ERPとは?入門の基礎知識から導入メリット・デメリットを徹底解説
最終更新日:2023/01/06
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目次
ERPは、企業経営の根幹となる経営資源の適切な配分を実現するためのシステムです。「ヒト」「モノ」「カネ」といった「情報」を一元管理することで、企業の業務プロセス全体の効率化が可能となります。情報の管理や業務の効率を改善したいと考えている企業では、ERPの導入により大きな効果を実感できるでしょう。
この記事では、ERPの意義・メリット・機能・種類・導入前の注意点をわかりやすく解説していきます。
ERPとは
「ERP(Enterprise Resource Planning)」とは「企業資源計画」、すなわち企業経営の根幹となる経営資源の適切な配分を実現するためのシステムです。
また、生産・販売・在庫購買・財務会計・人事給与といった企業経営の基幹となる業務を統合し、一元管理できることから「統合基幹業務システム」と呼ばれることもあります。ERPを活用すれば企業の経営状況を正確かつタイムリーに把握することができ、経営戦略の立案に役立てることが可能です。
さらに、ERPでは以下の経営資源の管理をひとつのシステムでまとめて行うことができます。
- 「ヒト」に関する人事管理
- 「モノ」に関する在庫管理
- 「カネ」に関する販売管理
ERPが注目を集めた背景
ERPが注目を集め導入が進められている背景として、以下の2点が挙げられます。
- グローバル化への対応
- クラウドERPの出現
グローバル化への対応
1990年代後半から、我が国のグローバル企業の間で、企業会計の管理方法を国際会計基準に近づけようとする動きが盛んになりました(会計ビッグバン)。グローバル企業にとって海外拠点とタイムリーに情報共有をすることは非常に重要な経営課題です。
しかし、日本本社と海外拠点とで異なるシステムを利用している場合には、現地法人のデータを現地の担当者が集計・加工した上で本社に報告するといった手間が発生します。これではタイムリーな情報共有は実現できず、経営層が適切なタイミングで意思決定を行うことができません。
そこで、国内の支店や営業所、海外の現地法人を含め、企業の基幹業務を統合管理するERPに注目が集まりました。
クラウドERPの出現
もともと海外で開発されたERPは、当初そのままでは日本の商習慣に馴染まず、自社の運用に適したシステムを導入するためには、カスタマイズにより多額の導入コストが必要でした。
しかし、日本製のERPが開発されて日本企業に馴染むシステムが販売されるようになると、カスタマイズの必要がなくなり、導入にかかる費用を抑えることが可能になりました。さらに2010年代後半になると「クラウドERP」が出現したことで、企業によるERPの導入が加速することになります。
これは自社でソフトウェア・ハードウェアを保有・管理する必要がなくなり、クラウド活用で低コストかつスピーディーにERPを導入できる環境が整ったことが大きな要因です。導入のための負担(コスト面、作業面)が軽くなったことで、多くの企業がいつでもERPを導入できる環境ができつつあります。
ERPと他システム(基幹システム)との違い
基幹システムとは企業の基幹となる業務を遂行するために使用される業務システムを言います。財務会計、生産管理、販売・購買・在庫管理、人事給与など、各システムが独立していることが特徴です。
これに対してERPは、企業の経営資源を有効に活用するために複数の基幹システムが統合され、データを一元管理できるため、「統合基幹業務システム」とも呼ばれます。
ERPの種類4つ
ERPの種類として、以下の4つが挙げられます。本章では、それぞれの種類について詳しくみていきましょう。
- 統合型
- コンポーネント型
- 業務ソフト型
- クラウド型
1.統合型
統合型のERPでは、企業の情報を一つに統合して管理することが可能です。各部門が別々に行っていた作業を1回にまとめることができるため、業務効率のアップにつながります。
また、経営状況のタイムリーな情報共有が実現でき、経営層が適切なタイミングで迅速に経営判断を行うことができます。
2.コンポーネント型
コンポーネント型のERPは、利用中のシステムを継続して使用しつつ、自社のニーズに合わせて必要な機能を導入することが可能です。
また、導入後でもシステムの拡張を行うことができるため、コストを抑えつつ、導入期間を短縮することができます。企業の規模や事業内容に合わせて柔軟にシステム環境を構築できる点で優れています。
3.業務ソフト型
業務ソフト型のERPは、生産・販売・在庫購買・財務会計・人事給与といった特定の基幹業務の一元管理を行うことができます。特定の業務に特化しているため、対応する業務範囲が広い他の型よりも低コストかつ短期間で導入可能です。
4.クラウド型
クラウド型のERPは、自社でソフトウェア・ハードウェアを保有・管理する必要がなく低コストかつスピーディーにERPを導入できます。運用・保守をベンダーに依頼することもできるため、社内のシステム管理者の業務負荷を減らすことができます。
なお、簡単にかつ導入費用を抑えてシステムを利用することができますが、毎月の保守料が発生するため注意が必要です。近年導入のための負担(コスト面、作業面)が大幅に軽くなったことで、クラウド型ERPの導入が加速し、トレンドになっています。
ERPの主要な機能5つ
「ヒト・モノ・カネ・情報」といった経営資源を統合的に管理するために、ERPには下記5つの代表的な機能が搭載されています。
- 財務会計管理
- 販売管理
- 生産管理
- 購買、在庫管理
- 人事管理
1.財務会計管理
財務会計管理機能は、決算書の作成や、自社の経営状況を分析する管理会計を実施するための機能です。日々の仕訳入力からはじまり、総勘定元帳・補助元帳・試算表の作成・出力、貸借対照表や損益計算書といった決算書の作成・出力ができます。例えば販売管理機能と連携すれば、販売データから売上仕訳を自動で作成することが可能です。
また、購買管理機能と連携すれば、購買データから仕入仕訳・買掛金仕訳を自動で作成し、さらに買掛金データから振込データを作成し、銀行のインターネットバンキングシステムに取り込むこともできます。
このように財務会計管理機能を利用すれば、これまで担当者がひとつずつ手作業で仕訳していた取引を自動で作成でき、経理部門の大幅な業務削減につながります。
さらに、管理会計機能では自社の経営状況を一覧表やグラフで簡単に集計することができます。日々、各部門で入力されているデータを一元的に管理することができ、経営判断に必要な売上データや財務状況、各種利益などの情報を自分の確認したいタイミングで把握することが可能です。
2.販売管理
販売管理機能は、自社製品の販売状況を管理する機能です。見積書の作成、受注入力、出荷処理、売上計上、請求書発行といった販売に関連する業務にシステム対応が可能です。
また、最新の売上状況、予算実績管理、その他販売に関するさまざまなレポートを集計できます。ERPの製品により、適合する事業や売上形態が異なるため、導入にあたっては自社に適しているか見極める必要があります。
3.生産管理
生産管理機能は、生産計画・購買計画の作成、資材仕入、仕掛品管理と、製造工程に関連する業務に対応する機能です。サービス業のように生産プロセスがない企業にとっては不要な機能と言えますが、製造業の場合には特に、ERP導入の際に重要な選定基準となるでしょう。
製品によっては原価計算機能も有しているため、自社のニーズに合わせて選択することが可能です。販売管理と同様に、ERPの製品により、適合する事業や生産スタイルが異なるため、自社に適したシステムを選択しましょう。
4.購買・在庫管理
購買管理機能は、資材の購買依頼、見積書受領、仕入先選定、発注処理、入庫処理、請求書照合などの機能を有します。生産管理や在庫管理、財務会計管理の各機能と密接に連携しそれぞれの機能を高めるように作用します。
在庫管理機能は、常に最新の在庫状況を確認することを可能にする機能です。過剰でも過少でもない適正な在庫水準を維持することは、企業経営とって大変重要なポイントです。
また、営業部門にとっても、取引先から見積依頼を受けた際にすぐに最新の在庫状況が把握できるのは営業活動にプラスとなります。在庫が過剰であれば値引を検討、在庫が不足していれば注文を断る必要があります。
このように、在庫管理機能は製造部門・販売部門どちらにも業務を行う上で重要な機能です。
5.人事管理
人事管理機能は、自社の社員情報を管理する機能です。社員の住所・電話番号・生年月日・学歴・保有資格といった基本情報に加え、所属部門、異動情報、給与計算の基礎となる給与金額、扶養情報などを登録して管理することが可能です。給与計算と連携すれば、人事管理機能のもつ社員情報をもとに給与計算・勤怠管理を実施することもできます。
なお、人事管理機能の中でマイナンバーを管理することも可能ですが、マイナンバーは特定個人情報として、特に取り扱いに注意することが求められています。
企業は社員の社会保障や税に関する手続を行うときなど、限られた場面でのみマイナンバーを利用することが認められており、マイナンバー利用範囲は厳格に定められています。
ERPを導入するメリット4つ
ERPを導入するメリットとして、以下の4点が挙げられます。ここでは、ERPの具体的なメリットについて解説します。
- 情報の一元管理が可能
- システム連携による業務効率アップ
- 迅速な経営判断が可能
- 情報システム部門の業務負荷軽減
1.情報の一元管理が可能
各部門のシステムからデータを出力し、他部門にデータを提供していた場合には、データの出力・提供の作業自体がなくなります。データを受け取っていた側は、一元管理されているデータを自分の必要なタイミングで確認することができます。
2.システム連携による業務効率アップ
これまでひとつの情報を別々の部門で別々のシステムに入力していた場合には、ERPの導入により、一度の入力でシステムに情報が登録・共有されます。
ERPを導入することで、全社ベースで見た場合の業務量を大幅に削減することができ、業務効率のアップにつながります。
3.迅速な経営判断が可能
企業の外部環境は急速に変化し続けており、将来にわたり企業が存続・継続成長を実現するためには、常に迅速な経営判断が求められます。ERPを導入すると基幹業務が統合されることで、各部門・各業務のデータを一元管理することが可能となります。
これによりタイムリーな情報共有が実現でき、経営層が適切なタイミングで迅速に経営判断を行うことができます。その結果、顧客ニーズの変化に対して、企業として迅速かつ柔軟に対応することが可能です。
4.情報システム部門の業務負荷軽減
システムごとの管理、保守業務をひとつに統合
部門ごと、業務ごとにシステムを運用している場合には、情報システム部門はシステムごとに管理・保守を行う必要があります。ERPにより各業務システムを統合すれば、管理・保守も一元管理でき、情報システム部門の業務負荷を軽減することができます。
セキュリティ管理業務をひとつに統合
部門ごとにそれぞれシステムを運用している場合には、各システムに対しセキュリティ管理業務を行う必要があります。これもERPによるシステム統合により、セキュリティ管理を一元管理でき、業務負荷を軽減できます。
ERPを導入するデメリット2つ
企業の経営状況を正確かつタイムリーに把握することができ、迅速な経営判断に有効なERPですが、導入によるデメリットとして2点挙げられます。
- 一定のコストが発生
- 業務フローを見直す必要
1.一定のコストが発生
ERPは主要な基幹業務に幅広く対応できるため、企業が導入するシステムの中でも高額な部類に入ります。クラウド活用により低コスト化が進んでいるとはいえ、それでも導入費用・毎月の保守料が発生するため、コストメリットを慎重に見極める必要があります。
2.業務フローを見直す必要
すでに各業務に対応したシステムがあり、新しくERPで業務の統合をする場合には、旧システムを想定している業務フローでは新システムに対応することが困難な場合が多いです。
現在の業務フローを優先し、業務にシステムを合わせる場合には多額のカスタマイズ費用が発生するため、あまり望ましくありません。新システムに合わせるかたちで、業務フローを見直す必要があります。
また、新しい業務フローについて関係者に周知し、習熟してもらう必要もあるでしょう。
ERP導入前の注意点3つ
ERP導入前に注意する点として、以下の3点が挙げられます。
- 自社に適したシステム選定
- 費用対効果の測定
- 操作性
1.自社に適したシステム選定
現在、ERPはさまざまな機能・種類の製品が販売されています。導入する目的を明確にした上で、自社の企業規模・事業内容・基幹業務に適したシステムを選定しましょう。
2.費用対効果の測定
新しくシステムを導入するにあたり、導入費用と毎月の保守料が発生します。クラウド型のERPの出現により、導入にかかるコストが大幅に安くなってきているとはいえ、コストを上回るメリットが出ることを試算した上で導入を検討しましょう。
3.操作性
ERPは対象とする業務範囲が広範におよぶため、利用するユーザーも多くなります。あまりに操作が複雑なシステムでは、適切な運用がなされず、システム導入目的の達成が難しくなります。そのため、経営層・社員の誰もが簡単にシステムを利用できるように、操作性に優れたシステムを選択しましょう。
ERP導入の流れ
ERPを導入することで、全社的な業務効率をアップできますが、導入までの作業は非常に業務負荷がかかります。十分な体制を整えた上で、ERP導入プロジェクトを進めましょう。ERP導入までの流れは以下のとおりです。
- 導入目的の明確化
- 体制・メンバーの整備
- 業務プロセスの棚卸
- 新業務フローの策定
- トライアル
- 本稼働
1.導入目的の明確化
ERP導入により、企業の抱えるどのような問題を解消していくのか、導入目的を明確にしましょう。導入目的を明確にすることで、非常に多くの選択肢があるERPの中から候補を絞り込むことができます。また、機能の選定の際にも、必要な機能・不要な機能をスムーズに選別することが可能です。
2.体制・メンバーの整備
ERPの導入目的が明確になったら、プロジェクトチームを発足させ、リーダー・担当者および各部門の責任者・担当者を選任しましょう。プロジェクトの担当者は、全社横断的に複数の部門にヒアリングを実施し、時には急な依頼が必要な場面もあります。
そのため、調整能力・コミュニケーション能力を有する人を選任しましょう。現状の業務プロセスを漏れなくピックアップし、新システムでの運用が可能かどうかを判断する必要があるため、各部門の担当者は自部門の業務に精通していることが求められます。
3.業務プロセスの棚卸
現状の業務プロセスの棚卸を行うことで、システムに対応する新業務フローで設定すべき業務が明確になります。棚卸された業務の中で、ERPで管理できる業務と管理できない業務が把握できるため、ERPに乗らない業務については別途対応が必要です。
また、この業務プロセスの棚卸の過程で、部門の責任者が把握していない部門の担当者だけが知る属人的な業務が発見できます。要件定義の際に漏れないよう注意しましょう。
4.新業務フローの策定
現行のシステムに対応した従来の業務フローは、そのままでは新システムに対応できないケースが発生します。その場合には、新システムに対応するように従来の業務フローを見直す必要があります。プロジェクトの担当者、部門責任者、部門の業務担当者、ベンダーとの要件定義で、慎重にフローを見直しましょう。
5.トライアル
ERPは非常に多くの製品が販売されていますが、無料のトライアル期間を設けている製品があります。製品の機能を事前に確認し、自社の運用に適しているか、自社の社員が運用可能かを確認するためにぜひ利用しましょう。
トライアル期間中に、新たな業務フローに運用上の問題点が発生した場合には、引き続きシステムで取り扱うために再度業務フローを見直すか、システムで取り扱うのをやめるか判断が必要になります。なお、旧システムの利用をある時から完全に停止し、新システムにいきなり移行するのはリスクが伴います。
同じ業務を旧システムで処理した結果と新システムで処理した結果に差異が出てしまう可能性があるからです。そのため、通常2ヶ月程度、新・旧両システムに同じ処理を行い処理結果に差異がないことを確認するために並行運用を行うケースが一般的です。
6.本稼働
トライアル期間で自社の運用に適していることが確認できれば、新システムの本稼働です。稼働当初は、不慣れなこともありプロジェクトメンバーへの問い合わせも増加することが予想されます。
事前にベンダーから操作マニュアルを入手するとともに、自社の運用のためのマニュアルも用意しましょう。また、関係者を集めて、新システムに関する説明会・研修会を実施することも有効です。
ERPを理解して、業務効率化に役立てよう
ERPは、企業経営の根幹となる経営資源の適切な配分を実現するためのシステムです。有効に活用すれば、企業の経営状況を正確かつタイムリーに把握することができ、経営の意思決定に役立てることが可能になります。企業経営の基幹となる業務を統合するだけのシステムではなく、経営の意思決定にも資するソリューションシステムとも言えます。
クラウドERPはWebブラウザからもアクセスが可能なため、現在国が推進している働き方改革の重要な施策である「リモートワーク」の勤務形態に適しており、またクラウド活用による低コスト化の進展により、ERPの導入は今後も加速していくことでしょう。
ERPを活用する場合のメリットを理解して、ぜひ貴社の環境に適したERPの導入をご検討ください。
ERPの製品比較はこちらの記事から↓
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