調達管理業務のフロー｜プロセスや課題解決の方法を解説

「調達業務のフローを見直したいが、適切な内容がわからない」と悩む企業の担当者も多いでしょう。調達業務のフローはプロセスにわけて仕事内容や現状を洗い出し、方針に基づいて設定することが大切です。

しかし、調達メンバー内でノウハウが共有されず属人化している状態や、リスク管理ができていない場合、フローを改善しても業務の最適化は難しいでしょう。

本記事では、調達業務のプロセスごとのフローを述べたうえで、解決すべき課題や解決方法などを解説します。調達管理を効率化させるシステムも紹介するので、調達業務の生産性を上げたい方はぜひ参考にしてください。

調達管理業務とは

調達管理は、生産や開発などのプロジェクトで使用する資材を適切に確保・管理する仕事です。製品の生産や開発における「品質」「原価」「納期」の目標を達成するために、最適なプロセスを経ることが欠かせません。

調達業務は人材や原材料といった資源の確保だけでなく、価格交渉から納品物の検査まで幅広い仕事を担います。納期内に高品質な製品を計画通りの価格で提供できるよう、生産プロセスに貢献する重要な役割です。

調達管理と購買管理の違い

調達管理と購買管理を同義的に捉えている企業もありますが、それぞれの相違点は以下のとおりです。

調達管理：スムーズに生産工程が進むよう、消耗品や製品の原材料、人材などの調達を行う
購買管理：消耗品や原材料などの物品購入の検討から購入までを行う

調達管理は「人・物・金」の資源を調達し、プロジェクトのスケジュールに合わせて適切に投入します。一方で、購買管理は狭義の調達管理として、物品の購入や管理を行うのが特徴です。

調達業務のプロセス

調達業務は、調達管理の計画を立てたうえで仕入れ先の選定や契約を行うことが重要です。ここでは、調達のプロセスごとに行う業務を解説するので参考にしてください。

1.調達管理の計画策定

生産や開発の工程で、どのような資源がいつまでに必要かを検討し、調達計画を立てます。調達計画は、全体のフローをスムーズに進めるために欠かせない工程です。

関係部署から資源の品質や数量、納期などの要望をヒアリングし、調達予算やスケジュールを計画します。関係部署へのヒアリングの際は、情報の伝達ミスのないよう入念な打ち合わせが必要です。

また、「必要な資源を確保できない」「納期に間に合わない」などの起こり得るリスクについても想定し、計画を立てておきましょう。

2.仕入れ先の選定・相見積り

複数のサプライヤーから相見積りを取り、適切な仕入れ先を選定します。自社のプロジェクトに必要な要件・仕様や希望価格・納期を事前に設定し、サプライヤーに見積もりを依頼しましょう。相見積りを依頼する際は、相手が取り扱う資源の品質や納期への対応力などを加味します。

また、取引中の仕入れ先だけでなく、新規の取引先を検討するのも大切です。比較対象が増え、より自社にマッチした仕入れができる可能性があります。突発的なトラブルへの対応や価格・納期などの交渉にも役立つでしょう。

3.契約・発注

提出された見積書が条件に合致しているかどうかを確認し、契約に進みます。価格交渉を行い、自社のコスト削減に貢献することも重要です。ただし、仕入れ先の利益を侵害するような交渉は、品質や納期に問題が生じたり、信頼関係を損ねたりするため注意しましょう。

契約書に基づき事前に必要な事項を擦り合わせ、取り決めた方法で発注書を発行します。発注後は、スムーズに調達が進むよう状況を管理することも欠かせません。納品の遅延や数量の不足などが発生すると、プロジェクト全体の進行に影響するため、調達状況を随時把握しましょう。

3.納品物の検収

資源が納品された際は検収し、品質や数量などが発注書に基づいているかどうかを確認します。特殊な資源で品質の確認が難しい場合は、関係部署に検収を依頼するとよいでしょう。納品があれば早い段階で確認し、請求に応じて遅延のないよう支払います。

納品物が仕様や基準を満たさない場合は調達をやり直すことになり、手間・コストの発生や、プロジェクトのスケジュールに大きく影響します。事前に調達に関する取り決めを入念に行い、リスクをできる限り排除しましょう。

4.納品物の保管・管理

納品された資源は規定の場所に保管し、管理します。倉庫での一括管理や、資源を使用する部署に運びましょう。

保管場所を誤ると、置き場所や在庫数がわからなくなるなどの問題が発生し、生産工程に影響を及ぼしかねません。また、品質が劣化し製品に使用できなくなると、廃棄せざるを得なくなる恐れがあります。

資源の適切な保管環境を把握したうえで、管理する場所を選択しましょう。

調達業務が抱えやすい課題

調達管理は業務量が多く煩雑化しやすかったり、ノウハウが共有されず業務が滞ったりする課題が発生しやすいでしょう。ここでは、調達業務で起こり得る課題について解説します。

1.業務量が多く煩雑化しやすい

調達担当者は幅広い役割を担うため、業務が煩雑化しやすい点が課題です。仕入れ先の選定からスケジュール管理、納品物の検収など、膨大な量の業務をこなします。

業務を効率化せずに進めた場合、担当者の負担が増大し、調達ミスの発生や、適切な時期に資源を調達できないなどの影響が起こり得るでしょう。

プロジェクト全体のスケジュールにも影響するため、不要なルーティンワークの削減や、システムを活用し効率化を図ることが重要です。

2.コスト管理が難しい

調達業務は、コスト管理も課題になりやすいポイントです。自社の希望金額でサプライヤーと契約できなければ、予算がオーバーし生産に影響しかねません。交渉しても、仕入れ先の利益を確保できない場合は困難な場合があるでしょう。

また、「各部署で異なる仕入れ先に発注している」「同じ商品を不規則に購入している」などの場合も想定以上にコストが高くなる恐れがあります。

市場価格の急激な変動や原価の値上げなど、不測の事態によるコスト高騰も考えられるため、入念な情報収集のうえで調達計画を立てることが大切です。

3.調達管理に必要なスキルを持つ人材がいない

調達管理をスムーズに実行するには、マルチな行動力のほか、交渉力やスケジュール管理能力が欠かせません。

調達管理の適性を持った人材が配置されていない場合、納期の遅れや品質低下につながる恐れがあります。また、適切なコミュニケーションを図れなかった結果、関連部署や取引先との関係が悪化するケースもあるでしょう。

研修の実施や調達管理で活躍している人材のやり方を共有するなど、調達管理に携わるメンバー全員のスキルを向上させることが重要です。

業務のノウハウが引き継がれていない

調達業務が属人化し、情報やノウハウが共有されていない課題もあるでしょう。たとえば、特定の人が普段担当している取引先の情報や、一部の人のみが行う仕事のやり方などが挙げられます。

属人化により信頼関係やスキルが高まるメリットはあるものの、多くのノウハウを持っている人の負担が増えるでしょう。さらに、ノウハウを持った担当者の異動や退職などで、業務が滞る可能性があります。

特定の人が持っている情報をメンバー全員が閲覧できるようにするほか、調達履歴を残すことで対応方法や業務の進め方といったノウハウの共有が可能です。

4.リスク対策ができていない

調達管理のリスク対策ができていない場合、生産全体に影響を及ぼす恐れもあるでしょう。たとえば、以下のようなリスクが挙げられます。

サプライヤーの納品遅延や会社の倒産などにより、必要な品質・数量の資源が届かない
原価高騰によりコストが大幅に膨らむ
情報セキュリティが甘く、サプライヤーを含めサイバー攻撃を受けてしまう
法的な観点からの検討が足りず、法律違反してしまう

重大な影響を受けないためにも、リスクの分散やサプライヤーの経営状況を把握するなど、事前の対策が重要です。また、リスクが発生した際の対策も検討しておくと、スムーズに対処でき被害を抑えられるでしょう。

課題を解決する方法

調達業務の課題を解決する方法として、人材のスキルアップや業務の効率化に向けたシステムの導入などが挙げられます。ここでは、調達管理の課題を解決し、業務をスムーズに進めるための方法を解説するので参考にしてください。

1.調達業務に必要なスキルを習得

調達業務の課題を解決するために、業務メンバーにスキルの習得を促し、全体の調達管理のレベルを底上げすることが重要です。スキルアップ研修を開催したり、深い知見を持つメンバーのやり方を共有したりするなどで、全体的な知識やスキルを高めましょう。

調達業務に必要なスキルを以下で紹介するので参考にしてください。

a.コミュニケーション力

調達業務は社内の関係部署はもちろん、仕入れ先とのコミュニケーションが欠かせない仕事です。

社内では、必要な調達資源のヒアリングや資源管理の調整を行います。仕入れ先とも長期的な付き合いを目指して、適宜コミュニケーションを取り関係を構築することが欠かせません。関係者と良好な関係を築けば、イレギュラーな事態への対応もしやすくなる可能性があります。

しかし、調達管理を行うなかで「関係部署からの無理な要望を受け入れてしまう」「意見を取りまとめるのが難しい」など、コミュニケーション面の課題を感じる人もいるでしょう。プロジェクトをスムーズに進めるためにも、調達計画やフローに基づき自分の考えを明確にしたうえで、ヒアリングや調整といったコミュニケーションが重要です。

b.交渉力

仕入れ先と費用や納期の調整を行うため、交渉力が求められます。交渉次第で調達できる資源の品質や価格、納期などが変動するため、調達業務に欠かせない能力です。

調達計画に沿って自社の利益を確保するよう動くだけでなく、どの程度踏み込むか・譲歩できるかのラインを考えることも交渉の一部です。

ただし、取引先との信頼関係を崩さないよう、資材原価や仕入れ先の状況を把握したうえで、適切な交渉を行う必要があります。

c.情報収集・分析力

市場の動向や価格水準などの情報を収集し、仕入れを最適化する分析力も調達管理に必要なスキルです。海外から仕入れを行う場合は国際情勢も把握し、幅広い情報から自社に適切なサプライヤーを選択します。

また、プロジェクト進行中の情報収集も欠かせません。進捗にイレギュラーが発生していないか、仕入れ先にトラブルが発生していないかどうかなどを確認しつつ、調達業務を進めましょう。

d.スケジュール管理能力

調達管理には、細やかに現状を把握しスケジュールを調整する能力も欠かせません。膨大な量の資源を発注するにあたって、こまめにプロジェクトの進捗を把握し、適切なタイミングで調達することが求められます。

また、生産進捗などの状況に合わせてスケジュールを管理できれば、代替策を打ち出したり、部署間の調整を行ったりしやすいでしょう。たとえば、サプライヤーの納品が遅延しそうな際はプロジェクトの進行を調整したり、ほかのサプライヤーから緊急で調達したりなど、状況に合わせて柔軟に対応します。

2.調達業務フローチャートを作成する

調達業務の課題を改善するには、フローチャートの作成がおすすめです。調達に関わる全体のフローチャートで担当部署や業務の流れを視覚化すれば、どの時点で何をすべきかが明確になります。

フローチャート作成には、購買に関する業務範囲やルール設定が欠かせません。プロジェクトに携わる部署や仕入れ先といった関係者のほか、必要な書類の種類・提出時期などを洗い出し、表にまとめましょう。

調達管理システムを導入する

調達業務の課題解決に向けて、専用システムを導入するのもおすすめです。調達管理システムを活用すれば、発注から支払いまでの一連のフローを一元管理でき、調達業務の課題改善が可能になります。

業種によって役立つ調達管理システムは異なるので、自社のプロジェクトやフローに合っているかどうかを事前に確認しましょう。調達管理システムの導入により改善が成功した事例を以下で紹介するので、参考にしてください。

3.調達管理システムを用いた改善事例

調達管理システムを導入した際の改善事例は以下のとおりです。

発注から支払いまでの一連の業務をシステム上で一元管理でき、業務の効率化につながった
入出庫管理と納品・請求書の突合を同じシステムで行えるため、調達部門だけでなく経理部門といったほかの部署でも手間が軽減された
システムに入力チェックによるミス防止機能が搭載されており、書類の不備を大幅に軽減できた

調達管理システムを導入すれば、調達担当者だけでなく、他部署にもよい結果をもたらします。費用対効果を検証したうえで、導入を検討しましょう。

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まとめ

本記事では、調達業務のプロセス別のフローや業務中に発生し得る課題、業務を円滑に進めるために必要なスキルなどを解説しました。

調達業務は最適な資源を調達し、適切なタイミングで投入する仕事であり、プロジェクトのスムーズな進行に欠かせない存在です。しかし、業務量が多く広範囲にわたるため、人材がなかなか育たなかったり、仕事が煩雑化したりするなどの課題を抱えやすいでしょう。

必要なスキルの習得やフローチャートの作成は、課題の解決に有効です。また、調達管理システムを導入すれば、業務の効率化を図り、担当者の負担を低減させられます。自社の状況に応じて調達管理のフローや課題に取り組み、生産性の向上を目指しましょう。