現在注目されている、ブレンディッドラーニングとはどんな学習手法なのでしょうか?この記事では、ブレンディッドラーニングの概要と効果的な実践方法、実践におけるポイントも紹介します。

ブレンディッドラーニングとは?

ブレンディッドラーニングとは?

ブレンディッドラーニング(Blended Learning)は、多様な学習手法を組み合わせることで、より効果的な学びを提供する手法です。このアプローチは、集合研修やeラーニング、動画コンテンツなど、異なる学習方法をブレンドすることによって、個々の利点を最大限に引き出し、学習効果を向上させます。

基本的な形態

ブレンディッドラーニングの基本パターンは、eラーニングや動画コンテンツを用いて基礎的な知識を獲得し、それを踏まえて集合研修で実践的な議論などのアウトプットを行います。この逆転した学習アプローチは「反転授業」とも呼ばれ、従来の学び方を刷新しています。

学習における3つの基本的なスタイル

学習者には3つの基本的な学習スタイルがあります。視覚的なものを利用して学習するスタイル、音声を利用して学習するスタイル、そして体験することで学習するスタイルです。学習者は一つのスタイルを好む傾向にありますが、3つのスタイルを利用することでより高度な習得を期待できると言われています。ブレンディッドラーニングのプログラムでは3つすべてのアプローチを利活用します。

要素のブレンド

ブレンディッドラーニングでは、学びの素材、学習活動、学び手、学びの理論、提供方法といった様々な要素を巧みにブレンドします。例えば、動画、スライド、音声、講義、対話、チャットなど多岐にわたる手法を組み合わせ、学習者が飽きずに主題にアプローチできるよう工夫されています。

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ブレンディッドラーニングのメリット

ブレンディッドラーニングは、研修を実施する企業と受講者の両者に対して多くのメリットをもたらします。以下では、企業側と受講者側の視点から、ブレンディッドラーニングの導入によって生じる利点に焦点を当てます。

企業側のメリット2つ

ブレンディッドラーニングの企業におけるメリット

ここからは、ブレンディッドラーニングの導入における企業側のメリットを紹介します。

1.経費が削減できる

ブレンディッドラーニングの導入により、企業は経費を効果的に削減できます。集合研修に伴う場所の確保や参加者の宿泊代、交通費、資料の印刷代などのコストが削減されます。

2.効果的な人材育成が可能

ブレンディッドラーニングでは、オンライン研修で基礎知識を事前に獲得し、集合研修では実践的な演習やディスカッションに重点を置くことができます。これにより、有限な時間を最大限に活用し、効果的かつ効率的な人材育成が可能となります。また、学習管理システムを使用して受講者の進捗を把握し、個別の補足を行うことができます。

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受講者側のメリット4つ

ブレンディッドラーニングの受講者側のメリット

ここからは、ブレンディッドラーニングの導入における受講者側のメリットを紹介します。

1.研修期間が短く、負担が減る

ブレンディッドラーニングによって、受講者はオンライン研修で事前に学習を進め、集合研修では実践的な活動に集中できます。これにより、研修期間が短縮され、参加者の負担が軽減されます。日程の柔軟性が高まり、参加がより容易になります。

2.業務との両立がしやすくなる

オンライン学習と集合研修の組み合わせにより、受講者は自身のペースで学びを進めることができ、業務との両立がしやすくなります。特に、研修期間が短縮されることで、仕事との調整がスムーズに行えます。

3.インタラクティブな学習が可能

集合研修では講師との直接的なコミュニケーションや、他の受講者とのディスカッションが可能です。これにより、受講者は質問を投げかけたり、他の受講者と知識を共有したりすることで、より深い理解と学びの実践が促進されます。

4.すべてのプログラムを効果的に学習

ブレンディッドラーニングでは、eラーニングと集合研修を組み合わせることで、それぞれの手法のデメリットを補えます。eラーニングでは難解な理論や基礎知識を獲得し、集合研修ではその知識を実践に結びつけることで、効果的かつ総合的な学習が可能です。

ブレンディッドラーニングのメリットは、企業と受講者の両者にとってWin-Winの関係を築けることです。企業はコストの削減と効果的な教育プログラムの提供が可能となり、受講者は柔軟で効果的な学習体験を享受できます。

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ブレンディッドラーニングの実践におけるポイント

ブレンディッドラーニング ポイント

ブレンディッドラーニングを実施する上での鍵となるポイントを以下に解説します。これらのポイントを押さえることで、効果的で意味のある研修を提供することができます。

1. 研修の目的を明確にする

ブレンディッドラーニングを効果的に導入するには、まず研修の目的を明確にすることが不可欠です。参加者がどのようなスキルや知識を身につけるべきかを具体的に定め、そのためにどのような内容を研修でカバーするかを検討します。明確な目的設定により、参加者は研修の意義を理解しやすくなり、学習の流れもより明確になります。

2. 各学習方法の特徴を理解する

ブレンディッドラーニングでは、複数の学習方法を組み合わせます。オンライン研修や集合研修など、それぞれの学習方法の特徴やメリット、デメリットを理解することが重要です。研修の目的や内容に応じて、どの学習方法をどのタイミングで組み合わせるかを検討し、最適なブレンドを実現します。

3. 研修設計をきちんと行う

効果的なブレンディッドラーニングを実現するためには、研修の設計を丁寧に行うことが必要です。研修全体の構成や各フェーズで扱う内容を計画し、オンラインと対面の研修をシームレスに結びつけます。事前学習、集合研修、e-ラーニングなどが一貫して一つのテーマや目的を追求するような一貫性を保つことが重要です。

4. フィードバックの準備を行う

ブレンディッドラーニングでは、参加者とのコミュニケーションやフィードバックが重要です。研修期間中や終了後、参加者の疑問や質問に迅速に対応できるサポート体制を整え、参加者と提供者との対話を促進します。また、参加者が自ら知識を深められるように、参考リンクや文献情報を提供することも忘れずに行います。研修終了後のテストやディスカッションを通じて成果を把握し、次回以降の改善点を見つけるためのフィードバックも大切です。

5. 研修後の成果測定を徹底する

また、研修終了後は、参加者の習熟度やゴールの達成度をしっかりと測定することが不可欠です。テストやレポート、ディスカッションを通じて成果を確認し、次回の改善点を洗い出します。参加者にとっても自らの学習の成果を実感する機会となります。

6. 事前学習の重要性を強調する

ブレンディッドラーニングでは、事前学習が全体の学習効果に大きく影響します。受講者に対して、事前学習が研修全体の土台となることの重要性を伝え、主体的な学習態度を促進します。学習管理システムを通じて受講者の進捗を適切に管理し、事前学習の達成度を確認します。

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ブレンディッドラーニングの導入事例(米国大手銀行Fのコールセンター教育)

ブレンディッドラーニングの導入事例(米国大手銀行Fのコールセンター教育)

大手銀行Fは、全米に広がる12のコールセンターに3000人以上の電話銀行員を擁しています。大手銀行Fの毎年の新規従業員研修に、ブレンディッドラーニングを導入した成功事例があります。

研修前の課題と目標

以前の研修では、新入社員の研修には通常6週間かかっていました。目標は、習熟度向上と電話銀行員としての自信の向上を図り、研修期間を4週間に短縮することでした。

カスタマイズされたブレンディッドプログラム

研修計画は、個々の職務要件に基づき、販売およびサービスの2つの異なるカリキュラムに分かれました。重要なのは、オンラインシステムの高度で複雑な使用方法を学ぶためのソフトウェアアプリケーショントレーニングが含まれたことです。

研修の進行

ブレンディッドプログラムは、ウェブベースのトレーニング、シミュレーション、ロールプレー、簡単な管理者との会議を組み合わせて設計されました。トレーニングは時間の経過とともに進化し、最初は社会性と基本的なスキルの開発に焦点を当て、徐々にOJTにシフトしました。

成果とフィードバック

ブレンディッドプログラムの実施により、研修期間が短縮され、学習の効果が向上しました。受講生は最初の8日以内に顧客からの電話を受ける準備が整い、以前のインストラクター主導のプログラムよりも迅速な適応が見られました。

関係者の声

ブレンディッドラーニング関係者の声

この事例は、ブレンディッドラーニングが実践的かつ戦略的な研修手法としていかに効果的であるかを示しています。総合的なアプローチと柔軟性を持ったブレンディッドプログラムが、学習の迅速かつ実践的な展開に貢献しました。

※導入事例の記事では「ブレンディッドラーニングの戦略: eラーニングを活用した人材育成/著者: ジョシュバーシン」を参考にしました。

ブレンディッドラーニングの成功に向けて

ブレンディッドラーニングの成功に向けて

ブレンディッドラーニングは、コロナ禍の変革を経て、人材育成において新しい局面を迎えています。成功の鍵は、計画と実践の両面にあります。総合的な計画、柔軟な実践、異なる学習提供方法の組み合わせ、実践に結びつけた職場学習―これらの要素が結びついて初めて、ブレンディッドラーニングはその真価を発揮します。変化の激しい時代において、新たな学びの形を築くために、これらのステップを踏んでいくことが不可欠です。