目標管理制度を導入している人事担当者や経営者の中には、「目標管理に関する業務の負担が大きい」、「目標達成に対する意識が希薄で上手く業績に繋がらない」などと言った声が数多く飛び交っているのではないでしょうか?

目標管理システムを導入することで、上記の課題や悩みを一挙に解決できるだけでなく、システム導入による生産性向上やコミュニケーションの促進なども望めます。一方で、近年では目標管理制度自体の意義について懐疑的な意見が見られ、目標管理システムを新たに導入する企業が減りつつあります。目標管理システムは本当に必要なのか、自社の適した目標管理システムとはどのようなものであるのか。本記事では、目標管理制度・システムとは?という初歩的な説明から前述のような疑問の答えに繋がる内容を紹介しております。

目標管理システムとは?

目標管理システムとは、従業員の目標を管理することができるシステムです。

目標の設定から個人単位での進捗状況や成果をWeb上で可視化し、情報を一元管理することで管理工数を格段に削減できるビジネスツールになります。

目標管理システムの手法

目標管理をマネジメントする手法は、大きく分けて「MBO」と「OKR」の2種類があります。以下では、この2つの手法におけるそれぞれの特徴とその違いについて比較しながら、述べています。これらの手法について理解し、現代における目標管理がどのようなものであるのか、その大枠について確認しましょう。

  • MBO(目標管理制度)とは?
  • OKRとは?

MBO(目標管理制度)とは?

MBO(目標管理制度)とは、従業員に個人目標を設定してもらい、その進捗や達成度によって人事評価を決定するマネジメント手法のことを指します。「MBO」とは「Management By Objects」の略であり、直訳すると「目標による管理」となります。このような意味を持つ目標管理制度(MBO)には、主な特徴が2点あります。

特徴1 : 従業員が設定する個人目標が、上流に位置する「組織目標」とリンクしている。

MBOには、従業員に組織の一員であるという自覚を持ってもらい、個人の成長と組織の成長を同スピードで促すという狙いがあります。そのため、個人目標としては、組織が設定した目標に対して、組織全体への貢献性が見て取れるように内容が望まれます。
特徴2 : 従業員本人が個人目標の設定を行う。

MBOが「目標による管理」と訳されるように、目標を設定する際の”自主性”が重要になってきます。このように、従業員の意思を内包していない目標は単なる企業が設定したノルマに過ぎません。要するに、”自主性”を持たない目標設定は無意味なのです。

MBOにおいて、上司の役割は従業員の進捗状況を確認し、助言することであって、あくまで、サポート役です。上司が干渉せず、自主性を持って、目標を設定することが従業員の意欲を増加させます。

OKRとは?

OKRとは、「Objectives(定性的な目標) and Key Results(定量的な進捗目指標)」の略であり、定性的な目標と定量的な進捗指標によって、従業員の目標をマネジメントする方法のことを指します。インテル社の元CEOによって、提唱され、アメリカにあるシリコンバレーと呼ばれる地区を中心に多くの企業での導入が進んでいる手法です。このOKRの主な特徴は、3つあります。

特徴 1 : 目標や進捗指標制度の達成度が、100%を前提としていない

MBOの場合、従業員の設定する目標の達成度が、人事評価や給与の指標と直接結びついているため、達成度が100%に達することが望まれます。これに対して、OKRに給与制度との直接的な結びつきはありません。このような定義の違いから、60~70%の達成が見込まれるような、よりチャレンジングな目標設定が好まれる傾向にあります。
特徴 2 : MBOに比べて、目標を振り返るスパンが短い

MBOが、1年ごとに目標を振り返ることが多いのに比べて、OKR では1~3か月という短いスパンで振り返りのための機会を設けます。そのため、より高頻度での目標設定や軌道修正が必要になるのが、MBOとの大きな違いです。

特徴 3 : 目標を共有する範囲が広い

MBOにおいて設定した目標は、基本的に従業員と上司の間で共有されますが、OKRで会社全体に公開・共有されます。これは、従業員のチャレンジ精神に富んだ内容の目標でも自社への貢献度をより強く感じもらうための制度設計です。

紙やExcelを用いた目標管理における課題3つ

紙やExcelを用いた目標管理業務において、以下のような課題を抱えているケースが多々あります。紙やExcelを用いた従来の目標管理の手法では、どのような課題が生まれるのか理解し、今後このような課題に対してどのようにアプローチをするべきなのか考えていきましょう。

  1. 業務の負担が大きい
  2. 情報を一元管理することができない
  3. データの破損や紛失のリスクがある

1.業務の負担が大きい

紙やExcelによる目標管理では、目標管理シートの配布や回収、集計及びファイリングなどの作業が煩雑になる傾向があります。このような目標管理の精度の面における課題に加え、進捗状況が見えづらい、面談の日程調整がしにくいなど、管理・運用における効率の面でも様々な課題を抱えています。

また、マネジメントの手法としてMBOを採用する企業では、目標管理シートは評価者以外の社員には公開できないので、ファイルのやり取りには細心の注意が必要になります。このような点において、Excel用いる場合、社員ごとにファイルを分け、閲覧権限者のある評価者が直接、送受信の作業をしなくてはならないので工数がかかる上に誤送信などのトラブルが生じる可能性があります。

2.情報を一元管理することができない

目標管理シートや面談履歴などの関連情報が、マネージャーなどの評価者、個人のパソコンに分散して保存されてしまうため、個人の設定した目標に関する情報を一元で管理することが難しくなります。また、過去の評価したときの履歴や面談時のメモ等が大量の情報の中に埋もれてしまい、異動時の引き継ぎ円滑に行えなかったり、かえって工数が増えたりということもあります。

3.データの破損や紛失のリスクがある

Excelを用いた手法においてよく起きるのが、フォーマットや数式の変更によるトラブルです。Excelでは、数式やフォーマットの変更が容易に行えるのですが、変更の際にセル参照などが変わってしまい、修正の手間が発生します。また、紙の場合は、原本を紛失するリスクが考えられます。紛失した場合、復旧やデータの捜索にさらに時間を取られてしまうこともしばしばです。

目標管理システムの主な機能4つ

ここまで、目標管理制度の種類やその特徴や従来の目標管理の手法における課題点など、目標管理の概要とその大枠について述べてきました。これから、「主な機能」を皮切りに、目標管理システムとは、その詳細について説明していきます。

  1. 記入状況や集計結果などの一元管理、集計作業の自動化
  2. 評価分布などの見える化
  3. 蓄積した評価データの活用
  4. 目標管理シート・評価フィードバックのシステム展開

1.記入状況や集計結果などの一元管理、集計作業の自動化

目標管理シートの進捗を一元管理することができます。クラウド型の目標管理システムであれば、各種案内や記入状況の把握、未提出者への催促などもシステム上で行うことができます。

また、Excelを用いた煩雑な人事評価の集計作業も目標管理システムを用いることで自動化することができます。これにより、人事担当者の工数を大幅に削減することが可能になります。

2.評価分布などの見える化

目標管理において相対評価を行う場合、正規分布となっているなど評価分布を確認する必要があります。このような評価分布は、目標管理システムを瞬時に把握することができます。

また、職種や所属ごとに評価の基準に差がないかなど、評価分布の観点を変えて確認することができるシステムがあります。このような機能があることで、評価基準の差の調整及び修正を円滑に進めることができるようになります。

3.蓄積した評価データの活用

蓄積された過去の評価データを分析することで、部署ごとのパフォーマンス分布などの人事評価に関する分析をすることができます。

また、クラウド型の目標管理システムであれば、目標管理システム以外のクラウド型人事システムのデータと連携して集計することができ、より多角的な分析が可能になります。

4.目標管理シート・評価フィードバックのシステム展開

従来、紙やExcelで運用していた「目標管理シート」を目標管理システム上で展開することができるようになります。また、クラウド型であれば、クラウド上での展開が可能になるため、人事担当者の業務を増やすことなく、ワークフローとして運用することが可能になります。

以前まで評価のフィードバック作業は、人事担当者から当該部門の上司に個別で連絡を行う過程を伴うため、非常に労力を要する業務の一部でした。しかし、目標管理システムを用いることで、評価のフィードバックをシステム上で展開することが可能になります。中には、人事担当者の介在なしに、評価者が評価対象者を抽出してExcelファイルとして出力することができるものもあり、大幅な業務の効率化が望めるようになるでしょう。

目標管理システムを導入するメリットや効果3つ

目標管理システムを選ぶときは、以下の3つのポイントを意識して選定することがポイントです。ログ管理システムを導入する際に、どのようなところに重点を置いて選ぶべきなのかを理解することで、自社に最適なシステムを選定することができます。

  1. 人事業務の効率化による生産性の向上
  2. 社員の目標達成に対する意欲の向上
  3. 目標管理の精度アップ

1.人事業務の効率化による生産性の向上

目標管理システムを導入する目的として最も代表的なものが、業務の効率化です。これまで、手作業で行ってきた業務をシステム上で管理することで、目標管理における業務工数を大幅に削減することができます。

人事担当者の観点から、導入のメリットについて考察してみましょう。評価対象となる社員数が多い場合でも、データの一元管理が可能になりなります。このように、業務の一部をシステムに一任することができるため、自分はコア業務に時間を割くことができるようになります。

また、システムを導入することで、人事担当者や経営者などの評価する側だけでなく、評価される側の社員も恩恵を得ることができます。たとえば、目標管理シートの提出をシステム上で行えるようになることで、上司に報告する社員の効率も上がり、結果として組織全体の生産性の向上に繋がります。

2.社員の目標達成に対する意欲の向上

目標管理システムを導入することで、社員の目標達成に対する意欲が向上する効果も期待できます。自分の努力が信頼できるデータとして現れるため、モチベーションの増大、目標達成に対する主体性の向上が図れます。

紙やExcelで目標を管理する場合は、管理業務の負担が非常に大きいため、社員に対するフォローやフィードバックが疎かになる傾向が見られます。一方で、目標管理をシステム上で行うことで、管理業務の工数が減るので、その分、フォローやフィードバックなどの業務にあてることができます。

また、目標管理システムによって得られた精度の高いデータを元にした客観的な評価に加えて、改善を促すフィードバックが具体的であれば、社員の目標達成に対する意欲が上がることは明確と言えるでしょう。このように、目標を管理する側と評価される側の双方にとって大きなメリットをもたらすのが目標管理システムの大きな魅力です。

3.目標管理の精度アップ

目標管理の精度が上がることも目標管理システム導入のメリットのひとつです。目標管理をするうえで抱えがちな「もっと詳細に目標を管理したい」、「そもそも目標管理制度がしっかりと機能しているのか」などといった悩みを解決する手がかりとなることもあるでしょう。

また、過去のデータを確認しやすいのも目標管理システムの大きな強みです。過去の評価データや面談の履歴を適宜確認し、必要に応じて課題を解決していくことで評価における公平性や客観性を保つことができます。

目標管理システムを導入する際のポイント5つ

目標のマネジメント手法2種類における特徴やその違い、目標管理システムの主な目的など、目標管理システムを導入するとどのような効果、メリットがあるのかについて注目してきました。このような点から、目標管理システムの導入を検討している場合、次のポイントを踏まえて選定することをおすすめします。

  1. 導入目的に適しているか
  2. 既存のシステムと被っている機能はないか
  3. 費用対効果はどのくらいであるのか
  4. どのような提供形態を選択するのか
  5. ITに強くない社員でも利用できるか

1.導入の目的に適しているか

目標管理システムを導入する主な目的としては、次のようなものが考えられます。

目標管理システムを導入する主な目的

  • 目標達成の意欲を高めたいのか
  • 目標管理の精度を改善したいのか
  • 新たな人事評価制度を取り入れたいのか

導入の際には、これらの目的に対してどのような強いを持つツールか、また、上記以外の目的に対してどのような効果を生むのかを確認しましょう。

目標管理の最終的なゴールは、あくまでも会社全体の目標を達成するための手段であり、目標管理システムはその手段を効率化するためツールの一種に過ぎないのです。2次効果として目標管理を運用する過程で、社員のモチベーションの向上やスキルアップ、経営理念の浸透なども期待できます。

2.既存のシステムと被っている機能はないか

目標管理システムの中には、情報共有型の社内SNSの機能を持つものがあり、このような機能はSlackやチャットワークなどのグループウェアやビジネスチャットと一部被っています。既存のシステムと目標管理システムの機能が重複している場合、機能がうまく活用されずに、必要な情報が共有できないと言った結果を招きかねません。

そこで、このような事態を未然に防ぐために、既存のツールの機能や仕組みが目標管理システムと重複していないか、再度を確認し、導入を進めることが重要です。

3.費用対効果はどのくらいであるのか

システムを導入する際に考えなければいけない重要なポイントの1つとして、費用対効果の高さが挙げられます。導入の目的に適していなかったり、既存システムと機能が重複していたりすると必然的に費用対効果は下がります。また、利用する社員数が多いと月額費用が高額になることもあります。

導入する際は、これらの観点に加え、目標管理システムに支払うことのできる費用のバランスについて想定し、費用対効果を最大限に引き出すことのできるような目標管理システムを選定しましょう。

4.どのような提供形態を選択するのか

目標管理システムの提供形態には3つあります。

①クラウド型

インターネットとwebブラウザの二つがあれば場所を問わず利用できます。また、初期費用が安く、導入に要する期間が短いという特徴もありますが、システム自体のカスタマイズが原則できないというマイナス面もあります。

②オンプレミス型

自社でサーバーを設けた上でシステムを構築するため、カスタマイズ性に優れているのが大きな特徴です。その反面、初期費用が高くなり傾向があり、障害等のトラブルが発生した場合の対応やセキュリティ体制の構築など運用面でもコストやリソースが必要になります。資金や人的リソースにバッファのある企業でないと運用が難しいのが実情です。

③パッケージソフト

ソフトウェアメーカーが販売しているソフトをパソコンにインストールすることで利用できます。安価で導入コストが低いという特徴がありますが、カスタマイズができない点に加え、複数人でデータを共有することができない点もデメリットとなります。また、バージョンの更新やセキュリティ対応なども自分たちの責任で行う必要があるので、導入後の運用における業務負荷をきちんと見極める必要があります。

5.ITに強くない社員でも利用できるか

目標管理システムの選定において、その操作性・使いやすさも大事なポイントの1つです。目標管理システムを導入することで、人事管理者や経営者の業務負担軽減に加えて、社員の負担軽減、社内のコミュニケーションの活性化を意図する狙いもあります。このような目的に沿って利用するために、管理する側の人間が使いやすいかどうかはもちろん、「ITに強くない社員でも利用できるのか」という視点は非常に重要になります。

目標管理システムは導入されたのち、人事に関わる社員だけに限らず、若手社員からベテラン社員まで、幅広い年齢層の社員が触れるものです。ITに強い一部の社員しか使いこなせないようなシステムであれば、導入しても、最大限活用しきることができません。

このような観点から、システムの導入により、組織全体の生産性の向上を目指すためには、説明の手間をかけることのない直感的に操作できるシステムを選ぶことが重要になります。

おすすめの目標管理システム24選

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製品のおすすめポイント

  • エクセル利用も可能、グラフ化してバラツキを確認
  • 他人事システムとの連携で煩わしい手間を削減
  • 評価シートを細かく定義、OKR管理できる
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製品のおすすめポイント

  • 事実ベースのフィードバックによりプレイヤー、メンターの成長に繋がる
  • 目標を明確化し、社員の状況が分かり、自発性もアップ
  • 外部ツールやスマートフォンにも対応
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製品のおすすめポイント

  • 個人やチームの目標をツリーで管理できるようになる
  • 簡単に数値目標を更新して適切なアクションが可能
  • 定例会議や1on1の振り返り機能に優れている
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製品のおすすめポイント

  • パフォーマンス・マネジメントによって人事評価を支援
  • 成長/キャリア開発目標を可視化して計測可能になる
  • 適正な評価とモチベーションの向上を支援する
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製品のおすすめポイント

  • 従業員を目的に導くことが簡単にできるようになる
  • 週ごとに行われる会議によって、より実践的な仕事ができる
  • より生産的かつ効率的に業務を行えるようになる
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  • 営業の数字目標だけでなく、定性目標も設定可能
  • 進捗をツリー・グラフ・カンバン形式で確認可能
  • テレワークのコミュニケーションを活性化させる
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製品のおすすめポイント

  • オンボーディングプロセスをシステム上で表現できる
  • 1on1により、部下を成功体験へ導き成長させられる
  • エンゲージメントサーベイにより従業員のやる気を把握
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  • フィードバックや振り返りによって組織のエンゲージメントを高める
  • 目標意識を高め、自律的に働くようになる
  • 充実した機能によって業務改善化につながる
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製品のおすすめポイント

  • リアルタイムフィードバックにより社員のパフォーマンスを向上
  • 社員のエンゲージメントを見える化できる
  • テンプレートが豊富で会社に合わせて利用できる

目標管理システムは使い方次第、どのような会社にとって必要なのか

ここまで目標管理システムの概要やメリット、なぜ時代遅れと言われるのか、導入する際のポイントなどについて見てきました。本記事を読んでいただいてもお分かりいただけたと思いますが、目標管理システムは導入するだけではその効果を最大限に発揮することはできません。

なぜ目標管理システムを導入する必要があるのか、どのように運用すると最大限、有効活用できるのか、自社に合った目標管理システムとはどのようなものであるのか。目標管理システムを導入するメリットや効果はその選び方や使い方次第です。このような観点に重きを置いて、是非、導入を検討してみてください。