Anaplanの料金、特徴、主要機能を解説｜生成AI CoPlannerと実績3選もご紹介【2025年最新版】

本記事は、主に大企業・グローバル企業、ならびに一定規模以上の中堅企業向けのxP&A（拡張計画および分析）プラットフォームである「Anaplan」（アナプラン）について、その全貌を解説します。「Anaplan」の大きな特徴は、財務・サプライチェーン・営業・人事の計画を単一プラットフォームに統合する「Connected Planning」と、生成AI「Anaplan CoPlanner」を搭載したAI機能です。これにより、計画プロセスの高速化と精度向上を実現し、ベンダーが公開している導入事例では、予算編成時間を約66%短縮したケースや、在庫を約15%削減したケースなど、具体的な成果が報告されています。記事では、「Anaplan」の主要な4大ソリューションと、Fortune 50のほぼ半数が採用する信頼性を紹介。同時に、導入コストが高額になりやすい点や、モデル設計の難易度といったハードルも隠さずに解説し、他の主要なxP&A製品（Planful、Workday Adaptive Planningなど）との比較検討ポイントを明確にします。最終的に、貴社の複雑な計画ニーズに対し、「Anaplan」が「最適解」であるかを見極めるための3つの重要論点を提示します。

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1. Anaplanとは？「Connected Planning」で部門を繋ぐ全社計画プラットフォーム

「Anaplan」は、AIを組み込んだクラウド型のシナリオ・プランニング／分析プラットフォームです。これは単なる予算管理ツールではなく、財務、サプライチェーン、営業、人事など、企業全体のあらゆる計画業務を一つのクラウド基盤に統合し、全社的な意思決定を支援するxP&A（拡張計画および分析）領域の代表的な製品と位置づけられます。

Anaplanの基本：Excelの分断を解消

「Anaplan」の最大のコンセプトは、部門ごとにバラバラだった計画業務を一つにつなぐ「Connected Planning」の実現です。従来の経営管理（EPM）ツールが主に財務に特化していたのに対し、「Anaplan」はこれを全社に拡張しました。

「Anaplan」が掲げるキーメッセージは「サイロ化を過去のものに（Make silos a thing of the past）」であり、部門を横断したシミュレーションと、それに基づく迅速な意思決定を可能にすることが、「Anaplan」の中核思想です。

Connected Planningが実現する「計画のリアルタイム連携」

「Connected Planning」とは、財務、営業、サプライチェーンなどの部門が持つ計画モデルやデータを統合し、部門間の影響をリアルタイムでシミュレーションできる状態を指します。これにより、ある部門での変更が他の部門にどのような影響を与えるかを瞬時に把握できます。

例えば、サプライチェーン部門で原材料の価格高騰（原価変動）を計画に組み込んだ場合、その影響が即座に財務部門の利益計画や営業部門の価格戦略に反映され、全社で一貫したアクションを取ることが可能です。

この仕組みは、長年の課題であったExcelによる「バケツリレー」や、部門間のデータの食い違い、サイロ化を解消するために設計されており、企業が直面する変動要因（インフレ、為替、需要変動など）に対する対応力を劇的に高めます。

「Connected Planning」が解決できる主要な課題は以下の3点です。

• 部門サイロの解消：部門間の計画データとプロセスを一元化し、データの不整合を排除します
• Excel依存からの脱却：煩雑なマニュアル作業、バージョン管理、集計負荷を解消します
• 計画サイクルの高速化：シミュレーションと再計算をリアルタイムで行い、月次や週次のローリング予測を定着させます

中核技術「Hyperblock」とExcelライクな操作性

「Anaplan」が大規模かつ複雑な計画を高速に処理できるのは、独自のインメモリ型計算エンジン「Hyperblock」テクノロジーのおかげです。

「Hyperblock」は、数千から数万にも及ぶ拠点、製品（SKU）、勘定科目といった多次元のデータを、メモリ上で瞬時に集計・再計算することを可能にします。これにより、シナリオの条件を少し変えただけで結果が数秒で反映されるため、経営層は「もし〜ならば」という問いかけを何度でも、かつ深く行うことが可能になります。

一方で、その操作性やモデル構築のインターフェースはExcelに非常に類似しています。プログラミング言語を使う必要はありませんが、柔軟な多次元モデルを効率的に設計・メンテナンスするためには、専門知識（モデルビルダー）が求められます。この「Excelライクな操作性」と「大規模データ対応の技術力」の両立が、「Anaplan」が多くのグローバル大企業に選ばれている大きな理由です。

上記の表は、「Anaplan」の概念的な特徴をまとめたものです。Connected Planningによって部門間の連携が強化され、「Hyperblock」によってその連携・計算が高速に行われることが分かります。

2. AnaplanにおけるAI活用の最前線：計画の精度とサイクルを革新する

「Anaplan」は、単なるデータ集計・シミュレーションツールではなく、AI（人工知能）および生成AIを計画プロセスに深く組み込むことで、計画の精度向上、意思決定の高速化、利用体験の革新を同時に実現しています。AI機能は、人手による分析やシナリオ作成の負荷を大幅に軽減する役割を果たします。

生成AI「Anaplan CoPlanner」がもたらす革新

2024年に発表された会話型の生成AI「Anaplan CoPlanner」は、「Anaplan」のプラットフォーム体験を劇的に変えるものです。これは、複雑なモデル操作やシナリオ分析を、自然言語での対話を通じて可能にする機能です。

従来の計画ツールでは、ユーザーがモデルの構造を理解し、手動で条件やパラメータを変更する必要がありました。しかし、「Anaplan CoPlanner」の登場により、経営層や部門担当者は「原材料コストが10%上がった場合、来月の粗利益はどうなるか、最も影響が大きい製品は何か？」といった質問を自然な言葉で投げかけるだけで、AIが複数の計画シナリオを即座に生成し、結果を解説できるようになります。

この機能は、Demand Planning（需要計画）やIntegrated Financial Planning（統合財務計画）といったアプリケーションから順次展開されており、専門的なモデルビルダーでなくても高度な分析が可能になり、計画プロセスの民主化を推進することが期待されています。

従来のAI機能「PlanIQ」による高度な予測と計画自動化

「Anaplan」は生成AI以前から、機械学習を活用した高度な予測機能である「PlanIQ」を搭載してきました。「PlanIQ」は、過去の計画データや実績データに加え、外部データ（為替レート、季節性、祝日など）を統合的に分析し、予測モデルを自動で構築・最適化します。

この機能により、特にサプライチェーンにおける需要予測や、売上フォーキャストの精度を大幅に高めることが可能です。

• 需要予測の自動化：
  過去の実績や季節要因などに基づき、最も精度の高い予測アルゴリズムをAIが自動で選択し適用します
• 変動要因の分析：
  計画値と実績値の差異が発生した場合、その主要な原因（インフレ、為替、供給制約など）を特定し、次の計画に反映するための洞察を提供します
• ローリング予測の定着：
  月次や週次の予測更新（ローリング予測）において、データ収集・集計・予測モデルへの入力といった手作業の大部分をAIが代行し、計画サイクルを短縮します

AI活用が実現する「高速な意思決定サイクル」

「Anaplan」のAI機能の統合は、企業における計画業務のボトルネックを解消し、意思決定サイクルを劇的に高速化させます。

従来のプロセスでは、データ収集・集計・分析・レポーティングに数週間かかることも珍しくありませんでした。しかし、AIの支援により、人手による分析・シナリオ生成の時間が短縮され、「データ収集→洞察→計画立案」のプロセスが数時間、あるいはリアルタイムで完結できるようになります。

次の表は、「Anaplan」が提供するAI機能とその役割をまとめたものです。

上記の表から、「Anaplan」のAIは予測精度を高める「PlanIQ」と、計画の実行・分析を容易にする「Anaplan CoPlanner」の二層構造で構成されていることが分かります。これにより、企業は計画業務のDXを強力に推進できます。

3. Anaplanの主要機能と4大業務ソリューション

「Anaplan」は、単一のプラットフォーム上で全社の計画業務をカバーするために、財務だけでなく、サプライチェーン、営業、人事の各部門に特化したアプリケーション・テンプレートを提供しています。これにより、部門ごとに最適な計画プロセスを構築しつつ、データを一元的に統合することが可能です。

①ファイナンス（FP&A）ソリューション

「Anaplan」の利用において中核となるのが、FP&A（Financial Planning & Analysis）を担うファイナンスソリューションです。これは、従来の予算管理ツールやスプレッドシートが抱える課題を解決し、経営管理の高度化を実現します。

主な機能は、予算編成、予実管理、中期経営計画の策定と管理です。特に、為替、原価、売上などの変動要素を組み合わせたシナリオ比較（シミュレーション）に強みがあり、多角的な視点から経営判断を下すための基盤を提供します。また、近年「Financial Consolidation & Reporting」領域のソリューションも強化され、連結・財務レポーティング機能も充実しています。

②サプライチェーン・S&OP/IBPソリューション

サプライチェーン部門では、需要予測、在庫・補充計画、S&OP（Sales and Operations Planning）／IBP（Integrated Business Planning）の領域で「Anaplan」が活用されます。

サプライチェーンの計画は、需要の変動やサプライヤーからの制約など、非常に複雑な要因が絡み合います。「Anaplan」を活用することで、需要変動や原材料価格のシナリオ分析をリアルタイムで行い、過剰在庫のリスクを削減しつつ、サービスレベルの維持を目指すことが可能になります。

• 需要予測の高度化：
  AI（PlanIQ）を活用し、より高精度な予測モデルを構築
• 在庫・補充計画：
  販売計画と在庫計画を連動させ、リードタイムとコストを考慮した最適化
• S&OP/IBPの統合：
  営業、生産、財務が同じプラットフォームで計画を共有し、月次の会議プロセスを効率化

③営業・マーケティング（Sales & Marketing）ソリューション

営業・マーケティング部門では、収益計画の精度向上と営業リソースの最適化が主な利用目的です。

具体的には、営業担当のエリアとノルマを設定するテリトリー＆クオータ設計や、パイプライン管理と連動した売上フォーキャスト（見通し）の精度向上に役立ちます。また、ファイナンス計画と連携することで、マーケティング投資が実際にどの程度の売上に貢献しているかというパフォーマンス管理も可能です。

営業計画がリアルタイムで財務計画に反映されることで、経営層は計画達成に向けた追加の施策やリソース配分を迅速に判断できるようになります。

④ワークフォース（HR & Workforce）ソリューション

人事部門では、人材戦略と財務計画を密接に連携させるための計画に「Anaplan」が利用されます。

主な機能は、必要な人員数（ヘッドカウント）と人件費の計画、そしてスキル別・拠点別の採用／退職／配置のシナリオ管理です。これにより、人員計画が財務のP/L（損益計算書）にどのような影響を与えるかを常にシミュレーションしながら、最適な人員配置戦略を立案できます。このHRとファイナンスの連携による計画は、「継続的ワークフォースプランニング」と呼ばれ、「Anaplan」のConnected Planning思想を象徴するソリューションの一つです。

4. Anaplanの信頼性と導入実績：大企業・グローバル企業が選ぶ理由

「Anaplan」がハイエンドのxP&Aプラットフォームとして多くの大企業に選ばれている背景には、その開発元の高い信頼性と、グローバルでの豊富な導入実績があります。特に、複雑で大規模な計画を扱うグローバル企業にとって、その実績と技術基盤は選定の大きな理由となります。

開発元（Anaplan Inc.）の企業概要と信頼性

「Anaplan」は、「Anaplan Inc.」によって開発・提供されています。同社は、全社的な計画を統合するというConnected Planningの思想のもと、このクラウドプラットフォームを提供し続けてきました。

「Anaplan」は、現在世界で2,500社以上の顧客を持ち、Fortune 50（売上高上位50社）のほぼ半数が採用していると公表されています。この実績は、同プラットフォームが大規模企業が求める高度なセキュリティ、ガバナンス、そしてパフォーマンス要件を満たしていることの何よりの証拠です。

日本法人である「Anaplanジャパン株式会社」は2016年に設立され、2022年時点の報道では国内導入企業は約200社とされ、日本国内でも着実に大企業への採用が広がっています。

この表から、「Anaplan」がグローバル市場でいかに強固な地位を確立しているかが分かります。特に、Fortune 50での採用実績は、その信頼性の高さを裏付けています。

日本国内の導入企業と業種の傾向

日本国内では、特に長年Excelによる計画業務が複雑化していた企業や、グローバル標準のプロセスを導入したい企業で「Anaplan」の導入が進んでいます。

国内の導入企業には、日産自動車、セブン＆アイ・ホールディングス、三菱地所、森永乳業など、製造、小売、不動産、消費財といった多様な業種の大手企業が名を連ねています。

これらの企業に共通するのは、拠点や事業部が多数存在し、為替や原材料価格、需要変動などの外部要因が多く、シナリオ分析の重要度が極めて高いという課題傾向です。「Anaplan」は、ERPの標準機能だけでは追いつかない、粒度の細かい現場の計画や需給計画の高度化に役立っています。

導入効果を示す数値事例3選

「Anaplan」の導入は、計画業務の工数削減だけでなく、意思決定の迅速化や業績改善に直結する定量的な効果をもたらしています。ここでは、具体的な数値で示された導入事例を3件紹介します。

事例1：【ダイキン工業】脱Excelによる計画サイクルの短縮と「ローリング予測」の実現

グローバル空調メーカーの「ダイキン工業」では、世界中の拠点からの予算データ収集・集計に膨大な工数を要しており、市場変化への即応が課題でした。 同社は「Anaplan」を導入し、Excelベースのバケツリレー業務を廃止。その結果、集計業務にかかる時間を劇的に短縮し、予算編成プロセスの工数を大幅に削減しました。さらに、余出したリソースを活用することで、従来の固定的な年次予算から、月次で18ヶ月先を見通す「ローリングフォーキャスト」へと経営管理手法を進化させました。これは「Anaplan」独自の「Hyperblock」技術による高速計算が、グローバル規模でのリアルタイムな意思決定を可能にした好例です。

事例2：【Carter’s（カーターズ）】需給連携による在庫削減とキャッシュフロー改善

北米最大手の子供服ブランド 「Carter’s」 は、サプライチェーン計画に「Anaplan」を導入し、分断されていた「需要予測」「在庫計画」「補充計画」を単一プラットフォーム上で統合しました。 部門を超えたデータ連携により需要予測の精度が向上した結果、在庫回転率の向上と欠品率の低下を同時に実現。過剰在庫の削減は、同社のキャッシュフロー改善に直接的なインパクトを与えています。これは、複雑なSKU（商品数）を抱える小売・流通業において、「Anaplan」が「利益を生むサプライチェーン」構築に寄与した代表的な事例です。

事例3：【OpusCapita】人事・財務の連携による人件費計画の迅速化

金融プロセス自動化サービスを提供する「 OpusCapita」 では、複雑な組織構造における人件費シミュレーションとレポート作成の非効率性が課題でした。 「Anaplan」を活用して人事部門（HR）と財務部門が同一データを参照できる環境を構築した結果、計画策定にかかるリードタイムを従来の約80%短縮することに成功しました。人件費はサービス業における最大のコスト要因ですが、このプロセスが迅速化されたことで、経営層はより精緻な将来予測の元、スピーディーな投資判断を行えるようになりました。

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5. Anaplanのメリット・デメリット｜他製品との徹底比較ポイント

「Anaplan」は高度な機能と実績を持つ一方で、導入コストや難易度といった側面も持ち合わせています。ここでは、「Anaplan」のメリットとデメリットを中立的に評価し、導入検討の際に必ず比較される競合製品との決定的な違いを解説します。

Anaplanのメリット5選

「Anaplan」は、特に大規模なグローバル企業や、部門間の計画統合に課題を持つ企業にとって強力な解決策となります。

• 部門横断のConnected Planning：
  財務、サプライチェーン、営業など、全社の計画を単一プラットフォームでリアルタイムに連携できる設計思想が最も大きな強みです。
• Hyperblockによる高速計算：
  独自のインメモリ計算エンジン「Hyperblock」により、数百万のセルに及ぶ大規模で複雑なデータでも瞬時にシミュレーション結果を算出します。
• 大企業向けの信頼性と実績：
  世界で2,500社以上の顧客、Fortune 50のほぼ半数が採用しており、高度なガバナンスとセキュリティ、大規模運用に耐える実績が蓄積されています。
• AI・生成AIによる計画サイクル高速化：
  「PlanIQ」による高精度な予測に加え、生成AI「Anaplan CoPlanner」により、自然言語で複雑なシナリオ分析が可能になり、意思決定プロセスが加速します。
• グローバル対応：
  多通貨、多言語、多階層の組織構造に対応しており、グローバルな計画プロセスの標準化に適しています。

Anaplanのデメリット3選

「Anaplan」はハイエンドなソリューションであるため、導入にあたっては以下の3点に注意が必要です。

• 高めのコスト：
  中堅から大企業向けの価格帯であり、ライセンス費用や導入費用が高額になりがちです。小規模な予算管理のみが目的の場合、費用対効果が合わない可能性があります。
• モデル設計の難易度と人材要件：
  プログラミングは不要ですが、柔軟なモデリングには専門知識が求められ、育成または外部パートナーへの依存が発生します。
• 導入成功に組織改革が必須：
  Connected Planningの真価を発揮するには、ツール導入だけでなく、データ定義の標準化や部門横断のプロセス設計といった組織全体での覚悟とガバナンス設計が不可欠です。

主要xP&A/EPM製品との比較検討ポイント

「Anaplan」の導入を検討する際、企業は通常、他の主要なEPM（経営管理）やxP&A製品と比較検討します。ここでは、「Anaplan」を他の製品と区別する決定的な比較軸を示します。

上記の表は、主要なxP&A/EPM製品の比較ポイントを整理したものです。「Anaplan」は、特に部門をまたぐ計画の統合のしやすさと、AI・生成AIによる計画の実行支援において優位性を持っていることが分かります。

企業がAnaplanを選ぶべき決定的な理由

他の製品もEPM/xP&A機能を提供していますが、「Anaplan」が持つ「Connected Planning」の設計思想と、AI機能の統合は、決定的な差別化要因となります。

もし貴社が、財務以外の部門（SCM、営業、人事）の計画までを一貫したシナリオで動かし、その連携を高速化したいと考えるならば、「Anaplan」が最もフィットする可能性が高いです。また、最先端の生成AIを活用して、より直感的かつスピーディーに経営層がシナリオ分析を行える環境を求める場合にも、「Anaplan」は有力な選択肢となります。

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6. Anaplanの導入プロセス・コスト

「Anaplan」は、大規模で複雑な計画を統合できる高性能なプラットフォームですが、その反面、導入には一定のハードルが存在します。特に、ライセンス・導入コストの高さ、モデル設計の専門性、そして導入成功に不可欠な組織改革の必要性を事前に理解しておく必要があります。

ライセンス・導入コストが高額になる理由

「Anaplan」は、グローバル大企業を主要ターゲットとするハイエンドのxP&Aソリューションです。そのため、ライセンス費用は中堅企業〜大企業向けの高額な価格帯に設定されています。

コストが高額になる主な理由は、「Hyperblock」という独自の高速計算技術と、財務、SCM、営業、人事など全社の計画をカバーするための広範なアプリケーションテンプレート、そして高度なAI機能（PlanIQやCoPlannerなど）を提供している点にあります。単一部門の単純な予算管理のみを目的とする場合、機能がオーバースペックとなり、費用対効果が見合わない可能性が高くなります。

導入時に発生する費用は、大きく分けてライセンス費用（月額・年額）と、モデル構築・プロセス設計を支援するパートナーへの初期導入費用の二つがあります。

この表に示すように、「Anaplan」の導入コストは、利用規模やモデルの複雑さによって大きく変動するため、必ず複数の国内パートナーに見積もりを依頼し、費用感を把握する必要があります。

価格が非公開である背景と見積もり前提となる要素

「Anaplan」の公式サイトに具体的な価格情報が記載されていないのは、提供される機能やライセンス形態が、企業のユーザー数、モデルの複雑性、そして利用部門の範囲によって大きく変わるためです。

特に、「Anaplan」の価値である「Connected Planning」を実現するためには、どの部門の計画を、どの粒度で、どれだけ連携させるかという要件定義が重要になります。これがそのまま必要なモデルの数や、ライセンスの種類に直結します。

見積もりに影響する主な要素

• ユーザー数とライセンスタイプ：
  モデルを構築・編集する「モデルビルダー」と、データを閲覧・入力する「エンドユーザー」の割合
• モデルの複雑性：
  扱う事業部、拠点、製品（SKU）の数、およびデータ連携の頻度と量
• 利用ソリューションの範囲：
  財務のみか、SCMや営業など複数部門を横断するか

したがって、検討の初期段階で価格を知ることは難しく、まずは自社の「計画の複雑性」と「連携ニーズ」を明確にし、その上で適切な見積もりを依頼することが重要となります。

最も難しい「モデル設計」と「Connected Planning」実現のための組織改革

「Anaplan」導入の最大のハードルは、コスト以上に、「モデル設計の難易度」と「組織側の覚悟」にあると言えます。

「Anaplan」は柔軟なモデリングが可能ですが、その柔軟性ゆえに、自社の計画プロセスを最も効率的かつ将来的に拡張しやすい形でシステムに落とし込む「モデル設計（モデリング）」には、深い業務知識とシステム知識の両方が必要です。このモデル設計を担う専門人材（Anaplanモデルビルダー）は、まだ人材市場でも希少です。

さらに、ツールを導入しただけでは部門間のサイロ化は解消されません。「Connected Planning」を成功させるには、部門ごとにバラバラだったデータ定義を標準化し、誰がどの粒度で計画を持つかというガバナンス設計、そして組織横断のプロセス設計といった組織全体の業務改革（BPR）が不可欠です。ここを詰めずに導入を進めると、「高価な予算管理ツール」に留まるリスクが高まります。

7.【まとめ】導入前の3つの重要ポイント

「Anaplan」は、部門間のサイロ化を解消し、AIによる高速な意思決定サイクルを実現する、大規模企業向けの強力なxP&Aプラットフォームです。しかし、高額な投資に見合う効果を得るためには、導入前に自社の体制や目的を深く掘り下げておく必要があります。

Anaplanが「最適解」かを判断する3つのポイント

「Anaplan」は万能なツールではありません。特に、中堅企業や単純な予算管理のみを目的とする企業にとってはオーバースペックとなる可能性があります。貴社にとって「Anaplan」が最適解かどうかを判断するために、以下の3つの論点を整理してください。

1. 「Connected Planning」に耐えうる組織的な覚悟があるか：
   「Anaplan」の最大の価値は、財務、SCM、営業、人事の計画を統合することです。部門ごとのプロセスやデータ定義の標準化、組織横断的なガバナンス設計を伴う業務改革（BPR）の意思と覚悟が、経営層・IT部門・各部門長にあるかが問われます。
2. モデル設計を担う人材（内製orパートナー）は確保できるか：
   柔軟なモデリングを活かすには、自社の複雑な計画ロジックをシステムに落とし込む「モデルビルダー」が必要です。社内での育成リソース、または信頼できる国内パートナーからの継続的な支援体制を確保できるかが、導入後の運用定着率を左右します。
3. 初期投資額と見込まれるROI（導入効果）が釣り合うか：
   高額な初期費用とランニングコストを投じて、「ローリング予測の定着」「工数50〜70%削減」「在庫15%削減」といった具体的な定量効果（ROI）が見込めるか、事前にシミュレーションを行う必要があります。小規模な改善ニーズであれば、より安価で軽量な予算管理パッケージで十分な場合もあります。

まずは信頼できる国内パートナーに相談すべき理由

「Anaplan」の料金は非公開であり、モデル構築の難易度が高いため、自社だけで導入の可否や費用対効果を判断することは困難です。そのため、導入検討の初期段階で、信頼できる国内パートナーに相談することが極めて重要となります。

国内パートナー（富士通、PwC、日鉄ソリューションズなど）は、業界特化のテンプレートや知見を持っており、貴社の複雑な業務要件を踏まえた上での適切なモデル設計の支援、導入コストの見積もり、そして運用後の内製化支援を提供します。

「Anaplan」は、グローバルでの競争力を高め、予測不能な市場変化に対応するための「計画業務DX」を実現する強力なツールです。上記の重要論点をクリアできると判断できるならば、ぜひ一歩踏み込んで具体的なパートナーの提案を受けてみてください。