SQLインジェクションとは?被害例や対策をわかりやすく解説
最終更新日:2024/06/10
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目次
SQLインジェクションという言葉を聞いたことがあっても、正直よくわからず、不安を抱えている人は少なくないでしょう。
そこで本記事では、SQLインジェクションの仕組みや被害事例を紹介するとともに、効果的な対策方法についても詳しく解説します。
SQLインジェクションとは
SQLインジェクションとは、Webアプリケーションのセキュリティ上の弱点を突く攻撃手法の一種です。攻撃者は、アプリケーションに意図的に不正なSQL文の断片を注入し、実行させることでデータベースに不正にアクセスします。その結果、データベース内のデータが不正に読み取られたり、改ざんされたり、最悪の場合は削除されたりする可能性があります。
SQL(Structured Query Language)は、データベースを操作するための国際標準化された言語で、多くのWebアプリケーションで広く使用されています。通常、ユーザーがWebアプリケーションに入力した情報に基づいてSQL文(クエリとも呼ばれる)が生成され、データベースで処理された結果がユーザーに返されます。
しかし、SQLインジェクションが行われた場合、攻撃者はWebアプリケーションのセキュリティホールを悪用し、不正な入力を行います。この不正入力によって、本来意図されていない誤ったSQL文が生成され、データベースに送信されてしまうのです。その結果、攻撃者はデータベースを不正に操作し、データベース内に格納された機密情報を読み取ったり、データを改ざんしたりすることが可能になります。
SQLインジェクションの仕組み
SQLインジェクションは、攻撃者がSQLサーバー(データベースサーバー)を操作するための不正な命令文を作成することで発生します。ECサイトやポータルサイトなどでは、ユーザーIDやパスワードの入力を通じてSQLサーバーが利用されているため、これらのWebサイトがSQLインジェクションの主な標的となるのです。
通常、WebサイトではユーザーIDやパスワードの入力時に不正な文字列のチェックが行われますが、入力エリアに脆弱性がある場合、攻撃者はSQL文を含む不正な文字列を入力することができます。その結果、本来意図されていない不適切なSQLが実行され、データベースの操作が可能になってしまうのです。
SQLインジェクションの被害
SQLインジェクション攻撃を受けるといくつかの被害を受けてしまいます。
本章では「情報の漏えい」「Webサイトの改ざん」「データベースの破壊」の3つに分けて解説します。
- 情報が漏えいする
- Webサイトが改ざんされる
- データベースが破壊される
情報が漏えいする
情報漏えいは、SQLインジェクション攻撃の中でもとくに深刻な被害の一つです。企業が大切にしている機密情報や、お客様の個人情報が盗み出されてしまうと、信用失墜につながるだけでなく、法的な責任を問われることもあります。とくに、クレジットカード情報が保存されている場合、カード番号や名義人の情報が漏れると、不正利用による二次被害が発生する恐れがあるのです。
Webサイトが改ざんされる
最近では、SQLインジェクション攻撃により、企業や政治団体のWebサイトが改ざんされるケースが増えています。攻撃者によって、Webサイトの内容が書き換えられたり、削除されたりする被害が目立ちます。さらに悪質なのは、Webサイトにコンピュータウイルスを仕込み、閲覧者がそのウイルスに感染してしまうという手口です。この手の被害も増加傾向にあるのです。
データベースが破壊される
データベースの破壊は、SQLインジェクション攻撃によって引き起こされる最も深刻な被害の一つです。攻撃者は、脆弱性のあるWebサイトを通じて不正なSQL文を注入し、データベースに直接アクセスします。そして、データベース内のテーブルやレコードを削除したり、改ざんしたりすることで、データの完全性や可用性を損なうのです。
データベースが破壊されると、企業は業務に必要な情報を失ってしまいます。顧客情報や取引記録、在庫管理データなど、ビジネスを運営する上で欠かせないデータが消失すれば、業務が停滞し、収益に大きな影響が出ることでしょう。さらに、バックアップが適切に取られていない場合、データの復旧に多大な時間と費用がかかってしまいます。
また、データベースの破壊は、企業の信頼性を大きく損ねる可能性があります。顧客情報が失われたり、サービスが停止したりすれば、顧客からの信頼を失い、ビジネスチャンスを逃してしまうかもしれません。
SQLインジェクションの被害事例3選
本章では、SQLインジェクションの実際に発生した被害事例を紹介します。「情報漏えい」「Webサイト改ざん」「データベース破壊」に分けて見ていきましょう。
- 情報漏えい
- Webサイト改ざん
- データベース破壊
情報漏えい
2017年、米国の大手クレジット報告会社Equifaxが、大規模なデータ漏えい事件を発表しました。この事件では、SQLインジェクションの脆弱性が悪用され、1億4300万人以上の顧客情報が流出しました。流出した情報には、氏名、社会保障番号、生年月日、住所、運転免許証番号などの個人情報が含まれていました。
2016年、米国の大手ホテルチェーンMarriott Internationalが、サイバー攻撃を受けました。この攻撃では、SQLインジェクションによって顧客データベースにアクセスされ、5億人以上の顧客情報が流出しました。流出した情報には、パスポート番号やクレジットカード情報なども含まれていました。
Webサイト改ざん
2010年、米国の複数の政府機関のWebサイトがSQLインジェクション攻撃を受け、改ざんされました。米国郵政公社(USPS)、連邦取引委員会(FTC)、サイバーセキュリティ・通信統合センター(NCC)などのサイトが影響を受けたそうです。攻撃者は、これらのサイトのデータベースにアクセスし、Webページのコンテンツを書き換えました。
2011年、インドの国家情報センター(NIC)のWebサイトがSQLインジェクション攻撃を受け、改ざんされました。攻撃者は、「パキスタン・サイバー軍(Pakistan Cyber Army)」を名乗り、インドの国旗を燃やす画像をサイトに掲載したのです。
データベース破壊
2016年、ロシアの最大手銀行の一つであるSberbankが、SQLインジェクション攻撃を受けました。攻撃者は、銀行のデータベースにアクセスし、顧客情報を含む大量のデータを削除したのです。この事件により、銀行のサービスが一時的に停止し、顧客に大きな影響が出ました。
2012年、サウジアラビアの石油会社Saudi Aramcoが、サイバー攻撃を受けました。この攻撃では、SQLインジェクションによってデータベースが破壊され、3万台以上のコンピュータがウイルスに感染しました。同社は、世界最大の石油会社の一つであり、この事件は石油産業に大きな衝撃を与えた事例です。
SQLインジェクションの対策とは
SQLインジェクションを防ぐためには、対策を講じる必要があります。
本章では、有効な対策として「エスケープ処理する」「アプリのアップデート」「データベースの監視と分析」「WAFの導入」の4つを紹介します。参考にしてください。
- エスケープ処理する
- アプリをこまめにアップデートする
- データベースログの監視と解析
- WAFを導入する
エスケープ処理する
エスケープ処理は、SQLインジェクション対策として非常に有効な方法の一つといえるでしょう。プログラミングの世界では、特別な意味を持つ文字や記号があります。例えば、セミコロン(;)やシングルクォート(’)などがその代表例ですね。エスケープ処理では、これらの特殊文字を別の文字列に置き換えることで、通常の文字として扱うようにします。
つまり、もし攻撃者が悪意を持って不正なSQLを送り込んできたとしても、エスケープ処理によってその脅威を無力化できるのです。特殊文字が本来の意味を失い、単なる文字列の一部として認識されるため、SQLインジェクション攻撃は効果を発揮できなくなります。
このように、エスケープ処理は比較的シンプルな仕組みながら、SQLインジェクション対策に大きな効果を発揮する手法だといえます。プログラマーにとって、エスケープ処理を適切に行うことは、セキュアなWebアプリケーションを開発する上で欠かせないスキルの一つといえるでしょう。特殊文字の取り扱いに十分な注意を払い、ルールに沿ったエスケープ処理を行うことが重要です。
アプリをこまめにアップデートする
SQLインジェクションのリスクを最小限に抑えるには、OSやアプリケーションを最新の状態に保つことが不可欠だといえます。一般的に、バージョンアップには脆弱性を修正した内容が含まれていることが多いのです。つまり、常に最新版を使用することで、攻撃者に付け入る隙を与えにくくなるでしょう。
もし自社のOSやアプリケーションに新たな脆弱性が見つかったら、速やかに対応することが求められます。バージョンアップや修正パッチの適用、場合によってはアプリケーションの改修など、適切な対策を迅速に実施することが重要です。脆弱性を放置することは、SQLインジェクション攻撃の格好のターゲットになってしまいますから、注意が必要ですね。
こうした地道な努力の積み重ねが、SQLインジェクションのリスクを抑える上で欠かせません。最新のセキュリティ情報を常にキャッチアップし、適切な対策を講じることで、安全なWebアプリケーションを維持していくことができるのです。
データベースログの監視と解析
データベースサーバーのログを注意深く監視し、分析することは、SQLインジェクション攻撃の被害を把握する上で非常に重要な作業といえるでしょう。ログを詳しく調べることで、どのようなデータが改ざんされたのか、また、どの範囲のデータが抜き取られてしまったのかを知ることができます。
具体的には、まず不正なSQL文が送信されていないかをチェックします。通常使われることのないような不自然なSQL文が記録されていれば、それは攻撃者による悪意あるクエリかもしれません。また、データベースサーバーのユーザーが、通常のSQL文の送信以外の操作を行っていないかも確認しましょう。
ただし、ログの監視と分析は、専門的な知識と経験を必要とする作業です。セキュリティの専門家と連携し、効果的なログ管理体制を整えることが重要でしょう。また、ログの保管期間や分析の頻度についても、組織のセキュリティポリシーに基づいて適切に設定する必要があります。
WAFを導入する
SQLインジェクション対策として、WAF(Web Application Firewall)の導入は非常に効果的な選択肢の一つといえます。WAFは、Webアプリケーションの脆弱性を狙ったサイバー攻撃から、Webサイトを守るためのセキュリティツールです。
WAFは、アプリケーションへの通信内容を一つひとつ細かくチェックし、不正な通信を見つけ出して遮断する働きを持っています。例えば、もし通信の中にSQLインジェクション攻撃に使われるような不正なSQL文が含まれていれば、WAFがそれを検知して通信を遮断し、Webアプリケーションを守ってくれるのです。
WAFは、Webアプリケーションとインターネットの間に設置され、通信内容をリアルタイムで監視します。不正な通信を発見した場合は、即座にそれをブロックし、Webアプリケーションへの影響を最小限に抑えてくれるのが特徴です。また、多くのWAFには、攻撃の傾向や手口を学習する機能も備わっており、新たな脅威にも柔軟に対応できるようになっています。
ただし、WAFの導入には一定のコストがかかることや、設定の複雑さなどの課題も。組織のセキュリティ要件やリソースに合わせて、適切なWAFを選択し、効果的に運用していくことが重要でしょう。
SQLインジェクションの対策をしよう
SQLインジェクションが、Webアプリケーションの脆弱性を突く非常に危険な攻撃手法であることを解説しました。
適切な対策を講じることが重要ですが、一方で過剰な対策は開発効率を下げてしまいます。自社のWebサイトのセキュリティ要件とリソースを考慮しつつ、効果的かつ効率的な対策を選択し、継続的に運用していくことが求められます。
SQLインジェクションの脅威を正しく理解し、適切な対策を実施することで、安全なWebアプリケーションを維持していきましょう。
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