原価管理システム比較6選 ｜建設業向けの選び方5つのポイント【2025年最新】

「どの案件が儲かっているのか正確に分からない」「集計作業に追われ、経営判断が遅れる」。多くの建設企業が抱えるこれらの悩みは、近年の資材高騰や労働時間規制（2024年問題）により、看過できない経営リスクへと変わりました。

限界を迎えたExcel管理や「ドンブリ勘定」から脱却し、リアルタイムで正確な収支を把握できる「原価管理システム」への移行が、今まさに求められています。

本記事では、システム導入による具体的なメリットやExcel管理との決定的な違い、失敗しない5つの選定基準、そして建設業の実態に即したおすすめ製品6選を徹底解説します。正確な原価の「見える化」で利益体質への変革を実現しましょう。

1. なぜ今「原価管理システム」が必要なのか？

「どの案件が・なぜ儲かったのか（損したのか）」が不明瞭な「ドンブリ勘定」は、現代の企業経営において大きなリスクとなります。Excel（エクセル）での集計作業の限界、慢性的な資材価格の高騰、そして「建設業における2024年問題」に代表される労務費の上昇など、企業を取り巻くコスト環境は厳しさを増しています。これらの課題を解決し、利益を確保できる経営体質へ変革するために、正確な原価をリアルタイムで把握できる「原価管理システム」の導入が不可欠となっているのです。

建設業における2024年問題について詳しくはこちら > 時間外労働の上限規制 | 働き方改革特設サイト | 厚生労働省

1.1 Excel集計の限界と「ドンブリ勘定」のリスク

多くの企業で、原価管理は表計算ソフトのExcelを用いて行われています。しかし、事業規模の拡大や管理項目の複雑化に伴い、手作業ベースのExcel管理は限界を迎えています。

具体的には、以下のようなリスクが常に付きまといます。

• データの入力ミスや計算式の破損：手入力や関数のコピー＆ペースト（コピペ）によるヒューマンエラーが発生しやすい
• 集計作業の遅延：複数部門や拠点からExcelファイルを集め、突合・集計する作業に膨大な時間がかかり、月次決算の遅れに直結する
• データの属人化：特定の担当者しか分からない複雑なマクロや関数が組まれ、その担当者の退職や異動で業務が停止する（いわゆる「Excel職人」問題）
• リアルタイム性の欠如：集計が完了した時点ではすでに過去のデータであり、経営判断にスピード感が持てない

結果として、正確な原価が分からないまま経営判断を行う「ドンブリ勘定」にならざるを得ず、赤字案件の発生に気づいた時には手遅れ、という事態を招く危険性があるのです。

1.2 読者の共通課題：正確な原価が分からない、利益の出る案件が不明

経営者や経理部長、現場の部門長は以下のような課題を抱えています。

• 「現場からの日報や経費精算が遅れ、原価の確定が翌月半ばになる…」
• 「複数の案件にまたがる共通経費（間接費）の配賦ルールが曖昧で、担当者のさじ加減になっている…」
• 「期初に立てた実行予算と、期末の実績原価がいつも大きく乖離（かいり）してしまう…」
• 「結局、どの製品（案件）が本当に利益を生んでいて、どれが赤字（原価割れ）なのか正確に分からない…」

これらの課題は、多くの企業に共通する悩みと言えます。

次の表は、Excel管理でよく発生する課題と、原価管理システムによる解決策を比較したものです。

このように、手作業では限界があった「正確なデータ収集」と「リアルタイムな集計」の壁を越えることが、課題解決の鍵となります。

1.3 結論：システム化で「原価の見える化」と「業務効率化」を実現する

本記事がゴールとして提示するのは、原価管理システムの導入によって「経営判断のための原価の見える化」と「現場・経理の業務効率化」を同時に実現することです。

システム導入の最大の目的は、経営者が「今、打つべき一手」を判断するための正確な羅針盤を手に入れることです。リアルタイムで原価が可視化されれば、不採算案件からの早期撤退や、利益が出ている分野へのリソース集中など、迅速な経営判断が可能になります。

同時に、これまでExcelへの転記・集計作業に費やしていた現場や経理部門の二重入力の手間を大幅に削減できます。

ただし、信頼性の観点から補足すると、単にシステムを導入するだけでは成功しません。導入を機に、現場の入力ルールや社内の業務フロー全体を見直すことが、その効果を最大化する上で非常に重要です。

2. 原価管理システムとは？Excel管理との決定的な違い

原価管理システムとは、企業活動で発生する原価（材料費、労務費、外注費、経費など）の算出に必要なデータを一元的に管理し、集計や分析を自動化する専門のITツールです。Excel（エクセル）による手作業の管理と比較した場合、その決定的な違いは「データのリアルタイム性」と「計算の正確性（属人化の排除）」にあります。

2.1 原価管理システムでできること

原価管理システムは、Excelでは困難だった複雑な計算やデータ連携を自動化し、経営判断に必要なレポートを即座に出力します。これにより、勘や経験に頼らないデータドリブンな経営（データに基づいた意思決定）を支援します。

主な機能には以下のようなものがあります。

• 原価計算の自動化：製品別、案件（プロジェクト）別、部門別など、必要な切り口での原価を自動で計算
• 実行予算管理：特に建設業やITプロジェクト型で重要な、実行予算と実績の対比（予実管理）
• 差異分析：予算（標準原価）と実績（実際原価）の差額（差異）を自動で算出し、原因分析をサポート
• 間接費の自動配賦：複数部門で共通して発生する経費（例：家賃、光熱費、管理部門の人件費）を、設定したルールに基づき公平に自動で振り分け
• 原価シミュレーション：材料価格や労務費が変動した場合に、製品原価や利益がどう変わるかを試算
• ダッシュボード機能：案件ごとの収支状況や全社の原価構成をグラフなどでリアルタイムに可視化

次の表は、原価管理システムの主な機能と、それが経営に与える影響をまとめたものです。

2.2 Excel管理との決定的な違い（リアルタイム性・属人化排除）

Excel管理における最大の弱点は、「データの遅延」と「業務の属人化」です。原価管理システムは、これらを根本から解決するために設計されています。

1. リアルタイム性

Excel管理では、現場からの日報（紙やExcelファイル）が月末に集計され、経理がそれを手入力するため、正確な原価が分かるのは翌月半ばになりがちです。

一方、システムでは、現場担当者がスマートフォンやタブレットから工数や経費を直接入力すれば、そのデータが即座に原価として反映されます。経営層は、自席のPCでダッシュボードを開けば、「今、この瞬間」の収支状況を把握できるのです。

2. 属人化の排除

Excel管理は、複雑な関数やマクロを組んだ「Excel職人」と呼ばれる特定の担当者に依存しがちです。その担当者が退職・異動すると、原価計算業務そのものが停止してしまうリスク（ブラックボックス化）を抱えています。

一方、システムでは、原価計算や配賦のルールはすべてシステム上で一元管理されます。担当者が変わっても計算ロジックが変わることはなく、誰でも同じ基準で正確な原価を算出できるため、業務の標準化と継続性が担保されます。

以下の表で、両者の決定的な違いを比較します。

2.3 メリット1：赤字案件の早期発見と利益率の改善

原価管理システムがもたらす最大の経営的メリットは、収支状況の「リアルタイムな見える化」による利益体質の改善です。原価が即座に把握できれば、赤字の兆候を早期に発見し、迅速な対策を打つことが可能になります。

例えば、ある建設案件で予実差異（予算と実績のズレ）がリアルタイムでアラートとして上がってきた場合、すぐに原因を分析できます。「想定より材料費がかさんでいる」のか、「特定の工程で労務費（工数）が膨らんでいる」のかが即座に分かれば、手遅れになる前に対策（例：追加費用の交渉、人員配置の見直し）を講じることが可能です。

さらに、システムに蓄積された「正確な過去の原価データ」は、将来の貴重な財産となります。

次の見積もりを作成する際、過去の類似案件の正確な実績原価を参考にすることで、「ドンブリ勘定」や「勘頼り」の見積もりから脱却できます。これにより、精度の高い「根拠ある価格設定」が可能となり、受注機会を逃さず、かつ適正な利益を確保する好循環が生まれます。

2.4 メリット2：現場と経理の業務効率化（行政DX事例）

原価管理システムは、経営層や管理職だけでなく、日々の業務を行う現場担当者や経理部門にも大きなメリットをもたらします。それは「二重入力」や「転記作業」の抜本的な削減です。

これまで現場では、日報を紙に書き、さらにExcelにも入力していたかもしれません。経理部門では、そのExcelファイルや紙の請求書を見ながら、会計ソフトと原価管理用のExcelの両方に同じデータを手入力していたかもしれません。

システムを導入し、会計ソフトや勤怠管理ソフトと連携させることで、これらの非効率な手作業は一掃されます。

• 現場：スマートフォンで日報（工数）を入力すれば、勤怠管理と原価計算の両方にデータが自動連携される
• 経理：仕入データを一度入力すれば、会計システムへの仕訳計上と原価システムへの費用計上が同時に完了する

集計作業という「作業」から解放された経理部門は、算出されたデータを分析し、経営層や事業部門へ改善提案を行うといった、より付加価値の高い「本来の管理業務」に時間を使えるようになります。

こうした業務効率化の効果は、民間企業だけでなく、行政機関のDX（デジタルトランスフォーメーション）事例でも実証されています。

例えば、「自治体DXの取り組み事例」によれば、宮城県宮城郡利府町では、電子決裁と電子請求書を導入し、これらを財務会計システムと連携させることで、年間1,200時間以上の作業時間削減を達成しています。また、新潟県阿賀野市でも、財務会計システムの刷新と電子請求書の導入により、1件あたりの請求書処理時間が大幅に短縮されたと報告されており、これは民間企業のバックオフィス業務効率化においても非常に参考になる事例です。

3. 【2025年最新】原価管理が重要視される3つのトレンド

なぜ「今」、これほどまでに原価管理システムが重要視されているのでしょうか。その背景には、単なる業務効率化を超えた、企業経営に直結する「法改正」「物価高騰」「DXの進展」という3つの大きな環境変化があります。これらは、従来のExcel（エクセル）管理や「ドンブリ勘定」では対応しきれない、深刻な経営課題を突き付けています。

3.1 ［法改正］2024年問題と労務費の正確な把握

2024年4月から建設業や物流業にも本格適用が開始された「時間外労働の上限規制」（通称：「2024年問題」）は、原価管理のあり方を根本から変えました。この法改正により、企業は従業員の労働時間を厳格に管理する義務を負うと同時に、「労務費」という原価の主要項目を正確に把握する必要性に迫られています。

時間外労働の上限規制や2024年問題について詳しくはこちら > 時間外労働の上限規制 | 働き方改革特設サイト | 厚生労働省

従来型の「みなし労働」や曖昧な工数管理では、法律違反のリスクを抱えるだけでなく、どの案件（プロジェクト）にどれだけの人件費がかかっているのかが不明瞭になります。

原価管理システムを導入し、勤怠管理システムと連携させることで、「誰が・どの案件に・何時間」従事したかをデータとして正確に収集できます。このデータに基づき、労務費を各案件へ自動で配賦（振り分けること）する仕組みがなければ、適正な原価計算は不可能と言えるでしょう。

以下の表は、法改正によって顕在化した課題と、システムによる対応策をまとめたものです。

3.2 ［物価高］資材高騰と「根拠ある価格転嫁」の必要性

2022年頃から続く世界的なインフレや円安の影響により、建設資材やエネルギー価格、電子部品などのあらゆるコストが高止まりしています。

国土交通省が公表する「建設工事費デフレーター」（建設投資の費用変動を測る指数）を見ても、2025年現在、依然として高い水準で推移しており、企業の利益を圧迫し続けています。

建築工事費デフレーターについてはこちら > 建設工事費デフレーター – 国土交通省

このような状況下で利益を確保するには、仕入れコストの上昇分を、顧客や発注者に対して適切に「価格転嫁（価格に上乗せすること）」する必要があります。しかし、取引先に対し「感覚的」や「どんぶり勘定」での値上げ交渉は通用しません。

ここで原価管理システムが活躍します。システムによって「この案件（製品）は、最新の仕入れ単価に基づくと、これだけ材料費が上昇している」という客観的なデータ（根拠）を即座に提示できるからです。正確な原価データは、自社の利益を守るための、そして取引先との公正な関係を維持するための「交渉材料」として不可欠です。

3.3 ［DX］会計・勤怠システムとの連携による一元管理

最後のトレンドは、「DX（デジタルトランスフォーメーション）」の進展による「データ連携」の要求です。これまで多くの企業では、会計システム、販売管理システム、勤怠管理システム、そして原価管理用のExcelが、それぞれ孤立（サイロ化）していました。

DX（デジタルトランスフォーメーション）について詳しくはこちら > 産業界のデジタルトランスフォーメーション（DX） （METI/経済産業省

この状態では、各システム間でデータを二重、三重に入力する手間が発生し、データの不整合やタイムラグを生む温床となっていました。

現代の原価管理システムは、単体で完結するものではありません。

• 会計ソフトと連携し、原価データを自動で仕訳として計上する
• 勤怠管理ソフトと連携し、実労働時間を工数として自動で取り込む
• 販売管理ソフトと連携し、売上データと原価データを突合して正確な利益を算出する
• 電子請求書システムと連携し、受領した請求書を経費データとして自動で取り込む

このように、企業内に散在するデータを一元管理し、経営状況を「一つの画面」で可視化する流れが主流となっています。原価管理システムは、まさにその「データのハブ」として機能することが求められているのです。

4. 【業種別】原価管理システムの主な3タイプ

一口に「原価管理」と言っても、業種によって「何が原価か」「どう計算するか」が全く異なります。例えば、製造業と建設業、IT開発業では、利益の生み出し方やコスト構造が根本的に違います。自社の業態に合わないシステムを選ぶと、現場の業務フローと乖離（かいり）し、導入失敗の大きな原因となるため注意が必要です。

タイプ1：製造業向け（標準原価・実際原価）

製造業の原価管理は、主に「製品を1つ作るのにいくらかかったか」を正確に計算することが目的です。

あらかじめ目標として設定する「標準原価」（製品1個あたりの目標コスト）と、実際に製造でかかった「実際原価」を比較し、その差（差異分析）を追求することで、製造プロセスの無駄を発見し、コストダウンにつなげます。

管理の核となるのは「部品表（BOM：Bill of Materials）」（製品を構成する部品の一覧表）です。この部品表データと連携し、材料費や加工費、製造ラインの間接費などを緻密に計算する機能が求められます。多くの場合、「生産管理システム」やERP（統合基幹業務システム）の一部として、原価管理機能が組み込まれています。

 タイプ2：建設業・工務店向け（個別原価・実行予算）

建設業や工務店、リフォーム業では、製品を大量生産する製造業とは異なり、案件（工事）ごとに仕様が異なるため、「個別原価計算」（案件（工事）ごとに原価を集計する方法）が基本となります。

最大の特徴は、工事が始まる前に「実行予算」（その工事をいくらで完成させるかという詳細な予算）を組むことです。そして、工事の進捗に合わせて「材料費」「労務費」「外注費」「経費」（通称：材・労・外・経）が実行予算内で推移しているかをリアルタイムで管理します。

近年では、現場の写真管理や工程管理、日報提出といった機能を持つ「施工管理アプリ」に、原価管理機能や実行予算管理機能が統合された製品が主流となっています。現場の日報や経費がそのまま原価データとして集計されるため、管理者の負担軽減とリアルタイムな収支把握に貢献します。

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タイプ3：IT・プロジェクト型（工数・要員配賦

IT開発業、システムインテグレータ（SIer）、コンサルティングファーム、広告代理店など、主に「人」の技術や知識をサービスとして提供する業種です。

これらの業種では、原価の大半を「労務費（人件費）」が占めます。そのため、原価管理とは、ほぼ「工数管理」と同義になります。どのプロジェクトに、誰が、何時間（何人月）関わったのかを正確に把握し、その工数（人件費）をプロジェクト原価として配賦（割り振ること）する機能が中心です。

勤怠管理システムや、プロジェクト管理、工数管理、請求管理までを統合した「PSA」と呼ばれるツールと連携し、要員別・プロジェクト別の収支を可視化することが重要課題となります。

4.4 本記事の焦点：建設業・工務店における原価管理

ここまで3つのタイプを解説してきましたが、原価管理システムは業種特化性が非常に高い分野です。

そこで、本記事ではこれ以降、特に【タイプ2：建設業・工務店向け】の原価管理・収支管理に焦点を当てて解説を進めます。

この分野は、前述の「2024年問題」や「資材高騰」の影響を最も強く受けている業界の一つであり、現場の施工管理と原価把握を同時に実現したいというニーズが非常に高まっています。以降のセクションでは、建設業・工務店がシステムを選定する上で失敗しないための具体的なポイントと、おすすめの製品（施工管理アプリ）を紹介していきます。

5. 失敗しないための選定ポイント5つ

建設業・工務店が原価管理（施工管理）システムを選ぶ上で、絶対に外してはならない5つの比較軸（選定ポイント）を解説します。価格や機能の多さだけで選んでしまうと、「現場で使われず形骸化する」「本当に見たい原価データが集まらない」といった失敗につながるため、自社の目的に合っているかを慎重に見極めることが重要です。

5.1 自社の業種・規模に合っているか

まず最初に明確にすべきは、「自社の事業規模」と「導入の最大の目的」です。例えば、大規模な総合建設業（ゼネコン）と、地域密着型の工務店やリフォーム会社では、必要な機能や管理の粒度が全く異なります。

高機能なシステムは、詳細な実行予算管理や複雑な承認フローに対応できますが、小規模な企業にとってはオーバースペックとなり、操作が複雑で定着しないリスクがあります。逆に、機能がシンプルなシステムは安価で導入しやすい一方で、将来的に管理レベルを上げたいと思った時に機能不足になる可能性も否定できません。

「施工管理（現場の写真や工程管理）を最優先したいのか」「原価管理（案件ごとの収支の見える化）まで踏み込みたいのか」という導入目的を明確にすることが、選定の第一歩です。

以下の表は、事業規模と目的別に推奨される機能の傾向をまとめたものです。

5.2  現場（モバイル）での入力は簡単か

建設業の原価管理システムにおいて、導入が成功するか失敗するかを分ける最大の要因は、「現場が使ってくれるかどうか」この一点に尽きます。なぜなら、原価の元となる日報、工数、材料使用、経費といったデータの入力は、すべて現場で行われるからです。

どれほど高機能なシステムを本社（経理部門）が導入しても、現場の監督や職人が「入力が面倒だ」「使いにくい」と感じて入力が滞れば、データが集まらず「絵に描いた餅」になってしまいます。

「建設ドットウェブ」が2024年に実施した調査でも、建設業者のスマートフォン業務利用率は91%に達しており、現場でのモバイル活用はもはや当たり前です。ITが苦手なベテランの職人でも直感的に操作できる、シンプルな画面設計（UI：ユーザーインターフェース）であることが最重要ポイントです。

建築ドットウェブが実施し多様さについて詳しくはこちら > 建設業者のシステム利用状況に関するアンケート調査の結果を公開　売上高30～100億円の中規模建設業にて、どっと原価シリーズの導入シェアNo.1 | 原価管理ソフトなら建設ドットウェブ

5.3  既存システム（会計・勤怠等）と連携できるか

原価管理システムは、単体で導入しても「二重入力」が残り、業務効率化の効果が半減してしまいます。選定時には、現在自社で利用している「会計ソフト」や「勤怠管理ソフト」とデータ連携できるかを必ず確認してください。

例えば、以下のような連携が実現できると、バックオフィスの業務は劇的に効率化されます。

• 会計ソフト連携：原価管理システムで処理した発注・支払データを、会計ソフトの「仕訳データ」として自動連携（CSV連携やAPI連携）する。これにより経理部門の転記作業が不要になります。
• 勤怠管理ソフト連携：勤怠管理システムで記録された従業員の工数（労働時間）データを、原価管理システムに自動で取り込み、「労務費」として各案件へ自動配賦する。

信頼性の観点からは、連携が「可能」と謳っていても、そのレベル（CSVの手動アップロードか、APIによる自動連携か）によって工数が大きく異なるため、具体的な連携方法まで確認することが重要です。

5.4  導入・運用サポート体制は十分か

原価管理システムは、「導入して終わり」のツールではありません。むしろ「導入してからがスタート」です。特に、原価計算の要となる「マスタ登録」（工事科目、取引先、社員情報などの初期設定）や、現場への操作説明、運用ルールの定着は、導入プロジェクトにおける最大のハードルとなります。

安価なシステムの中には、サポートがメールやチャットのみで、初期設定も自社で行う「セルフサービス型」のものも少なくありません。

一方で、導入支援が手厚いベンダーは、以下のようなサポートを提供しています。

• 導入時サポート：現状の業務フローのヒアリング、マスタ登録の代行、キックオフミーティングの実施
• 運用・定着サポート：現場担当者向けの集合説明会（オンライン/オフライン）、個別のQ&A対応、定期的な活用状況のミーティング

自社のITリテラシーや、システム導入経験のある担当者が社内にいるかを考慮し、どのレベルのサポートが必要かを判断してください。

5.5  費用対効果（価格と削減工数）は見合うか

最後は、費用対効果（ROI：Return on Investment）の視点です。システムの価格は、初期費用が無料のものから数百万円かかるもの、月額料金が数千円のものから数十万円のものまで様々です。

当然、価格は重要な選定基準ですが、「安さ」だけで選ぶのは危険です。安いシステムは機能が限定的であったり、サポートが手薄かったりする可能性があり、結果として「安物買いの銭失い」になるリスクもあります。

一方で、高機能で高価なシステムを導入しても、その機能を使いこなせなければ意味がありません。

判断すべきは、「その投資（コスト）で、どれだけの効果（リターン）が見込めるか」です。リターンには2つの側面があります。

1. 削減できる工数（人件費）：Excelへの転記、集計、会議資料の作成、二重入力など、削減できる「ムダな時間」を金額換算する。
2. 改善できる利益：赤字案件の早期発見による損失の最小化、正確な原価データに基づく見積もり精度の向上による「利益率の改善」。

以下の表のように、導入コストと得られるリターンを天秤にかけ、自社にとって最適なシステムを選定してください。

6. 【建設業向け】おすすめ原価管理・施工管理システム6選

建設業・工務店の原価管理・収支管理を効率化する、おすすめのシステム・アプリを6製品に厳選して紹介します。自社の「目的」に合わせてお選びください。

6.1  【大規模・多機能型】現場全体を一元管理したい企業向け

利用者数が多く、写真・図面管理からチャット、工程管理まで、現場業務のほぼ全てを網羅できる高機能なシステムです。多拠点・大規模案件や、多くの協力会社を巻き込むプロジェクト管理に適しています。
次の表では、大規模・多機能型の2製品の基本情報を比較しています。

1. 「ANDPAD」

「ANDPAD」（アンドパッド）は、公式サイトで利用者数55万人以上（2025年時点）をうたう、業界スタンダードとも言える施工管理アプリです。チャット機能、電子黒板機能付きの写真撮影、現場カレンダーなど、現場管理に必要な機能を幅広く一元化できます。

2. 「SPIDERPLUS」

「SPIDERPLUS」（スパイダープラス）は、特に図面管理と情報共有に強みを持つシステムです。図面上で検査記録や写真情報を紐づけられるため、膨大な事務作業の削減とペーパーレス化に高い効果を発揮します。情報セキュリティへの継続的な取り組みも特徴です。

これらのシステムは、まずは現場のあらゆる情報をデジタル化し、業務効率を最大化したいと考える中堅〜大規模の建設会社に最適です。

6.2 【コミュニケーション重視型】現場との情報共有を最優先したい企業向け

現場監督と職人、協力会社との「情報伝達」を最重要視するシステムです。チャットや既読管理機能で、日々の報告・連絡・相談のミスや手戻りを防ぎます。

次の表は、コミュニケーション重視型の2製品の比較です。

1.  「ダンドリワーク」

「ダンドリワーク」は、元現場監督が開発したシステムで、現場の「使いやすさ」に徹底的にこだわった直感的な画面デザインが特徴です。情報の既読管理機能により、「伝えた・聞いてない」といったコミュニケーションエラーを確実に防ぎます。

2. 「Anymore」

「Anymore」（エニモア）は、多くの職人が使い慣れた「LINE」と連携できる点が最大の特徴です。現場が普段使いのツールを変えることなく、案件の提案から請求までを一元管理でき、導入のハードルが低い点が魅力です。

6.3 【スモールスタート型】まずは低コストで現場DXを始めたい企業向け

機能を絞り、低コストまたは無料で導入できるシステムです。まずは日報や写真共有、スケジュール管理からデジタル化を始めたいと考える企業に最適です。

次の表は、スモールスタート型の2製品の比較です。

まずはコストを抑えてシステム導入の効果を試したい、あるいは小規模な案件からDXに着手したいと考える企業におすすめです。

1.「サクミル」

「サクミル」は、業界最安級の価格設定を特徴とする施工管理アプリです。案件ごとのステータス管理やスケジュール管理、スマートフォンからの日報・写真登録など、現場DXの第一歩として必要な基本機能を網羅しています。

2. 「クラフタ」

「クラフタ」は、完全無料で利用できる施工管理アプリ（2025年時点、公式サイトより）です。LINEとほぼ同じ感覚で使えるメッセージ機能や、現場情報の一元管理など、コストを一切かけずに現場のデジタル化を試したい企業にとって有力な選択肢となります。