職場での心理的安全性の作り方を解説|ぬるま湯組織との違いとは?
最終更新日:2024/08/25
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目次
心理的安全性とは、組織の中で自分の意見や考えを安心して発言できる状態のことを意味します。長引く会議、停滞する議論。なかなか核心的な結論に至れず、ただ時間だけが過ぎていく…そんな経験はないでしょうか。「言いたいこと言えない」「行動したいことができない」というような、重たい空気感のチームでは、中々話し合いが進みません。その原因は「心理的安全性」が無いことかもしれません。ここでは職場での「心理的安全」を構築するメリット、構築の方法、ぬるま湯組織との違いについて解説していきます。
心理的安全性とは何か
心理的安全性とは、組織の中で自分の意見や考えを安心して発言できる状態を意味します。職場における上司や部下、同僚と異なる意見を発信しても、信頼関係が破綻することはないと感じられる心理状態のことです。1999年、組織行動心理学を研究するエイミーC.エドモンドソン氏が発表した論文の中で提唱されました。その後、2016年に発表されたGooleの実験結果により「心理的安全性の高い組織は生産性が高い」ことが判明したことで注目を集めました。
心理的安全性が注目されている背景3つ
現代のビジネス環境や社会構造が急速に変化する中で、「心理的安全性」はますます注目を集めています。その注目の背景には、いくつかの要因が挙げられます。
1.Googleの研究結果による大きな影響
まず第一に、心理的安全性が注目されるきっかけとなったのは、Googleが2012年から約4年間にわたって実施した「プロジェクト・アリストテレス」です。このプロジェクトでは、Googleが180のチームを分析し、効果的なチームを作るために何が必要かを探りました。その結果、個々のメンバーの能力や経歴よりも、チームの協力の仕方が成功の鍵であることが明らかになりました。特に、心理的安全性が高いチームほどパフォーマンスが高く、離職率が低く、収益性が高いことが判明しました。
2.心理的安全性とチームパフォーマンスの関係
心理的安全性は、チームのパフォーマンス向上に直結する要因としても注目されています。ハーバード大学の研究によると、心理的安全性が高いチームほど学習行動が活発であり、その結果、より高いパフォーマンスを発揮することがわかっています。心理的に安全な環境では、メンバーが自由に意見を交換し、新しいアイデアを試すことができるため、イノベーションが促進されるのです。
3.VUCA時代における心理的安全性の重要性
さらに、私たちが生きる時代は「VUCA」と呼ばれる不確実性が高い時代です。VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取ったもので、現代の社会やビジネスの状況を象徴する言葉です。急速に進化する技術、変わり続ける市場のニーズ、そして予測不能な出来事が次々と起こる中で、正解が明確でない状況が増えています。このような状況下では、失敗を恐れずに挑戦し続けることが求められ、そのための基盤となるのが心理的安全性なのです。
心理的安全性を高めるメリット7つ
心理的安全性を職場や組織で高めることには、多くのメリットがあります。それは、チーム全体の生産性向上やメンバー個々の成長に直結するものです。ここでは、その具体的なメリットについて説明します。
1. コミュニケーションの活性化
心理的安全性が高まると、メンバー間でのコミュニケーションが活発になります。安心して意見を述べられる環境が整うことで、報告・連絡・相談がスムーズに行われ、誤解やトラブルが減少します。また、上司に対しても遠慮せず意見を伝えることができるため、業務の効率も向上します。
2. 問題解決能力の向上
コミュニケーションが円滑になると、チーム全体で問題に対処する力が高まります。心理的安全性がある職場では、メンバーが積極的にアイデアを出し合い、問題が発生した際も迅速に対応できるため、課題が未然に防がれやすくなります。
3. 個々のスキルアップ
心理的安全性が高い環境では、知識やノウハウの共有が盛んになります。メンバーが互いに助け合い、学び合うことで、個々のスキルが向上し、チーム全体の能力も底上げされます。また、新しい挑戦にも積極的に取り組む姿勢が生まれ、個人の成長を促進します。
4. ワークエンゲージメントの向上
自分の意見が尊重される職場は、メンバーに安心感を与え、モチベーションを高めます。心理的安全性が高い環境では、社員が自分の役割に自信を持ち、意欲的に仕事に取り組むようになります。その結果、ワークエンゲージメントが向上し、長期的なキャリア形成にもつながります。
5. イノベーションの促進
心理的安全性が高まることで、メンバーは自由に意見を表明できるようになり、多様なアイデアが生まれやすくなります。新しい視点や考え方が歓迎される環境では、イノベーションが促進され、組織の成長や競争力の向上に寄与します。
6. ハラスメントリスクの低減
心理的安全性が高い職場では、ハラスメントが発生しにくくなります。誰かの不適切な言動があった場合でも、他のメンバーが指摘しやすく、問題が大きくなる前に対処できます。これにより、健全な職場環境が維持され、メンバー全員が安心して働ける環境が整います。
7. 離職率の低下
心理的安全性が確保された職場は、メンバーが長く働き続けたいと感じる環境を提供します。職場に対する満足度が高まり、結果として離職率が低下します。これにより、経験豊富なメンバーが定着し、組織の安定性が向上します。
心理的安全性がない組織/職場の特徴5つ
心理的安全性が欠如している職場は、従業員や組織全体にさまざまな悪影響を及ぼします。心理的安全性がない職場の主な特徴について、いくつかの視点から解説していきます。
1. 従業員が積極的に意見することを避ける
心理的安全性が低い職場では、従業員が意見を述べることをためらうことが多く見られます。会議の場で、意見や提案が出されることが少なくなり、誰も発言しない沈黙の時間が続くことも少なくありません。特に、何か意見を述べても否定的な反応が返ってくることが予想される場合、従業員は自己表現を控えるようになります。
2. 報・連・相が希薄になる
報告、連絡、相談(いわゆる「報・連・相」)がしにくい環境も、心理的安全性の低さを示す特徴です。ミスやトラブルが発生した際に、責められるのではないかという恐怖感から報告が遅れ、対応が後手に回ることがあります。さらに、疑問点や問題に直面しても、上司や同僚に相談することをためらい、自分一人で解決しようとする傾向も見られます。これにより、組織内の情報共有が滞り、トラブルが拡大するリスクが高まります。
3. 挑戦やイノベーションに消極的
心理的安全性がない職場では、新しいアイデアや挑戦が否定的に捉えられることが多く、従業員は現状維持を選びがちです。失敗を恐れて保守的な行動を取るようになり、革新や改善を求める意識が薄れます。その結果、組織は停滞し、競争力を失うリスクにさらされる可能性があります。
4. メンタルヘルスの悪化と離職率の増加
心理的安全性が低い職場では、ストレスや不安が蓄積し、従業員のメンタルヘルスが悪化することが少なくありません。このような環境では、従業員のモチベーションが低下し、離職率が増加するという悪循環に陥りやすくなります。離職が相次ぐと、残った従業員に過度な負担がかかり、さらにメンタルヘルスの問題が深刻化することも考えられます。
5. リーダーの心理的柔軟性の欠如
リーダーの行動が職場の心理的安全性に大きな影響を与えます。心理的柔軟性の欠けたリーダーは、メンバーの意見や考え方を受け入れることが難しく、挑戦や提案に対して否定的な姿勢を取ることがあります。これにより、従業員はリーダーへの信頼感を失い、チーム全体のモチベーションが低下する可能性があります。
心理的安全性が低くなってしまう原因4つ
心理的安全性が低下する原因は多岐にわたりますが、主に以下の要因が考えられます。これらを理解することで、職場の改善に役立つでしょう。
1. 対人リスクの不安
心理的安全性の提唱者であるエイミー・エドモンドソン教授が指摘するように、職場内での「対人リスク」が大きな要因です。具体的には、次の4つの不安がメンバーの行動を抑制します。
(1)無知だと思われる不安
質問や意見を述べる際に、他のメンバーから「この程度のことも知らないのか」と見下されるのではないかという恐れがあります。この不安が強いと、必要なコミュニケーションを避け、結果としてミスが発生するリスクが高まります。
(2)無能だと思われる不安
仕事でミスを犯した際、「仕事ができない奴だ」と判断されることを恐れるため、ミスを報告しない、隠すといった行動に繋がります。これにより、問題が共有されず、後に大きなトラブルに発展する可能性があります。
(3)邪魔をしていると思われる不安
会議やディスカッションの際、自分の意見が他人の意見を邪魔するのではないかという不安が生じます。この不安から、意見を述べることを控えるようになり、新しいアイデアが出にくくなるため、組織全体の成長が阻害されます。
(4)ネガティブだと思われる不安
問題点を指摘することが「ネガティブな発言」と捉えられるのではないかという恐れから、重要な指摘や意見が抑制されることがあります。これにより、組織内の課題解決が遅れることがあります。
2. ミスを責める文化
職場における心理的安全性が低い原因として、ミスを犯した従業員を厳しく責める文化が挙げられます。ミスを報告することが罰せられる環境では、従業員は「無能だと思われたくない」という不安から、報告をためらうようになります。この結果、問題が隠蔽され、組織全体のパフォーマンスが低下します。
3. 所属意識の欠如
メンバーが自分をチームの一員と感じられない場合、発言や提案に対するモチベーションが低下します。特に、異質なメンバーが多い環境では、この傾向が顕著です。リーダーは、多様性を尊重し、全員がチームの一員であると感じられるよう努めることが重要です。
4. トップダウン型の組織文化
トップダウン型の組織では、上層部の指示に従うことが重視され、メンバーの主体性が抑制されがちです。これにより、意見を述べることや自発的な行動が減少し、心理的安全性が低下します。組織全体でボトムアップの文化を醸成することが必要です。
心理的安全性が担保されている組織とぬるま湯組織との違い
組織やチームにおけるコミュニケーションの重要性は理解しているけれど、メンバーの仲が深まるあまり、組織やチーム内の秩序が乱れ、いわゆる「ぬるま湯組織」になってしまうのではないかと不安な方もいらっしゃると思います。しかし、「心理的安全性のある組織」と「ぬるま湯組織」には決定的な違いがあります。
1. 意見の対立とコミュニケーションの質
心理的安全性が高い組織では、メンバーが自由に意見を表明できる環境が整っています。意見の対立が起こることもありますが、それは生産的な議論の一部であり、組織の成長に繋がります。意見を述べることで新しいアイデアや改善策が生まれ、チーム全体のパフォーマンス向上が期待できます。
一方で、ぬるま湯組織は対立を避け、調和を保つことを優先します。このため、メンバーは自分の意見を抑え、表面的な平穏が保たれることが多いです。しかし、このような状態では、新たな挑戦や変革が生まれにくく、組織の成長が停滞する可能性があります。
2. 成長意欲とチャレンジ精神
心理的安全性が高い環境では、失敗を恐れずにリスクを取ることが奨励されます。これにより、従業員は自らの成長を求めて積極的に挑戦し、その過程で学びを得ます。組織全体としても新しいアイデアが受け入れられ、イノベーションが生まれやすくなります。
対照的に、ぬるま湯組織では、変化やリスクを避ける傾向が強く、現状維持が優先されます。このため、成長意欲が低く、従業員が新しいことに挑戦する機会が少ないです。その結果、組織全体の生産性が低下するリスクがあります。
3. 業務に対する意識と目的意識
心理的安全性が高い組織では、メンバー全員が業務への強い目的意識を持ち、組織の目標達成に向けて協力します。お互いの意見を尊重しつつも、改善や成長を目指すためのフィードバックが活発に行われます。
これに対して、ぬるま湯組織は、業務に対する意識が低く、目標達成に向けた意欲が欠如しています。チーム内の人間関係は表面的に良好であっても、実際の仕事に対する情熱やエネルギーが乏しいため、生産性が上がらないことが多いです。
4. チームの結束と人間関係
心理的安全性が高い職場では、率直なコミュニケーションが行われ、従業員同士の信頼関係が強固です。これは、意見の対立があっても、それが個々の成長やチーム全体の進歩に繋がると理解されているからです。結果として、チームの結束力が強まり、組織としての一体感が醸成されます。
一方、ぬるま湯組織では、表面的には人間関係が良好に見えるかもしれませんが、実際には深い結びつきが欠けています。メンバーが対立を避けるため、真のコミュニケーションが不足しており、その結果、チームの結束力が弱まりやすいです。
心理的安全性チェックリスト
うちのチームの心理的安全性は大丈夫か、心配な方もいらっしゃると思います。エドモンドン氏は7つの質問に回答することで、心理的安全性を測ることができるとしています。以下のチェックリストはエドモンド氏の7つの質問を基にチェックリストにしています。
合計点数が高ければ高いほど心理的安全性が高く、合計点数が低ければ低いほど心理的安全性が低いことを示しています。
心理的安全性の高い組織/職場の作り方
心理的安全性が高い職場は、従業員が安心して意見を述べたり、新しい挑戦をしたりできる環境です。そのため、組織全体の生産性や創造性が向上するだけでなく、従業員満足度の向上にもつながります。以下に、心理的安全性の高い職場を作るための具体的な方法を解説します。
1. 定期的なコミュニケーションの場を設ける
心理的安全性を高めるためには、日常的なコミュニケーションが非常に重要です。特に、上司と部下の関係性を深めるためには、定期的な1on1ミーティングが効果的です。これにより、部下は仕事の進捗や悩みを気軽に相談できるようになり、上司も部下の考えを深く理解することができます。毎週や毎月といった高い頻度で実施し、部下の意見をしっかりと傾聴することで、信頼関係が築かれ、心理的安全性が高まります。
2. 完璧主義を緩和する
多くの人が「完璧でなければならない」というプレッシャーを感じていますが、これは心理的安全性を損なう要因となります。上司は、部下に対して「完璧を求めない」姿勢を明確に伝えることが重要です。例えば、「6割の完成度で一度見せて欲しい」と言うことで、部下は途中段階でのフィードバックを受けやすくなり、結果としてより良い成果物が生まれるでしょう。このように、完璧主義を緩和することで、部下が試行錯誤を恐れずに行動できる環境を作り出します。
3. 意見を出し合える場を作る
心理的安全性の高い職場では、全ての社員が自由に意見を言える場が必要です。年齢や役職に関係なく、誰でも意見を述べられる環境を整えることで、従業員は自分の考えを自由に表現できるようになります。特に、会議やブレインストーミングの場では、リーダーや上司が積極的に意見を求め、発言を促すことが大切です。こうした場を設けることで、従業員は自信を持って意見を述べるようになり、組織全体のイノベーションが促進されます。
4. 多様な価値観を尊重する
心理的安全性を高めるためには、多様な価値観を受け入れる文化を育むことが重要です。異なるバックグラウンドや考え方を持つ従業員同士が、互いにその違いを尊重し合うことで、誰もが安心して自己表現できる環境が作られます。具体的には、組織内で多様性を尊重する方針を明確にし、従業員一人ひとりが「自分が受け入れられている」と感じられるような働きかけを行いましょう。これにより、従業員は自分の存在意義を感じ、より積極的に仕事に取り組むようになります。
5. ポジティブなフィードバックを積極的に行う
ポジティブなフィードバックは、心理的安全性を高める強力な手段です。上司やリーダーが、従業員の成果や努力を認め、積極的に称賛することで、従業員は自信を持ちやすくなります。特に、小さな成功や日々の努力に対しても感謝の気持ちを伝えることが大切です。また、失敗に対しても否定的な態度を取らず、成長の機会と捉えることで、従業員は新しい挑戦を恐れなくなります。これにより、組織全体の心理的安全性が向上し、活気あふれる職場が形成されます。
6. 自己開示と対話を重視する
最後に、心理的安全性を高めるためには、リーダー自身が自己開示を行い、対話を重視する姿勢を見せることが必要です。リーダーが自分の弱みや過去の失敗を率直に話すことで、従業員も安心して自分をさらけ出せるようになります。対話を通じてお互いの理解を深めることで、信頼関係が強化され、組織全体の結束力が高まります。
まとめ
このように「心理的安全性」は、チーム内の一体感を高め、生産性やパフォーマンスを向上させることがわかりました。「心理的安全性」を確保するためには、ひとりひとりの個性を尊重し、失敗を過度に心配させないような環境づくりが必要です。積極的なコミュニケーションや挑戦は、チームに革新的なアイディアと大きな成果をもたらします。「心理的安全性」を構築し、活動的なチームを目指してみませんか。
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