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サプライチェーンリスクとは|原因や対策も解説

目次

サプライチェーンとは、企業活動に欠かせないインフラの一つで、モノの生産から販売に至るまでの一連のプロセスを意味する言葉です。実際に、自然災害やシステム障害などによってサプライチェーンが途絶すると、消費者に製品やサービスが行き届かなくなり、企業の経済活動が停滞します。サプライチェーンリスクとは、このようにサプライチェーン全体の流れが止まってしまうリスクのことを意味します。本記事では、サプライチェーンリスクの具体例や主な要因、軽減するための対策やポイントを解説します。

サプライチェーンリスクとは

サプライチェーンとは、製品やサービスが消費者に届くまでのプロセス全体を意味し、自社と他社をまたいだモノの流れを捉えています。たとえば、アパレルの製造を例にすると、以下のプロセスごとに複数の企業が協力関係を築いています。

・衣服やアクセサリーのデザイン
・原材料の調達
・衣服やアクセサリーの製造
・完成品の流通
・完成品の販売

サプライチェーンリスクとは、サプライチェーンが滞ったり途絶したりして、供給の流れが止まってしまうリスクのことです。従来は、主にモノの流れが止まることで、サプライチェーン全体が連鎖的に停滞するリスクを意味していました。しかし、近年は情報セキュリティにおけるサプライチェーンリスクが脅威を増しています。

サプライチェーンリスクの具体例

サプライチェーンリスクの具体例は、以下の通りです。
・物流の停滞
・人員不足
・システム障害
・情報漏洩
・連鎖倒産

サプライチェーンリスクのなかでも、物流の停滞や人員不足は影響が大きいリスクの一つです。製造業では、製品の原材料を調達できなければ生産が止まり、販売業では、メーカーから商品が供給されなければ消費者への販売ができません。

また、サプライチェーンでは企業間で同じシステムを共有するケースが多く、システム障害や情報漏洩によって全体の流れが停滞するリスクもあります。システムの復旧や問題の解消に時間がかかる場合には、事業の存続にも影響するため注意が必要です。

サプライチェーンリスクの主な要因

自然災害や価格変動など、サプライチェーンリスクにはさまざまな要因があります。サプライチェーンリスクの主な要因は以下の例が挙げられます。

1.環境的リスク

サプライチェーンに影響を及ぼす要因として、以下のような環境的リスクが挙げられます。

・自然災害
・異常気象や気候変動
・エピデミックやパンデミック

たとえば、2011年3月に東日本大震災が発生した際は、被災地域の企業が大きな被害を受け、サプライチェーンを通じて全国規模で製造業が停滞しました。

また、エピデミックやパンデミックの例として、2020年以降の新型コロナウィルス感染症が挙げられます。新型コロナウィルスの世界的な感染拡大に伴い、各国が渡航制限や外出制限といった強力な措置を実施したことで、生産活動や物流に多大な影響を及ぼしました。

2.経済学的リスク

以下のような経済学的リスクも、サプライチェーンに大きく影響する要因です。

・原材料や部品の不足
・サプライヤーの生産能力低下
・価格変動
・規制要件の変更

たとえば、2008年のリーマンショックのような世界的な経済危機のときには、需要が大幅に減少します。実際に、リーマンショックをきっかけに倒産に追い込まれた日本の上場企業も少なくありません。

また、近年はサプライチェーンのグローバル化が進み、海外から輸入する原材料や部品への依存度が高まっています。そのため、急速な為替変動によって原材料や部品の原価が上下すると、企業の経済状況にも大きく影響します。

3.地政学的リスク

サプライチェーンリスクの要因として、以下のような地政学的リスクも挙げられます。

・戦争やテロの発生
・貿易制限や関税の不確実性

たとえば、中東で紛争が起きて原油の供給が滞ると、石油関連の原料を使用している製品が品薄になり、価格が高騰します。2022年にロシアがウクライナを侵攻した際にも、現地の拠点を封鎖したり、調達先や物流ルートを変更したりするなど、対応を余儀なくされた企業が多くありました。

ほかにも、貿易制限や追加関税などによって、利益の減少や販売シェアの落ち込みにつながるリスクもあります。

4.サプライチェーン攻撃によるリスク

近年は、サプライチェーン攻撃によるリスクが増え、情報セキュリティの重要性が高まっています。

サプライチェーン攻撃とは、サイバー攻撃の手口の一つです。サプライチェーン攻撃は、下表の通り、攻撃の起点によって3つに大別できます。

 

たとえ自社のセキュリティを強化しても、対策が十分ではない子会社やベンダーなどを経由して、サイバー攻撃を受けるケースも珍しくありません。サイバー攻撃の多くは、業務上のやり取りを介して侵入されるため、被害を受ける前に対処するのは難しいといえます。

5.コンプライアンス違反によるリスク

以下のようなコンプライアンス違反によるリスクも、サプライチェーンを脅かす要因の一つです。

個人情報の流出
・虚偽表示
・不法労働や人身売買などへの関与

コンプライアンス違反は、自社が直接関与していなければよいとは限りません。関連組織や取引先の企業が法令に違反した場合に、自社も罰金などの処罰対象になったり、企業イメージが低下したりするリスクがあるので注意が必要です。

サプライチェーンリスクマネジメントの手順

サプライチェーンリスクマネジメント(SCRM:Supply Chain Risk Management)とは、サプライチェーンの構成によって発生するさまざまなリスクに対し、フロー全体を管理するためのものです。

サプライチェーンリスクマネジメントは、大まかに以下の手順で進めていきます。

・サプライチェーンの構造を可視化する
・リスクを洗い出して評価する
・対策を立案・実施する
・リスクの変化を監視する

まずは、サプライチェーンを構成する要素を把握し、それぞれのつながりを整理するのがポイントです。そして、整理した情報をもとに、サプライチェーンの途絶につながるリスクを想定し、発生確率や影響度を評価します。次に、評価済みのリスクを回避するための対策を立案し、対象範囲を決めて実施します。なお、サプライチェーンリスクは、構造や環境の変化によって優先度が変わるため、監視し続けることも大切です。リスクの変化に応じて、繰り返し対策を実施しましょう。

サプライチェーンリスクマネジメントのポイント

サプライチェーンリスクマネジメントを成功させるためには、相互の信頼関係が不可欠です。

サプライチェーンの全企業が、透明性を持って情報共有することで、事業活動をともにする動機や信頼につながります。具体的には、販売情報をもとに需要を予測し、生産計画をタイムリーに反映して納期を短縮できると、サプライチェーン全体の経営効率が高まります。

また、近年は情報セキュリティにおけるリスクマネジメントが重視されています。たとえ自社の情報セキュリティを強化しても、関連会社や取引先のうち、対策が不十分な企業が一社でもあれば、サプライチェーン全体でリスクを抱えることになるので注意が必要です。

サプライチェーンリスクマネジメントにおいては、自社のみを対象とするのではなく、関連会社や利用しているシステムも含めて体制を強化する必要があります。

サプライチェーンリスクを軽減するための具体策

サプライチェーンリスクを軽減するためには、事業継続計画書を策定したり、取引先を分散したりするなど、事前の取り組みが不可欠です。

以下で、サプライチェーンリスクを軽減するための具体策をまとめているので、ぜひ参考にしてください。

1.事業継続計画書(BCP)を策定する

サプライチェーンリスクによる影響を軽減するためには、事業継続計画書(BCP:Business Continuity Planning)を策定しておく必要があります。事業継続計画書とは、自然災害などの緊急事態において、企業が損害を最小限に抑え、事業の継続を図るための計画書のことです。

具体的には、さまざまなリスクと被害を想定したうえで、時系列に行動方針を決めていきます。また、事業継続計画書は策定して終わりではなく、プレスリリースや説明会などを通じて事前に社内外へ周知しておくことで、サプライチェーンリスクの軽減につながります。

2.拠点や取引先を分散する

拠点や取引先の分散も、サプライチェーンリスクを軽減する方法の一つです。あらかじめ拠点や取引先を分散しておくと、自然災害の発生などによって特定の地域からの供給が途絶した場合であっても、原材料や代替品

を確保しやすくなります。

なお、新型コロナウィルス感染拡大以降、多くの企業で導入されているリモートワークもリスク分散の一つだといえるでしょう。

3.取引先との連携を深める

サプライチェーンリスクを軽減するためには、取引先との連携を深めておくことも大切です。単に連絡が取れる状況を確立するだけではなく、リアルタイムでデータを共有できる仕組みを構築しておくと、製品のトレーサビリティやリスク発生時の素早い原因究明が可能になります。

また、サプライチェーン全体で情報を一元管理するためには、業務の電子化やシステムの共有なども効果的です。

4.セキュリティ対策を強化する

サプライチェーンリスクを軽減するためには、自社のセキュリティ強化が必須です。基本的なセキュリティ対策としては、パソコンやサーバーへのアクセス制限、ウイルス対策ソフトや不正アクセス検知システムの導入などが挙げられます。

また、サイバー攻撃に対するセキュリティに加えて、不正や操作ミスなど、内部の人的リスクへの対策も必要です。社内でセキュリティ教育を徹底し、不正行為ができないような仕組みづくりを進めましょう。

5.関連企業のリスク評価を行う

関連企業のリスク評価も、サプライチェーンリスクの対策として有効です。

サプライチェーン全体でセキュリティ対策を強化するためには、各企業の取り組みについてヒアリングしておく必要があります。リスク評価の結果、関連企業のセキュリティレベルが自社より低い場合は、対策を実施してもらうよう指導しましょう。

なお、取引先の選定時に、情報セキュリティに対するリスク管理の基準を示す国際規格「ISMS認証」の取得有無を確認しておくと安心です。また、関連企業とセキュリティ契約を結び、サプライチェーンリスクを想定した項目を明記するなどしておくと、被害発生時にスムーズな対応ができるでしょう。

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まとめ

サプライチェーンリスクは、大企業だけではなく、中小企業も含めてあらゆる事業者が対策を講じるべき脅威です。特に、サプライチェーン攻撃では、セキュリティの脆弱な中小企業やベンダーを介して標的企業を攻撃するケースが多く、サプライチェーン全体のマネジメントが不可欠です。

本記事では、サプライチェーンリスクとは何か、主な要因と具体的な対策を解説しました。サプライチェーンリスクを最小限にするためにも、取引先との連携を深め、セキュリティ対策を強化するなど、取り組みやすい施策から始めましょう。

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