様々あります。中でも重要なポイントとして、以下の4つが挙げられます。
1.部下の成長を見届けることができる
1on1ミーティングは、部下の成長過程を密接に観察し、その過程に積極的に関与することになります。要するに、部下が自らのキャリアパスを歩む中で直面するであろう様々な挑戦や成果について、定期的なフィードバックとサポートを通じて、直接的な支援をすることが可能です。
この関わりによって、以下のような効果が期待できます。
- 部下のスキルや知識の向上を実際に目の当たりにすることが可能
- 部下のモチベーションを維持し、自信をつける手助けができる
- 目標達成に向けての進捗状況を定期的にチェックし、適切な調整が可能
このプロセスは、部下にとっても、その成長を認識し、自己実現への道を歩んでいるという実感を持つために重要なものです。また、上司にとっては、部下のポテンシャルを最大限に引き出すことができる機会です。これにより、職場全体の生産性と満足度が高まり、組織としての成長へと繋がります。
2.社員同士の関係性構築により信頼感が生まれる
1on1ミーティングは、部下と上司の間に強い信頼関係を築く基盤となります。信頼は、効果的なコミュニケーション、チームワーク、そして仕事への満足度を高める上で不可欠です。この信頼感を育むためには、次のようなアプローチが有効です。
- 1on1ミーティングを通じて、部下一人ひとりの個性やニーズ・懸念に真剣に耳を傾けること
- 正直かつ建設的なフィードバックを提供し、部下の成長と成功を支援すること
- お互いの立場や視点を理解することで、誤解を防ぎ、より深い人間関係を築くこと
これらのアプローチを通じて、1on1ミーティングは部下と上司の間での信頼を深める貴重な機会となります。信頼関係が強化されると、チーム全体の協力と連携がスムーズになり、組織としての目標達成に向けた道のりが容易になります。
部下だけでなく、仕事やプライベートにも応用可能な、信頼関係を築くためのスキルについて、以下の記事で心理学のプロが解説しています。あわせてご覧ください。
→ ラポール形成の決定版!プロが教える信頼関係を生み出す秘訣| NLP Focus
3.部下の仕事や組織に対する当事者意識を高めることができる
1on1ミーティングは、部下が自分の仕事や組織全体に対してより強い責任感を持つようになるためのキーポイントとなります。当事者意識、つまり「自分のこととして捉える」意識を高めることは、個人のモチベーション向上に直結し、結果として組織全体の生産性の向上に貢献します。この意識を高めるためには、以下のアプローチが効果的です。
- 目標設定の共有:部下と共に具体的な目標を設定し、その達成に向けた役割を明確にする
- 意思決定への参加:組織の意思決定プロセスに部下を積極的に関与させることで、組織への帰属意識を作る
- 成果の認識と評価:部下の貢献や成果を正当に評価し、達成感を感じさせる
1on1ミーティングを定期的に実施することで、部下は自身の仕事の価値と、組織内での役割をより深く理解できます。また、上司との対話を通じて、自分の意見やアイデアが組織の方向性に影響を与えることができるという実感を持つようになります。これにより、部下は自分自身を組織の重要な一員として捉え、より積極的に仕事に取り組めるようになるでしょう。
4.部下の離職防止に繋がる
1on1ミーティングが部下の離職率を低下させる要因となることは、多くの組織にとって注目すべきポイントです。従業員が離職する主な理由の一つに、上司との関係や職場での満足度の低さが挙げられます。定期的な1on1ミーティングは、この問題に対処するための効果的な手段となり得ます。
具体的には、以下のような取り組みが特に重要です。
- 職場での課題への対応:部下が直面している問題や懸念事項について話し合い、解決策を見つける
- キャリアの支援:部下のキャリア目標を理解し、その達成をサポートする
- 感謝の表明:部下の努力や成果に対して感謝を示し、その貢献を認める
これらのアプローチを通じて、1on1ミーティングは部下が職場に対して肯定的な感情を持ち続けるのを助け、離職を防ぎます。従業員が自分の価値を認識し、職場での自分の役割を肯定的に捉えることができるようになると、仕事への献身や組織へのがエンゲージメントが高まります。
1on1の具体的なやり方
これまで1on1ミーティングがもたらす効果やメリットを見てきました。次に、実際の1on1ミーティングの具体的な進め方・手順に焦点を当てていきます。
1.1on1の目的を明確にする
1on1ミーティングを成功させるためには、ミーティングの目的を明確にすることです。目的が明確なことで、会話が具体的で生産的になり、有限である時間を最大限に活用できます。目的を設定する際には、以下の点を考慮することが重要です。
- 個人の成長と発展:部下のキャリアパスや成長機会をサポートすることを目的とする
- 問題解決:現在直面している課題や問題に対する解決策を見つけることを目的とする
- フィードバックの提供と受け取り:相互のフィードバックを通じて、改善点を共有し、成長に繋げることを目的とする
これらの目的を前提に1on1ミーティングを行うことで、上司と部下の間での信頼関係を深めることができます。また、目的だけでなく、目的を果たすために話す内容を考えることも大事です。
◎話したい内容やアドバイスするべき要素を考える
1on1ミーティングの準備段階では、話し合いたい内容や提供すべきアドバイスを事前に検討することが重要です。具体的に話したい内容を決める際には、以下の点を念頭に置くと良いでしょう。
- 成果と進捗:部下の最近の業務成果について話し合い、進捗状況を確認する
- 挑戦と困難:直面している課題や困難について話し合い、可能な解決策を模索する
- 成長と発展:部下のキャリア発展に向けた目標を設定し、達成に必要なスキルや知識についてアドバイスをする
これらのポイントに焦点を当てることで、1on1ミーティングは単なる日常的なチェックインではなく、キャリアや自己成長における重要な機会となり、部下の成長と発展に貢献するものになります。
2.スケジュールの調整を行う
1on1ミーティングを効果的に行うためには、スケジュールを適切に調整することが欠かせません。以下の点に注意してスケジュールを設定しましょう。
- 定期性を持たせる:1on1ミーティングを定期的に行うことで、双方が予期しやすく、準備がしやすくなります。例えば、毎月第1週の月曜日など、固定のパターンを設定すると良いでしょう。
- 十分な時間を確保する:会話を急がせることなく、十分な話し合いができるように、適切な時間を確保します。通常、1時間程度が適切とされますが、話し合う内容によってはそれ以上の時間が必要になることもあります。
- お互いの都合を考慮する:ミーティングの日程を決める際は、部下の業務スケジュールやプライベートの予定も考慮に入れ、最適な時間を選定します。可能であれば、部下に数日前にリマインダーを送るなどして、準備の時間を確保してもらいましょう。
これらのステップを踏むことで、1on1ミーティングを行う際の日程調整がスムーズに実現できます。
3.実際に1on1を行う
スケジュールされた日時で実際に1on1を行う際、次に挙げる4つのポイントを意識すると良いでしょう。
(1)アイスブレイク・チェックイン
1on1ミーティングを始める最初のステップとして、アイスブレイクやチェックインがあります。この段階は、お互いの緊張をほぐし、リラックスした雰囲気を作り出すことを目的としています。以下のような方法で、ミーティングのスタートを切ると良いでしょう。
- 近況の共有:お互いの近況や楽しかった出来事など、軽いトピックから会話を始める
- 気分のチェック:その日の気分や、ミーティングに対する期待を共有する
- 小さな喜びの共有:直近で達成した小さな目標や成功体験を共有する
このようにして、お互いのことをより深く理解することで、信頼関係を築くことに繋がります。また、アイスブレイクやチェックインを行うことで、ミーティングの残りの時間がよりオープンで生産的なものになります。
(2)仕事・テーマに関して、部下の考えを聞く
ミーティングの本題に入る前に、部下の仕事や議題に関する考えを聞くことは非常に重要です。これにより、部下が直面している課題や成果、さらにはキャリアの目標に対する見解を理解することができます。その際に、以下の点に注意して、部下の意見を聞きましょう。
- 開かれた質問をする:部下が自由に意見を表現できるような質問を心がける
- 積極的な聴取を行う:部下の話を中断せず、理解しようとする姿勢を示す
- 質問や懸念に耳を傾ける:部下の質問や不安に対して、真剣に耳を傾ける
開かれた質問や積極的に理解しようとする姿勢を示すことで、心理的安全性を確保することが重要です。部下が話しやすい雰囲気を作ることで、職業的な成長や個人的な成長をサポートするためのヒントを得ることが可能です。
(3)アドバイス・フィードバックを行う
部下から話を聞いた後は、具体的なアドバイスやフィードバックを提供します。この段階では、以下の点に注意して、建設的かつポジティブな方法でフィードバックを行いましょう。
- 具体的な例を挙げる:フィードバックを具体的な例や事実に基づいて行う
- ポジティブなフィードバックを先に:ポジティブな点を先に挙げ、その後で改善すべき点に触れる
- 成長の機会を提案する:改善点だけでなく、成長や学習の機会についても提案する
適切なフィードバックは、部下のモチベーションを高め、今後の成長に向けた道筋を示すことができます。
(4)ネクストアクションを決める
ミーティングの締めくくりとして、次回までのアクションプランを明確にします。これは、ミーティングで話し合った内容を具体的な行動に落とし込むための重要なステップです。以下の方法で、ネクストアクションを決定しましょう。
- 具体的な目標を設定する:達成可能で明確な短期目標を設定する(数値で分かりやすいものだと尚良)
- 担当と期限を明確にする:各アクション項目に対して、誰が何をいつまでに行うのかを決定する
- フォローアップの計画を立てる:次回のミーティングの日程を決め、進捗のチェックとフィードバックのための時間を確保する。
これらのステップにより、お互いに1on1ミーティングは明確な成果をもたらすことができます。
4.次回の1on1を設定する
1on1ミーティングを終えた時点で、次回のミーティングの日程を設定することが非常に重要です。この習慣は、継続的なコミュニケーションと部下の成長のサポートを保証するものです。次回のミーティングを計画する際には、以下を参考にしてください。
- 定期性の確保:ミーティングを一定の頻度で実施することで、部下は自分が評価され、サポートされていると感じることが可能です。例えば、月に1回または2週間に1回のペースを設定することが一般的です。
- 柔軟性を持つ:仕事の繁忙度やプロジェクトの期限に応じて、ミーティングの頻度や長さを調整する柔軟性を持つことが重要です。状況に応じて調整することで、部下との信頼関係をさらに深めることができます。
- 前もってスケジュールを共有:次回のミーティングの日程を早めに決定し、共有することで、双方が適切に準備する時間を持つことができます。また、部下がミーティングに向けて具体的な目標や質問を用意するのにも役立ちます。
これらのステップを踏むことで、1on1ミーティングは単にその場限りの会話ではなく、持続可能な部下の成長と発展を促進する機会となります。また、定期的なミーティングを通じて、部下は自分の仕事に対するフィードバックを得る機会を持ち、自分自身のキャリアパスについて深く考えるきっかけにもなります。
効果的な1on1を実施できていない原因3つ
ここまでで、1on1の具体的なやり方を解説してきましたが、中には効果的な1on1を実施できていないケースも少なくありません。そこで、多くの組織で効果的な1on1が実施できていない原因を探り、改善策の例も挙げます。自社における1on1をより効果的なものにするために参考にしてみてください。
1.業務が忙しいために、1on1の優先度が低い
多くの組織で、1on1ミーティングが効果的に実施されていない一つの大きな理由は、業務の忙しさによるものです。日々の業務に追われる中で、1on1ミーティングの重要性が見過ごされがちです。しかし、これらのミーティングは部下の成長、モチベーション維持、そして最終的には組織全体の生産性向上に直結するため、優先順位を高く設定することが重要です。
以下のアプローチを取り入れることで、忙しさに負けずに1on1を継続できます。
- 時間管理の工夫:業務時間内での小さなスペースを活用するか、あるいは業務の一部として1on1ミーティングを公式に組み込む
- ミーティングの定期化:ミーティングを定期的にスケジュールし、その時間は他の予定を入れられない時間として守る
- 短時間でも実施する:長時間のミーティングが難しい場合、短い時間であっても定期的なコミュニケーションを確保する
1on1ミーティングを業務の一部として捉え、適切な時間管理を行うことで、どんなに忙しい状況でもこれらの重要な対話を維持することが可能になります。
2.上司の一方的なコミュニケーションになってしまっている
1on1ミーティングの効果を損なう一つの大きな要因は、上司の一方的なコミュニケーションです。対話は双方向であるべきですが、しばしば上司が話す時間が多くなり、部下の意見や感想が十分に聞き出されないことがあります。この状況を避け、よりバランスの取れた対話を実現するためには、以下の点を意識することが重要です。
- 積極的な聞き手になる:上司は、部下が話している間はじっくりと聞くことに専念し、質問やフィードバックはその後で行う
- オープンエンドの質問を使う:「はい」や「いいえ」で答えられる質問ではなく、部下の考えや感情を引き出す質問を意識的に使う
- 部下の発言を促す:会話の中で、定期的に部下に意見を求める時間を設け、彼らが自由に発言できる環境を作る
1on1ミーティングは、部下の意見や感情を理解し、彼らの成長をサポートするための貴重な機会です。上司が一方的に話すのではなく、双方向の対話を心がけることで、部下は自分の意見が価値を持っていると感じ、よりオープンにコミュニケーションを取るようになります。このように、心理的安全性を組織内で確保することは、組織全体のコミュニケーションにおける課題を改善する効果があります。
1on1で必要なスキル
「部下の能力開発における1on1ミーティングのプロセスと課題抽出に関する研究-日本教育工学会-」では、1on1を実施するのに必要なスキルを明記しています。以下がそのスキルの内訳です。
ステップ | 部下に働きかける内容 | 必要なスキルや考え方 |
---|---|---|
事前準備 | 振り返りシートを作成してきてもらう | 依頼 相手を信じる リフレクション |
支援表明 | これから能力開発を進めることを表明し、一緒に取り組むよう合意してもらう | 先入観を持たない 説明力 |
目標設定支援 具体化から決定 |
価値観を確認する 達成したい内容を明確にしてもらう |
質問力 傾聴力 フィードバック |
現状理解 | 目標に対して今はどこにいるのか正しく認識してもらう | 質問力 承認力 フィードバック |
ギャップ分析 | 目標と現状のギャップはなぜ起きているのかを考えてもらう | 質問力 リフレクション |
自律誘導 | ギャップを埋めるために何から始めるか決めてもらう 必要な支援があれば表明してもらう |
質問力 動機づけ |
実行確認 | 行動を開始したかどうか、どれくらいできているかを内省してもらう | 観察力 傾聴力 承認力 フィードバック |
くわしくは、こちらをご覧ください。
3.成績評価や業務管理に終始した1on1になってしまっている
1on1ミーティングが単に成績評価や業務の管理に焦点を当てた会話になってしまうと、その真の価値を大きく損なうことになります。このようなミーティングは、部下のモチベーション低下や創造性の抑制に繋がりかねません。1on1の本質は、部下の成長を支援し、彼らのキャリアパスに寄り添うことにあります。この目的を達成するためには、以下のアプローチが効果的です。
- 個人の目標と期待に焦点を当てる:部下のキャリア目標や職場での期待について話し合い、それを支援する方法を探る
- 成長に向けた具体的な行動を議論する:単に成績や成果について話すのではなく、部下の成長に必要なスキルの開発や学習機会について話し合う
- 相互のフィードバックを促す:1on1は上司から部下への一方通行のフィードバックの場ではなく、お互いに学び合い、成長するための機会とする
このように1on1ミーティングを構築することで、部下は自身が会社にとって重要な一員であると感じ、自分の仕事により一層献身的になります。また、創造性やイノベーションが促され、職場全体の雰囲気も改善されます。1on1は、評価や管理を超えて、部下の潜在能力を引き出し、彼らがキャリアで成功するためのサポートを提供する貴重な時間であるべきです。
1on1を効果的に実践するポイント4つ
上記の改善策に加えて、より効果的に1on1を実施するにはポイントがあります。ここでは、効果的な1on1を実現するための実践的なアドバイスを提供し、1on1を通じて部下との関係構築・成長を促進、さらには企業の発展に繋げる方法を紹介します。
1.部下が発言しやすい雰囲気を作る
1on1ミーティングで最も重要なのは、部下が自由に意見を述べられる安心できる環境を作ることです。このような雰囲気があることで、部下は自分の考えや感じていること、抱えている問題をオープンに共有することが可能になります。部下が発言しやすい雰囲気を作るためには、以下の3つが効果的です。
- 肯定的なフィードバックの提供:部下が意見を共有した際は、その取り組みを認め、肯定的なフィードバックをします。これにより、彼らの自信を高め、さらに意見を共有しやすくなります。
- 個人の話を聞く時間の確保:ミーティングの冒頭で、部下の最近の経験や成果について聞くことで、彼らが自分のことを話しやすいと感じるようにします。
- 非評価的な態度を保つ:部下の意見や感情に対して、批判的または評価的でない姿勢を保つことが重要です。これにより、部下は自分の意見が受け入れられると感じ、よりオープンになります。
部下が発言しやすい雰囲気を意識的につくっていくことで、1on1ミーティングは部下の成長と発展を促す有意義な時間となります。
2.社員一人一人の前提が異なることを理解し、個別最適な形でのコミュニケーションを心がける
1on1ミーティングの効果を最大限に引き出すためには、社員一人一人が持つ独自の前提や状況を理解し、それに基づいたコミュニケーションを行うことが不可欠です。人はそれぞれ異なるバックグラウンドや価値観、キャリアの目標を持っており、これらの要素がその人の意見や反応に大きく影響します。そのため、効果的な1on1ミーティングを実施するためには、以下の点を考慮することが重要です。
- 個々のバックグラウンドを理解する:部下の職歴・教育背景・個人的な興味など、その人を形作る要素について理解を深める
- コミュニケーションスタイルを調整する:部下が最も快適と感じるコミュニケーション方法(直接会話・ビデオ通話など)を選択し、それを用いる
- 個人のニーズに対応する:部下一人一人が直面している具体的な課題やニーズに対応し、個別のサポートを提供する
これらのアプローチを通じて、部下は「上司や社内の方々が、自分のことをしっかり考えてくれている」と実感できるようになります。それは、組織全体においてより深い関係性を構築させることに繋がります。
3.ティーチングに留まらず、コーチングも行う
1on1ミーティングを通じて部下の成長を促進するためには、単に指導する(ティーチング)だけでなく、彼らを導き、自己発見させる(コーチング)アプローチも取り入れることが重要です。ティーチングが知識や技能の伝達に焦点を当てるのに対し、コーチングは部下が自身の内面から答えを見つけ出す手助けをします。これにより、部下は自立性を高め、自らの職業生活においてより積極的な役割を果たすようになります。
コーチングを効果的に行うためには、以下の点が効果的です。
- 答えを直接与えるのではなく、開かれた質問を通じて部下自身に考えさせ、自己解決のプロセスをサポート
- 自身の経験や挑戦から学ぶことを奨励し、その反省を今後の行動に活かすよう導く
- 自身で具体的な目標を設定し、それを達成するための行動計画を立てることを支援
コーチングのアプローチを取り入れることで、1on1ミーティングは単なるパフォーマンスの評価の場から、部下の自己成長とキャリア発展を深く掘り下げる機会へと変わります。このような対話は、部下の潜在能力を引き出し、彼ら自身の自己分析やキャリアビジョンを明確にすることのサポートができます。
4.1on1の際に、毎回の記録を取っておく
1on1ミーティングの有効性を高めるためには、会話の内容を記録しておくことが非常に重要です。これにより、過去の議論を振り返ることができ、部下の成長過程を可視化することが可能になります。また、目標達成に向けた進捗状況を追跡し、必要に応じてサポートを強化するための基盤ともなります。記録を効率的に管理し、活用するためには以下の方法が有効です。
- ミーティング中に部下の成果・懸念事項・目標など、重要なポイントを簡潔にメモする
- 合意された行動計画や目標を文書化し、次回のミーティングでのフォローアップのために使う
- 前回のミーティングからの進捗状況を記録し、部下の成長を具体的に把握する
これらの記録にから、部下のキャリア発展において具体的な進捗と成果を促進するための要素を見つけることができます。また、部下に対する継続的なサポートと関心を示すことで、彼らのモチベーション向上にも繋がります。記録を通じて、部下とのコミュニケーションをより一層深め、彼らの成長を共に歩むことができるのです。
企業における1on1の導入事例3つ
ここまで、1on1を成功させるためのポイント・やり方を見てきました。ここからは、実際に1on1を導入している企業の実例を挙げ、実際の1on1の企業での実践方法を見ていきましょう。
1.ヤフー株式会社
1on1の目的や進め方 |
|
---|---|
導入時の課題 |
|
課題解決の方法 |
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効果 |
|
>引用:「1on1ミーティング」で強い組織をつくる 人材育成のための部下とのコミュニケーション
2.サイボウズ株式会社
1on1の目的や進め方 |
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---|---|
導入前の課題 |
|
課題解決の方法 |
|
効果 |
|
3.SOMPOホールディングス
1on1の目的や進め方 |
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---|---|
導入前の課題 |
|
課題解決の方法 |
|
効果 |
|
参考:人材育成
部下の本音を引き出す具体的な質問集
ここからは、1on1の会話において、部下の本音を引き出す質問の具体例を紹介します。今回は、大きく4つのテーマ別に具体例を分けています。部下と上司の1on1をイメージしながら参考にしてみてください。
1.部下のメンタルヘルスや健康に関するテーマ
部下のメンタルヘルスや健康に関するテーマでは、部下の体調やメンタルの健康状態、仕事量や人間関係に関する質問を通じて、部下のエンゲージメント向上や離職防止に繋がる重要な情報を把握します。部下の心身の健康状態は、業務遂行の基礎となるため、定期的な確認が必要です。1on1の機会を通じて、部下が普段話しにくいことや本音も話してくれる可能性があります。
◎具体的な質問例
- 最近、夜は十分に眠れていますか?
- 不眠に悩まされていませんか?
- 週末はリフレッシュできていますか?
- 仕事量が多すぎて、ストレスを感じていませんか?
- 最近、仕事での人間関係で問題を抱えていますか?
- 自身の体調やメンタルに変化を感じることはありますか?
- 健康面で気になることや相談したいことはありますか?
- 社内外での相談相手はいますか?
2.部下のプライベートに関するテーマ
部下のプライベートに関するテーマでは、仕事以外の側面に着目し、部下の趣味や価値観、興味関心を知ることでお互いの理解を深め、信頼関係を築きましょう。プライベートの話題を出すことで、1on1ミーティングをより和やかな雰囲気にし、部下が自然体で話せるようになります。
◎具体的な質問集
- 最近の休日はどのように過ごしていますか?
- 最近で、特に楽しい思い出や興味深い体験はありましたか?
- 趣味や特技はありますか?その魅力や楽しさについて教えてください!
- 最近、買ってよかったものや欲しいと思っているものはありますか?
- 好きな食べ物やレストランはありますか?おすすめの料理や店があれば教えてください!
- 興味を持っていることや学びたいことはありますか?将来的に挑戦したいことは何ですか?
- 最近、特にこだわりを持っているものや取り組んでいることはありますか?
3.部下の評価やキャリアに関するテーマ
部下の評価やキャリアに関するテーマでは、部下の強みや弱み、やりがいを引き出し、将来のキャリアについて考えるきっかけを提供します。部下のキャリアビジョンや興味を理解し、目標設定やキャリア支援を行うことで、部下との信頼関係を深め、成長をサポートします。
◎具体的な質問集
- あなたが自身の強みと考える点は何ですか?
- 弱みと感じる部分は何ですか?その克服方法について考えたことはありますか?
- 仕事で最も、やりがいを感じる瞬間はありますか?その理由を教えてください。
- 一番得意だと思っている業務は何ですか?
- 成長する上で克服すべき課題と感じることは何ですか?その課題を克服するための取り組みはありますか?
- 将来的に挑戦したいと思う仕事やポジションはありますか?それに向けてどのような準備をしていますか?
4.部下の業務・組織改善に関するテーマ
部下の業務・組織改善に関するテーマでは、部下が普段なかなか話さない業務や組織に関する課題に焦点を当てます。業務上の緊急性がある課題以外にも、部下が感じている改善の余地や人間関係のトラブルなども話題として取り上げます。1on1ミーティングにおいて、部下の本音を聞き取ることで、業務・組織の改善につなげます。
◎具体的な質問集
- 業務で課題だと思っていることは何ですか?どのように改善できると思いますか?
- もっと効率的に働くために自分(上司)ができることはありますか?
- チームで改善できると思うことは何ですか?そのためにどのような取り組みが必要ですか?
- 人間関係で何かトラブルや課題はありますか?どのように対処すればよいと思いますか?
- 今後挑戦してみたいと思っている業務やプロジェクトはありますか?その業務やプロジェクトに対する具体的な意気込みや取り組み方を教えてください。
【項目ごと】部下が上司に1on1ミーティングで話すこと・質問集
ここでは、部下が上司に1on1ミーティングで話すことや質問の参考例をまとめています。様々な項目に対して、話すことや質問などをまとめています。1on1の実践において、会話や文脈の流れに応じて適宜利活用してみてください。
項目 | 質問内容 |
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上司に意見を求める |
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優先事項と上司が期待することの明確化 |
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組織や戦略とのすり合わせ |
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成長機会とキャリアの進展 |
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上司から業務のフィードバックをもらう |
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上司との関係性構築を実践する |
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上司の手助けをする |
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参考:28 Questions to Ask Your Boss in Your One-on-Ones(Harbard Business Review)
【項目ごと】上司が部下に1on1ミーティングで話すこと・質問集
ここでは、上司が部下に1on1ミーティングで話すことや質問の参考例をまとめています。様々な項目に対して、話すことや質問などをまとめています。1on1の実践において、会話や文脈の流れに応じて適宜利活用してみてください。
項目 | 質問内容 |
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一般的なチェックインの質問 |
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会社と個人に関する質問 |
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進捗に関する質問 |
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関係性に関する質問 |
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キャリア目標に関する質問 |
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1on1の終わりに行う質問 |
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参考:24 great one-on-one meeting questions(Culture Amp)
1on1ミーティングを導入し、組織内での関係構築を実現しましょう
1on1ミーティングは、上司と部下が1対1で行う面談のことです。定期的に1on1を実施することで、部下の成長を支援し、組織全体のパフォーマンス向上に繋げることができます。1on1ミーティングを効果的に運用するためには、組織全体にその重要性を浸透させることが不可欠です。具体的な運用方法としては、事前準備や1on1ミーティングの目的の策定などが挙げられます。
1on1ミーティングは、業務や状況に関する情報共有だけでなく、部下と上司による1対1の関係性構築の機会でもあります。1on1ミーティングを定期的に実施することで、部下との関係性構築を実現し、所属組織の成果に繋げることができます。本記事による導入事例や具体的な質問例を参考に、貴社においてもぜひ1on1ミーティングの導入を検討してみてください。
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