医薬品在庫管理について解説！医薬品向け在庫管理システムも紹介！

医薬品の在庫管理は、病院、薬局、クリニック、製薬会社など多くの業種にとって欠かせない業務です。在庫不足による治療の遅延や、過剰在庫によるコストの増加など、さまざまな問題に直面する中で、効率的な在庫管理が求められています。しかし、現実には多くの疑問や課題が存在し、それらをどのように解決すべきか悩んでいる方も多いのではないでしょうか？この記事では、医薬品在庫管理の課題を解決する方法やおすすめの在庫管理システムを紹介します。これにより、業務の効率化とコスト削減を実現し、安全で効果的な医療が提供できるようになります。この記事を参考にして、医薬品在庫管理の課題を解決して頂ければ幸いです。

【24年度】在庫管理システム比較15選｜種類やメリットを解説

医薬品在庫管理で生じる問題点、課題

この章では、医薬品在庫管理における課題について解説します。まずは、在庫管理する上で生じる課題を整理しましょう。医薬品を在庫管理する際は、以下のような問題が発生します。

1. 医薬品の有効期限管理
2. 温度や湿度などの保管条件の管理
3. 在庫の過不足
4. 法規制への対応
5. 誤出荷、誤在庫

順番に解説します。

1.医薬品の有効期限管理

医薬品は、一般的な製品と異なり使用期限が決まっています。有効期限切れの医薬品は、安全性と治療効果の観点から使用することができません。そのため、有効期限に十分注意して管理する必要があります。

2.温度や湿度などの保管条件の管理

ワクチンやインスリンといった医薬品は,特定の温度や湿度環境でのみ保管可能となっています。保管条件が適切でない場合、医薬品が劣化し、効果を失う可能性があります。

3.在庫の過不足

一般的な製品と同様に、医薬品の過剰在庫も保管スペースの浪費やコスト増加を招きます。先ほど述べたように医薬品には有効期限があり、それを過ぎると返品もできなくなってしまします。そのため、在庫を過剰に抱えることは非常にリスクがあります。一方、必要な医薬品が不足すると、治療の遅延につながってしまいます。難しいですが、適切な在庫量を保つことが必要になります。

4.法規制への対応

医薬品の保管方法は、法律によって厳しく定められています。在庫管理の責任者の任命、職員の人数、保管方法などに関して様々なルールが決まっています。これらを遵守し、在庫管理を行うことが必要になります。

5.誤出荷、誤在庫

一般の製品もそうですが、医薬品では特に誤出荷・誤在庫を防ぐ必要があります。医薬品には有効期限があるため、返品の際にトラブルが起こりやすいです。また、在庫数を誤って認識していた場合、医薬品を提供することができず命の危険にさらしてしまう可能性もあります。そのため、一般的な商品よりもさらに慎重に在庫管理を行う必要があります。

医薬品在庫管理のポイント

医薬品の在庫管理は難しいことが分かって頂けたと思います。この章では、医薬品の在庫管理をミスなく、効率的に進めるためのポイントを紹介します。是非参考にしてください。医薬品在庫管理のコツは3つあります。

1. 定期的な棚卸
2. 有効期限の追跡
3. 適正在庫量の設定

順番に解説します。

1.定期的な棚卸

医薬品を扱う場合、定期的な棚卸は非常に重要になります。先ほども述べたように、在庫数を誤っていた場合や有効期限が過ぎていた場合、重大なトラブルにつながる恐れがあります。それを防ぐためにも、棚卸によって在庫を正確に把握する必要があります。医薬品を棚卸する場合、循環棚卸を採用するのがおすすめです。循環棚卸を行うことで、業務を止めずに在庫確認ができます。また、在庫確認を行いたい範囲のみを棚卸することもできます。これらのメリットがあるため、医薬品の棚卸には循環棚卸が適しているといえます。

棚卸について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください

循環棚卸とは？基本的なやり方、効率化のポイントを丁寧に解説！

棚卸しについて徹底解説！具体的な手順・評価計算法も紹介！

2.有効期限の追跡

医薬品在庫を無駄にしないためにも、有効期限を常に把握しておくことが必要になります。特に、期限切れが近い医薬品の特定が重要になります。そのためにも、先入先出法を徹底することが大切です。先に入庫した医薬品から使用することを習慣づけておくことで、古い在庫から先に消費することができます。また、棚の配置を工夫することも大切です。正しく有効期限を管理するために、ルールを作ってそれを全員が守るようにしましょう。

3.適正在庫量の設定

現在の医薬品業界では、適正在庫を低く設定し、その医薬品が必要となる直前まで発注しないというケースが多く見られます。このようにすることで、在庫管理の費用をおさえられたり、有効期限切れを起こりづらくできるからです。しかし、このような方法はおすすめできません。なぜなら、緊急時に対応ができなくなるからです。適正在庫を低く設定していた場合、その医薬品が急に必要になった時に対応できません。そのため、適正在庫量を極端に低く設定するのではなく、余裕を持った設定にする必要があります。そのようにすることで、トラブルが起きた時でも対処できるようになります。

在庫管理システムの活用方法

医薬品の在庫管理に、在庫管理システムを活用することで、作業の効率や正確性が向上します。この章では、医薬品管理における在庫管理システム活用方法を解説します。活用方法は以下の5つです

1. 在庫のリアルタイム更新
2. 自動発注
3. 在庫の移動管理
4. 在庫の保管状態の管理
5. 在庫の分析とレポート作成

順番に解説します。

1.在庫のリアルタイム更新

在庫管理システムによって、在庫数をリアルタイムで把握できます。これにより、在庫の不足や過剰在庫を早期に発見できるようになります。また、時間の短縮、ミスの減少にもつながります。在庫量を自動で更新してくれるため手作業で入力する手間が省けるからです。在庫を目視で確認する作業も減らすことが可能です。

2.自動発注

在庫管理システムに設定した数値に達した場合、自動的に再発注の手続きを開始することができます。これにより、手作業での発注作業を減らすことができ、時間短縮につながります。ただ、閾値の設定には注意が必要です。先ほども述べたように、数値を低く設定しすぎると、緊急時の対応が困難になります。そのため、余裕を持った数値に設定することが重要です。

3.在庫の移動管理

医薬品が異なる場所に移動する場合、その移動を追跡する必要があります。特に病院や製薬会社では、医薬品の移動が盛んに行われます。そのような場所で医薬品の追跡を行えないと、紛失、廃棄、といった無駄が生じてしまいます。在庫管理システムを活用することで、医薬品在庫がどこにあるのかを明確にすることができます。それによって無駄が減るだけでなく、ピッキングや出荷作業も効率化します。

在庫の移動を管理する方法として、バーコード、QRコードを利用するという方法もあります。この方法について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

【2024】バーコード作成の方法とは？活用方法も詳しく解説！

4.在庫の保管状態の管理

在庫管理システムを利用することで、品質管理も行うことができます。医薬品の保管状態を管理することで、品質の劣化を防げます。温度・湿度などの条件を監視し、条件を満たさない場合アラートを発することもできます。

5.在庫の分析とレポート作成

在庫の動向を把握することもできます。過去の使用・販売データから、医薬品の必要量を求めることが可能です。そのため、季節や需要に応じた在庫管理を行えるようになります。特に医薬品は、需要が変化しやすい製品です。需要量を把握することで、欠品を防げるようになります。

おすすめの在庫管理システム２選(中・小規模向け)

1.JoyPla

出典:中小規模病院向けクラウド型SPDシステム「JoyPla®」

スパイラル株式会社のJoyPlaは、中小規模の病院向けの受発注から在庫状況まで病院の物流を一元管理する物品管理システムです。院内物流の可視化によって在庫の適正化や従業員の負担軽減を実現できます。実際に病院で在庫管理業務を行う方々の声をもとに設計されたシステムで、習志野第一病院や愛育クリニックなどで利用されており、発注業務の最適化とコスト削減に成功しています。

• 卸への一括発注、システムを通じた卸担当者とのやり取りも可能
• グループ施設管理機能で本部の工数削減に、承認権限者も個別に設定可能
• ラベル活用で受発注や棚卸しを簡素化、バーコードは国際標準に対応

2.LIFE-Vision

出典：生活用品向け物流システム『LIFE-Vision』

株式会社東計電算のLIFE-Visionは、ドラッグストアやホームセンター・ディスカウントストア向けの倉庫管理システムです。DIYや住宅資材など、幅広い荷姿に対応しており、ホームセンター・住宅資材関連の専門店、工務店及びそれらへ出荷するメーカー、卸までさまざまな業態で利用できます。クラウドサービスにて大小さまざまなデータ量に対処できるので、規模に応じたコストで利用できるのが魅力です。なお、複数センター・複数荷主にも対応できます。

• ロット管理機能の標準装備で安全な運用を実現
• ピッキング導線の設定で、ロケーション管理を快適に
• フリーロケーション＆ダブルトランザクションで保管と出荷の効率アップ

おすすめの在庫管理システム2選(大規模向け)

1.MedicalStream

出典：病院向け物流管理システムMedicalStream

株式会社サン・システムのMedicalStreamは、医療現場向けの物流・滅菌・機器管理ソフトウェア製品の総称です。医療機器をラベル管理することで、在庫状況や購買実績の把握、夜間や休日の機器の貸出・返却などが可能になり、病院業務の可視化・効率化が期待できます。同社の物品管理システムは全国824件の導入実績があり、慶應義塾大学病院や国立がん研究センター中央病院、岩見沢市立総合病院などで利用されています。

• ラベルによる物流管理システムで物品の状況を正確に把握、電子カルテ等との連携も
• 滅菌管理システムの活用で迅速な器材状況の把握、ペーパーレス化を実現
• 機器管理システムで購入情報・稼働状況の一元管理、夜間・休日が貸出可能に

2.クラウドトーマス

出典：-物流改善を実現できるWMS　クラウドトーマス-

株式会社関通のクラウドトーマスは、年間1,100万個以上の商品を出荷している物流会社が作り、様々な現場で使われている倉庫管理システムです。実際に使うことを基軸に考えられており、稼働する物流現場を見ることも可能なので、初めての導入でも安心して始められます。基本の在庫管理、入出庫管理から棚卸機能なども搭載しており、 物流現場のノウハウとシステム機能で、法人向け、個人向け問わず倉庫管理に関する様々な課題を解決します。

• データの一元管理が可能で、他システムとの連携もしやすい
• 現場に合わせて、ハンズフリーによる作業効率化も可能
• 物流のプロによる「導入支援サービス」が充実

システムの選び方・選定ポイント

医薬品向けの在庫管理システムの比較ポイントは以下の三つです。

1. 法規制への準拠
2. 在庫管理の精度
3. ユーザビリティ

順番に解説します。

1.法規制への準拠

医薬品業界には、GMP、GDPといった厳しい規制が存在します。これらは医薬品の品質と安全性を確保するための基準であり、必ず守らなければなりません。在庫管理システムを選定する際は、これらに対応できるものかどうかを必ず確認しましょう。医薬品の在庫管理を行う時は、効率を上げる事だけを考えるのではなく、品質や安全性についても気を配りましょう。

ICH-Q7　GMP（医薬品の製造管理および品質管理に関する基準）

医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン

2.在庫管理の精度

在庫管理システムによって、機能、精度は異なるため、導入する前に確認することが大切です。医薬品在庫管理をするうえで、有効期限管理機能、リアルタイム更新機能、自動補充機能が特に大切になります。これらの機能があれば、十分効率的に在庫管理を行うことができます。機能が多すぎてしまうと、コストが余計にかかったり運用が複雑になったりするなどのデメリットが生じてしまいます。本当に必要な機能は何かを判断し、適切なシステムを導入しましょう。

3.ユーザビリティ

現場スタッフにとって使いやすいシステムを選定することも重要です。操作が難しいシステムを導入してしまうと、現場は混乱し逆に作業効率が落ちてしまいます。そのため、分かりやすく使いやすいシステムの選定が必要になります。また、システムを導入する際は、システム運用マニュアルを作成し、使い方を分かりやすく解説する事もポイントです。

まとめ

医薬品の在庫管理は、患者の安全を確保し、医療機関の運営を効率化するために欠かせません。また、医薬品の在庫管理は一般的な製品より難しいです。有効期限を管理する必要があったり、法律で規制されていたりするからです。しかし、やり方を改善することで効率が必ず向上します。この記事を読んで、医薬品在庫管理に関する課題を改善して頂ければ幸いです。