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事業部制組織とは?特徴やメリットデメリットを実例付きでわかりやすく解説

目次

事業部制組織は、多くの企業が採用している効果的な組織形態です。しかし、導入や運営には多くの課題も伴うため、導入前に適切な知識を得ることが大事です。そこで、この記事では、事業部制組織の基本概念からメリット・デメリット、具体的な導入ステップまでを詳しく解説していきます。

事業部制組織の導入を検討している企業経営者や管理職の方にとって、この記事は有益な情報源となれば幸いです。以下のような点について理解を深めたい方は、是非参考にしてみてください。

  1. 事業部制組織の基本概念と特徴
  2. メリットとデメリットの具体例
  3. 事業部制組織を効果的に導入するためのステップ

企業の組織改革を検討している方にとって、この記事が事業部制組織の導入を成功させるための実践的なガイドとなることを目指して作成しました。

各事業部が独立して運営されることで、現場の状況に応じた迅速な意思決定が可能になり、企業全体の競争力を向上させることができます。また、事業部制組織を導入することで、製品や市場戦略に特化した運営が可能となり、効率的な経営が実現します。

今後の組織の方向性を検討している方は、是非参考にしてみてください。

事業部制組織とは?基本概念をわかりやすく解説

事業部制組織は、多くの企業が採用する組織形態の一つです。まずは、事業部制組織の基本概念や特徴について見ていきましょう。

事業部制組織の定義・特徴

事業部制組織とは、企業全体を複数の事業部に分け、それぞれの事業部が独立した経営単位として運営される組織形態です。この組織形態では、各事業部が独自の製品ラインや市場に焦点を当て、独立して運営されることで、迅速な意思決定と効率的な業務遂行が可能となります。

事業部制組織の特徴として、以下の点が挙げられます。

  • 各事業部が独立した経営単位として運営されるため、自律的な経営が可能
  • 製品や市場、地域ごとに特化した事業部が存在し、それぞれの事業部が専門的な知識とスキルを持つチームで構成される
  • 各事業部は、自らの業績に責任を持ち、利益を上げることが求められる

これにより、各事業部は自らの目標達成に向けて迅速かつ柔軟に対応できます。例えば、製品別の事業部制では、各製品ラインごとに専門的な知識を持つチームが配置され、製品の開発や市場展開がスムーズに進行します。

このように、事業部制組織は、企業全体の効率的な運営を可能にするだけでなく、各事業部が自律的に経営を行うことで、企業全体の競争力を高めることが可能です。

事業部制組織と職能別組織との違い

事業部制組織と職能別組織は、企業の組織形態としてよく比較されます。それぞれの特徴と違いを理解することは、企業の運営にとって重要です。

それぞれの特徴を示すと以下の通りです。

特徴
事業部制組織
  • 各事業部が独立した経営単位として運営される
  • 製品や市場に特化した活動が可能
  • 各事業部が自らの利益責任を負う
職能別組織
  • 職能ごとに部門が分かれる
  • 職能ごとに専門的なスキルや知識が集約される
  • 全社的な連携が必要になる

事業部制組織の利点は、迅速な意思決定と柔軟な対応が可能な点です。各事業部が独自に運営されるため、状況に応じた迅速な対応ができます。また、利益責任が明確になるため、各事業部が自らの目標達成に向けて集中できます。

一方、職能別組織の利点は、専門的なスキルや知識が集約される点です。各職能部門が専門的な業務に集中できるため、効率的な業務遂行が可能です。ただし、全社的な連携が必要になるため、部門間の調整が課題となることがあります。

これらの違いを理解し、企業の戦略やニーズに応じて最適な組織形態を選択することが重要です。

事業部制組織と機能別組織との違い

事業部制組織と機能別組織は、企業の運営方法として異なるアプローチを持つ組織形態です。それぞれの特徴をまとめると次の通りです。

特徴
事業部制組織
  • 各事業部が独立した経営単位として運営される
  • 製品や市場に特化した活動が可能
  • 各事業部が自らの利益責任を負う
機能別組織
  • 機能ごとに部門が分かれる
  • 各部門が専門的なスキルや知識を集約する
  • 全社的な連携と調整が必要

機能別組織と比較した事業部制組織の利点は、各事業部が独自の戦略を持ち、市場や顧客のニーズに迅速に対応できるため、競争力が高まる点です。また、利益責任が明確になるため、各事業部が目標達成に向けて集中できます。

一方、機能別組織の利点は、専門的なスキルや知識が集約される点です。各機能部門が専門分野に特化して業務を遂行するため、効率的な運営が可能です。ただし、全社的な視点での連携や調整が必要となるため、部門間の調整に時間がかかることがあります。

これらの違いを踏まえて、企業の戦略や目標に合った組織形態を選択することが重要です。次に、事業部制組織の歴史と日本での導入の始まりについて見ていきましょう。

事業部制組織の歴史と日本での導入の始まり

事業部制組織の起源は、20世紀初頭のアメリカにさかのぼります。この組織形態は、大企業が成長と多角化を管理するために開発されました。最初に導入したのは、アメリカの大手企業デュポン社です。同社は、事業の多様化に伴い、各事業部が独立して運営される組織構造を採用しました。これにより、迅速な意思決定と効率的な業務遂行が可能となり、他の企業にも広がっていきました。

日本においては、戦後の高度経済成長期に事業部制組織が広まりました。特に、1950年代から1960年代にかけて、多くの企業がこの組織形態を導入しました。トヨタ自動車やパナソニック(旧松下電器)などの大企業がその代表例です。これらの企業は、事業部制組織を採用することで、各事業部が自律的に運営され、迅速な意思決定が可能となり、競争力を高めることに成功しました。

事業部制組織の導入は、企業が多様化する市場ニーズに対応するための戦略的な選択でした。特に日本企業においては、製品ラインの多様化とグローバル市場への進出が進む中で、事業部制組織の導入が企業の成長と成功に寄与しました。

例を挙げると次の通りです。

  • トヨタ自動車:各事業部が独自の製品ラインや市場に特化することで、効率的な生産と販売戦略を実現
  • パナソニック:各事業部が独立して運営されることで、迅速な意思決定と市場対応が可能となり、競争力を強化

これにより、日本企業は、国内外の市場での競争力を高めることができました。

このように、事業部制組織の歴史と日本での導入の始まりを理解することで、企業がこの組織形態を採用するメリットとその効果をより深く理解することができます。

それでは、次に、事業部制組織の細かい種類について詳しく見ていきましょう。

事業部制組織の種類

事業部制組織には、製品別、地域別、顧客別の3つの主要な種類があります。各種類には独自の利点と適用シーンがあり、企業の戦略に応じて最適な構造が選ばれます。このセクションでは、それぞれの特徴や違いについて見ていきましょう。

製品別事業部制

製品別事業部制とは、企業全体を製品ごとに分け、それぞれの製品ラインが独立した事業部として運営される組織形態です。この形態では、各事業部が特定の製品や製品群に特化して活動し、製品の開発から販売までの全ての業務を一貫して行います。

製品別事業部制の特徴は以下の通りです。

  • 製品ごとに専門的な知識とスキルを持つチームが構成される
  • 各事業部が独自の市場戦略を策定し、迅速な意思決定が可能
  • 製品ラインごとの収益やコスト管理が明確になる

この組織形態の主な利点は、製品開発と市場投入のスピードが速くなることです。例えば、ある企業が複数の製品ラインを持つ場合、それぞれの事業部が独自の戦略を持ち、市場の変化に迅速に対応することができます。また、製品ごとの業績が明確になるため、各事業部が利益責任を持つことができ、効率的な経営が可能です。

一方で、製品別事業部制にはいくつかの課題も存在します。例えば、複数の事業部がそれぞれ独自の運営を行うため、企業全体としての統一性が欠けることがあります。また、同じ製品ライン内での競争が激化する可能性があり、資源の重複や無駄が生じる可能性もゼロではありません。

製品別事業部制は、特に製品ラインが多様化している企業や、各製品ごとに異なる市場戦略が必要な場合に適しています。この形態を採用することで、企業は製品ごとの競争力を高めることができ、市場での成功を収めることが可能となります。

地域別事業部制

地域別事業部制とは、企業を地域ごとに分け、それぞれの地域が独立した事業部として運営される組織形態です。この形態では、各事業部が特定の地域市場に特化して活動し、その地域の顧客ニーズや市場動向に迅速に対応します。

地域別事業部制の特徴は以下の通りです。

  • 地域ごとの市場に特化した戦略を策定し、柔軟な対応が可能
  • 各地域の文化や習慣に応じたマーケティング戦略を展開
  • 地域ごとの売上やコスト管理が明確になる

この組織形態の主な利点は、地域市場への迅速な対応が可能になることです。例えば、ある企業が国内外に複数の市場を持つ場合、それぞれの地域事業部が現地の市場動向を把握し、迅速に対応することが可能です。また、地域ごとの業績が明確になるため、各事業部が利益責任を持ち、効率的な経営が可能となります。

一方で、地域別事業部制にはいくつかの課題も存在します。例えば、各地域事業部が独自に運営されるため、企業全体としての統一性が欠けることが一例です。また、地域ごとの資源の重複や無駄が生じる可能性があり、コスト管理が難しくなることもあります。

地域別事業部制は、特にグローバル市場での競争力を高めたい企業や、地域ごとの顧客ニーズに迅速に対応する必要がある企業に適しています。この形態を採用することで、企業は地域ごとの競争力を強化し、グローバル市場での成功を収めることが可能となるでしょう。

顧客別事業部制

顧客別事業部制とは、企業を顧客の特性ごとに分け、それぞれの顧客グループに対して独立した事業部として運営される組織形態です。この形態では、各事業部が特定の顧客層や市場セグメントに特化して活動し、顧客ニーズに的確に応えることができます。

顧客別事業部制の特徴は以下の通りです。

  • 顧客グループごとに特化したサービスや製品を提供
  • 各事業部が顧客ニーズに基づいた戦略を策定し、迅速に対応
  • 顧客ごとの売上やコスト管理が明確になる

この組織形態の主な利点は、顧客ニーズに迅速かつ的確に対応できる点です。例えば、企業が法人顧客と個人顧客を持つ場合、それぞれの事業部が顧客の特性に応じたサービスや製品を提供します。これにより、顧客満足度を高め、長期的な関係を築くことができます。

一例として、B2B(企業間取引)とB2C(消費者向け取引)の両方を行う企業がわかりやすいです。例えば、IT企業が企業向けソリューションを提供する事業部と、個人向け製品を販売する事業部を設けることで、各市場セグメントに特化した戦略を展開します。これにより、各顧客層のニーズに応じたサービスを迅速に提供することが可能です。

一方で、顧客別事業部制にはいくつかの課題も存在します。例えば、各事業部が独自に運営されるため、企業全体としての統一性が欠けることがあります。また、異なる顧客グループに対応するために、資源の重複や無駄が生じる可能性があり、コスト管理が難しくなることもデメリットの一つです。

顧客別事業部制は、特に多様な顧客ニーズに対応する必要がある企業や、異なる市場セグメントごとに特化したサービスや製品を提供する企業に適しています。この形態を採用することで、企業は顧客ごとの競争力を強化し、顧客満足度を向上させることが可能となります。

次に、事業部制組織のメリットについて詳しく見ていきましょう。

事業部制組織のメリット5つ

事業部制組織には、多くのメリットがあります。中でも代表的なメリットとして、5つのポイントに着目して見ていきましょう。

自律性と迅速な意思決定

事業部制組織の最大のメリットの一つは、自律性と迅速な意思決定が可能になることです。各事業部が独立して運営されるため、現場の状況に応じて迅速に意思決定が行えます。これにより、市場の変化に素早く対応することが可能です。

自律性と迅速な意思決定がもたらす利点は以下の通りです。

  • 現場の担当者が直接意思決定を行うため、意思決定プロセスが短縮される
  • 市場の変化や顧客ニーズに迅速に対応できる
  • 各事業部が独自の戦略を策定し、実行するための柔軟性が高まる

例えば、消費財メーカーが新しい市場に進出する際、現地の事業部が迅速に市場調査を行い、必要な製品やサービスを提供することが可能です。このように、各事業部が独自の判断で迅速に行動できるため、企業全体の競争力が高まります。

一方で、迅速な意思決定が可能になることで、企業全体の戦略と調整が重要です。各事業部が独自の戦略を持つことで、一貫性のある企業全体の方向性を維持するためのコミュニケーションと調整が不可欠です。

このように、事業部制組織は自律性と迅速な意思決定を可能にし、企業全体の競争力を高める効果があります。

製品や市場戦略に適した組織

事業部制組織のもう一つの大きなメリットは、製品や市場戦略に適した組織を構築できる点です。各事業部が特定の製品ラインや市場に専念することで、その分野における専門知識とスキルを集約できます。これにより、製品開発や市場投入のプロセスが効率化され、競争力が向上します。

具体的な利点は以下の通りです。

  • 製品ごとに特化した戦略を立てることができる
  • 各市場のニーズに合わせた柔軟な対応が可能
  • 専門的な知識とスキルを持つチームを形成できる

例えば、テクノロジー企業が複数の製品ラインを持つ場合、各製品ラインに特化した事業部を設けることで、製品ごとに最適な戦略を展開できます。スマートフォン事業部は最新の技術とトレンドに基づいて製品開発を行い、一方で家電事業部は家庭向け製品の市場ニーズに応じた戦略を策定します。このように、製品や市場に特化した事業部が独自の戦略を実行することで、各市場での競争力を高めることが可能です。

このように、事業部制組織は製品や市場戦略に適した組織を構築することで、競争力を強化し、企業の成長を促進します。

利益を上げる本業に集中できる

事業部制組織の利点の一つに、利益を上げる本業に集中できる点があります。各事業部が独立した経営単位として運営されるため、自部門の利益向上に専念できる環境が整います。これにより、企業全体の収益性が向上します。

利益を上げる本業に集中できる具体的な利点は以下の通りです。

  • 各事業部が独自の収益目標を設定し、達成に向けて努力する
  • 本業に必要なリソースを最適に配分できる
  • 利益管理が明確になり、各事業部のパフォーマンスを正確に評価できる

例えば、消費財メーカーの場合、各事業部が特定の製品ラインや市場に集中することで、リソースを効率的に活用し、収益性を高めることができます。製品開発からマーケティング、販売に至るまで、一貫して利益を追求する活動が行われます。このように、事業部制組織は各事業部が自らの利益責任を負うことで、全体としての収益性を向上させることが可能です。

このように、事業部制組織は利益を上げる本業に集中できる環境を整え、企業全体の収益性を高める効果があります。

経営判断のできる人材の育成がしやすい

経営判断のできる人材の育成がしやすい点も事業部制組織のメリットの一つです。各事業部が独立して運営されるため、事業部長や管理職は実際の経営に携わる機会が多くなります。これにより、経営スキルを持つ人材の育成が促進されます。

経営判断のできる人材の育成がしやすい具体的な利点は以下の通りです。

  • 実践的な経営経験を積む機会が増える
  • 各事業部が独自の戦略を策定し、実行する過程でリーダーシップが鍛えられる
  • 経営スキルの習得により、次世代の経営者候補が育成される

例えば、製造業の企業の場合、各事業部長が自部門の経営全般に責任を持つため、実際のビジネス環境での意思決定や問題解決の経験を積むことが可能です。このような経験を通じて、経営スキルやリーダーシップが自然に身につきます。また、各事業部が独自の戦略を実行する過程で、リーダーとしての判断力や決断力が鍛えられます。

このように、事業部制組織は経営判断のできる人材の育成がしやすい環境を提供し、企業の将来のリーダーを効果的に育成することが可能です。

需要が高い事業を可視化できる

事業部制組織のもう一つの大きなメリットは、需要が高い事業を可視化できる点です。各事業部が独立した経営単位として運営されるため、それぞれの事業部の業績や市場動向が明確に把握できます。これにより、企業はどの事業が成長しているのか、どの事業にリソースを集中すべきかを判断しやすくなります。

需要が高い事業を可視化できる具体的な利点は以下の通りです。

  • 各事業部の業績が明確に分かるため、優先すべき事業を特定できる
  • 成長している事業にリソースを集中させることで、全体のパフォーマンスを向上させる
  • 事業ごとの市場動向をリアルタイムで把握し、迅速に戦略を修正できる

例えば、テクノロジー企業が複数の製品ラインを持つ場合、それぞれの事業部の業績を分析することで、どの製品が市場で最も需要が高いのかを把握できます。この情報を基に、企業は成長している製品ラインに投資を集中させ、リソースを最適に配分することが可能です。

このように、事業部制組織は需要が高い事業を可視化することで、企業全体のリソース配分を最適化し、全体のパフォーマンスを向上させる効果があります。

事業部制組織のデメリット4つ

一方で、事業部制組織にはデメリットも存在します。このセクションでは、事業部制組織のデメリットについて詳しく見ていきましょう。

資源の重複でムダが生じる可能性がある

事業部制組織の一つのデメリットは、資源の重複でムダが生じる可能性があることです。各事業部が独立して運営されるため、同じような機能やリソースが重複して存在することがあります。これにより、効率性が低下し、コストが増加するリスクがあります。

資源の重複でムダが生じる具体的な例は以下の通りです。

  • 各事業部が独自に研究開発部門を持つ場合、同様の研究が重複して行われる可能性がある
  • 各事業部が独自のマーケティングチームを持つことで、同じ市場での重複した活動が発生する
  • 重複する購買活動により、スケールメリットを活かせない場合がある

例えば、製造業の企業の場合、各事業部が独自に購買活動を行うことで、同じ部品や材料を複数のサプライヤーから個別に購入することがあります。これにより、大量購入による割引やスケールメリットを享受できず、コストが増加する可能性があります。

このような課題を解決するためには、企業全体としての資源管理と調整が重要です。例えば、共通の研究開発部門やマーケティングチームを設置することで、重複を避け、効率的なリソース配分が可能となります。また、購買活動を統合し、スケールメリットを活用することで、コスト削減を図ることができます。

責任範囲が不明確になる場合がある

事業部制組織のデメリットの一つは、責任範囲が不明確になる場合があることです。各事業部が独立して運営されるため、責任の所在が曖昧になりがちです。特に、複数の事業部が共同でプロジェクトを進める場合や、全社的な目標に取り組む際に、この問題が顕著になります。

責任範囲が不明確になる具体的な例は以下の通りです。

  • 複数の事業部が関与するプロジェクトで、誰が最終的な責任を負うのかが曖昧になる
  • 全社的な戦略や方針に対する各事業部の役割が不明確である
  • 問題が発生した際に、どの事業部が対応するべきかがはっきりしない

例えば、新製品の開発プロジェクトで、複数の事業部が関与する場合、各事業部が自らの役割や責任を十分に理解していないと、プロジェクト全体の進行が遅れることがあります。また、問題が発生した際に、誰が対応すべきかが不明確だと、迅速な問題解決が難しくなります。

このような課題を解決するためには、明確な責任範囲の設定が重要です。具体的には、プロジェクトごとに責任者を明確にし、各事業部の役割を詳細に定義することが必要です。また、全社的な戦略や方針に対する各事業部の貢献度や役割を明確にし、定期的なコミュニケーションを図ることで、責任の所在を明確にすることができます。

経営コストが増加する

経営コストが増加するというのが、次に挙げるデメリットです。各事業部が独立した経営単位として運営されるため、管理や運営にかかるコストが増えることがあります。これにより、企業全体としての経営効率が低下するリスクがあります。

経営コストが増加する具体的な例は以下の通りです。

  • 各事業部が独自の管理機能を持つため、管理部門の重複が生じる
  • 各事業部が独自のマーケティング活動を行うことで、広告宣伝費が増加する
  • 各事業部が個別にリソースを調達するため、スケールメリットを活かせない場合がある

例えば、製造業の企業の場合、各事業部が独自の人事、財務、経理部門を持つことがあります。このような重複した管理機能は、全社的に見ると無駄が生じ、コストが増加します。また、各事業部が独自のマーケティング活動を展開することで、広告宣伝費が増え、全体のコストが膨らむことも多いです。

このような経営コストの増加を防ぐためには、企業全体でのコスト管理と効率化が重要です。具体的な対策としては、以下のようなものがあります。

  • 共通の管理部門を設置し、各事業部の管理機能を統合する
  • 全社的なマーケティング戦略を策定し、重複する広告宣伝活動を削減する
  • 共同でリソースを調達し、スケールメリットを活かす

これらの対策を講じることで、事業部制組織の経営コストを抑え、効率的な運営を実現することができます。

部署を超えての調整が難しい

最後に挙げるデメリットは、部署を超えての調整が難しい点です。各事業部が独立して運営されるため、部門間の連携やコミュニケーションが不足しがちです。これにより、全社的なプロジェクトや目標の達成が困難になることがあります。

部署を超えての調整が難しい具体的な例は以下の通りです。

  • 各事業部が独自の目標を持つため、全社的な目標との整合性が取れない
  • 部門間のコミュニケーションが不足し、情報共有が遅れる
  • 共同プロジェクトでの意思決定が遅れ、進捗が停滞する

例えば、新製品の開発プロジェクトにおいて、研究開発部門とマーケティング部門が異なる事業部に属している場合、両者の連携が不足すると、製品開発の方向性や市場戦略の整合性が取れません。それが、プロジェクトが遅れる要因となる可能性があります。また、部門間のコミュニケーションが不足すると、重要な情報が共有されず、全体のパフォーマンスが低下することがあります。

このような課題を解決するためには、部署間の調整メカニズムを強化することが重要です。具体的な対策としては、以下のようなものがあります。

  • 定期的な部門間の会議を開催し、情報共有と連携を図る
  • 全社的なプロジェクトマネジメント体制を整備し、部門間の調整を促進する
  • 共同プロジェクトのリーダーを明確にし、迅速な意思決定を支援する

このように、部署を超えての調整が難しいという課題を克服するためには、効果的な調整メカニズムとコミュニケーション体制が必要です。

このような特徴やメリットデメリットがある事業部制組織、実際日本の企業ではどのように採用しているのか、実例を見ていきましょう。

日本で事業部制組織を導入している企業の実例

日本では、多くの企業が事業部制組織を導入しています。特に、トヨタ自動車、パナソニック(旧松下電器)、ユニクロなどが有名です。これらの企業がどのように事業部制組織を活用し、成功を収めているのかを具体例として見ていきましょう。

トヨタ自動車

トヨタ自動車は、事業部制組織を導入し、その後本部制へ移行することで、効率的かつ強靭なグローバル体制を確立しました。2003年に導入された新たな経営制度では、「フラット化」「役割の明確化」「スピード化」「グローバル化」が主要な目標となりました。これにより、意思決定のスピードが向上し、現場に根ざしたオペレーションが強化されました。

トヨタの組織改革の具体例は以下の通りです。

  • 部門制から本部制へ移行し、グローバルトヨタとしての統括機能を明確化
  • 取締役数のスリム化と常務役員の新設により、効率的な運営を実現
  • 意思決定階層を簡素化し、スピーディーな意思決定を可能に

この組織改革により、トヨタは部門別のオペレーションを専務以下で完結させ、各専務が現場に根ざした意思決定を行うことで、迅速な対応が可能となりました。例えば、新製品の開発や市場戦略の策定において、各部門が自律的に運営され、迅速な意思決定が行われることで、競争力を強化しました。

また、グローバル市場への対応力も向上し、各地域市場のニーズに合わせた柔軟な戦略を展開することが可能となりました。これにより、トヨタは国内外での市場シェアを拡大し、持続的な成長を実現しています。

このように、トヨタ自動車は事業部制組織を活用することで、効率的かつ迅速な経営を実現し、グローバル市場での競争力を高めています。

参考情報:トヨタ自動車75年史|組織の変遷|組織図 部門制から本部制移行期

パナソニック(旧松下電器)

パナソニックは1933年に日本で初めて事業部制を導入しました。創業者の松下幸之助は、経営効率を高め、責任の所在を明確にするためにこの制度を採用しました。これにより、各事業部が製品の開発から生産、販売、収支の管理までを一貫して担当する独立採算制の運営を可能としています。

具体的な取り組みの一例は以下の通りです。

  • 工場を3つの事業部に分け、それぞれが独立して運営
  • 各事業部が自らの業績に責任を持ち、迅速な意思決定が可能
  • 経営幹部の育成を目的とし、実践的な経営経験を提供

例えば、ラジオ部門は第一事業部として独立し、ランプや乾電池部門は第二事業部、配線器具や電熱器部門は第三事業部として分けられました。各事業部が自主責任経営を行うことで、成果が明確になり、経営効率が向上。また、経営幹部が実践的な経験を積む場として機能し、人材育成にも寄与しました。

松下幸之助はこの制度について「事業部制により成果がはっきりし、責任が明確になる。また、経営幹部が本当の試練の場で経験を積むことができる」と述べています。

このように、パナソニックは事業部制組織を導入することで、効率的な運営と人材育成を実現しました。

参考情報:
事業部制を実施 1933年(昭和8年) – 松下幸之助の生涯
事業部制の目的 | 松下幸之助.com

ユニクロ

ユニクロを運営するファーストリテイリングは、事業部制を導入し、グローバル展開を加速しています。ユニクロは各地域市場に応じた事業部を設置し、それぞれが独立して運営されています。これにより、各市場のニーズに応じた迅速な意思決定が可能となり、競争力を高めました。

具体的な取り組みの一例は以下の通りです。

  • 各地域市場に応じた事業部の設置
  • 各事業部が独自の市場戦略を展開し、現地ニーズに対応
  • 効率的な運営と迅速な意思決定を実現

例えば、アジア、ヨーロッパ、北米などの地域ごとに事業部が設置され、それぞれの事業部が地域市場の特性を考慮した戦略を展開しています。これにより、現地の顧客ニーズに迅速に対応できるため、売上と市場シェアの拡大が期待されます。

また、各事業部が独自の市場戦略を持つことで、地域ごとの競争力を高めるとともに、全体の経営効率も向上しました。例えば、アジア市場では、地域特有の消費トレンドを踏まえた商品展開を行い、ヨーロッパ市場では現地のファッション文化に合わせた商品を提供しています。

一方で、各事業部が独立して運営されることで、全社的な戦略の統一が求められます。この課題を解決するために、ユニクロでは定期的な全社的な会議や情報共有の仕組みを導入し、各事業部の活動を統合しました。

このように、ユニクロは事業部制組織を活用することで、グローバル市場での競争力を強化し、効率的かつ迅速な経営を実現しています。

参考情報:
ファーストリテイリングの事業戦略
商品開発プロセスの改革と事業部制導入

事業部制組織を作る流れを5ステップで解説

事業部制組織を導入するためには、明確なステップを踏むことが重要です。最後のセクションとして、事業部制組織を作る流れを5つのステップで解説します。

Step1.組織の現状分析と目的を明確にする

事業部制組織を導入するための第一歩は、現状の組織をしっかりと分析し、その目的を明確にすることです。このステップでは、企業全体の強みと弱みを把握し、事業部制組織がどのように企業の戦略目標達成に寄与するかを考えます。

現状分析と目的設定の具体的なポイントは以下の通りです。

  • 現在の組織構造の問題点を洗い出す
  • 各部門のパフォーマンスを評価し、改善が必要な領域を特定する
  • 事業部制組織の導入がもたらす具体的なメリットとデメリットを考慮する

例えば、現状の組織が職能別組織である場合、各部門の連携が不足していることが多いです。この場合、事業部制組織を導入することで、製品ラインや市場ごとに特化した運営が可能となり、迅速な意思決定が実現します。

次に、事業部制組織の導入目的を明確にします。例えば、市場の変化に迅速に対応するため、各事業部が独立して運営できる環境を整えることや、新製品の開発スピードを向上させることなどが一例です。これにより、企業全体の競争力が向上し、成長が期待されます。

現状分析と目的の明確化は、事業部制組織を導入するための基盤を築く重要なステップです。

Step2.戦略の全体設計をして資源配分と優先順位を決める

事業部制組織を導入するための第二ステップは、全体的な戦略設計と資源の配分、そして優先順位を決めることです。このステップでは、企業全体の目標を明確にし、それを達成するための具体的な戦略を策定します。また、各事業部に必要なリソースを適切に配分し、最も重要な活動に焦点を当てることが求められます。

戦略設計と資源配分の具体的なポイントは以下の通りです。

  • 各事業部の目標と役割を明確にする
  • 必要な人材、資金、技術などのリソースを適切に配分する
  • 企業全体の目標達成に向けて優先順位を設定する

例えば、新製品の開発を主要な戦略目標とする場合、その事業部に優先的に研究開発資金や専門人材を配分することが必要です。また、グローバル市場への進出を目指す企業では、地域別事業部の設立とそのためのリソース配分が重要となります。

さらに、戦略設計の過程では、リスク管理も考慮に入れる必要があります。各事業部が直面する可能性のあるリスクを評価し、それに対する対策を講じることで、安定した運営を実現することが可能です。

このように、戦略の全体設計と資源配分、優先順位の設定は、事業部制組織の成功に不可欠なステップです。

Step3.内部コミュニケーションとステークホルダーの管理をする

事業部制組織を成功させるためには、内部コミュニケーションの強化とステークホルダーの管理が重要です。このステップでは、各事業部間の情報共有を円滑にし、全社的な連携を図るための仕組みを整えます。また、従業員や外部ステークホルダーとの関係を築くことも重要です。

内部コミュニケーションとステークホルダー管理の具体的なポイントは以下の通りです。

  • 定期的な会議や報告システムを導入し、情報の共有と連携を図る
  • 各事業部の活動状況を把握し、必要なサポートを提供する
  • 外部ステークホルダーとの良好な関係を維持し、信頼を築く

例えば、月次会議や週次ミーティングを設け、各事業部の進捗状況や課題を共有します。また、共通のデータベースや情報システムを利用することで、情報の一元管理を実現し、迅速な意思決定をサポートします。

さらに、外部ステークホルダーとのコミュニケーションも重要です。取引先や顧客、投資家などとの信頼関係を築くために、定期的な報告や説明会を実施し、透明性のある経営を行います。

このように、内部コミュニケーションとステークホルダーの管理を強化することで、事業部制組織のスムーズな運営を実現します。

Step4.事業部制を具体的に導入・実施する

事業部制組織を導入する第四のステップは、具体的な導入と実施です。この段階では、計画を現実の組織構造に落とし込み、実際の運営を開始します。導入時には、組織の変更に伴う混乱を最小限に抑えるための対策が重要です。

導入・実施の具体的なポイントは以下の通りです。

  • 各事業部の役割と責任を明確にし、業務プロセスを設計する
  • 必要な人材を配置し、研修を実施する
  • 定期的に進捗を確認し、必要に応じて調整を行う

例えば、各事業部の業務フローを詳細に設計し、新しい組織構造に基づく業務手順を文書化します。これにより、各事業部がスムーズに業務を開始できるようになります。また、新しい役割に適応するための研修プログラムを実施し、従業員の理解とスキル向上を図ることも有効です。

さらに、導入初期には定期的な進捗確認が不可欠です。各事業部のパフォーマンスをモニタリングし、問題が発生した場合には迅速に対応することで、組織全体の運営を円滑に進められます。

このように、事業部制を具体的に導入・実施するための計画を綿密に立てることが、成功の鍵となります。

Step5.定期的なモニタリングと改善策を実施する

事業部制組織の導入が完了したら、定期的なモニタリングと改善策の実施が必要です。このステップでは、各事業部のパフォーマンスを継続的に評価し、必要に応じて調整を行います。これにより、事業部制組織の効果を最大限に引き出し、企業全体の目標達成をサポートします。

モニタリングと改善策の具体的なポイントは以下の通りです。

  • 各事業部の業績指標(KPI)を設定し、定期的に評価する
  • パフォーマンス評価に基づき、必要な改善策を策定する
  • 従業員のフィードバックを収集し、組織運営に反映する

例えば、月次や四半期ごとに各事業部の業績を評価し、KPIに基づいて進捗を確認します。この評価により、目標達成度や改善が必要な領域を特定することが可能です。また、改善策として、リソースの再配分や業務プロセスの見直しなどを行います。

さらに、従業員からのフィードバックを収集することで、現場の声を反映した改善策を実施するのも良いでしょう。これにより、従業員のモチベーションを維持し、組織全体の効率を向上させることが可能です。

このように、定期的なモニタリングと改善策の実施を通じて、事業部制組織の運営を最適化し、企業の競争力を高めることができます。

まとめ

事業部制組織は、多くの企業が採用する組織形態であり、その導入は多くのメリットをもたらします。具体的なメリットをおさらいすると以下の通りです。

  • 各事業部が独立して運営されるため、自律性と迅速な意思決定が可能となり、企業全体の競争力が向上する
  • 製品や市場戦略に適した組織を構築することで、効率的な運営と市場ニーズへの柔軟な対応が実現する
  • 事業部ごとの業績を明確にすることで、利益を上げる本業に集中でき、経営判断のできる人材の育成が促進される
  • 需要が高い事業を可視化することで、リソースの最適な配分が可能となる

一方で、事業部制組織には資源の重複や責任範囲の不明確さ、経営コストの増加、部署間の調整の難しさといったデメリットも存在します。これらの課題を克服するためには、全体的な戦略設計と資源配分、内部コミュニケーションの強化が必要です。

これらを考慮の上で、自社で事業部制組織にしていくのか決めていくのが良いでしょう。総じて、事業部制組織は適切な計画と実施を通じて、企業全体のパフォーマンスを向上させることが可能なので、導入を検討する企業はこの記事の導入ステップも参考にしてみてください。

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