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交通費とは?旅費交通費との違いや法的義務の有無・対象者などを徹底解説

目次

昨今では、働き方が多様化していることから、交通費に対する考え方がこれまでとは大きく違いを見せています。新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、テレワークなどを中心とした在宅ワークに対して注目が集まっています。テレワークを行っている労働者は、過年度と比較すると増加傾向にあります。

また、大企業だけでなく中小企業においてもテレワークの導入を実施しているところが多くなっている現状にあります。一方、日本全体の傾向としては高齢化社会が進んでおり、団塊の世代が退職して第一線を退きつつあるため現役世代の労働者人口が減少傾向にあります。現役世代の労働者が少なくなっているにもかかわらず、親の介護などで働き方が限定的となる労働者も少なくないことから、柔軟な働き方に対応できるテレワークの推進はこれからもっと加速化することが想定されます。

このように、テレワークを含めた在宅勤務が日本全体において浸透しているため、これまでのように会社へ出社しなくとも仕事ができる環境が構築されつつあるのです。これらを背景として、交通費の支給について悩まれている会社も少なくないのではないでしょうか。在宅勤務が進むことにより、これまでには支給されていなかった手当として「在宅手当」や「ネットワーク代」の支給を検討している会社も多くなっています。

一方で、従来より支給している交通費についてはこれまでの前例踏襲を踏まえて「このままでよいか」と悩んでいる担当者も多いのではないでしょうか。本記事では、このような背景を踏まえて、交通費の定義から支給に関する法的義務、そして在宅勤務時の交通費の取り扱いについて詳しく解説します。

交通費とは

交通費とは、鉄道・飛行機・バス・船などの公共交通機関を利用した際に必要となる費用のことです。なお、公共交通機関以外にも車での移動で必要となったガソリン代や高速道路利用料金なども対象となります。ビジネスシーンにおける交通費という概念では、営業や打合せなどを行うために電車・バスなどを使用して顧客先へ赴く際に必要となる費用が該当します。

各担当者は、上述した交通費を一度自腹で立替えていることが多く、営業や打合せが終わった後に会社内にて所定の申請を行い、決裁を経たのちに会社より立替えた金額が支給されます。なお、支給されるお金については現金払いや、給与支給時に交通費として別途支給されるなどさまざまなパターンがあります。

交通費の定義とは

交通費の定義とは、「仕事中の移動に伴って発生する費用」となっています。例えば、遠方に顧客先があり宿泊を伴うような打合せであれば、現地に赴くための費用は交通費で支給されることとなり、宿泊に伴う費用は別途支給される形となります。

交通費(通勤交通費)と旅費交通費の違いは

交通費とは、会計科目上では「旅費交通費」と「出張旅費」の2つに分類することができます。なお、勘定科目とは会社の取引による資産・負債・資本の増減、および費用・収益の発生について、その性質を分かりやすく記録するために必要な分類項目となっています。会社を介して行われる支出と歳入に対して出入りするお金につけられた、「見出しや色」と考えるとイメージしやすいのではないでしょうか。

会社のお金には「色」があり、使途によって適切である「色」のお金を支出することとなるのです。交通費についてもお金の「色」があり、旅費交通費と出張旅費に分類することができるということです。ここからは、各々の違いについて詳しく解説します。

交通費(通勤交通費)

交通費とは、通勤交通費とも称されているものです。社員が会社へと通勤する際に必要となる交通費が該当するもので、鉄道・バス・船・飛行機などが交通費にあたります。なお、自家用車などを利用して通勤する場合においても、車を稼働させる際に必要となるガソリン代なども交通費に該当します。交通費は給料が支給される際、一緒に支給されることが多くなっています。なお、給料と交通費の大きな違いは交通費は非課税であるということです。会社が社員へと支給する給与所得とは、原則として支給額に応じた所得税を支払う義務があります。

しかし、通勤交通費は課税対象となっている給与所得とは異なり、定められた一定額までは非課税対象となっているのです。定められた一定の額とは、2016年度の税制改正が行われた結果、給与所得者に支給する通勤交通費の非課税限度額が10万円から15万円へと引き上げられた経過があります。なお、具体的な金額については次のとおりです。

1.  交通機関又は有料道路を利用している人に支給する通勤交通費:1か月当たりの合理的な運賃等の額(最高限度 150,000円)

2. 自動車や自転車などの交通用具を使用している人に支給する通勤交通費

・通勤距離が片道55キロメートル以上である場合:31,600円

・通勤距離が片道45キロメートル以上55キロメートル未満である場合:28,000円

・通勤距離が片道35キロメートル以上45キロメートル未満である場合:24,400円

・通勤距離が片道25キロメートル以上35キロメートル未満である場合:18,700円

・通勤距離が片道15キロメートル以上25キロメートル未満である場合:12,900円

・通勤距離が片道10キロメートル以上15キロメートル未満である場合:7,100円

・通勤距離が片道2キロメートル以上10キロメートル未満である場合:4,200円

・通勤距離が片道2キロメートル未満である場合:全額課税

3. 交通機関を利用している人に支給する通勤用定期乗車券:1か月当たりの合理的な運賃等の額(最高限度 150,000円)

4. 交通機関又は有料道路を利用するほか、交通用具も使用している人に支給する通勤交通費や通勤用定期乗車券:1か月当たりの合理的な運賃等の額と2の金額との合計額(最高限度 150,000円)

このように、非課税対象となっている金額は定められており、上記金額を超えた部分については課税対象となるため注意が必要です。

旅費交通費

旅費交通費とは、いわゆる出張費に該当するものです。会社の担当者が、会社外にて営業や打合せを行う際に取引先まで赴くために必要となる費用が旅費交通費に該当します。そのため、鉄道やバスなどの公共交通機関を利用する場合では、利用した際の運賃が支払い対象となります。

また、社用車などを利用して取引先のところまで赴く際のガソリン代や高速道路利用料金などについても旅費交通費として支払われます。

交通費と法的義務について

前提論として、会社は本当に社員に対して通勤交通費を支払わなければならないのでしょうか。結論としては、会社が社員に対して通勤交通費を支給する義務はありません。会社=雇用者は社員=労働者を雇用するにあたって、さまざまな責務を負います。それら責務は憲法や法律によって定義づけられているのですが、代表的な法律が労働基準法です。

しかし、この労働基準法を含めたさまざまな法律には「労働者に対して交通費を支給しなければならない」明確に記載されていないのです。そのため、極端な話ですが労働者に対して通勤交通費を支給しなくとも雇用者は法に基づいて罰を受けることはありません。

一方、現実的に会社が社員に対して通勤交通費を支給していないかというと、支給していないところの方が珍しいという現状があります。これは、労働基準法では就業規則を制定する際に「労働者に何らかの負担を求めるときの項目」を明記しなくてはならないと明確に記載されているのです。就業規則の文言を確認しても、「通勤交通費」と明確に言葉で表現されているわけではありませんが、ほとんどの会社は上記文言の中に「通勤交通費」が含まれていると解釈しているのです。

そのため、交通費を支給する会社が一般的となっています。一方、旅費交通費は通勤交通費と違って会社に支払義務が発生します。旅費交通費は出張旅費に該当するものであり、出張旅費が明文化されている社内規程は労働基準法に基づいて社員全員に適用される就業規則の一部として取り扱われています。

なお、社内規程は作成後速やかに労働基準監督署へ届け出なければなりません。このように、通勤交通費と旅費交通費では支払いに対して法的義務が生じるかどうかが大きく変わって来るのです。

交通費の対象者とは

交通費が支給される対象者は、原則として会社で働いているすべての人間となっています。これは、厚生労働使用のガイドラインでも示唆されていますので、配慮するべき事項であると言えるでしょう。そのため、会社に属する正社員・再任用社員・契約社員・派遣社員・アルバイトなども含まれているのです。

パート・アルバイトへ交通費を支給する

上述したように、厚生労働省のガイドラインにも定められています。そのため、正社員だけに限定するのではなく、パートやアルバイトの担当者にも交通費を支給しなければなりません。

同一賃金同一支給について

同一労働同一賃金とは、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)との間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。同一企業内における正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差の解消の取組を通じて、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにします。

同一労働同一賃金ガイドラインでは、正社員(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(パートタイム労働者・有期雇用 労働者・派遣労働者)との間で、待遇差が存在する場合に、いかなる待遇差が不合理なものであり、いかなる待遇差は不合理なものでないのか、原則となる考え方と具体例を示したものとなっています。

なお、基本給、昇給、ボーナス(賞与)、各種手当といった賃金にとどまらず、教育訓練や福利厚生等についても記載されています。本ガイドラインの「手当」の項目において、「通勤手当及び出張旅費 短時間・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同一の通勤手当及び出張 旅費を支給しなければならない。」と明確に記載されているため、遵守しなければなりません。

交通費の支給パターン

会社から支給される通勤交通費および旅費交通費の考え方は上述したとおりです。両者において法的な支払い義務の有無については差異がありますが、会社によって定められている社則などによっても交通費の支給パターンは異なります。ここからは、代表的な交通費の支給パターンである、規定内支給・全額支給・一律支給について詳しく解説します。

規定内支給

規定内支給とは、会社が定めている社則などによって交通費の額は決定されており、それに基づいて支給されるケースです。本仕組みを利用した交通費は、「交通費の規定内支給」と称されています。なお、社内規定を設けて交通費を支給している会社は珍しくなく、たくさんの会社がこの仕組みを構築して交通費を支給しています。上述したとおり、規定内支給を定めなければならない法律は現段階では存在していませんので、表現を変えるとどのような規定を設けても法律に基づく罰則規定はないということです。

そのため、会社ごとに特色が生まれて支給方法はさまざまとなっています。就職時において交通費の項目が「規定内支給」と表現されているのであれば、採用後に交通費を全額負担してもらえる保証はありませんので、くれぐれも正確にご確認されることをおすすめします。

全額支給

全額支給とは、言葉のとおり交通費として必要となった費用を全額支払ってくれるケースとなっています。全額支給では、通勤および出張などで必要となった交通費を、全て会社が支給してくれますので、一番安心なケースとも言えるでしょう。なお、交通費の支給は1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月に1度といったように、会社の規定に則って一括して支払われます。全額支給では、社員が交通費に関する費用負担を一切しなくても良い方式だと言えます。

一方、見る側面を変えて会社側からすると、どれだけ遠方から通勤する社員の交通費についても支払わなければならないということなのです。1つの事例として挙げられるのが、新幹線などを使用して通勤を擦るケースです。このような場合では、通常では考えられないくらいの交通費が必要となりますので、それらの交通費についても会社が負担しなければならないということなのです。

そのため、全額支給と表現をしながらも「条件設定」をしているところも珍しくありません。限定条件として、「月5万円までは全額支給」といったようにある程度までは全額支給としながらも、それ以上の金額については自己負担を求めているところも珍しくありません。

一律支給

一律支給とは、日や月などの単位において予め決定された交通費を支給するケースです。通勤に伴う交通費とは、社員1人1人異なることも珍しくありません。会社側にとっては、社員1人1人ごとで交通費を把握する必要がありませんので、事務手続きは非常に簡素化できるメリットがあります。

一方、社員側からすると職場までの距離が遠くとも近くとも支給される交通費は一定であることから、得をする人と損をする人が発生します。また、勤務日数に関わらず一定ですので勤務日数の多い時と少ないときでも損得の概念は発生します。

そのため、自分が通勤するために必要となる交通費が自己負担になる可能性がどれだけあるのかを事前に確認しておくべきであると言えるでしょう。

交通費の支給ルール

会社において、社員に対して交通費を支給するためのルールを定義付けしておく必要があります。そのために利用されるのが、会社の就業規則や雇用契約書などです。雇用者と労働者の間では、原則として雇用契約が発生します。また、雇用されている労働者には就業規則を遵守する義務が発生します。交通費についても、労使間においてトラブルが起きないよう、しっかりと書面にて明文化する必要があるのです。

就業規則や雇用契約書に規定があること

就業規則や雇用契約書において、交通費に関する規定を作成する際は次の項目について網羅しておくべきでしょう。なお、具体的な項目は次のとおりです。

・支給要件

交通費を支給しなくても法的な罰則規定がないことは、上述したとおりです。それらを踏まえて、まずは交通費を支給するのかしないのかを明文化するようにしましょう。

また、距離規定を設けるなどして具体的な支給要件も設定しておくべきでしょう。事例を挙げると、自宅から会社までの距離が2km以内であれば、交通費を支給しないとするケースが多くなっています。さらに、最寄り駅から自宅までの距離が1km以内などの短距離であった場合は支給しないケースが多くなっています。

・支給内容

交通費が支給される条件を明文化します。例えば、交通費が支給されるのは公共交通機関のみとして原則として自家用車を使用した通勤に対しては交通費の支給対象としないケースもあります。これは、官公庁などでは一般的な条件であり、通勤災害などの労災を減じる観点や、公共交通機関を利用することによってCO2の排出量抑制に寄与するなどSDGSに関する観点も含まれています。

・支給額上限

交通費支給額の上限について明文化します。社員が通勤するために必要となる交通費を全額支給するのであれば、社員にとっては喜ばしいことです。しかし、会社にとってはどれだけ遠方から通勤されたとしても、その全額を支給しなければならないためその負担は大きくなります。労働者側からすると、交通費を全額支給してくれない会社には魅力を感じないと言った考えになりますので、優秀な人材が集まりにくくなることも懸念されます。雇用者側の思惑と労働者側の思惑が入り混じっているため、慎重に検討しなければならない項目であると言えるでしょう。

・支給形態

交通費が支給される形態を明文化します。上述したように、交通費の支給パターンは規定内支給・全額支給・一律支給に分類されます。これらのどれに該当させるべきかを検討のうえ、記載する必要があります。

通勤もしくは業務上の支出であること

交通費の支給については、就業規則や雇用契約書にて適切にルールを定めておかなければなりません。そのため、交通費として会社が支出すべき項目は「通勤もしくは業務上」と明確に定めておくべきであると言えるでしょう。

また、ルールを適切に定めておくことで交通費の不正受給を未然に防止することも期待できます。社員が事前に申告していたルートと違う内容・経路・用途において交通費を請求していた場合は、会社側が返還請求できるルールを盛り込んでおくことで、労使間におけるトラブルを解決することが可能となります。

在宅勤務時の交通費

昨今では、多様な働き方が推奨されていることもあり、在宅勤務を行う社員が非常に増えています。従来であれば、会社に出勤して仕事をしますので公共交通機関などを利用して出社するため交通費の支給が必要でした。

しかし、在宅勤務では自宅で仕事をすることが可能であるため、交通費が必要ないこととなります。また、勤務日全てを在宅勤務とするのではなく、在宅勤務と会社勤務のハイブリッド形式で仕事をすることもあります。

そのため、交通費の考え方についても柔軟な対応が求められるのです。ここからは、出社日が多い場合と少ない場合の考え方について詳しく解説します。

出社日が多い場合

1週間の内、週4日以上は会社に出勤する形態である場合は、定期券相当額を支給しているところが多くなっています。

出社日が少ない場合

1週間の内、週3日以下しか会社に出勤しない形態である場合は、日額の交通費を支給しているところが多くなっています。

自社にあった交通費のルール作りをしましょう

ここまで、交通費の定義から支給に関する法的義務、そして在宅勤務時の交通費の取り扱いについて解説しました。意外かもしれませんが、通勤交通費とは労働基準法などの各種法令などにおいて会社に支払い義務がないことをご理解頂けたと思います。

そのため、会社に就職したら出社するために必要な交通費を無条件で支給してもらえない可能性があるため、労使間でトラブルがないように事前にしっかりと確認するべきであると言えるでしょう。また、昨今では新型コロナウイルス感染拡大防止の観点や多様な働き方の観点より、日本政府においてもテレワークなどの在宅勤務が推奨されています。在宅勤務に切り替わることにより、会社へ出勤する必要がなくなるのであれば、交通費の支給についても見直しをかけなければなりません。

一方、労働者側からすると交通費は必要なくなるかもしれませんが、自宅で仕事をするためにはネットワーク環境の構築やエアコンなどの空調を使用した快適な仕事環境の構築が必要となります。それらの負担を会社に対して交通費の代わりに補って欲しいと考えている人も多くなっていますので、雇用者側はより一層労働者側の立場になって配慮しなければならないのです。

今後において、雇用者および労働者ともに交通費に対する認識を改める必要があると言えるでしょう。

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